京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | CL角谷・SL秦谷・河原・山形・竹村(光) |
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期日 | 2003年8月12日夜〜8月17日 |
山域 | 北アルプス 赤牛岳・雲の平・赤木沢周辺 |
ルート | 黒部ダム〜読売新道〜赤牛岳〜水晶岳〜雲の平〜薬師沢〜赤木沢〜北ノ俣岳〜飛越トンネル |
山行形態 | 沢登り |
文責 | 秦谷 |
2003/8/12(火) 京都=(車中泊)
2003/8/13(水) 信濃大町=黒四ダム〜奥黒部ヒュッテ
2003/8/14(木) 奥黒部ヒュッテ〜(読売新道)〜赤牛岳〜水晶岳との間の稜線を1時間程度歩いた場所(標高2705)でビバーク
2003/8/15(金) 稜線上〜水晶岳〜岩苔乗越〜祖父岳〜雲の平
2003/8/16(土) 雲の平〜薬師沢小屋〜(黒部川入渓)〜赤木沢出合〜(赤木沢)〜赤木平付近(標高2320)
2003/8/17(日) 赤木平付近〜赤木岳〜太郎平〜折立=京都
22:11の「ちくま」で京都を出発。指定券は角谷氏に確保していただいた。
途中駅からの乗車は指定席に限る。
黒四ダムから登山道へ。荷物を振り分けロッジくろよんで河原氏と合流する。
奥黒部ヒュッテよりさらに先に目指して、3時間のコースタイムを実質2時間半程度で詰め、平ノ渡渡船場を10:00に出る便に乗ろうと歩みを早める。夜行明けの足取りは重いが、平ノ渡には滑り込みで10:03に到着、何とか紛れ込む。
縦走路の途中で入渓したが、水量が多く引き返しを余儀なくされ、奥黒部ヒュッテで幕営することにする。
ヒュッテに登山計画書を提出したところ、角谷氏は小屋の主人から忠告を受けた模様である。「今年の水量は7月並み(に多い)。10パーティ入山して1パーティが完走できるかどうかだ」 ここまで言われては、上ノ廊下はあきらめろと言うことか。それでも決断を下すのはまだ早い。明日朝から雨なら読売新道へ転進、晴れならだめもとでも上ノ廊下をうかがうこととする。明日の天気が気になる。
雨の音で目を覚ました。どうやら夜通し降り続いていたようだ。この状況で沢へは入れない。鬱陶しいが読売新道を登るほかない。行けるかどうかはわからないが、赤牛岳〜水晶岳経由で雲の平に目標を据える。沢の音が次第に遠ざかる。この高巻きからはいつ戻れるのか。
降り続く雨で縦走路沿いに水が流れ込んでくる。もはや沢の源頭を詰めているのと同じ感覚だ。読売新道は昨年あたりにコースが整備されたようで、赤牛岳までの行程を8等分した道標によって、現在位置がわかりやすくなっている。(ただし、半分を過ぎてから道標の現れる間隔が短くなったように感じた)
7時間のコースタイムだったが5時間42分で山頂に到着。森林限界を越えて雨風をまともに受けねばならなくなってきた。仕切り直しとばかりに雨の中紅茶を沸かす。全身を濡らしたままで雨交じりの風をまともに受ける。本当に寒い。風雨が止む見通しも立たないため、風の緩い場所を見つけ、稜線上でのビバークを決断する。ツエルトを張る時間を惜しんで、タープのみをザックの収容エリアとしてテントのそばに張り、4人用テントに5人が寝ることになった。荷物を外に出せば何とかなるものである。多少息苦しかったが、寒さを感じることもなく快適に眠れた。
さて明日以降をどうするかを決めておかねばならない。上ノ廊下の上流の奥ノ廊下に入るなら、明日の行動が鍵となる。高天原に下りて立石へ下降するルートだ。しかしこの天候では増水は必至、おそらく下降した道を登り返すのが関の山か。しかも、天気図によると、天気の回復を見込むのは難しそうだ。
メンバーそれぞれに思いがあり、なかなか結論がまとまらない。最後はリーダーの判断で、メンバーの力量や体力を考慮して、水晶岳〜雲の平方面へ縦走することとなった。
団体装備の大きなコッヘルに雨水が満たされている。昨夜もかなり降った。7:00起床、8:50出発。昨日遅かったこともありゆとりを持っての出発となる。
40分後、温泉沢の頭で急にガスが晴れる。眼下に高天原山荘と温泉が望める。ちょうど高天原から登ってきたという単独の登山者とすれ違う。聞けば温泉沢は意外と明瞭らしい。角谷氏も判断を迷っているようだが、昨日決めた方針に従い稜線上を歩いていく。
水晶岳からは一般の縦走路の色が濃くなり、登山者とすれ違う機会が増える。岩苔小谷を眼下に昼食をとる。
祖父岳を越え、14時過ぎに雲の平にテントを張る。水が豊富なため、靴下や顔を洗い流せる余裕もある。
この日は、14日につらい目をしたあとの休養日だった。
今日一日晴れたため気分も心なしか陽気だ。明日の行程は、天気がよければ赤木沢、天気あるいはメンバーの体調が優れない場合は、折立に薬師沢経由で直接下山することとなった。
5:00起床、6:45出発。雲の平から薬師沢まではアルプスの山々に囲まれながらの庭園歩き。
薬師沢までは岩がちの道を一気に下る。滑りやすいスニーカーだけに気を遣う。4日目ともなれば足の踏ん張りが1日目ほど利かなくなっている。やはり疲労が蓄積しているのだろうか。
薬師沢小屋に程なく到着。天候も快晴、メンバーの調子も戻ってきたこともあり赤木沢に入ることにする。出合までは黒部川の本流を遡行するが、奥ノ廊下のさらに上流でのここでさえ水勢が強い。1カ所徒渉かへつりか判断が微妙な箇所があったが、左岸沿いに巻き道があることがわかった。アプローチで消耗しても仕方ないのでありがたく利用させていただく。
赤木沢出合で1時間の大休止。角谷・河原の両氏はイワナ釣りに出かける。残りメンバーは、その間に昼食のうどんを作る。ゆで終わった後黒部川の冷水で引き締めおいしくいただく。
角谷氏が1匹イワナを釣りあげてきた。イワナは普段水辺の虫やガの幼虫などを食べていることを、はらわたを開けて見せていただき初めて知った。このイワナは夕食でマリネとして食すことになる。
記念撮影の後、赤木沢にいよいよ入る。はじめはやや深い瀞で、腰まで沈んで岸をへつる。
赤木沢は、日の沈む西に向かって進む明るく開けた沢だ。アルプスの稜線を仰ぎながら水量豊かなナメ滝を水線通しに直登。これが沢登りだ。
後半のクライマックスは30mの大滝。さすがに直登は無理、木をわしづかみにしてほぼ垂直に近い巻き道を登る。
黒部の沢となると、日が陰ってくれば8月でも寒い。16:00を過ぎ、テントサイトを探さねばならなくなった。赤木平の近く(標高2320)の草原に幕営適地を発見。フラットでしかも草の上でテントを張れる、思わぬ特典がついてきた。明日の天気は下り坂なので、自然保護の巡視員に見つかることはないだろうが、遠慮気味に木の陰にテントのみを張った。
明日は最終日だ。晴れた日に赤木沢を遡行できてよかった。
出発から雨で気が滅入るが、今日が最後である。紅茶を飲んで気持ちを切り替える。
稜線までは1時間の草原歩き。一部ハイマツの藪こぎがあったが、たいしたことはない。稜線に出れば赤木岳の山頂だった。一般コースに戻って、生きて帰れるようで安心する。
風は2日目にも増して強い。風雨の吹きすさぶ稜線を忍の一文字でひたすら歩く。歩かずに休んでいれば凍傷にでもかかりそうな勢いだ。太郎平までが意外と長い。休むと体が冷えるのでだましだまし歩く。
小屋では、黒部の生き字引ともいえる志水哲也をナマで目撃する。高天原から立石に下り奥ノ廊下を泳ぎの連続で突破してきたそうである。NHKの記者を連れていた。(遡行の様子が8月20日のNHKの「ニュース10」で放映された)
折立からはデポしていた河原氏の車に乗せていただく。
京都に着き、メンバーと別れる直前に、同時に黒部に入山していた中川ゆ氏から連絡が入った。一行は無事に下山、縦走班と合流して帰路にあるという。安心した。長岡京の自宅には22:45到着。自宅に帰るなり、ネオプレーンの靴下を真っ先に洗っておいた。