京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
期日 | 2004年7月15日夜〜7月19日 |
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山域 | 南アルプス 聖岳・光岳 |
山行形態 | 縦走 |
ルート | 便が島〜聖平〜聖岳往復〜易老岳〜光岳往復〜易老渡 |
メンバー | CL 山形・SL 秦谷・里見・遊部・日笠
(名前をクリックすると各自の感想文に飛びます) |
ポイント | 準備前から気合入りまくり。テント生活も縦走も充実して満足なり。 |
梅雨が開け天気の心配はそれほどしていなかった。
この縦走に際して、山行が始まる前からの準備段階で山行のほとんどができているような充実感があった。準備80%、実行20%とは良く言ったものだ。
それほどまでに今回の山行に対するメンバーの気合いの入れ方は、すごいものがあった。
毎年この時期、祇園祭休みを利用して山に行く。
去年は中津川、一昨年は金目川と沢登りが2年続いたことで、今年もそうなるかと思いきや縦走というものに心奪われてしまった。
というのも、いつも僕は北アルプスを目指すのであるが、今年は秦谷くんの意見もあり、あまり行ったことのない南アルプスに行くことを決めたからだ。
当日まで、準備の段階からワクワクがとまらない。初めて行く山は僕にどんな微笑みをくれるのだろうか・・・
祇園祭宵々山の賑わいを横目に高速道路をぶっとばす。
飯田インターから、一般道へ矢筈トンネルを抜けてからは遠山川沿いの細い林道
一部崩落しているため、高巻きを強いられた。この道がまたひどい!
車の底をなんどもすりながら易老渡を通り過ぎ、便が島に到着。
ここは、この道中とはうらはらにとてもきれいな駐車場がある。
ビールを飲んで仮眠。
が、午前4時にいきなりここの駐車場の管理人が前泊代と、一人500円を徴収にきた。駐車場代金はいらないが前泊代はとるらしい。なんとも嫌な気分の話だ。
寝不足はやはり辛い。当日のテンションの高さでなんとかカバーしながら、でも4時に起こされた管理人に少し腹を立てながら、みんな準備する。空は曇っている。
装備係の里見君、食料係の日笠さんが、実にてきぱきと装備、食料をわける。
いざ、出発。西沢渡までの林道はほぼフラットなトラバース道。西沢渡には現代風の鉄筋の渡し篭がある。別に川を渡ることもできたが、おもしろそうなのでこの篭に乗ることにする。
みんな、きゃっきゃ言いながら、篭に乗った。
渡り終えると、そこからが本番。高度900Mから2400Mの稜線に一気に登る。
かなりの急登が続く。みんな踏ん張る。汗が滝のように流れる。
何回か休憩をとりながら、確実に登って行く。
なんとか稜線に到着。そこからは今夜の泊地である聖平までは、すぐである。
テン場まで行く途中雨が降ってきた。全員レイン着用。
テン場には一張もテントがない。登山客も少なそうだ。
そりゃそうだ、この日は平日であり、世の中の方々は働いていらっしゃるのだから・・
ふっふーん♪少し優越感に浸りながらテントを設営する。
この聖平小屋は今日からオープンしたそうだ。・・知らなかった・・
テントを設営し終わり、まだ3時前だというのに、夕食を作り出す。
今日は寝不足ということで早く寝ようと話がまとまる。
でもその前の、この夕食が楽しみでたまらない。
というのも、この山行、はじめは「グルメ山行」と名付けようと思ったくらい、夕食のメニューはすばらしいものが揃っている。たぶん雪稜クラブの食いしん坊達(特にT氏と東京に行ったO氏)が聞くと嬉しくて涙が止まらないことだろう。
グルメ第一弾は「タイカレー」食料表を見ていただいたらわかるが、普通は山ではぜえったいに味わえない代物である。具の多さはただ者ではない。しかしながら重量はさほどでもない。
食料係、日笠シェフの賜物である。
味は最高!!ベリーベリーマッチ!!僕も涙が止まらない。
ビールもワインも日本酒もボッカしてきた!この苦労が報われる瞬間がやってきた。
本当に嬉しい!
ひとしきり飲んで食べて、疲れて、あっという間に寝てしまった。午後5時15分だった。
「思いっきり寝た」そんな気分だ。午前3時半に起きた。
今から聖岳に向かう。とても清々しい気分。
山に来てよかった、と思う。
朝食をすませ、必要な装備だけを持って、昨日来た道を逆に進む。
分岐を通りすぎ、さあ、聖岳へ。
しばらくは樹林帯、先行パーティも多い。
木々の切れ目からは時折、富士山が見え、心を和ませてくれる。
樹林帯を通り越し、小聖に向かう稜線に出た。とたん、すごい風だ。
いくつもの西側のルンゼはほぼ垂直にガレていて、一歩踏み外せば、怪我ではすまない。
強風の中慎重に足を進ませる。小聖に到着。風がつよいので行きこして、しばらくしてから岩場の陰で休憩。寒い。手袋をつける。
聖の頂上直下で、ますます風は強くなる。
時折、風に振られてよろめく場面もあったが、なんとか頂上に立った。
西からの強風は北からの暴風雨にかわる。写真をとっていたが、文字通り居てもたってもいられない。今日から北岳に登っているであろう雪稜クラブにメンバーに励ましのヤッホー。
そそくさと頂上を後にする。
小聖で、聖頂上でしようと思っていたポーズを決める。聖だけに「聖子ちゃん、ぶりっ子ポーズ」
だ!ばっちし、決まった!う〜〜ん、しょーもなーーい。
樹林帯に入り風は弱まる。聖平のテン場に戻る。
そこでしばし休憩。風は未だ強いが、青空が見え始めている。
まるで、今日の山行予定は終了したような気分になっていたが、テントを撤収して再び出発。
そこから上河内岳に向かう稜線はやはり風が強い。体を支えるためには風に向かって傾ける必要がある。全員傾いた奇妙な格好で稜線を通過。
上河内岳は登山道から往復15分の距離。重いザックを置き、まるで重力が無くなったかのような速さで頂上に到着。こちらもすごい風だ。こちらも写真だけとって後にする。
ヒメネズミが、かわいらしく岩の間を這い回っていた。
それからはいくつかのお花畑を通り過ぎ、かわいく咲き誇る高山植物にしばし安堵の念を抱き尾根の東側の窪地で休む。ここは風も弱く、落ち着ける場所だ。
再び風の西斜面へ。強風に耐え、今日のテン場である茶臼小屋との分岐についた。
茶臼小屋に着きテン場の受付をしていると、なんと「テントの人にはこれをプレゼント」と発泡酒6缶を渡された。我が耳を疑ったが、その手にあるものはまさしく、我が友「お酒様」だ。
舞い上がるようにして、みんなに報告。みんなも信じられない表情。
この日もそそくさとテントを設営。早々と夕食を作り、お酒を飲み、午後6時半には寝た。
この日のグルメはミネストローネとタコス。
これも凝っていて、しかし迅速に簡単に仕上がって行く。男3名は指をくわえて出来上がるのを見ていた。食べるのは僕の番や〜!とあさましくもほおばる。うまい!!あ〜幸せだ!
朝3時、夜は何回も強風と雷の音で目が覚める。
テントが風で持ち上がりそうな感じだ。フライが飛ばされないか、心配であまり眠れなかった。
風の前は遅がけにやってきた隣の中高年パーティのテントがやかましくて眠れなかった。
やかましいと文句を言ったが、宴たけなわで聞いてもらえなかった。
少し、神経がいらだち気味だ。よくない。落ち着かなければ・・・
3時半から朝食の準備にかかるも、外は大雨と風で今日の行動自体が危ぶまれる。
昨夜に里見くんが書いてくれた天気図とにらめっこしながら、梅雨前線の微妙な動きに思いをはしらせている。
5時に小屋のテレビで天気予報を見る。
どうやら前線は南下し、ほぼ真上にあるみたいだ。
まだ、南下するみたいだし、とりあえず行き過ぎるのを待つことにする。
雨脚はますますひどくなる。
テントの中も浸水し、小さい方のテントをたたみ、荷物を大きい方に入れる。
寝る場所もないので小屋で休ませてもらう。
始めは食堂の片隅で今後の進路を検討していたが、午前10時までには、雨が収まるだろうことを予測し、それまで出発をずらすことにする。
今日は光岳のテン場まで行く予定だったが、変更して途中でビバークすることに決める。
ビバークはどこでもできそうだが、肝心なのは水である。
稜線の縦走の欠点はここにある。
茶臼から水を持って行くのは、体力的に問題がある。
雨水でことをしのげるが、雨は快方に向かう・・いや向かう希望を持っている。
希望が交錯する。
今度は地図とにらめっこして、めぼしい所を2〜3カ所決める。
あーだこーだと相談していたら、小屋の管理人さんが、こんどはゼリーを差し入れてくれた。
なんと言う小屋だ!信じられない。と思ってる間に、京都からきたと話していると、もう6本、発泡酒をプレゼントされた。嬉しい嬉しすぎる!
水は体力的に問題でも、お酒は何の問題にもならないところがニクイ!
またまた、しばらくして小屋のご主人様、なんと雨が収まるまで寝てきていいよと部屋を提供してくれた。おまけにシュラフまで・・・・ほんま、なんと言う小屋であろうか・・
みんな、しっかり寝る。
午後9時、雨が収まりそうなので、小屋のご主人にお礼を言い、小屋を後にする。
稜線にでるとやはりすごい風だ。しかし幾分ましになった気もする。
一気に茶臼岳から希望峰を通り、易老岳に。ここで寒さをしのぐためツェルトをかぶり休む。
日笠さん、遊部さんはツェルトが暖かいことに感激している。
この易老岳頂上は樹林帯で風も幾分ましである。
ビバークのテントが数張はられている。
ここもめぼしい所のひとつだが、人が多そうなのでやめることにした。
ここは光岳を往復し、下山するには軽身で行ける最高のポイントだが、荷物を持って往復してでも、もっと静かな所を探すことにした。
いつの間にか雨はや止んでいる。しかし依然風は強い。
易老岳を後に、2つめのポイント三吉平に向かう。
ここから光までの間には、「なんとか平」や「なんとか原」がたくさんある。
そのうちの一つにテントを張れるだろうと思っていた。
三吉平に到着したが、思っていたイメージではない。
こんなとこにはテントは張れない。あきらめて次のポイントまで行くか・・
と思っていたが、地図をよく見ると東の方からの沢の源頭付近に良さげなところがありそうに思い。谷を降りて行く。
と、あった、あった!
ほぼ理想に近いテン場がおあつらえ向きにもあるではないか!
原生林の中、神秘的とも桃源郷とも言える場所だ。
あとは水場だ。この沢はこのテン場付近では伏せている。
どれだけ下れば水がでるか?沢を下る5名の表情は希望半分心配半分といったところだ。
しばらくいくと大きく崩落したガレ場がある。地図には載っていない。
たぶん最近崩落したもののようだ。これで沢が埋まった可能性がある。
少し希望をなくし、あきらめかけたその時、滔々と岩間から伏せていた水が流れているのを発見。「やったー!!」みんなの心配は笑顔にかわった。
テン場に戻り整地、シダを敷き詰めシダのベッドを作る。
松茸になった気分だ。
いつの間にか晴れ間が顔を出している。みんな濡れたシュラフやレインを干す。
その日の宴会が盛り上がったことは言うまでもない。
この日のメニューは蝦麺。
これも、食べるのは初めてだ。うまい!
もらった発泡酒と里見君が持ってきてくれた焼酎で乾杯!
明日は3時起床。最後の日に、まだ見たことが無い南アルプスの稜線を拝めることを期待しつつ風のない平和な世界で深い眠りに入って行った。
ヨタカが一晩中ないている。それがちょうど子守唄のように聞こえる。
3時起床、気力体力ともに充実している。エネルギーを満タンにし、軽身で光岳に向かった。
霧が出ていて薄く白んだ空は、幻想的に漂っている。
その中を元気な5名は突き進む。
あっという間に光小屋に到着。
間髪入れずに頂上に登っていく。
この日は、昨日までの暴風雨が嘘のように穏やかだ。
ただガスがかかっている。
これさえ晴れればー・・・と思っていると、光岳の頂上に到着。
展望台にて東の空を眺めると、ガスはだんだんと薄らぎ、東の山々が姿をあらわす。
「おー、きれいー」みんな口々に歓びの声をあげる。
これなら、と西の方もみる。「見えた!」塩見岳から連なる北岳の稜線がはっきり見える。光岳を後にイザルが岳に向かう。
こちらは樹木はない360度のパノラマだ。
遮るものがないので風は強いが、東には富士山、北からは南アルプスの全貌が見える。
すばらしい眺めだ。来てよかった。感動。
この感動を胸にしまい込んで、我々はテン場を後にした。
再び易老岳に戻り、そこから一気に1400M下降する。
下りが続くせいか、足が痛い。
気温が徐々に上がって来る。暑いのは苦手だ。
「あー、下に降りてきたー」
安堵のような残念のような気持ちだ。
下では蝉が鳴いている。
みんなの一仕事終えた顔は笑顔でいっぱいだった。
今回の山行をいくつかの項目に分けました。
今回の山行のリーダーとしては、まだまだ未熟で不備がたくさんあったと思います。でも、みんなの協力のおかげで非常に楽にスムースに事が運びました。
山は技術、体力ばかりではありません。その山に寄せる思い、各準備から始まり、山行後の会計報告、反省点などに至まで様々な段階があります。
SLや装備、食料の係のメンバーが連携し事前にかなり綿密に動いてくれていたこと、当日の2週間前からメールでのやりとりがかなり多く、ミーティング後の1回のプラン会のみで、ほとんどができたしまったこと。
4名が5名になっても早急に対応できたこと、その一つずつに対しても、各自が責任ある行動をみせてくれたことに、その成功の原因はあると思う。
装備の里見くんの徹底した装備分け、体力に応じた重量配分、食料の各日重量配分割合などのアシスト、この徹底ぶりは僕は未だ経験したことがありません。食料の日笠さん、初めてなのに徹底した事前の食料配備、現場での迅速な行動は本当に目を見張るものがありました。
美味しいごちそう、ありがとうございました。
15日の天気予報はずっと「くもりか晴れ」でそんなに悪くなることは予想できていなかった。新潟の水害をもたらした梅雨戦線はたぶん北に上がるだろうと言う安直な思い込みが良くなかった。
稜線の風の強さ、天候の荒れ方は、登山道の縦走というグレードを一気に引き上げる。
みんなよろけながらも、がんばって予定とおりにこなした。
17日夜は突風でテントが飛ばされるのではないかと思うくらいだった。
フライが飛ばないかどうか気になってなかなか眠れない。
3日目のテン場をわざとキャンプ地にしなかったこと。
天気の具合もあったけど、地形図(5万分の1しか持っていなかったが)を見て
テン場や水場を確保できたこと。自分たちのみのスペースで楽しいテント生活をできたこと。山はこれにつきると思う。
茶臼小屋で管理人さんやバイトのお兄ちゃんの厚情に厚く感謝しています。
なんと、ビールを12本ももらってしまった。
おまけに、大雨で出発を遅らせている自分たちを小屋でシュラフまで貸していただき休ませてもらえたこと、ゼリーなんかももらっちゃいました。
京都からきたと言ったのが良かった。彼も京都の人間だった。
努力して勝ち得た喜びは大きい。
日々努力し、トレーニングし、間違いなく南アルプスを縦走できました。
たかが、登山道の縦走ではないか・・と思われる方もいらっしゃるかもしれま
せん。でも今回の縦走は単に山登りというものだけでなく、それ以外の楽しみ、歓びも大きかったと思います。
5名で協力し合い、助け合い、励まし合い、そして成功を得られたことは
各人の胸の中に深い感動を呼び起こしたことに違いないと思う。
今回の縦走はお世辞にも楽なものであるとは言えない。
初めての縦走の日笠さん、遊部さん、それをサポートしてくれる金剛秦谷と強力里見、みなさんの御陰で僕もすばらしい感動を得ることができました。
このようなすばらしい山行のリーダーができて本当に良かったと思います。
ありがとうございました。
当面の日程で『南アルプスの〜んびり縦走』の『の〜んびり』と『南アルプス』という文字に目が止まり、行ってみたい!と思ったけれど前夜発3泊4日というロング日程(私にとっては)で、果たしてついていけるだろうか?体力・気力等不安材料をモタモタ思い描いているうちに時間が過ぎ、締切りが過ぎてからの参加申込みというルール違反をしてしまい、忙しい中を準備していただいた事に感謝しながらの山行スタートとなりました。
そしてやはり結果、『の〜んびり』とはうらはらにキツかった。2日目の聖岳での稜線の強風は1歩踏み出すのが恐くて立ちすくんでしまい、山形さんに「大丈夫か〜」と心配していただく場面が何度かあり、『風』の恐さを身を持って知りました。やっとたどりついたピークでも5分と立っていられないような凄まじい強風で視界も悪くそそくさと下山。道中、一瞬の晴れ間に見えた富士山に心救われました。この後、富士山は何度か顔を見せてくれて元気をもらいました。食料係は日笠さん、夕食は日常生活でも食べた事のないメニュー(タイカレー)に感激!美味しかったです。3泊目にビバークしたテン場は神秘的な森の中。人間が立ち入ってごめんなさいみたいな気分になりながら、テン場の作り方・水の確保などを勉強させてもらいました。今回、山で星を見るのも楽しみのひとつだったのですが、到着日以外は曇り空だったのが残念でした。
4日目は天気回復で比較的楽勝??で光岳到着。来て良かった!!と心底思えるパロラマ風景に感激!イザルヶ岳もしかり。しかしこの後、易老岳からの一気下山はかなりキツく、沢の音がするとホッとしました。登りになるとすぐに息があがり、下りはスピードが落ちるという体力のなさ。前を歩く秦谷さん、後ろは里見さん、見守られながら歩かせていただいた感じです。けれどもすっかり南アルプスのファンになって帰ってきました。メンバーのみなさま、お世話になりました!
8年ぶりの南アルプスを満喫してきました。愉快なメンバーと楽しく過ごせました。縦走そのものは勿論、食事にも大満足で、日笠シェフに感謝!です。装備係としての仕事は、計画時から手落ちがたくさんありましたが、山形さんが万全のサポートをしてくれました。勉強になりました。本当に楽しく、あっという間の4日間でした。パーティーのみなさんと、とても親切にしてくださった茶臼小屋のスタッフのみなさんに心から感謝します。ありがとうございました。
南アルプス南部の聖岳・光岳は学生時代に登り残した宿題だった。今年、山形さんをリーダーにようやく足跡を残せるめどが立った。行程は3泊4日。ちょっとのどかな山旅を、じっくり楽しめれば。
稜線取り付きの日。西沢渡までは林道歩き、荷物の渡し籠で遠山川を徒渉、あとは尾根を黙々と登る。いつかのヤマケイで便が島から聖岳の取り付きの尾根は「無展望の喜び」というストイックな副題で紹介されていたが、噂に違わない。時折差す日差しと青空で、天候が安定していることを知るのみ。高度計は順調に高度を重ねていく。
稜線には13:30、目的地の聖平小屋には14時前に着く。コースタイムより1時間短く到着できた格好だ。小屋はこの日から営業を開始したとか。
この日の夕食はタイカレー。もちろん、山でこのような凝った食事は初めてだ。今回のシェフは日笠さん。この4日間が楽しみだ。
相変わらず霧が立ちこめている。最低限の荷物をザックに背負って、まずは聖岳をピストン。森林が疎になってきた小聖岳からいよいよ強風の洗礼を浴びる。身体がよろめくほどの風を受けながら痩せ尾根を歩くのは、あまり心臓にはよろしくない。聖岳山頂では写真を撮ったあと、北岳に登っているであろう雪稜のメンバーに向けて「ヤッホー」と叫ぶのが精一杯だった。5分と山頂にいただろうか。
ピストンから戻り、聖平で出発前に一息つく。上河内岳に向かう稜線も、2700m前後の稜線を歩くため、風はやはり強い。雨が降っていないのが幸いだ。下界では猛暑なのに、寒いと感じながら歩けるのはある種の贅沢なのか? 時折ガスが晴れてこれから向かう上河内岳が顔を見せる。富士山を間近に望んだときは北アルプスとはまた違った山岳展望に素朴に感激してしまった。ガスが晴れるわずかな隙がねらい目、遊部さんと里見君には富士をバックにモデルになっていただく。
茶臼小屋には15時前に到着。稜線に取り付いた昨日ほど運動している量は少ないはずなのに、足がふらついている。稜線の強風で体温を奪われ、目に見えないところで予想以上に体力を消耗したようである。
テント泊の受付をしたところ、ビールのおまけが付いてきた。昨年の残り物の処分ということらしいが、今日のビールの出費を浮かせたことに素直に喜んだ。
この日の夕食はタコスとミネストローネ。濃い味付けのタコスとビールが実によく合う。
夕食の準備の合間を縫って、里見君に天気図を書いていただく。停滞前線が南下を始めているほか、太平洋高気圧の勢力が劣勢とのこと。あまりいい感じはしない。
3時半に起きたはいいが横殴りの雨がテントを直撃している。この状態で行動するのは避けたい。小屋に駆け込んで天気予報を見ると、午後からは晴れそうだが午前中は不安定な状態が続くとのこと。停滞までする必要はなさそうだが午前中は様子を見た方がよいか。朝食を終えた後、小屋の主人に「小屋で待っていてもいい」と許しをいただき、ストーブに手をかざしながら地図を机に広げて天候の回復を待つ。小屋の従業員の方と山形さんがなにやら話し込んでいたが、ビールの6缶ケースを再び持って帰ってこられた。従業員が京大出身で意気投合したようである。このあと、ゼリーを頂いたほか小一時間ベッドで寝かせて頂く好意にあずかることができた。ここまで親切にしていただいたのは、山をやっていてこれまでに経験がない。
雨足も止んだ9:30に出発。稜線上の風は相変わらず強いが、雨が降っていないだけまだよいと思わねば。さてこの日のテン場をどこにするかだが、第一候補の易老岳はすでにビバークの先客がおり、人も多く休息には不向きと判断。易老岳から光岳は実質往復するだけ。正規のテン場は光小屋だが往復することを考えるとできるだけ空身で歩ける距離は長い方がよい。ところで易老岳から1時間光方面に進んだ鞍部「三吉平」の東に沢が出ている。水場はありそうだし、等高線から見るにテントが張れるくらいの平坦なスペースはあるはず。山形さんの絶妙の嗅覚で三吉平の東にテントを張れるスペースを発見。読み通りテン場から5分となく下った地点から水がわき出している。到着が14時前とまだ余裕があったので、テント場を整地、周りに生えているシダを敷き詰めて地面の凸凹を埋める。アブが多いのが玉にきずだが、原生林のなかでキャンプできる、思わぬご褒美をもらった気分だった。
夕食は「蝦めん」。普通のラーメンとはまた違う、食べ応えのある食感だった。
勝手なもので、入山したのがまるで昨日のことのように感じられる。最終日に近づくほど名残惜しさがこの錯覚を増幅するようだ。
光岳の三角点は森の中にある。展望は10mほど進んだ展望台から味わえる。南アルプスの山々がこれでもかといわんばかりに迫るが、残念なことに僕は南アルプスについて知識が殆どないのでどれがどの山かがさっぱりわからない。もう少し、僕も南アルプスに顔を出した方がいいのかな。
易老岳から易老渡まではひたすら下るのみ。山形さんと里見君に便が島に置いた車を回収していただき、今回の山行を終えた。
3年ほど前に蝶が岳に登って小屋に泊まり一泊で降りたとき、何日も縦走してテントに泊まってきた人がいることにびっくりした。またそのときアルプスの稜線がとても魅力的でいつか縦走してみたいなと思っていた。
ミーティングで南アルプスに縦走プランを知って、是非行ってみたいと思った。リーダーさんは歩荷トレをすると言ってくれたけど、荷物の重さを聞いてその歩荷トレが不安になった。まだ数回しか山行してないし、時期尚早かなと思った。けど行かせてと言ってしまったし、まだ時間もあるし、毎週の山行が本当に楽しかったので間に合わせたいと思った。目標があったからか普段と違ってがんばった。リーダーさんの励ましも力になった。
食料班をおおせつかった。山の食事は最初検討もつかなかったのでアドバイスにしたがってHPの山情報をみた。富士山へ行く車の中でペミカンの作り方やこれまでにうれしかったメニューなんかも教えてもらった。それから一応「もう山でばてない」とかいう本も買って読んでみた。スーパーに行って今まで見もしなかった棚に注目するようになって、乾燥食品でおいしいものを作る難題を考えてわくわくした。という割に重くなったけど。初心者だけど役割をもらったこともうれしかった。
荷物は1週間くらい前から忘れ物をしないように準備していたにもかかわらず、結局ぎりぎり用意して出発になった。車の中はほとんど寝かせてもらったけど、最後の登山口までの道はかなり荒れていて鹿を何回も見るし、都会から離れてるんだなーと思った。けど駐車場は整備されていてそのギャップに登山の文化を感じた。駐車場から見た星空はとてもきれいで流れ星も見えて幸先がよさそうに感じた。
テントに寝るのは会に参加するようになって3回目だった。まだすっきり寝れたことがなかったので心配だった。それでも寝れたっつーのに、明け方駐車場の管理人さんがお金の徴収にやってきて起こされてから結局あんまり寝れず寝不足のような気がしての登りになった。途中、沢を渡すかごみたいなのに乗ってみんなはしゃいで楽しかった。(誰も何もいわないけど沢の石をぽんぽんと渡ったほうが早かった。)
登りはとにかく心肺機能が前3人の秦谷さん、遊部さん、里見さんのペースについてゆかず、だいぶ距離があいてぽてぽてと長いこと歩いたことしか覚えていない。鼻水が出てきて鼻をかんでばかりいた。みんなは汗ででるところ、わたしは鼻水ででるような気がした。富士山のときに学んだことを生かすために、休憩のたびに炭水化物を無理やり食べた。ほとんど突然のように高原みたいな聖平についたときは本当にうれしかった。
テントを張って日常生活についてレクチャーしてもらってみんなに手伝ってもらってタイカレーのごはんを作った。わたし的には想像していたのと別物ができたのであれ?って感じだったけど、みんながおいしいといってくれたのでまあそんなこともあるかで済んだ。山小屋で買った600円のビールを飲んで幸せだなあと思った。それからまだ外が明るいけど早々に寝袋に入った。真ん中だったからこれまた寝れるか心配だったけど、10時間ぐっすり寝れた。真ん中はあったかくて結果よかった。寝返りも思う存分していたようでごめんなさい。
2日目は聖岳を目指した。すごい強風だった。足が思った位置に着地しなくて怖かった。山肌に沿って霧がすごい勢いで登ってくるのがよく見えた。途中で富士山がちらっと見えて感動した。聖岳はいるだけで消耗しそうな天気だったためさっさと退散した。帰りに小聖だから聖子ちゃんポーズだとリーダーがいうのでぶりっこして写真を取った。というか撮ってもらった。その後の上河内岳の前後はお花畑がいっぱいあってアルプスを満喫した。花の名前がさっぱりわからないので、雑誌の付録についてたお花の名前の冊子を持ってくることを全然思いつかなかったことが悔やまれた。
2日目の晩は茶臼小屋のテン場で、里見さんが天気図を書いた。へーっと思った。いろんな知識がいるんだなと思った。それから小屋からビールのサービスがあって驚いた。
3日目は雨だった。小屋に避難させてもらったら、えらい親切な人たちでストーブに当たらしてくれて、ゼリーもくれて、2階で寝袋で寝かせてくれて、ビールもくれた。「夜中に非難してくるかと思ってドア開けといたのに。」と言ってくれて涙がでそうになった。というのは大げさやけど、親切ぶりに本当に感動した。自分もどっかで誰かに返そうと思った。雨が小降りになって、出発した。
途中易老岳(だったかいな)で休憩し、雨でぬれていて寒かったとき、リーダーさんがツェルトを出してくれた。
ザックの下にツェルトの端を入れて遊辺さんとすっぽり入ってあたたかいのに驚いた。ツェルト欲しい!と思った。
その日は三吉平近辺にリーダーさんがテントを張る場所を探しに行ってくれた。ちょっと尾根から下ったそこは石に苔がびっしりついていて、しだが茂っていてもののけ姫の世界のようだった。しだを刈ってテントに下に敷き詰めて居心地よくする方法を教えてもらった。またぎみたいだと思った。ありえないくらい大きなミミズやヒルがいて、棒で持ち上げる秦谷さんがつるっと食べるんじゃないかと心配した。みんなで沢に水汲みに行って、縦走中でもこんなにのんびりした時間があるんだなと思った。お天気もよくなって濡れたものを干して気持ちよかった。ゆっくりごはんを食べて宴会になった。みんなの行動食からいろんなつまみが出てきて食べきれないので一人3回投票した。里見さんの横綱カニ缶はだんとつ首位で当選した。山形さんが箸で食べている横から覗き込む秦谷さんは子供のようで遊部さんは大笑いしていた。
わたしはどうしても沢にもう一回のんびり行ってみたかったので明るいうちに歯磨きついでにテントを出た。遊部さんがついてきてくれた。二人ともトイレなんかしながら行ったから半分くらい一人だったけど、山の中で一人で座って歯磨きして少しほっとした。帰ってきてから獣道があると聞いて怖くなった。帰ってきてから聞いてよかった。
その日はしだのふわふわの上でよく寝るはずだったのに、夜中に寝返りを打った後、笛みたいなひゅー、ひゅーという音が気になって途中で目が冴えはじめた。それから日本昔話の山の中の怖い話とか思い出してしまって、本気で寝れなくなった。ひゅー、ひゅーという音は最初遠くでしていたのに、だんだん近づいてきて大きくなって、突然消えた。山に勝手に入っていったし、しだをいっぱい切ったから山が怒っているのかと思った。こわいーっと思って身を硬くしている間に寝ていた。翌朝リーダーさんがヨタカだというのでほっとしてばかばかしくなった。
最終日は朝曇っていたけど大丈夫だった。3日ものの熟成おにぎりを雑炊にした責任の持てない食事をして、光岳に向かって出発した。光岳では北岳や太平洋側の景色がすばらしくて感動した。リーダーが光のポーズだというみんなの共同ダンスみたいな写真を撮ってというか撮ってもらって、イザルガ岳に向かった。途中は天国みたいな景色だった。イザルガ岳は途中ガスったけどてっぺんで見事にガスがどっかいって、360度見渡せた。さすが日頃の行いがいいだけあると思った。富士山もよく見えた。ここで男性陣は3人共同の富士ポーズをレンズに収めた。里見さんは山の名前から個人的にサルのポーズも取っていた。北岳にいるかもしれない松田パーテイに向かってみんなでヤッホーと言って降りた。
テントの場所に戻って引き上げるとき、昨日の恐怖を思い出して、「昨日は場所をおかりしてありがとうございました」と心の中で言っておいた。
それから易老岳に引き返すとき、最後の登りだからがんばって前の3人にいついていってみようと考えた。
息を2回吐いて1回吸うのを忠実に守りながらついていったら行けた。いけるやんと思ったものの足が筋肉痛みたいになりかけててその後の長い下りにかなり響いてしまった。長い下りは、合計3回くらいこけた。ほんとに長くてよくこんなに登ったもんだと思った。
下ってきてありがたいことにリーダーと里見さんが車をとりに行ってくれたので沢で足を洗ったり歯を磨いたりして満足感を味わった。それから荒れた道を運転してもらって風呂に向かった。お風呂では髪の毛がざーっと抜けて少しびっくりした。4日も入ってないから?よくわからん。とにかくすごーくすっきりしてお土産を買ったり(ビールを飲みやがったり!)して帰途についた。遊部さんがくれたストレートりんごジュースが死ぬほどおいしかった!と焼肉も。
最初はついていけるかが心配だったけど、みなさんに何回も待ってもらったり、リーダーさんに励ましてもらったりして、本当に楽しく縦走することができました。それからテントの生活を丁寧に教えてもらって、たくさん勉強になりました。それから、いろいろ助けてもらって食料班としての役割を無事果たすこともできて大満足です。ありがとうございました。