北穂高岳東稜・前穂高岳北尾根(無雪期アルパインクライミング)

メンバー CL 島、廣澤、前田
期日 2004年8月11日〜15日
山域 北アルプス 穂高岳
山行形態 アルパインクライミング
文責

行程

8月11日(水) 21時京都駅八条口集合〜1時平湯(仮眠)
8月12日(木) アカンダナ駐車場〜上高地〜横尾
8月13日(金) 横尾〜涸沢〜北穂東稜登攀〜北穂〜北穂南稜〜涸沢
8月14日(土) 涸沢〜5・6のコル〜前穂北尾根〜前穂〜奥穂〜涸沢
8月15日(日) 涸沢〜横尾〜上高地〜アカンダナ〜京都

装備

(共同) ザイル(9×50、8.5×50)ジャンピングセット、ハンマ−、ボルト3、ハ−ケン5
(個人) ハ−ネス、ヘルメット、確保器、安環2、カラビナ4、シュリンゲ4、ヌンチャク3、ツェルト2張、シーバー1台、携帯電話2台

所感

8.11(水)

21時京都駅八条口出発 河原さん達の沢チ−ムに偶然京都駅で会い記念撮影し先に出発する。廣澤の運転で快調に名神を走行中、 ふと不安が脳裏をかすめた。不安が大汗となり額から流れ落ちた。必死で車の中を探し回った。靴がない。 お盆だというのに…ご先祖様…最悪です。運動靴で登攀する予定で登山靴が必要ないため安易に考えてい たのか、足元にハ100円で買ったぞうりが1つ。T村さんの忘れ物を責めた私へ罰が当たったのか…。 高山近くの道の駅にテントを張り爆睡。

8.12(木)

7時に起床し靴屋を探す。なんと高山市内に大きな靴屋が2店、店が開くまでファミレスで安物の 朝食をご馳走しメンバ−のご機嫌を取る。10時の開店と同時に店に飛び込む。看板にはこう書いてある。 「ラブリ−な靴、ワシントン靴店」 ……。しかし、ご先祖様はワシを見捨ては しなかった。千円そこそこの運動靴や足袋靴などが沢山置いてあったが、使い捨てるよりは高くても使え る物をということで軽登山靴を探してみると9千450円で、28センチ、ゴアテックスでメチャ軽い。 お気に入りの靴を購入。今までどんな靴でも靴づれや爪が潰れて困っていたのが、つま先ゆったりで下り でも爪が当たらず快適な山行が出来ました。運命のラブリ−シュ−ズ。靴を買うならワシントン。今回の 核心はこの靴との出会いでした。 出発前にしっかり昼食を取り上高地からとり急ぎ横尾まで。しかし、ワシのせいで今日はここまで…込 み合った所を避け一番奥の槍沢方面側にテントを張ったのだが、受付のオバサン曰く「最近よく熊が出ま す。あなたたちの張った場所に最近では8/2に出ました。気をつけてください。」「どう気を付けたらい いねんオバチャン…」出足をくじかれ、今日もまた不安な夜を過ごす。

8.13(金)

いい天気に恵まれ涸沢を目指す。快調に2時間少々で涸沢着。テントを張り、休憩をしていざ出発。 北穂の南稜を1時間程度登り東稜の取りつきを探す。南稜が左に折れハシゴが現れる手前でやや傾斜が緩 くなる。このあたりを適当に取り付きに向かいモレ−ンをトラバ−スすると草付の登りに踏み後を発見。 二本あるルンゼの奥側を目指して登り始める。ザレていてとても登り難い。しばらく登ると少し安定して くるが、依然落石を起こしやすくヘルメットを着用して登る。コルに出ると初めて目にする北穂池、いつ もと違う位置からの槍や、明日行く予定の前穂が新鮮に映る。横尾本谷側に踏み後があり、巻きながら進 むが全く稜線に出ないので適当に稜線に取り付く。しばらくして先行パ−ティ−に追いつく。ザイルを出 しているが無くても通れそうだ。北穂沢側がスッパリ切れ落ちているがそれほど怖くない。ココが核心の 「ゴジラの背」らしい。練習も兼ねてザイルを出し廣澤のリ−ドで進む。下りもクライムダウン出来そう だが練習も兼ね懸垂下降する。後は稜線上を直登して北穂小屋の真下へ登りつめる。本当に簡単な登攀だ が自分達だけで登れたことに満足。あとは一挙に南稜を下山。明日歩く前穂北尾根の取り付きである5. 6のコルへのル−トを確認する。遠くからでも踏み後は明確だ。

8.14(土)

朝5時、涸沢の登山相談所へ登攀の計画書を提出し出発する。山岳警備隊に「北尾根ですか、装備 は大丈夫ですか」と聞かれる。「大丈夫です」と答える。「間違いなく天候は下り坂です。気をつけてくだ さい。」とまた不安にさせられる。ワシは今日も何時ものごとく半ズボン。たぶん、山岳警備隊は不安に 思ったのだろう。つくづく草履クライマ−にならず良かったと思った。テント場裏の雪渓の左端を先行パ −ティ−の後をついて進む。先のパ−ティ−はかなり雪渓を大回りして5・6のコルを目指している。昨 日見た踏み後は草付のほうがよさそうなので早めに雪渓から出て踏み後を探す。すぐにシッカリした踏み 後があり草付をジグザグに登る。東稜より登りやすく、大回りをした先行パ−ティ−を抜かし1時間足ら ずでコルへ出た。奥又白の池が綺麗に見える。次回の宿題となった。まだ、山は見えているが早くもガス がかかり始めている。風も強く寒い。早々に5峰を登り始める。5峰、4峰と稜線を時々奥又白側を巻き ぎみに登る。4峰の下りは真っ直ぐ進めは良かったのだが、奥又白側に簡単そうに見える巻き道のトラバ −スがある。これに騙され下降するが落石がひどくとても歩きづらい。コルへつくと真っ直ぐ下ってくる 簡単な道が見える。3峰の登りで1パ−ティ−だけ先行がいた。登り始める頃にはほとんど3峰はガスの 中にあった。ここが核心という時に…。島リ−ドで奥又白側から取り付く。他のパ−ティ−は全員フラッ トソ−ルで登っているが、ワシはラブリ−シュ−ズだ。滑る。運動靴よりは幾分ましだが初めての北尾根 は楽勝ではなかった。ハ−ケンは多く打たれているが、岩が濡れはじめて滑るし、思っていたより高度感 もあり緊張する。1ピッチ目の終了点は登りきったすぐ横の奥又白側に1段下がったところにある。ワシ が登ったところからさらに奥又白側から登ってくるとこの終了点に登りつくみたいだ。そのほうが易しく 登れるらしい。へたくそなリ−ドでザイルの流れが悪い。一人ずつビレ−する事にする。前田、廣澤の順 番に登る。2ピッチ目はそれほどでもないが霧から雨模様となりかなり滑る。ザイルの流れがさらに悪く なる。途中で確保点があったが一挙に上へ登る。手前で一度ピッチを切った方が良かったかも。30M程 コンテで進み3峰最後の登りにかかるが、一応1本ザイルを出す。島リ−ドで登り、廣澤プル−ジックで 続く。2峰をコンテで登り10メ−トルほどの懸垂を2度行いコルの下の涸沢側に下りる。1度目の懸垂 は2M程のクライムダウンを避けるためのもの。濡れていなければ必要は無いだろう。本峰への上り始め はかなりザレており大きな落石を起こす。下にパ−ティ−が来ていれば要注意だ。コルからは安定してお り稜線づたいに前穂高岳頂上にヒョッコリ頭を出す。展望は無かったが素人ばかりで登れた充実感でいっ ぱいだった。紀美子平に着く頃には小雨になりラ−メンを食べることを次の目標として奥穂の小屋を目指 す。カッブ麺で小腹を満たし一気に涸沢に下りた。この頃には雨も止み視界が開けた。 初心者だから、へたくそだから、緊張もするし怖くも思うのだろうが、簡単なル−トだからと初めての ル−トを安易に考えないで行動しようと思う。まず、靴を忘れないこと。とほほ…

8.15(日)

昨夜から降り出した雨は、断続的に降り続いている。少し小雨になった時を見計らい撤収する。 雨の中でも半ズボンだ。ワシはクレイマ−、クライマ−?草履で登ればクレイジ−クライマ−?どっちも どっちやなぁ。横尾を過ぎた頃に雨は止み上高地に着いた頃には河童橋から穂高が見えていた。急ぎバス 乗り場へ向かったがワシらの手前で満員となる。1人だけ乗車可能なためワシ一人アカンダナへ向かい車 を平湯へ回す。温泉につかり、もう何年も通っているお店で飛騨牛丼とざるそばの大盛りを頬張り、体重 もウハウハ…

8月13日

本谷橋:山際より注しこむ朝日

本谷橋:山際より注しこむ朝日

涸沢ヒュッテ脇:前穂北尾根を仰ぎ見る。『取付きまでは…』

涸沢ヒュッテ脇:前穂北尾根を仰ぎ見る。『取付きまでは…』

北穂東稜:南稜から脱線、モレ−ンをトラバ−スする。『この辺りかな?』資料で確認。

北穂東稜:南稜から脱線、モレ−ンをトラバ−スする。『この辺りかな?』資料で確認。

東稜より:明日狙う前穂北尾根、取付きまでの踏み跡も確認。

東稜より:明日狙う前穂北尾根、取付きまでの踏み跡も確認。

東稜より:いつもとちがった角度で槍の横顔。

東稜より:いつもとちがった角度で槍の横顔。

8月14日

明けてゆく、微妙な雲ゆき…

明けてゆく、微妙な雲ゆき…

イザ、5・6のコルを目指して!

イザ、5・6のコルを目指して!

きのうの北穂東稜を振り返る。

きのうの北穂東稜を振り返る。

5峰

5峰

雨の前穂頂上

雨の前穂頂上


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