京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | 高嶋、大坂 |
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期日 | 2004年3月13日夜〜3月14日 |
山域 | 岐阜県 錫杖岳 |
山行形態 | 積雪期アルパインクライミング |
文責 | 高嶋 |
1度目の錫杖岳1ルンゼは、様々な要因がもとで敗退という結果に終わってしまった。しかしそれは、絶望的な敗退ではなく、登れるという確信のもとでの敗退だったので、すぐさまリベンジの計画が立てられることとなった。最初は、帰りの車内で玉田くんや林くんと行く約束をしていたのだが、あとで岡田くんもリベンジを考えていることを知った。1ルンゼを登ることになった経緯上、彼と登ることを優先させねばならない。ところが、様々な事情により、彼はバイト先の富士山から下山できなくなり、計画が流れてしまった。玉田くんは外国に行ってしまったし、はて誰と登ろうかと考えている時に思いついたのが大坂くんだった。金がない、リードはできない、など多くの条件つきながらも同行を承諾してくれ、これでいよいよ1ルンゼのリベンジの条件が整った。
土曜日の昼前、我が家で大坂くんと昼ごはんを食べてから出発した。この2人は何年か前の3月にも同じように昼前に出発して新穂高に行ったことがある。そのときは、滝谷四尾根を登るつもりが、僕がアプローチの途中でアイゼンを落としてしまい、あえなく敗退してしまった。そんな因縁があるので、また何事かありそうな気がしたが、とにかく氷に触れたらそれでいい、と気楽な気持ちでいた。
午後5時頃だったろうか、槍見温泉に到着し、十日前に通ったあの道をまた歩いた。前に比べると雪が格段に減っており、地面が露出しているところさえあった。氷は大丈夫だろうか。トレースは前とは若干違うコースについていた。暗くなる寸前に、渡渉点につき、テントを張った。目前には錫杖のどっしりとした黒い塊がそびえたち、1ルンゼが一条の白い光の筋となって輝いている。こんな魅力的なルートがあるだろうか。食事は簡素なものであったが、大坂くんは何を期待したのか、珍しくコッフェルを2つも持ってきていた。星は煌煌と雪景色を浮かび上がらせている。外でビールでも飲みたい気分だったが、あいにくそんな贅沢品はない。翌日の登攀にそなえて、早々に寝た。
4時起床。お茶漬けをかきこんで、4時50分に出発。とりつきまでの間にテントが1張りあって、僕らが通過したあと灯りがともった。(後で聞いたところ、彼らは前日に3ルンゼを登ったらしい。ほとんど雪壁に終始したとのこと。)50分ほどでとりつきに到着。準備をしているうちに、空が白んできた。さっさと準備をすませ、急いで登り始める。
1ピッチ目。先週と同じところから登る。岩の部分はドライツーリングだが、バイルの置き場所は鮮明に記憶に残っており、苦もなくクリア。2ピッチ目。リッジに出て、その上のクラックを登り、右手の氷雪面に出る。先週クラックに着いていた雪は見事にとけ切っており、支点のハーケンが露出していて、キャメロットを使うまでもなかった。最後の氷雪面を快調にぬけてビレイ点に到達。3ピッチ目も先週とは様子を異にしていた。シンアイスだった部分は岩が露出し、ミックスっぽい登りとなる。ここも支点が多く出ていて、キャメロットやスクリューは要らず、ずいぶん時間と労力を節約できた。ここまで1時間20分(前回は2時間かかった)。
4ピッチ目から実質的に氷のルートとなる。目の前の氷は薄そうではあったが、傾斜がなく、さほど難しくないように思えたが、いざとりついてみると、結構傾斜があり、難しかった。極短のスクリューを使い、上部はややかぶり気味になった氷を慎重に抜ける。氷が薄くて緊張した。そこを抜けるとあとは傾斜が落ち、スクリューでビレイ点をつくる。トイレ休憩の後、5ピッチ目に突入。ここも下から見ると楽勝っぽかったが、傾斜は見た目以上にあり、何よりも長かった。幸いだったのは、ハーケンがすべて露出していたことで、スクリューを打つ手間がはぶけた。途中に終了点らしきところがあったが、ともかく傾斜の強い部分を抜けるまで行こうと素通りした。最後はいい加減に疲れてきたが、ちょうどよい岩角があったので、そこにスリングをかけてビレイ点とした。6ピッチ目。おそらく最後であろう。階段状で易しく見えるが、これまた疲れた身体にはこたえる。氷を登り切ると、上部雪田の不思議な世界が広がっていた。10時。登攀時間は4時間20分だった。あっけない幕切れといえばそれまでだが、充実した面白いルートだった。こんな近くにこれほどのルートがあるのは驚きである。ロケーションもよく、また来たいルートである。下りはほとんど登りと同じ支点をつかって懸垂下降だが、4ピッチ目終了点は左手のテラスにある支点を使った。2ピッチ目終了点から一気に下まで降りられるかと思ったが、わずかにロープが足りなかった。ここは2ピッチ目終了点より10メートルほど下にあるビレイ点を使うとよい。
尻セードで快適に下り、心地よい疲れと充足感に満たされながら京都へ帰った。もちろん、岡田くんへの連絡は怠らなかった。来年度は2ルンゼに挑戦しようと思う。