雲ノ平ゆったり縦走(無雪期縦走)

メンバー CLみずえiku
期日 2004年8月10日〜8月14日
山域 北アルプス
山名 祖母岳・祖父岳2825m・ワリモ岳2888m・鷲羽岳2924.2m・三俣蓮華岳2841m・黒部五郎岳2839.6m・赤木岳2622m・北ノ俣岳661.2m・太郎山2372.9m
山行形態 縦走

コースタイムと食事

8月10日(火) 曇
4:56自宅出発→8:30富山IC→9:52〜10:36折立→11:04〜11:15 休憩→12:14〜12:30三角点→13:00〜13:15石張ベンチ休憩→13:40 〜13:50ベンチ休憩→14:40太郎平小屋→15:00太郎兵衛平テン場→ 15:50食事(豚キムチ・山菜おこわ・たまごスープ)→19:00就寝
8月11日(水) 快晴
4:00起床(お茶漬け・佃煮・梅干し)→5:51太郎兵衛平テン場出発→ 6:10〜6:25太郎平小屋→7:00 2074m沢出合い→7:30薬師沢左沢出合い →7:38〜7:50ベンチ休憩→8:30〜9:05薬師沢小屋→9:30〜9:35休憩 →10:48〜10:52休憩→11:05〜12:00アラスカ庭園→12:40祖母岳分岐 →12:50〜13:28祖母岳頂上→13:35祖母岳分岐→14:30雲ノ平テン場→ 16:00食事(親子丼・佃煮・たまごスープ)→19:00就寝
8月12日(木) 快晴
4:00起床(納豆そば)→5:25雲ノ平テン場出発→5:42〜5:55雲ノ平山荘 (テン場代支払い)→6:00高天原分岐→6:15〜6:25 2576mピーク→7:12 高天原峠→7:57高天原山荘→8:15高天原温泉→8:35〜9:05夢ノ平・竜晶池 →9:15〜10:14高天原温泉→10:27〜10:55高天原山荘→11:38岩苔小谷水晶池分岐 →11:43〜11:46水晶池→11:50〜11:55水晶池分岐→12:50〜13:05 お花畑→14:08岩苔乗越14:55〜15:05祖父岳頂上15:48雲ノ平テン場→ 16:30食事(スパゲティ・スープ)→19:00就寝
8月13日(金) 快晴
4:00起床(お茶漬け・佃煮・梅干し)→5:40雲ノ平テン場出発→6:05〜6:17 祖父岳分岐→6:40祖父岳頂上→7:15〜7:23岩苔乗越→7:32水晶ワリモ分岐→ 8:36〜9:10鷲羽岳頂上→10:08〜11:08三俣山荘(ラーメン・コーヒー)→ 12:08〜12:50三俣蓮華岳頂上→13:10黒部乗越→14:20黒部五郎テン場→ 16:00食事(カレー・ふかひれスープ・リンゴ)→19:30就寝
8月14日(土) 曇のち雨
3:30起床(きのこリゾット)→5:00黒部五郎テン場出発→ 5:50〜5:55休憩→7:00黒部五郎岳カタ→7:10黒部五郎岳頂上→ 7:17〜7:23カタ→8:04〜8:20休憩→9:35赤木岳→10:00北ノ俣岳→ 10:15神岡新道分岐→10:40〜10:55休憩→11:40〜12:40太郎平小屋 (ラーメン)→14:00〜14:15三角点→15:10〜15:50折立ヒュッテ駐車場 →16:20〜17:20白樺ハイツ(温泉¥600)→23:10帰宅

みずえの感想

 「日本最後の秘境」と呼ばれる雲ノ平は、前から行ってみたいところだった。「アラスカ庭園」「アルプス庭園」などという名前が付いているのも興味深く、一体どんなところなんだろう〜と以前から気になっていた。毎年夏には、いくさんとアルプスのバリエーションに行っているのだが、今年はまだ計画が出ていなかったので、今回は雲ノ平の縦走に誘うことにした。いくさんからは高天原の温泉のリクエストがあっただけで、あとのコースは自由に計画を立てさせてもらった。

8月10日(火)

 本当は朝4時出発予定だったのだが、寝坊してしまい、ほぼ1時間遅れになってしまった。毎度のことながら、どこかでずっこけてしまう…。「どうせ今日は太郎平までの予定なので、ゆっくり行こう」と気を取り直して出発。平日ということもあってか、高速は快調に車が流れ、当初の予定通り折立に着くことができた。  折立に続く有峰林道は1800円。ところどころ工事中で道が悪く、「これで1800円なんて高いなぁ」と二人でブツブツ言いながら運転。最終日、往復で1800円と分かってちょっと納得。高速を降りてからコンビニに寄りそびれたため、折立ヒュッテで何か食べるつもりでいたのだが、折立ヒュッテは食べる所どころか無人で閑散としていた。ヒュッテと名前が付いているので、すごく賑やかなペンションのようなところを想像していたので、とてもがっかりした。しょうがないので、ギリギリしか持って来なかった行動食を食べて腹ごしらえをする。その間にも、数パーティの登山者たちが疲れたなかにも満足気な表情を浮かべて登り口から降りてきている。「この道を登り切ったらどんな山々が迎えてくれるんだろう」とちょっとワクワクした気分で、ヒュッテにある計画書入れに計画書を押し込み、わたしたちも出発。  しばらくは深い緑に囲まれ樹林帯を登っていく。ゆっくりゆっくり登るので、いいペースで足が前に出る。第一目標の三角点もそう遠く感じなかった。三角点を過ぎると、周りの風景も次第に「アルプスに来た!」という感じになってくる。コバイケイソウなど高山植物がたくさん迎えてくれる。時期が遅いのでお花が少ないのが残念だが…。そして、上に登るほど、木道や石張りの道、大きなベンチがあちこちに出てきて、登山道が整備されていたのは、びっくりした。しかし、石張りの道は足への負担が大きく、とっても歩きにくい。太郎平小屋に向かう最後の登りは緩やかなのにきつかった。  13時を過ぎたあたりからガスが出てきて一瞬雨が降ったが、テン場に着くころにはまた青空が見えていた。テン場は太郎平小屋から薬師の方向に木道を歩いて20分ほど。いくさんは小屋でビールを買ってテン場に向かう。テン場は静かで、水場もトイレ(紙有り!)もしっかりあり、快適だった。17時30分くらいまでは小屋から係の人がテン場に居てくれて、テントの受付も済ますことができた。ちなみにビールやジュースなども少しだが売っていた。  テントを張り、お腹が空いていたわたしたちはさっそく食事をし、早々に寝た。

8月11日(水)

 3時頃、出発する人の足音で目が覚めたが、起きられず、4時に起き、結局出発は6時近くになる。今日もいいお天気で、気持のよい太陽の光が、緑をキラキラ光らせている。今日のコースには薬師沢小屋からの急坂があり、気合いを入れて出発する。テン場から小屋へ行く途中、遠くの方に槍の姿も見えた。  薬師沢小屋まではほとんど下りと平地ですごく歩きやすい道だった。しらびそが立ち並ぶ木道を歩いたり、草原に囲まれたりと、とても気持ちがよかった。淡いピンクや青、黄色など色とりどりの植物も緑に色を添えている。  薬師沢小屋に着くと、赤木沢に行く人、沢帰りの人(上ノ廊下帰り?)が数パーティいた。ここでトイレを借り水分補給をして、しばらく休憩。そして、いよいよ急坂に向かう。隙間だらけで揺れる吊り橋を渡る(これはかなりこわかった〜)とすぐに梯子を降りて沢に出て、高天原峠に向かう大東新道と別れて雲ノ平に向かう急坂を登っていく。ここもゆっくりゆっくり登っていく。想像していたよりも登りにくい道ではなかった。緑の木々が多くて森林浴が気持ちよく、また、木々に囲まれて陰っていたからかもしれない。  次第に急登がなだらかな登りになり、また木道が出てきて、思ったよりも早くアラスカ庭園に着いた。ちゃんと「雲ノ平アラスカ庭園」という道標が立っており、這松に囲まれて大きなベンチがいくつかある。なんでアラスカなのか、アラスカに行ったことのないわたしには分からないが、薬師岳を始め、赤牛、水晶、三俣蓮華、黒部五郎、そして笠までもが見渡せて、山々に囲まれた「庭園」というのは納得できた。ここで、腹ごしらえをしながら、ぼ〜っとゆっくりする。いくさんは誰もいないのをいいことにベンチにゴロンと横になってお昼寝。とても穏やかな時間が流れ、気付いたら1時間もそこに居た。時間はまだたっぷりあったが、そろそろ雲ノ平に向かうことにする。  雲ノ平山荘に行く手前に祖母岳という小さな丘のような山がある。エアリアマップを見ると往復30分。分岐に重いザックを置き、身も心も軽くなって祖母岳に登る。頂上は広々とした草原になっており、やはりここにもベンチがある。ベンチに寝転がってゆっくりしている先客が一人いた。ここにいると景色だけを眺めながらゆったりした時間を過ごしたいという気持ちになるのがとてもよく分かる。青空とどっしり構えた山々、様々な色をした緑の草原。とても静か…。  ここからは、向かいの祖父岳の麓に雲ノ平キャンプ場が小さく見えた。見るとすでにいくつかテントが張ってある。名残惜しいがテン場に向かって出発。雲ノ平山荘を素通りしてテン場に向かう。雲ノ平は「秘境」と言われているが、わたしのイメージする「秘境」とは少し違っていた。「秘境」というとジャングルっぽい未踏のイメージが浮かぶが、雲ノ平は木道がきれいに整備されており、どちらかというと、山々に囲まれた「楽園」、「弥陀ヶ原」という印象を受けた。  テン場は工事中だった。重機があちこちにあり、工事の音と共に作業着を着た人たちが木道やトイレなどを作っている。そのため、水は山から引いてきている一カ所のみで、トイレはリースのコンテナが3つあるだけだった。太朗兵衛平のテン場とのギャップが大きく、ここに2日間滞在するかと思うと、なんだか悲しくなった。おまけに大学のサークルの学生が大勢いて、とてもうるさかった。しかし、2日もいると不思議とそんな環境にも慣れてしまっていて、テン場を出る時は少し後ろ髪が引かれる思いだったのだが…。

8月12日(木)

 この日は待ちに待った高天原温泉の日。雲ノ平山荘に寄ってテン場代を払ってから行く。今日は荷物が軽いので嬉しい!しかも温泉まではず〜っと下り。いくさんはルンルンで下っていくが、それでも、下りが苦手なわたしのためにゆっくりめに降りてくれているような気がする。次第に樹林帯になっていき、だいぶ下ってきたなぁといった感じ。帰りは、降りた分また登らなければならないかと思うとちょっと憂鬱になる。高天原峠を過ぎたところで、雲ノ平のテン場で会ったおじさま方と出会う。なんと4時にテン場を出発し、もう温泉に入ってきたとのこと。彼らからは硫黄の香りがプンプンする。それにしても早い!!わたしたちも岩苔小谷の沢を渡り、高天原山荘に着く。少し傾きかけたどことなく味わいのある山荘。山荘の前で写真を撮って、さっそく温泉に向かう。温泉は沢の横にあり屋根付き囲い付きの女性用一つ、男性用一つ、そして上の方に簾のみの露天の女性用が一つと全部で3つあった。  とりあえず、先に夢ノ平、竜晶池に行くことにする。ここまで来ると誰に会うこともない。鳥の鳴き声しか聞こえず、あとは遙か上空で静かにヘリコプターが飛んでいるだけだ。青い空に緑の草木がすばらしく、ワタスゲやリンドウなどあちこちに咲いていた。絵の中に入り込んでしまったような感覚。  竜晶池は水草が生えた割と大きな池だった。水草の隙間の水面に青空と薬師岳が写っていてとてもきれい。なぜかとても大きなトンボが飛んでいた。  温泉に戻ると温泉上がりのご夫婦がいた。女性用も誰か入っていたようなので、わたしたちは一番上の女性用露天に入ることにする。全くの露天風呂は初めての体験。簾があるだけなので、ちょっとドキドキ。ま、一番上にあるから誰からも見られないかと考え、思い切って入る。お湯は白く、湯の花が浮いている。ちょうどいいお湯加減。3日ぶりのお風呂なので気持ちいい〜!!ただこの露天は屋根が付いていないから、強い日差しが直接当たる。じりじり肌が焼けているのが分かった。いくさんの大きな帽子を借りて、のんびり浸かることができた。貸し切り状態で堪能できた。  さっぱりした気分で高天原山荘に引き返す。タオルも体も硫黄の臭いがする。山荘で牛乳を買って休憩。お風呂上がりの牛乳はやっぱり最高!  昨日の夜から、せっかくなので温泉の帰り道は、行きと同じ高天原峠経由ではなく、岩苔小谷、岩苔乗越、祖父岳の方を通って帰ろうかと話していた。山荘の人にも聞いてみると、岩苔乗越に出る道は、時間はかかるがお花がすばらしいとのこと。それを聞いて、わたしたちは即決した。  乗越への道の出だしは、森林浴が気持ちよく、歩きやすい道だったが、上に上がるにつれ、風が通らず、直射日光がきつくなってきた。ジリジリ肌が焼ける。おまけに蚊が非常に多く、少しでも立ち止まるとすぐに噛まれてしまう。途中にある水晶池にも寄ったが、そこでも蚊の大群が押し寄せる。いくさんはなぜか平気だったみたいで、「トリカブトの群生がきれいーっ!!」と感激していたのだが、わたしはすぐに退散してしまった。  暑さと蚊に耐えながらしばらくはずっと登りだが、2時間近く歩くと急に視野が広げて、目の前一面お花畑となった。今までの疲れも吹っ飛び気持ちが軽くなる!いくさんと二人、はしゃいで写真を撮る。  しかし、本当のしんどさはこのお花畑を過ぎてから乗越までの登りにあった…。温泉に入ったせいか、行動食が少なかったせいか、最後の登りはかなりヘロヘロになってしまった。軽いはずの背中のザックも5日間のうちで一番重〜く感じた。乗越から祖父岳への登り、テン場へのくだりも最後まできつく感じた。祖父岳を下っている時、明日、この登りを登れるかどうか不安になってしまった。  やっとこさ懐かしの雲ノ平テン場に戻る。いつの間にか大学生の団体がテントを撤収していて少し静かになっていた。靴を脱ぎ、疲れた足を解放すると少し元気が出てきた。この日の夕食はスパゲティ。たらこマヨネーズというかなりこってりなスパゲティだったが、とっても美味しくけっこういけた。  夜中、一人トイレに行った際、空を見上げると、隙間のないくらい空一面に星が輝いていた。大きな流れ星も3つ見た。こんなにはっきりと流れ星を見たのは初めて。寒さのせいだったのか分からないが、なぜか気付いたら自然に涙が出ていた。思わず心の中で願い事をしてしまった。

8月13日(金)

 この日は黒部五郎まで行く。昨日だいぶ疲れていたので、雲ノ平から見える鷲羽、三俣、黒部五郎の稜線のデコボコを見ると大丈夫かな〜と心配になったが、朝日と共に出発する。歩き始めるとぐっすり寝たせいか思っていたほど疲れは残っていなかった。昨日あれだけ長く感じた祖父岳のくだりだったが、祖父岳の頂上もあっという間だった。見覚えのあるケルンだらけの頂上に着く。そこから乗越まで下り、水晶への分岐を経てワリモ岳に向かう。稜線に出ると風が吹き、少し肌寒いので長袖を着る。ワリモは割物って書くようだが、登山道は割れたような石だらけ。だからきっとワリモ岳って言うんだよ〜と話ながら登っていく。すると突然ワリモ岳の頂上が現れた。道標がなかったら素通りしてしまいそうになる頂上だった。  鷲羽岳は本当に鷲が羽を広げたような形をしていてかっこいい。頂上直下の道にはエアリアマップに危険マークがついていたので、怖がりなわたしはちょっとビビっていたが、なんてことのない道でほっとした。頂上に着くと、すでにたくさんの人がいて、頂上から見える風景をみんな思い思い堪能していた。(三俣山荘から空身でピストンしている人が多かった。)ここから見える頂上は本当に素晴らしかった。雲一つない青い空をバックに富士山も槍も見える。雲ノ平も祖父岳も。そして三俣も黒部五郎も見える。すぐ下に見える鷲羽池もエメラルドグリーンでとってもキレイ!わたしたちも景色を十分堪能し三俣に向かって下山開始。この下りはとても長かった。さすがは鷲の羽に見えるだけある。三俣山荘から鷲羽を見上げると「こんな所を降りてきたのか〜」と思わせる。  三俣山荘では、待ちに待ったラーメンである!今回、行動食は少なかったので山に入ってからチマチマ食べて空腹を満たしていたわたしは、小屋でラーメンを食べるのをと〜っても楽しみにしていた。ラーメン一杯1000円。あっという間にたいらげてしまう。ぜいたくにもコーヒーまで飲んでしまった。気分もすっきり。1日がようやく始まったような気分。  いくさんと二人、とっても元気になって三俣蓮華の頂上へ向かう。途中、振り返ると鷲羽を筆頭にワリモ、水晶がど〜んと目の前に見える。どこにいても存在感のある鷲羽岳。なんだか好きになってしまった。途中出会ったおじさまに「九州から来られたんですか?」と声を掛けられる。いくさんが「九重山」と大きく書かれた一張羅のTシャツを着ていたからだ。いくさんは「みんなに九重部屋って言われるんですよ〜」と答え、笑いが起こる。そんな具合で登っていくうちに、三俣蓮華の頂上に着いた。百名山なだけあってかものすごく人が多い。団体さんもいる。頂上では、高天原でもお会いし、ワリモから一緒だった単独の登山者から乾燥マンゴーをたくさんいただいた。とっても美味しかった!ここからも槍がよく見えた。太郎兵衛平からず〜っと槍が一緒だ。大きく見えたり小さく見えたりする。入山した当初、景色を眺めてみて分かる山は、槍だけだったが、地図を見ながらぐる〜っと一回り歩いて来たことで、だいぶ多くの山を識別できるようになってきた。また少し山が身近になったような気がする。  もう今日の行程はほとんど終わったような気持ちで三俣を後にし、黒部五郎に向かう。が、またまた甘かった…。すぐに着くだろうと思っていただけに、黒部乗越を過ぎてから黒部五郎小屋までの下りは、これでもかというくらいあるように感じた。  黒部五郎の小屋とテン場はとても雰囲気のいい所だった。工事中だった雲ノ平と比べるとこっちの方が想像していた雲ノ平のテン場に近かった。  今日の夕食は、昨年の夏合宿で川島さんが絶賛していた山岳シリーズのカレー。簡単にすぐに作ることができた。おまけにお肉もちゃんと入っており、美味しかった!ちょっと高めだけれど、軽量化を考えると持っていく価値あり。一袋を二人でちょうどよかった。カレーを満喫している時、秦谷さんにそっくりな人がテン場を横切っていくのが見えた。いくさんにそれを言うと「秦谷くんに似た人なんていっぱいいるよ〜」との答え。妙に納得してしまい、目の前にあるカレーをほおばる。しばらく後で小屋のトイレに行ったら、今度は竹村さんにそっくりな人に出会う。でも竹村さんにそっくりな人はわたしを見ても無反応。あれっ?違う人なのかなぁ、と思い声を掛けるのが躊躇された。でもやっぱりそっくり!!なんとなく気になったので、下の方のテン場を見に行くと、河原さんがいた。あのおヒゲは間違いない。「河原さ〜んっ!」と声をかけると、やっぱり雪稜夏合宿の沢班だった。総勢7名で賑やかだ。いくさんと一緒におじゃまし、チーズとワインをいただいた。  4日間、文句なしのお天気だったのだが、明日から崩れてくるとのこと。ラジオを聴いてみたが、上手く電波が入らず、小屋で情報収集。明日は太郎平にもう一泊してゆっくり帰る予定だったが、朝一時間早く起き、黒部五郎から折立まで一気に降りることに決める。

8月14日(土)

 この日は折立まで降りてしまうつもりだったので、早く目が覚める。順調に5時に出発できた。空を見るとやっぱり雲が厚い。お天気が崩れるとわかると気分も暗くなってくる。5日目のため疲れも少し溜まってきたような気もする。黒部五郎へは、稜線からと五郎カールからとの道があるが、小屋の人の話では稜線からの方は時間がかかるとのことなので、カールから行くことにする。  カールまでは、なだらかな良い道が続く。途中で笠雲がはっきり見えた。天気が崩れることを確信する。それでもしばらくは雨は降らなかった。五郎カールから稜線までは急登。しかし、高天原からの帰りの岩苔乗越への急登を思うとあっという間に稜線に出たように思う。  稜線に出ると風はきつく、ガスがかかっており霧雨のような雨が降っている。分岐にザックを置き、レインウェアーを着て頂上に向かう。10分ほどで頂上に着いた。当然、視界はゼロ。歩いてきた稜線が見えるかな〜と楽しみにしていただけに、とっても残念。道標の前で写真だけ撮って、すぐに下山する。  分岐から急坂を下りていると、雨が止んできて、す〜っとガスが晴れて稜線が見えた。それだけで、なんだか嬉しい。しかし、しばらく行くとまた雨足が強くなってきた。いくつもの小さなアップダウンのある稜線を、黙々と歩く。太郎平から黒部五郎に向かう登山者とたくさんすれ違う。こちら側から入る人の方が多いのだろうか?まだかなぁ、まだ着かないかなぁと思いながら、景色も見ず(見えず)、レインウェアーの帽子をしっかり絞り、前に進む。太郎平の小屋でラーメンを食べることを楽しみに…。  まだ中俣乗越にも着いてないと思っていたら、道標が見えてきた。「赤木岳」と書いてある!「もう赤木岳まで来たん!?」といくさんと二人で嬉しくなる。少し元気も出てきた。赤木岳に「雷鳥が多い」という看板があったが、北ノ俣岳の頂上を過ぎてすぐに、雷鳥2羽に出会った。わたしたちを見て怖がる様子もない。わたしは雷鳥を見たのは初めてだった。高所の山の中で、厳しい天候の中でもたくましく生きていける雷鳥をちょっと尊敬の眼差しで見てしまう。  北ノ俣岳も過ぎ、太郎平までもう少しで着くと思っていたら、ここからが長かったー。太郎平に近づくにつれ、木道が作りかけのまま置いてあった。もう少ししたら、きっとまた綺麗に整備されるんだろうなぁと思う。ようやく見覚えのある太郎平の綺麗なトイレ(水洗!)が見え、小屋に到着した。  小屋の前にあるベンチで待望のラーメンを作る。気温と雨のせいか、なかなかお湯が沸騰しなかったが、暖かくてとても美味しかった。山でのラーメンは最高!わたしたちがラーメンを作っている間にも、折立からどんどん登山者がやって来る。こんなにお天気が悪くても山に入る人がけっこういるんだなぁと改めて感心する。  山から帰るのは寂しいが、お腹も満足し、下山を開始。見覚えのある道をひたすら下る。当たり前だがず〜っと下りのため、三角点を過ぎてからはかなりきつかった。膝がカクカク。やっとこさ折立ヒュッテに着いた。駐車場に行くと、今日の朝に黒部五郎に居たなんて嘘のように感じられた。山の中と地上は本当に別世界。  白樺ハイツというアパートのような温泉に入り、帰路につく。ここの温泉は帰り道にあり、ゆったりしていて割とよかった。おススメ。

 今回、わたしは純粋な縦走というのは初めてだった。(昨年キレットに行ったのだが、メインは滝谷クライミングだったので…)おまけに計画も好き勝手に立てることができ、貴重な経験となった。何も考えずに静かに山を満喫できる山歩きも、たまにはいいなぁと改めて思える山行になった。快晴が続いたのもよかったと思う。本当に幸運だった。ただ、いつもの山行では行動食が余っていたので、今回はいつもより行動食を少なくしたのだが、少し足りなかったのが反省(その代わりキレイに行動食は無くなったのだが)。想像以上に山では食べていたことに気が付いた。  帰ったら体脂肪がいつもより4%強も減っていてビックリ。その代わりか足が信じられないくらいパンパンにむくんでいた…。

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ikuの感想

久しぶりのテント泊での長期縦走となった。しかし、タイトルの「ゆっくり」というのを信じたのと相棒がわがままが効く娘なのとで、気分的にはお気楽山行となった。おまけに、計画もお任せコースで私は参加するのみで、とても嬉しいルンルン遠足気分である。

雲ノ平と高天原は前に裏銀座を縦走したときに、下に見える緑の絨毯のような丘を見て、いつか行きたいと思っていた。そして山の奥にある温泉の高天原にもぜひ行きたいと思っていた。

写真の整理をしながら、「こんなんとちゃう! もっと綺麗かった! お花畑の花が写っていない! 富士山が見えていたのに無い! ブツブツ…」文句ばかりが出てくる。どうしていつも写真を見るとガッカリするんだろう。私の目はもう老眼の域に入り、おまけに近視である。よく見える上等の目をもっている訳ではない。なのになぜ、そんなに綺麗に見えていたのか? 

そこで気が付いたのだが、人はものを見るとき「心」でも見ているということだ。芸術作品や音楽もそうである。感動というのは人間に与えられた感性だと思う。そして人それぞれ感性も違っている。

「ただこの景色を一幅の画として観、一巻の詩として読むからである。」

漱石の草枕の一節である。

まさに私にとっては今回の目に映る風景は一幅の画であり、一巻の詩だった。帰る日まで感動の連続だった。そして時間の許す限り、ゆっくりと観賞できたのも幸せな気分でいられる理由だと思う。

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