京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
期日 | 2004年4月10日夜〜4月13日 |
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山域 | 北アルプス 鹿島槍ヶ岳 |
山行形態 | アルパインクライミング |
メンバー | CL高嶋、Cock玉田 |
文責 | 玉田 |
大谷原に着いてみると、すでに10台ほどの車が停まっている。渡渉用にサンダルも持って出発するが、2泊3日にしては意外に荷物が重い。大川沢は結局三回、それぞれ飛び石、スノーブリッジ、サンダルで渡渉するが、水量は多くなく、膝下まで水に浸かれば十分であった。荒沢に入って200m程登ったところから尾根に取り付く。高度が上がると積雪も増え、ところどころ雪庇が張り出したりシュルンドが開いたりしている。第一クーロワールは雪の急斜面で、そのまま歩いたが、ロープがあった方が安心ではあった。第二クーロワールは第一に比べれば少し傾斜が緩い。第二クーロワールを過ぎて、ちょっと歩けば天狗の鼻であるが、もはやバテバテで着いたら何をする元気も残っていなかった。しかし天狗の鼻にはブロックを積んだテントサイトが我々のために用意されており、おおいに気を良くする。荷物を置いた後北壁に近づいて壁を偵察するが、どこが主稜だかいまいちよく分からない。しかしトラバースルートにトレースがあることを発見し、これをたどれば何とかなりそうな気もする。テントを張ってお茶と夕食を取り、早々に寝る。
予定通りに起きて準備し、出発。5時前だというのに結構明るい。最低鞍部から急な斜面をトラバースしながら、ここでアイゼンを引っ掛けたらえらいことになるんやろうな、と余計なことを考える。歩きながら取り付きを探すが、トポの絵と見比べてもいまいち分かりにくい。さらに晴天で気温も高く、7時にならないうちに早くも雪が腐ってくる。いまいち確信が持てないまま、Aリッジの下くらいから急斜面を登り始めると、なんとなくそれらしい岩稜にたどり着く。トポによるとルートは尾根上を登るのではなく、すぐ隣のルンゼを登っていくようである。ここまでロープなしで来たが、もうすぐ上が核心部であり、やっとロープを出して確保を始める。1P目は雪斜面の後に5mくらいの氷瀑。下部がぼろぼろに腐っているため、ハング状になっており、スクリューも効かない。高嶋さんが空身で越える。2P目は80度くらいの氷壁。スクリューとアイスフックを精神安定剤にして玉田が越える。3P目は高嶋さんリードで潅木の生えるリッジに沿って登り、4P目は玉田リードでリッジから雪斜面を登る。カクネ里の北側の斜面で雪崩が頻発しており、時々大きな音がこだまする。更に正面ルンゼからは、大音響と共に水洗トイレの水のごとく雪崩が滑り落ちる。もしあそこを登っていれば、カクネ里まできれいに排泄されてしまったことであろう。そしてとうとう、4P目をリードしている最中にほんの2mほどとなりの斜面を重たそうな雪が滑り落ちていった。中間支点を取っておらず、ロープを引きずられるかと身構えたが幸いにもそれたようで、何の衝撃も来なかった。何とか潅木のあるところにたどり着き、一度高嶋さんが登るのを待つ。この先も雪崩れそうな雪の急斜面が続くこと、核心部を越えたとはいえ、まだ山頂までかなりあることから撤退することにする。潅木や残置を使って4Pの懸垂下降をしている最中にも、すぐとなりを数発の雪崩が通り過ぎていくが、幸いにも我々は一発も喰らわずに済んだ。しかしあのまま登りつづけていれば、これらの内のどれか一発は喰らったのではないだろうか。斜面が急なおかげで雪崩れ落ちる雪の量はそれ程多くなく、喰らえば埋められるというよりは引きずり落とされる感じである。ロープのいらないところまで降りたときはややほっとし、安全圏まで降りてやっと休憩をとる。ここから安全確実にカクネ里を降りて、天狗の鼻に通じる尾根を詰めるか、来たときと同じトラバース道を引き返すかで迷うが、結局帰りも来たときと同じ道で帰る。急なトラバースでは上からの雪崩に気をつけると同時に、足元の斜面が崩れ出したらえらいことになるんやろうな、とまたしても余計なことを考えながら歩く。しかしやはりトラバース道はカクネ里から帰るのに比べて近く、わりと早くテントに帰り着くことができた。天場に着いた時にちょうど、同志社大学山岳部OBの二人が登ってくる。聞けば明日主稜を登るとのことであった。とりあえず雪崩の話をして彼らの楽しみを削いでおく一方、緊張の糸が切れた我々はのんびりテント生活をエンジョイすることにする。夕食はタイ風グリーンカレー。風邪気味で咽喉の調子が悪い高嶋さんはその辛さゆえにあまり食べられず、気の毒なことをしたと思う反面、私の心のどこかがほくそえんでいた。
結局5時まで寝てしまった。私は昨日の残りのカレーを食べ、高嶋さんは茶漬けを食べて撤収する。第一、第二クーロワールは懸垂で降り、そのあとはひたすら歩くのみ。もはやぐちょぐちょに濡れた登山靴のまま渡渉し、駐車場に帰ってみると積雪がかなり減っているようであった。この暖かさで昨日の二人も難儀していることを願わずにはいられないのであった。