京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | CL梁瀬(関西岩峰会)、福澤 |
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期日 | 2004年7月16日夜〜7月18日 |
山域 | 台高山脈 櫛田川水系蓮川 |
山行形態 | 沢登り |
文責 | 福澤 |
前夜発で、蓮川千石谷沿いの林道を車止めまで入り、仮眠を取る。4時半、起床。車止めはちょうど奥ノ平谷と千石谷の出合付近にある。ゲートを越えて100mばかり進んだところから適当に下降し、千石谷の堰堤下から奥ノ平谷に入渓。
しばらくは何の変哲もないゴロ沢であるが、地形図の毛虫マークあたりから、悪相を呈してくる。大釜を持つ3mほどの滝は、釜の手前右岸に残置ピトンが3枚打たれていたが、上部が悪そうなので、梁瀬リードで左岸の岩溝に取り付いてみた。ところが上部で詰まり、立ち木に投げ縄しようと目論むもうまくかからず、梁瀬はハーケンを残置して下ってきた。下流側に回りこんで微妙なトラバースをして3m滝を越えるが、すぐ上の5m滝を越えられず、結局3m滝右岸をクライムダウンし、残置ピトンルートをとることにする。かぶり気味の岸壁を梁瀬が空身のショルダーでリード、6mばかり登ってピッチを切り荷上げ、福澤は残置を利用して登り、荷を担いだ後つるべで左に向かっていやらしいバンド状を斜上、右に折り返す地点でピッチを切った。梁瀬が3ピッチ目を登り、後は5m滝上まで歩いて巻いた。
少し上の美しい滝はフリクションのきく快適なシャワークライムで快適に抜けた。この沢で快適に登れたのはここだけだったような気がする。
いくつか難渋する滝を越えていくと、特徴的な螺旋形をした、その名もほら貝の滝に到着。下から見ると一見直登できそうに見えるが、螺旋に隠れた取り付きが悪い。少し戻って左岸の岩のトンネルを抜けきったところで出口右側の岩を登り回り込む。この上の岸壁が悪く、4mほど上の立ち木に投げ縄しようとするがうまくいかない。梁瀬が下方に姿を消し再び姿を現したと思ったら、3mくらいの木の枝を手にしている。こいつでお助けロープ先端のカラビナを持ち上げて立ち木にかけて引っ張り下ろすことに見事成功。成功したときの梁瀬の見たこともないような勝ち誇った笑顔が忘れられない。さすが前世紀まではちょんぼ棒を取らせれば天下無双と恐れられた男である。今は見る影もないが。
こうした反則技も沢登りの醍醐味の一つではある。ベースボールだって、反則技のスピットボールを芸術の域にまで高めたメジャーリーガーがいるんだし、ずるを研究し応用するのも実力のうちなのだ。
さてこのロープをごぼうで登ろうとしたが登れず、プルージックで登る。バンド状を左に取り、沢身には懸垂で戻った。この後、高巻き後は何度も懸垂下降させられることになる。
鎌滝を越えた上で梁瀬がルアーでアマゴを1尾ゲット、1尾は小さいのでリリースした。
巨岩帯に入ってから福澤も竿を出すがアマゴの魚影は見られず、妙に大きいアブラッパヤ(釣ったら恥)が一回かかったのみで釣果はゼロであった。
2つ目のゴルジュはサスケ滝をはじめ難所が続き、下のゴルジュより相当悪い。何回ロープを出したことか知れない。1箇所、超えられそうで超えられない滝は、梁瀬がピトン一発で抜けた。
黒滝谷出合はややこしくなっていて、左から黒滝谷、その10m奥の左から本谷がいずれも滝を成して合流してくる。正面は水流のないガレ沢である。正面のガレ沢に入り本谷に戻るが、上の滝が登れそうで登れずガレ沢の巻き道に戻りまとめて巻いてしまう。
やがて赤倉谷2股に出て、快適なテント場にツェルトを張った。この辺りは魚影がなく、釣りも出来ないようだ。焚き火を起こして干し物大会後、就寝。
4時半起床。さしたる困難もなく、最後の25m滝に到着したが、この滝の左岸高巻きが曲者。左梁瀬、右福澤と2手に分かれて岸壁の切れ目を探すが見つからず、左側の弱点をついて木の根を頼りに梁瀬が1ピッチ目をリード。立合川核心部の高巻きを彷彿とさせる高巻きである。この谷では、ほら貝の滝左岸壁とここが最も悪かった。福澤はその上をつるべで行くが、2ピッチ目は歩きであった。そこからしっかりしたバンドをトラバースして簡単に滝上に出た。
この上でも中規模の釜を持った滝があるが、問題なく通過。源流付近で伐採の入ったシダ畑の中の踏跡をたどり縦走路に合流。
ガスで何も見えない中、三角点1380.3手前のジャンクションピークより千石谷左股への下降尾根を下る。尾根は顕著で迷うところもなく、コンタの詰まってくる1100m付近で左側20m下の河原に降りた。地形図から予想されるとおり、その直下が大滝の落ち口となっていた。
この滝は手がつけられず、右岸の下降尾根に戻り懸垂。滝を見ると壮絶であった。上部の2段直瀑だけで30m、その下の多段の斜瀑も含めると70mにおよぶのではないか。その下も懸垂。2回目は回収時にいったんロープが詰まり真っ青になったが、何とか回収。まあ何となれば、左側のルンゼを登り返すこともできたのだが。3回目は右岸から合流してくる枝沢の底に向かって10mの空中懸垂となった。1回目と2回目の懸垂は,ロープの振れに伴う落石が激しく、要注意であった。空中の方がましというものだ。
枝沢の滑滝をごぼうで下り、本流右岸を巻き終わったら核心部は終わり。後は河原を歩いて5段の滝上の2股より、踏跡をたどり千石谷左岸林道に出た。1時間強歩いて車止めへ。
今回は、先週の明芽谷での転落を受け、予定していた白川又川奥剣又谷〜火吹谷継続は荷が重いと考えて奥ノ平単発に変更したのだが、かえって難しかったようである。悪場では、先週の転落の後遺症で怖気づいて積極的にリードできなかったので、自分の力で登った気がしない。
相棒の梁瀬には大きな負担を強いてしまい、申し訳なかった。彼としても相当の緊張を強いられた遡行だったようだ。
関西周辺の谷によると、奥ノ平谷は3級にグレーディングされているが、5級の立合川と巻きルートの傾向が似ており、登攀的難易度ではむしろ上であろう。グレーディングだけで判断すると失敗する。実際、地形図を見ると険悪そうな毛虫マークが連続しており、その険悪さは想像できるのである。一見簡単に登れそうに見える滝も、快適に登れるものはほとんどなかった。
この谷は渓相が陰険で今ひとつ美しさに欠けるのが難点で、私の好みではないが、情緒より困難を求める人にはお勧めの谷である。