京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | 島 |
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期日 | 2003年7月18日〜7月26日 |
山域 | 南アルプス |
山行形態 | 縦走 |
文責 | 島 |
身延線ホ−ムにてエア−マットを広げ寝袋に入る。
この付近バス停の中にポスト有り、奥の集落のものだろうが全てポストには・・子・・男と書いてある。全員同じ名字なのだろう。
御殿そばを食べ少し歩いたところで、そば屋の看板娘に呼び止められ峠の入り口まで送ってやろうと声をかけてもらった。もちろんお断りをしたが、男前?とはつらいものだ。
伝付峠の入り口看板なし、バス停の北側の橋を渡り進行方向左手の空き地奥に登山道有り。 10数分歩いた工事現場の監督に確認し入り口判明。20分ロス。
日没寸前、気合を入れてワッセワッセと声出しながら歩いた。峠付近でビバ−クしていた若者が、何事かとテントを飛び出しワシを照らしつける。獣だと思ったようだ。
日没、ヘッドランプでの山行は約600メ−トルの下り。真っ暗闇の中で大変気味の悪く、子羊?の夜道は改めて危険だと感じた。
本日初日は歩き始めてジャスト13時間の行程であった。前回にましてアスファルト歩きは辛く、登山道へ入ってからも人に会うこともなく、夕方には雨に打たれ、日は沈み、なかなかハ−ドな初日であった。
ここで沢につかり大休憩40分
14頃より雨
今日もドボドボのままテント設営。前回の聖も大雨やった。精進のよいワシでもだめなときはだめ。男は黙ってビ−ル呑む。
このころより暴風雨となる。前回の大雨よりひどい。いつか晴れた聖に登る、そんな気持ちが強くなった。
聖から兎へ向かうガレ場は小さいが綺麗な花畑だ。背丈のとても小さい黄花シャクナゲが心に残った。
12時頃ようやく雨もあがりカッパが乾き始める。雨がやんだだけで天にも昇るほどうれしかった。
小屋の中にスト−ブあり。靴、カッパ、シャツ等少しでも乾かそうと小さな体で一歩も動かずスト−ブ前を死守した。このとき注文したポ−クカレ−がメチャ旨。野菜、ポ−クたっぷりで千円。3時間程小屋で粘りテント設営に…若い女性一人で塩川から光岳をめざして1週間歩くらしい。テント泊ではめずらしい。受身のワシはなにかされはしないかヒヤヒヤしながら床に就く。
やけに今日は調子がいい。一度も休むことなく赤石岳へ…この旅始めて天気に恵まれ写真を撮る。百間洞で知り合いになったオッチャンに出会い、みかん、きゅうりを貰う。親切というか、今日下山するため荷物を軽くしたかったらしい。おおきに、と愛想よく笑う。
焼肉定食を食う。メチャメチャ旨い。肉、飯、野菜、漬物、味噌汁とにかく満腹や。飯の間にドボドボのテントを設営し干した。でっかい荒川三山と赤石岳、いつかここにテントを張ろう。
荒川前岳のお花畑は満開だ。シナノキンバイ、ハクサンイチゲ、クロユリ。
悪沢の上りで雷鳥の親子に出会う。ヒヨコよりも小さい雛が5羽もいた。
今日も14時頃より小雨。少しの降りで終わった。
小屋番はよく喋る江戸っ子のオッチャンだ。「島とは由緒正しい名前やなぁ。島左近か、島右近かしらんけど、あんたは子孫か?」 などと、話かけてくれる。そんなことワシが知りたいぐらいやわ…と答えてやる。この山旅に出て久しぶりによく喋った。調子に乗って休憩をあまり取らなかったためか疲れている。
「島さんに頼みごとがあるんや」とテントの外で声がする。中の仕切りを開けると、フライの外に仁王立ちのオッチャンのつま先だけがフライの中に入って不気味やった。フライ開けると、「この手紙塩見小屋のオヤジに届けてほしい」と、しおらしい頼みごとやった。「ええよ」と、男前に答える。「ほんの気持ちだけや」と三角チ−ズを1個くれた。ほんまに気持ちだけやった。
土砂降りの中、単独行のオバチャンに出会う。あとで知った話だが、このオバチャンは塩見小屋で手紙を受け取り高山裏のオヤジに手紙を渡す事になっていたらしい。
聖平の雨を上回る大雨だ。予定を上回るペ−スで歩いていたためここでやめるか、先を急ぐか悩みながら、まずはラ−メンをつくり熱いコ−ヒ−を飲む。時間が早いため前進
。 ますます風強く、三伏峠にテントを張らなかった事を悔やむ。最短のテント場まで約2時間。まずは手紙を渡し、どんべえの赤いきつねを食べた。(\500)
この手紙は小屋同士の文通やった。ワシが運んだのは今年の高山裏からの第2便の手紙で、さっきのオバチャンは塩見小屋発の第3便の手紙やったらしい。とにかく今年は雨ばかりでまいっている。手紙が唯一の楽しみやったとの事。内容を聞かせてもらうと「高山裏の去年の決算がでた。黒字2千4百30円」だとか書いてある。2ケ月間でたった2千円しかないのだ。今年は2千5百円以上を目指し、経営努力を続けるそうだ。65歳のオッチャンは秋になると農鳥小屋へ移るそうだ。以前は溶接工の職人で毎年何十年もの間、南アルプスのゴミを拾い歩いていたそうだ。塩見小屋のオヤジは言う「商売なんか考えて小屋なんかやってたらあかん。しかし、最近は気持ちだけでは生きていけん。」こんなオヤジ達に世話になり俺達は道楽の一つとして山へ登っている。山のオヤジ達に感謝するとともに、せめてゴミのことだけは迷惑のかからんよう考えていこうと思う。ちょと賢く?なったワシであった。
外は暴風雨、手の感覚が麻痺し始める。
塩見小屋より歩き続けること5時間10分、休憩もせず歩き続けたのに寒い。 少し調子がおかしく思うも、土砂降りの中テントを設営。全ての衣類を脱ぎ捨てて、絞って干して、体を拭き、食事、明日の準備、今日は始めてワンカップを購入。熱燗や…
足、目がボンボンに腫れている。腎臓でもやられたのか?少し不安。
6時20分 出発 とりあえず北岳から両俣へ向かう。両俣で判断することとする。頂上付近より晴れ間あり。頂上で綺麗なブロッケンを見る。
やっとたどり着いた。やっとだ。正直長かったなぁ…そんな感想だ。
雨に打たれていない日は前日の木や草の露で濡れ、晴れた日も前日のドボドボの服を着て出発、乾き始めると夕方に土砂降りとなる。8日もこんな状態が続くと疲れも溜まる一方だ。
これから先、中央アルプス、御岳、乗鞍、北アルプスと続くのだが、体調維持、天候を考え休養日を踏まえ進んでいくことが必要だ。これまでの富士山と併せて今回の南アルプスの3千メ−トル峰9座も逃げずに登り尽くせた。体調が悪いなりにもがんばれたかな? 喜び勇んで北沢峠を後にして気づいたのだか、今度の出発点は必然ながらこの北沢峠であり、登山客と一緒にバスでここへたどり着くわけである。たとえば、「兄ちゃん今日はどこの山登るの」と、こんな質問にどう答えるべきか…ワシは北沢峠へバスで到着するやいなや(as soon as)下山を始めることになる。返答に困るやんかいさ…ワシは決めた。日本てぬぐいでねじりはちまき、ごっつい怖い顔をして「わしゃ山なんぞ登りゃせん」と職人風に答えるだろう。
次回の旅が楽しいものになりますように…