比良縦走2(権現山〜蛇谷ヶ峰・無雪期縦走)

期日 2004年5月23日
山域 比良山系
山行形態 ハイキング
メンバー CL山形、中川(ゆ)、湯浅
ルート 権現山〜蛇谷ヶ峰
文責 湯浅

行程

 5:10  山形さん宅
 6:20  桑野橋(車を置く)
 6:40  桑野橋バス停より江若バス
 7:20  平バス停(権現山登山口)
 7:45  アラキ峠
 8:10  権現山(10分休憩)
 8:40  ホッケ山
 9:00  小女郎峠
 9:20  蓬莱山(25分休憩と昔遊び)
10:00  木戸峠
10:25  比良岳
10:50  烏谷山(15分休憩)
11:20  荒川峠
11:30  南比良峠
12:00  金糞峠(20分休憩)
13:00  中峠
13:30  コヤマノ岳
13:50  武奈ヶ岳(20分休憩)
14:45  ツルベ岳(10分休憩)
15:45  地蔵山(10分休憩)
16:35  荒谷峠
16:50  滝谷の頭(10分休憩)
17:35  蛇谷ヶ峰(10分休憩)
18:30  林道出合
19:00  桑野橋
19:30  てんくう温泉
20:40  京都へ向け出発
21:40  北山通りに近いラーメン店
22:40  山形さん宅

湯浅の所感

 比良連峰縦走。
 それは、ガイドブックでも熟練者向きと明記され、体力はもちろんのこと精神力も要求されると注意書きがなされている行程。そのハードなコースを、山登りをはじめて半年しか経たない私が挑戦してしまったことは、今考えても、実に無謀であったと思う。しかし、中ゆみさんの秘薬(ポカリの粉)と山形さんのストックの力をお借りしながらも、なんとか自分の足で歩きとおすことができたときの喜びは筆舌に尽くしがたいものがあった。蛇谷ヶ峰の頂上に辿り着いた時の達成感は今でも忘れることができない。そして、何よりも、途中で挫折しかけていた私を支えてくださったお二人には、とても感謝している。

 さて、当日、目を覚ましたのは、まだ日も昇っていない午前4時であった。山に行くのならば、どれほど早い時間であっても苦にならないのが不思議である。まだ辺りは薄暗く、晴れているのか曇っているのかわからなかったが、少なくとも雨は降っていなかったので安心した。というのも、一緒に行く中ゆみさんは、春以降、雨のために2回も山行計画を中止せざるをえなかった気の毒な経歴(?)の持ち主なので、三度目の正直を願わずにはいられなかったのである。今日こそは、「中ゆみさん雨女説」を覆す日になりそうだと期待していた。 5時に、家の前で、中ゆみさんの車に乗せてもらい、堀川通りを高速道路並みに飛ばして、無事、5時10分に山形さんの家に着く。バスの時間もあるので、山形さんの車にすばやく荷物を移して出発する。少し雲のかかった、昇ったばかりの赤くて大きな太陽を眺めながら、静かな街を通り過ぎていく。山形さんと中ゆみさんのお天気についての会話を聞きながら、私は、今日がどんな一日になるのか思いをめぐらせていた。

 6時15分に、本日の下山予定地である桑野橋に到着。林道を入ってすぐのスペースに車を置いて、せかせかとバス停に向かう。道の脇にはウツギの花がきれいに咲いていた。また、バス停の近くでは、黄色い花びらの菖蒲も気高く咲いていた。私は、菖蒲といえば青紫色だと思っていたので、少し驚いた。6時40分に平へ向かうバスが来たので乗り込む。乗って20分程は貸切り状態で、快適だなあと思いつつも、なんだか申し訳ないような気がした。右手に見える安曇川の水は清らかで、釣りをしている人も何人か見かけた。バスに揺られていると、心地よい眠りが訪れそうであったが、はたと、この距離を山の上で歩くのだと気が付くと、今更ながら「えらいことやなあ」と実感し、目も覚めてしまった。7時15分に平のバス停に到着する。ザックを背負って下りようとすると、驚いたことに、運転手さんが、山に登るのなら登山口まで乗せていこうと声をかけてくださった。同じ料金で、300メートル先まで乗せていただけたのは、とてもラッキーで嬉しかった。

 7時20分に平の登山口を出る。始めは快適な林道で、道の脇に生えている小さな花々を眺めながらのんびり歩いていた。5分程で、ドン谷に到着。目印に「これでもか」というほどの青いテープが巻かれた木々に沿って、急な斜面をジグザグに登っていく。辺りは少し薄暗く、湿ったような空気が流れていた。30分程たった頃、目の前に、鮮やかなピンク色をした花々が咲き誇っているウツギの木が現れる。三人、しばし立ち止まって、その美しさに見とれていた。ちなみに、始めは気付かなかったのだが、そこは、アラキ峠であった。ガイドブックのコースタイムでは、登山口から1時間と書かれていたので、あまりにも早く着いたことに驚いてしまった。しかし、そうそうゆっくりもしていられないので、衣類の調節をして、すぐに権現山に向かう。相変わらずの急登で息があがりそうであったが、「権現山からは稜線歩きやし、稜線に上がるまでの今が一番しんどい時やろう。」との(今思えば)根拠のない楽観的思考を心の支えにして、一歩ずつ足を運んでいった。権現山に到着したのは、8時10分であった。少し靄がかかっていたが、琵琶湖を眼下に見下ろすことができた。和迩から登って来られた方に記念写真を撮ってもらい、20分に頂上を後にする。その後は、上り下りはあるものの、なだらかで快適な道だったので、右手の琵琶湖を眺めながら歩いていく。40分にはホッケ山を過ぎ、ササの茂る細い道を足早に進んで、9時には小女郎峠に着いた。峠には、青いスミレがたくさん咲いていた。峠を過ぎると、ササに覆われた美しい蓬莱山が目の前に座っていた。最後の登りがきつそうであったが、道の脇には、チゴユリやドウダンツツジが咲いていて、目を楽しませてくれた。9時20分に頂上に到着。そこからは、歩いてきた道のりを見渡すことができた。美しい緑の絨毯のような斜面を眺めながら、早くも10時のおやつにとりかかる。山形さんが、「縦走なのにこんなにのんびりしていていいのかなあ」と一抹の不安を吐露していらっしゃったが、結局、3人とも、B型の本領を発揮して、マイペースでくつろいでいた。その後、打見山近くの広場で、ひとしきり、昔遊び(竹馬・コマ回し・フラフープ)を楽しんだ後、木戸峠に向けて出発する。明るい樹林帯の中を快適に歩いていった。しかし、比良岳に向かうまでのルート上にあったぬかるみに、バランスを崩してはまるというハプニングもあった。(そう言えば、中ゆみさんも勢いよくはまってらっしゃったが・・・。)私は、昔から、平衡感覚のなさを自覚しつつ生きてきたが、山でフラフラしていたのでは生死にかかわるので何とかしなければなあと痛感した。10時25分には比良岳を通過し、烏谷山に向かう。この辺りで、大きなザックを背負った何組かの学生パーティーや研修中らしき滋賀県の消防隊員の方々に出会った。しかし、実のところ、烏谷山に向かって歩いていたこの時が、私にとって、第一の関門とも言うべき時で、あまりにもしんどくて、周りの景色や状況はあまり詳しくは覚えていない。縦走コースから少しずれて、烏谷山のピークへ向かう急斜面を這い上がっている時に、ふくらはぎが痙攣を起こすような兆候を感じたので、「これはよろしくないなあ。」と思い、お二人に報告した。とにかく、水分補給と栄養補給に努めるべしとのことで、中ゆみさんから頂いたポカリの粉を摂取し、チョコレートや羊羹をひたすら食べて休憩していた。烏谷山の頂上は、木に遮られて展望がよくなかったが、太陽が照りつけてとても暑かった。15分程休憩すると、元気が出てきたので、ゆっくりと歩き出す。荒川峠から南比良峠を通って金糞峠へ向かう道は、それほど、高低差もなかったので、なんとか順調に歩くことができた。12時ぴったりに金糞峠に到着したので、昼食をとる。そこは、様々なルートの合流点だからか、多くの登山者が休憩していた。今回は、私の大好きなのんびりハイキングではないので、急いで、おにぎりを詰め込み、20分には中峠に向けて出発した。この間の道は、それまでのルートとは雰囲気がガラッと変わって、ヨキトウゲ谷の沢沿いを何度も渡渉しながら登っていく気持ちのよい道であった。夏に登ったら、もっと涼しげで、有り難く感じるのだろうなあと思った。中峠には13時に到着する。さて、ここから、コヤマノ岳を経て武奈ヶ岳に登る段階が、私にとっての第二関門であった。コヤマノ岳のピークに向けてひたすら登りつめている時に、とうとう、ふくらはぎがつってしまったのである。まだまだ急な登りは続いているのに、事ここに至っては、もうこれ以上歩けないのではないかと弱気になってしまった。しかし、中ゆみさんのポカリの粉に加えて、山形さんのマッサージとアミノ酸の粉末が効いたのか、騙し騙しながらも、なんとか歩けるまでに回復したので前に進むことにする。ちなみに、この段階で、私の雨具や上着だけでなく、医療セットもお二人に持っていただくことになったので、情けないことではあるが、私の役目であった医療係は返上となった。その後は、山形さんのストックの力を借りながら、先頭を、ゆっくりゆっくり歩かせてもらった。ペースが落ちてしまい、申し訳なかったが、13時50分に、ようやく武奈ヶ岳に着いた時は、本当にホッとした。西には北山の峰々、南には柔らかい緑色のササに覆われた西南稜、東にはリトル比良の連なりが望まれ、北にはこれから向かう蛇谷ヶ峰が静かに横たわっていた。頂上で、中ゆみさんが振舞ってくださったグレープフルーツはとても美味しかった。山形さんの講義によると、グレープフルーツに含まれるクエン酸は疲労回復に役立つとのことなので、喜んで頂いていた。20分後にピークを後にする。ササに覆われた細いルートを下っていった。武奈ヶ岳以北では、ほとんど人に会うことはなく、静かな山歩きを楽しむことができた。14時45分には釣瓶岳を通過し、1時間後には地蔵山に到着する。ピークからは、ちょうど東に、日に照らされた岩肌も露わな岩阿沙利山が見られた。地蔵山からは、上ったり下りたりの繰り返しであったが、中盤のくたびれ具合が嘘のように、体の調子も良くなっており、快適に歩くことができた。この辺りでは、キツツキやキツネなど動物の気配を感じながら歩いていた。滝谷の頭には、16時50分に到着する。ここから蛇谷ヶ峰までが、最後の長い上りになるので、気合を入れて登っていく。決して楽ではなかったが、「あと一頑張り」と自分に言い聞かせながら、一歩一歩足を動かしていた。17時35分に、頂上に辿り着いた時は、本当に感動した。3人で大喜びして、琵琶湖を背景に、妙なポーズの写真も撮ってしまった。風が強くて肌寒い程だったが、西日がさしこんだ頂上の雰囲気は、偉業(?)を成し遂げた達成感に満たされている私の心と響き合うようだった。眼下には、田植えを終えたばかりの田んぼがくっきりと見えた。時間が時間なので、のんびりと、縦走達成の余韻に浸っているわけにもいかず、速やかに下り始める。とても急な斜面であったが、山形さんのストックのおかげで、楽に歩くことができた。沈みゆく太陽をひたすら目の前に見ながら、夜の帳が下りつつある薄暗い林の中を走るように下っていった。18時30分に林道終点に到着し、19時には車をデポした桑野橋に戻ることができた。朝日を見ながら出発し、夕日が山際に沈む頃に下山した内容の濃い山行であった。ちなみに、私は、ヘッドランプを使わずにすんだことに、一人ホッとしていた。その後、改装したばかりの朽木てんくう温泉に入って、ソフトクリームを食べ、京都に戻って、北山で量の多いラーメンを食べて解散した。

 今回の山行は、今までで、最もチャレンジングなもので、辛い場面もあった。しかし、緑の美しい比良の峰々を一日中歩くことができ、さらには、現時点での自分の体力やウィークポイントを知ることができ、とてもよかったと思っている。今度は、秋になった頃に、リトル比良を縦走できればなあと思う。

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