2.大嵐山・取立山水芭蕉散策と白山縦走

【 題名 】 大嵐山・取立山水芭蕉散策と白山縦走

【 期間 】 2001/04/30(月)〜2001/05/04(金)

【 参加 】 T村T

【 山域 】 白山山系

【 山名 】 大嵐山(おおあらしやま/1204m)・取立山(とりたてやま/1307m) ・ 三ノ峰(さんのみね/2128m)〜別山(べつさん/2399.4m)〜室堂

【 形態 】 縦走

【 地図 】 昭文社・エリアマップ 山と高原地図45 白山

【 資料 】 山と渓谷社・分県登山ガイド 福井県の山 石川県の山

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 三ノ峰から白山へのアプローチにこだわり続け、昨年に続いて積雪期の単独行でのチャレンジです。昨年は南竜ヶ馬場の避難小屋を眼下に涙のビバークそして撤退でした。今年は白山縦走前に水芭蕉散策を加えて、硬軟入り交じった山行を企画しました。

--------------------[ コースタイム ]----------------------------------

1日目 4月30日(月)晴

自宅 4:11−[京滋バイパス〜瀬田西IC〜米原北J〜福井北IC〜R416〜R157]−6:13勝山観光トイレ−7:33百合谷P−7:56百合谷峠−8:05ミズバショウ園−百合谷峠−8:53百合谷P−東山いこいの森−9:32林道終点駐車場−大滝 −11:03こつぶり山−取立平避難小屋−11:25取立山−12:37林道終点駐車場−勝山温泉センター−鳩ヶ湯−14:20上小池キャンプ場(車中泊)

 

2日目 5月01日(火)晴のち霧

4:00起床−5:30上小池キャンプ場−5:50三ノ峰登山口−6:15山腰跡−7:56六本槍−9:42大岩−12:28三ノ峰−三ノ峰避難小屋(宿泊)

3日目 5月02日(水)曇のち雪

3:00起床−4:30三ノ峰避難小屋−6:20別山−10:20南竜ヶ馬場−13:20室堂山小屋(宿泊)

 

4日目 5月03日(木)雪のち晴

4:30起床−7:00室堂山小屋−黒ボコ岩−9:30甚之助避難小屋−12:20別当出合−13:20市ノ瀬−(タクシー)−上小池キャンプ場−勝山温泉センター−東山いこいの森(テント泊・取立山の麓)

 

5日目 5月04日(金)晴

4:30起床−6:05東山いこいの森 −6:40根倉谷園地(水芭蕉)−福井北IC−瀬田東IC−10:35自宅

--------------------[ 山行記録 ]--------------------------------------

1日目 4月30日(月)晴

3時半起床。4時出発を目指して準備するが若干遅れ4:11出発。高速も空いていて福井北ICには6時前5:52に到着。かなり飛ばした結果です。大嵐山に向かうが、途中東山いこいの森に立ち寄り、下の水芭蕉池の状況を確認する。ほぼ満開で残雪も僅か。昨年の豪雪期よりは少ないと感じた。

*水芭蕉の花の香りに圧倒される。大嵐山の百合谷Pまで車で上り、水芭蕉散策を開始。人もまばらで閑散としている。電話でのアドバイスに従いゴム長靴で行くが、靴下が薄く快適とは言い難い。標高1204mの大嵐山だが、水芭蕉群生地は850m位の位置。案内板には3万株の水芭蕉が咲くとある。石川県下屈指の水芭蕉の群生地も頷ける。既に雪が解けた所では開花も始まっており開花のピークは5/13頃と思われる。確かに広く、桃源郷を思わせる谷間には水芭蕉が咲き乱れている。花の香りもする。初めての経験でその香りに圧倒される。カメラで撮影している人と話をする。家族連れは去り彼と二人だけ。開花は例年より遅れているそうだ。家で入れてきたドリップコーヒーを飲む。上の群生地にも行くが雪が多く、ここ大嵐山は長い期間花を楽しめそうだ。途中、雪面にイモリがいるのを発見する。ほとんど動かず、冷たそうに思い、土面に移す。よく見ると他にも3匹ほど雪面にいるイモリを発見。雪の上でも大丈夫なようなので、後はそのままに去る。

*大滝で転けてお尻を濡らす。そして突然、鳥に笑われた? 続いて、取立山に向かう。上の駐車場に行くと、500円徴収される。ここから、新調の登山靴に履き替える。脱プラブーツ宣言で、ニッピンのネパールエクストリームとした。若干歩きづらいが、信頼出来る一品。まず、大滝に向かう。滝の下の谷を向こうに渡ろうとして、転けてお尻を濡らす。突然、鳥に笑われた?腹が立つが仕方ない。起きあがると又、笑われた。嘘だと思う人がいるだろうが、今でもあれは鳥が笑ったのだと私は信じている。取立山は昨年より雪が多く、水芭蕉のある所は10畳位雪が解け水芭蕉が5cm位の芽が出ている状態。見頃は標高も高いので遅くなりそうである。マンサク、スミレ、タムシバなども楽しみ下山する。ウグイスなどの鳥も鳴いている。途中、雪もあるがアイゼンは必要ない。

*上小池キャンプ場でカモシカに遭遇。下山後、勝山温泉センターその名も「水芭蕉」による。入浴料500円。間があるので、東山いこいの森に戻らず、上小池キャンプ場に向かう。鳩ヶ湯から上は通行禁止になっているが無視して進む。落石が多く、注意して走行する。上小池キャンプ場に着くと5/3からスタートする旨の看板がある。無料でテント場が使用できるわけだが、面倒なので車中泊とする。谷川の方からカモシカが登ってきたが、すぐに去っていく。メスらしい。刈込池散策をしたという家族連れと話をする。桜と新緑が美しいと語っていたが、私も同感である。この辺りは春がまとまって訪れるようだ。

 

2日目 5月01日(火)晴のち霧

緊張の白山縦走がスタートする。雪は多いが何とか三ノ峰までは行けそうだ。登山口でいきなり、チゴユリを目にする。六本槍までに3回雪で道を見失うが何とかクリアーする。六本槍の下部ではガレているところもある。荷物が重く段々とペースが落ちる。仕方なく早い昼食とする。水は雪を溶かして使用。食事中、男性一人が到着。少し、話して先行して貰う。別山か三ノ峰に行って日帰りするとの事。結局、彼は三ノ峰避難小屋で既にビールを飲んで仮眠。疲れがひどいので、予定通りここで宿泊するこことする。しばらくして、彼は別山には行かず下りていった。早めの食事を済ませ、備え付けの毛布2枚を借りて寝る。昼から霧が出ていて、明日が不安だ。

 

3日目 5月02日(水)曇のち雪

今日が一番大事な日だ。早く、目覚め外に出る。星が見える。昼から雨も予想されるので、早めに行動開始する。4:30明るくなるのを待って小屋を後にする。別山、御舎利山までは僅かに踏み跡がある。千振尾根経由で市ノ瀬に下りているらしい。御舎利山からは踏み跡もなく注意して行く。昨年ビバークした地点から南竜に一気に下る計画だ。途中、雪が多く困難を極める。12本爪アイゼンとピッケルそしてヘルメットの着用で進む。

 

*第1番目の困難に遭遇(ルート確認判断のミス)油坂の夏道をやり過ごし、昨年ビバークした地点に到着、計画通り下ろうとしたが、一瞬躊躇する。もう少し下の方が通過しやすいかも知れない。この判断が大きな困難を引き起こす事となった。下れば下るほど谷は深くなる。もう、戻れない。夏道付近も険しい。結局、夏道より下側の谷を下り、更に登り返す事となった。荷物が重く困難を極める。登り返しは傾斜もきつく、生きた心地はしなかった。悪戦苦闘の末、平坦部に出た時はあまりの疲れで天を仰いで雪面に倒れ込んでしまった。「助かった。生きている。」かなりのアルバイトを強いられながら、無事南竜ヶ馬場避難小屋にたどり着く。そこで二人のスキーヤーに出会う。昨日はこの避難小屋に泊まったとの事。天候が悪化するから予定を早め下山するとの事であった。話をしていても先程の事で、声が震えているのが自分でも判る。

*第2番目の困難に遭遇(天候判断のミス、雪は全く想定しなかった。)ここでも、早目の食事をして、室堂で天候の回復(雨)を待てばいいと気楽に考える。既に霧が出て視界が悪いので間違いにくいトンビ岩コースを取る。先行しているアイゼンの跡を頼りに登るが、霧で小屋は見えない。見当をつけて進むが既に雪が降り出してきた。幸い迷う事もなく小屋にたどり着き、宿泊の手続きをする。今日は宿泊者は私一人である。止む事のない雪に不安が募ってくる。これはもう、予定の行動を取れないのではと感じ始める。雪が止んだとしても今回のルートを戻るのは至難の業である。取り敢えず南竜まで下って市ノ瀬のルートを下るか。それとも南竜を経由せず市ノ瀬に下るかである。市ノ瀬に下ってもタクシーが上小池キャンプ場まで行ってくれなければ下りても仕方ない。山小屋の方にお聞きすると、僅かに第一展望台付近で携帯電話が通じると聞く。早速試すが、なかなか繋がらない。ポールの東、20mでやっと繋がった。勝山タクシーに事情を説明し上小池まで行ってくれる事の確認を取る。積雪も15cmとなり、もう、躊躇出来ない。山小屋の方と相談して、市ノ瀬までの最短確実なルートを教えて貰う。赤旗ポールもあるが雪で埋もれてしまっている可能性が高いという。結局、山小屋の方二人が途中まで同行してくれる事となった。その辺の事情を家内に電話し、留守本部の増田さんにも伝えて貰う。外は相当に寒く風も強い。とても5月の山とは思えない。

4日目 5月03日(木)雪のち晴

*本当の山ヤに出会う。不安で早くから目が醒める。雪は降り続いている。新雪のみで40cm程となっている。予定の7時前に山小屋の方の宿舎に向かう。「この雪の中を、やはり今日下りますか。」と問われたが、「はい、下ります。」と答えて、お二人に同行頂き下山を開始する。お二人は長靴、こちらは完全装備でスタートする。新雪に足を取られペースはお二人より遅れ気味、その内、僅かにポールの頭の赤旗が見えるようになる。確かに一人ではルートを見失うかも知れない。雪の弥陀ヶ原を黒ボコ岩までくると、眼下はるかに、甚之助避難小屋辺りが見える。小屋は確認できない。斜度はきついがポールがはっきりしているので迷う事はなさそうだ。お二人にはお礼を述べここで別れる。斜度のきつい雪面をポールを頼りに甚之助避難小屋へと向かう。結構きつい。途中、甚之助避難小屋で泊まっていた方と出会う。天候が悪くなりそうだったので、室堂は断念したそうだ。そして、これから室堂に行き、様子を見て南竜が馬場を経由して別山に行き千振尾根を市ノ瀬まで下りたいと言う。天候が悪ければ動かず、回復すれば一気に突いて出る。なるほど、これが本当の山ヤなんだなと感心する。

*タクシー代が気にかかる。甚之助避難小屋からは雪も止み、緩やかな雪面を下る。別当出合で一旦装備を整理し、市ノ瀬へとアスファルトの道を下る。プラブーツでないので歩きやすいが、それでも市ノ瀬まで下ると足の裏が痛くなった。市ノ瀬でタクシーを呼ぼうとしたら、公衆電話は故障。仕方なく市ノ瀬ビジターセンターで電話をお借りし、勝山タクシーを呼ぶ。上小池までは相当の出費を覚悟しなければならない。下手をすると高速代、ガソリン代に支障を来すかも知れない。しかし、予想をかなり下回ったので安心する。

*風呂上がりのビールはやはり最高!やっと下山出来た思いでほっとし、疲れが出る。即、家に帰るのが家内を安心させる事になるとは思ったが、夜の運転は避けたい。結局、勝山温泉センターに寄り、東山いこいの森でテント泊することにする。水芭蕉池のテント場は私の為にまだ用意されていた。ディスカウトショップで購入したビールが実にうまい。今回の山行でテント泊するのは今回が初めてとなる。

5日目 5月04日(金)晴

*フィナーレは水芭蕉の観賞で締めくりとする。朝は早くに目覚め、目の前の水芭蕉をテントの中から見る。続いて、外に出てドリップコーヒーを沸かして飲む。昨日、市ノ瀬ビジターセンターで教えて頂いた根倉谷園地の水芭蕉を見に行く。朝が早いのか、誰もいない。期待していなかったが唖然とする。今が満開でバックの景観ともマッチし最高。道路から2分で水芭蕉の群生地にショウジョバカマやスミレも咲いている。これほど一斉に咲き誇ると水芭蕉の花の香りが漂う。大荒山でも経験したが、実にいい香りである。気に入ったので周遊路を2周する。そして、独り言。「よお、お前、無事生還出来たのおー。」そして一路、自宅へ車を走らせる。10:35自宅に到着。たまたま外出していた家内が帰宅して、ニコッと笑う。また、普段の生活が戻ってきた。

--------------------[ 参考 ]------------------------------------------

「最新の白山情報です。」「最新の水芭蕉情報です。」に詳細を記しました。

-------------------[ 感想 ]------------------------------------------

家内には口が裂けても言えないのですが、大変厳しい危険な山行でした。よくぞ、生還出来たものだと思います。「もし、あの時、雪で道を見失ったままだったらどうなっていただろう」「もし、あの時、室堂山小屋が避難小屋で人がいなかったら、どうなっていただろう」「もし、あの時、室堂で携帯が繋がらなかったらどうなっていただろう」想像するだけで怖いです。でも、もっと怖いのは既に次のステップを考えている自分がいることです。ただ今現在、過去にないくらい自分の青春を謳歌している実感はあります。ひっこり、姿を見せたカモシカがお尻を見せて、さっと立ち去った事。雪の谷間を飛び交う、岩ツバメの飛翔。山で出会った数々の方と白山の素晴らしさを語り合えた事。白山登山前後に訪れた水芭蕉の群生地の数々。とりわけ、満開の水芭蕉群生地では、ほのかに香る水芭蕉にも圧倒されました。チゴユリ、タムシバ、マンサク、ショウジョバカマ、スミレの花々。そしてアイゼンとピッケルにも随分と慣れました。いろんな想い出が今回の山行には残りました。