京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | OGK、イトコン、僕 (敬称略) |
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期日 | 2004年2月11日〜12日 |
山域 | 山梨県 荒川出合 |
山行形態 | アイスクライミング |
文責 | 僕 |
1月30日、おおいにヘコむ。
2月1日、金比羅山とルイ・ラシュナルのおかげで立ち直る。
2月4日、CRUXでOZKに遇う。水曜の夜はいつもの面子ばかりだ。イトコンとのアイスクライミングツアーの話を聞く。11?12日は荒川出合、13?14日は八ヶ岳に行くらしい。しかもOGKはその翌週はプラナーンに行く。さすが公務員。
とかなんとか聞きながら、僕も荒川出合だけアイスに便乗することにした。立ち直って以来、ヘコむ以前よりもモティベーションが急上昇。何事も犠牲が重要だ。
2月11日深夜1時、OGKの車に自転車2台を積み、京都を出発。小さいマーチの上に自転車が2台も乗っていると、車ごと横に倒れたり、自転車がひとりでに発射されたりしそうだが、何の問題もなく4時頃清水駅に到着。静岡は暖かい。横浜より電車で来たイトコンを拾い、一路奈良田へ。
奈良田のゲートに車を置き、OGKと僕は自転車に乗り、イトコンは歩いて出合まで。天気も良く、クライミングというよりはサイクリング日和。このまま北沢峠まで走って行きそうだった。路面に雪は無いが、日陰の所が所々氷結していてひやひやした。OGKは細いツルツルタイヤだったので終いには押して歩いていた。出合につき次第、一台を片手に折り返し、イトコンを迎えに行った。なにやかにやで、2時間ほどで出合に集合した。
去年にまして雪が少ないと思っていたら、ネルトンフォールに至ってはほとんど氷結しておらず、氷がつながっていなかった。こんな状況で3ルンゼや1ルンゼに行ったらどうなることとやら。
結局初日は、出合から氷結が目視できた2ルンゼ正面大滝へ。40分ほどデブリ上をアプローチし、ザックをデポして、大滝の取り付きまでさらにアプローチ。登るのに不安はないが、下るのは気持ち悪い傾斜。
1ピッチ目、イトコンリード。大滝の正面から着実に登る。きっちりスクリューを決めながら、よどみなくフリーで抜けて行った。4級程度? 僕はお気楽にフォロー。右岸側の岩にリングボルトの支点が2カ所あったが、スクリュー2本で支点を取っていた。可動分散スリングもきっちり8の字で結んであった。さすがイトコン。
あと、2ピッチ目と3ピッチ目もイトコンがリードしたはずだが、僕の記憶から抜け落ちている。氷結はよかったような、傾斜は少し落ちていたような。今回の僕の仕事はカメラマン。写真に残した所以外はあまり覚えていない。
時間も押し迫ってきたので、灌木のとれる所まで抜けるべく、ピッチを進めることに。4ピッチ目の緩い傾斜のナメを僕がリード。ほぼ初めてのリード。3級程度とはいえ慎重に。50メートル延ばしても、両岸が切り立っていて尾根に抜けられず終了。5ピッチ目、右岸尾根にトラバースできると思った所に向かって、ロープが木に引っかかるようなルートで登ってしまい、案の定フォローのロープが引っかかってしまった。まっすぐ登っていれば問題なく尾根に出られたらしく、ミスを後悔。下降路の見極めの難しさを身に滲みた。
フォローの2人に散々迷惑をかけて、集合後、僕が曲げたルートから、下降路を切り開くべくOGKがトラバースしながら懸垂。何とかいい所に出られた。回収時に木に引っかからないよう、シングル25メートル刻みで懸垂。非常にうるさい灌木のせいで、今回の荒川出合での懸垂下降はロープ1本での懸垂を多用することとなった。その分距離が稼げず下降に時間がかかったが、ほぼ初めての下降路の上、寡雪の条件ゆえ仕方のない事だった。
何度か懸垂するうちに、お約束のヘッドランプ登場。最近ではこれが手放せません。
あと50メートルで、ボルトの打ってあった1ピッチ目の終了点出られる所で、ロープを繋いで暗闇に向かってイトコンが懸垂。折から降る雪のせいで、星明かりもなく、闇に向かって落ちて行くヘッドランプの明かりもすぐに見えなくなった。
かなり時間がたってからOKのコール。降りて行くとそこはばっちり支点のところだった。この真っ暗の中見つけるとは素晴らしい記憶力。
氷柱でバックアップをとって、次の懸垂でやっと取り付きへ。取り付きからは、左岸下方に1本だけ打ってあったリングボルトを支点に、さらにもう一回の緩い懸垂下降で安心して立っていられる所に着いた。既に7時過ぎ。あとは、ヘッドランプの明かりのみを頼りに、ザックデポ地、デブリ上の消えかけたトレースを通り、無心かつ慎重に林道まで降りて行き、寝不足でへろへろになりながら林道に着いたのが8時過ぎだった。
テントに戻り、イトコン披露のつまみを片手にほっこり。イカ揚げ。イワシみりん干し。チーズスティック。焼豚。・・・・。気づけばもう10時。晩ご飯のパスタを食べ、明日5時起床に備えて眠りについたのが11時。明日も寝不足だ。
2月12日。平日。当然のごとく他に人の気配は無い。
6時半にはもう明るくなっていた。これからどんどん日が長くなって、一日フルに遊べる日も近い事だろう。
荒川本流出合からトンネルを一つ抜け、少しいった所に、右から落ちる大きなルンゼが1ルンゼ。遠目には何とか氷が繋がってそうだった。アプローチは、岩と少ない雪の上が半分、残りが一面の氷。2?3級程度だが、ふくらはぎがうんざりするほど長い。途中一度、アイゼンを蹴り込んだ瞬間、ばこーん、と大きな音がして氷が陥没し、僕の足元すこし下から、水が滔々と氷の表面を流れ始めた。慌ててさらに登る僕。その後ろを登っていて、流水のせいで登路を変えるハメになったOGK。開いた口が塞がらないイトコン。今日も快晴だ。
取り付き付近で一休み。今日は一応僕だけザックを持参。水食料の運搬だけでなく、下降時に登攀具をしまうのに役に立ったと思う。
取り付きからもう少しだけ進み、ルンゼ状のところからやや右に外れ、遠目に確認していた垂直ぎみのベルグラの前でロープを結ぶ。
1ピッチ目、イトコンリード。4+? 4メートルほどの垂直な出だしだが、氷が薄く、半分ほどしか入らないスクリューを連打して突破。乗越してからはスクリューが決まるようになり、嬉しそうな声が聞こえてきた。ビレイ点の都合上、頭上からは氷が雨のように降ってくる。次第に、接近する音で氷の大きさの見当がついてきた。
フォローしてみると、ぺらぺらの氷に、マンガに出てくるチーズみたいにぼこぼこ穴が開いた状態。穴にピックを引っ掛けつつ、崩れないよう祈りながら穴に足を乗せて登る。こんなのとてもじゃないがリードする度胸はない。
2ピッチ目、イトコンリード。2?4?? 記憶が薄い。ちょっとした傾斜のある滝を越え、50メートル一杯のアイスハイクで核心の大滝取り付きへ。ビレイもしやすい所だった。
ここですでに12時ごろ。今日は明るいうちに自転車に乗って車まで戻るため、2時になったら下降を開始しようと決めていたので、もう時間がない。
3ピッチ目、リード交代、OGK。核心の5級。 トポの写真よりも氷が多く、でかい。2段に分かれていて、どちらもきっちり垂直。何度かA0使いながら、OGK はきっちり登って行った。
先にイトコンがフォロー。
イトコン「途中でフィギュア4やるから、写真に撮って」
僕「まかせて」
10分後、腕パンパンで冗談かます余裕の無いイトコンと、間抜けにも特大落氷を食らって身悶えする僕。
途中、今度は特大落石か!と思ったら、ムササビが僕の頭上をかすめて飛んで行った。あんな体だったら下降が楽だろうなあ、と羨望。この後、この思いを何度も反芻する事に。
フォローするも、即座に自信過剰を思い知らされる。泣く泣くバイルにテンションかけてスクリュー回収。フリーでのリードまでは遠い。(解説:アイスクライミングの場合、氷にさしたバイルにスリング等で体を繋いで体重を預けると、フリーではなくA0になる。あくまでフリーにこだわるなら、バイルには腕の力でぶら下がり、スクリューを打つ/回収する間も、片手でぶら下がり続けなければいけない。←非常にしんどい。)
5ピッチ目。OGKリード。下降を開始すべく、滝の落ち口から左岸側上方の尾根に向かって草付をランナウトしながらトラバース。上の方にはまだまだ快適そうな氷のナメがずっと続いていたが、時間がないので登攀終了。
高嶋さんの去年の報告では、さらに2ピッチ登った所から下降に適した尾根に出られる、と書いてあったのを、僕が大滝を抜けてすぐその尾根に逃げられると記憶違いしていたのが、今回の僕の2回目のミスだった、と分かったのは京都に戻ってからで、それっぽい尾根から、灌木伝いに懸垂を開始した。これが、長い長い下降の始まり。このとききっちり2時だったから余裕だったはずなだが・・・。
前日同様、シングル25メートル区切りで懸垂下降。3、4ピッチ、薮のうるさい懸垂をしても、相変わらず尾根は切り立ったまま。もうひとつ向こうの尾根に移らないとといけないと分かったが、困難。さらに1ピッチ降りた所から、イトコンが苦労しながら懸垂トラバース。やっとロープを仕舞えた。すでに5時前。
そこからさらに気持ちの悪い尾根を勘を頼りに2本足で降りて行く。途中、懸垂が入った所で、ぱぱぱぱーん、ヘッドランプ登場。今日は星がきれいだ。暗闇の中、さらに磨かれてゆくOGKとイトコンの勘で尾根を落ちて行くと(以下略)1ルンゼの出合直前にばっちり出た。そこからはほんの数分で、林道に到着。時既に6時過ぎ。
アイゼンを外して腰を降ろすと、3人ともぐったりで口数も少ない。僕は眠たいのと腹減ったのとでふらふら。懸垂待ちのあいだ何度眠りかけたことか。
何とか腰を上げ、テント前に戻り、お茶を沸かし、行動食を出してしばしまったりする。既に7時を過ぎ、気温は高く、空には隙間が無いほどに星で埋め尽くされていたが、僕らはこれから10キロ離れた車まで戻り、風呂に入り(まだ開いていたら)、晩飯を食わねば(店が開いていたら)ならないのだった。そんな事は意識の片隅に追いやり、僕らは、お茶を飲み、菓子を食い、話をし続けた。
結局、車に戻ったのは10時前。国道沿いのガストで高い晩飯にありつけた頃には日付が変わっていた。
当然、そんな時間まであいている風呂は、なかった。(了)