西海谷縦走・海谷渓谷散策、青海黒姫山(無雪期ハイキング)

メンバー CL秦谷・SL上田・西村
期日 2004年9月17日夜〜9月20日
山域 頸城山塊
山行形態 ハイキング
文責 秦谷

行程

2004年9月17日(金)
京都駅2145=(京都東〜親不知間 有料道路)=2600親不知駅
9月18日(土)
0500起床0530=0620三境パーク0650〜0850頸城駒ヶ岳0920〜1030鬼ヶ面山1050〜1125海谷分岐1140〜1210鋸岳1250〜1310海谷分岐1324〜1429海谷渓谷1450〜1530取水口1545〜1630三境パーク=焼山温泉=頸城大野駅
9月19日(日)
頸城大野駅=糸魚川=上越=飯山=馬曲温泉=妙高高原=小谷温泉=糸魚川=親不知グリーンパーク(温泉・無人駅めぐり)
9月20日(月)
0500起床0530=0620電気化学工業社登山口0640〜0917青海黒姫山山頂0950〜1150電気化学工業社登山口=親不知道の駅=湯神子温泉=(立山〜京都東 有料道路)2030京都駅

所感

 頸城山塊を一望できる、ちょっと渋めの縦走路−頸城駒ヶ岳から鋸岳の、通称・西海谷山域−は昨年鉾ヶ岳に登って以来秘かに気になる場所だった。こんなマニアックな山域を歩きたいと考えるのは僕くらいのものだろうと思っていたが、意外にも関心を持ってくれるメンバーが2人も集まった。僕と同じく頸城の異形に毒されつつあったのは、上田さんと西村君。奇しくも、昨年10月に頸城の鉾ヶ岳と早月尾根をやったときと同じ面子である。上田さんからは、海谷渓谷に降りるラインをとればもっとおもしろくなるのではないかと提案をいただいた。
 もとより三者の目的ははっきりしている。メールで打ち合わせを手短に行い、出発の日を迎えた。

9月17日(金)

 親不知ICで北陸道を降り、親不知駅でしばし仮眠をとる。
 時折通過する貨物列車の轟音が、久しぶりに駅で寝ていることを意識させる。

9月18日(土)

 糸魚川から10km強南下した「三境パーク」は最近整備されたキャンプ場。
 西海谷縦走〜海谷渓谷ラウンドのコースタイムはWebサイトの報告等によると9時間と十分に日帰りの圏内である。一方で海谷渓谷で泊まりたい思いがあり、計画の段階では行程を1泊前提で考えていたが、翌日は雨との予報。やはりここは一日で抜けたほうが賢明だ。会から共同装備でテントをお借りしていたが、幕営用具は上田・秦谷のツエルト2張で対応することとし、軽量化を優先する。
 まずは頸城駒ヶ岳。取り付きからしばらく行くと傾斜が急に。ザイルを編んだはしごあり、木をつかんでは高度を稼ぐモンキー登りを強いられる箇所あり、ちょっとアスレチックな縦走路だ。この前の台風?水害?の被害か、まだ壮年と思われるぶなが縦走路をふさいでいる。ここは元気な西村君に先頭に立っていただき、コースを切り開いていただく。
 2時間半で山頂に到着。名古屋からハイキングに来たという4人組に会う。人に出会えて意外でもあり、少しがっかりもする。このあたりの心の動きは微妙である。
 曇ってはいるが、稜線の向こうには雨飾・焼山を認める。北側には異形のピーク・烏帽子山、阿弥陀山が。やっぱり西海谷の稜線は頸城の展望台だった。あと1月時期を後らせれば、紅く燃えた最高の秋山を楽しめるだろう。
 さてここからは情報も少ない縦走路だ。ザイルも2本持ったし沢装備もハーネス・下降器・シュリンゲ程度は持ってきた。日本登山体系から西海谷周辺の記述も確認したし、準備はぬかりない。
 鬼ヶ面山からの下りはすぱっと切れ落ちた箇所があるが、明らかに渋いと思われる難所にはロープ・はしごがかけられている。渋めの縦走路であることには変わりないが、落ち着いて歩きさえすれば登攀具を持ち出すほどのほどでもない。
 鬼ヶ面山から下った鞍部をいったん登り返したところで海谷の分岐が現れる。道標・トレースもしっかりしている。確かに入山者は少なそうだが、荒廃しているほどでもない。ここに荷物をデポして鋸岳を往復。途中高度感あふれるはしごを通過。聞くと上田さんがもっとも心配していたのがこの箇所らしい。
 鋸岳の山頂から海谷渓谷が二股に分かれる様子が認められる。上部は滝になって落ちている。左股を直上すると焼山に着けるようだ。二股を挟む尾根は残雪期など登りがいがありそうなたおやかな尾根だった。
 分岐に戻り、上田さんのザックから梨が飛び出す。思わぬ糖分&水分補給に感激する。さてここからは上田さんに先頭に立っていただきルートの探索をしていただく。ところが迷いそうな場所には赤布がついており踏み跡も明瞭。尾根から海谷までの下降路を縦走路に継ぐ第二の核心と考えていただけに、すこし拍子抜けした格好だ。
 1時間強で渓谷に降りる。岸壁と険しい尾根に挟まれた谷がこんな穏やかとは。広い河原でありながら、ここまで林道が入っていないのも嬉しい。水は残念だが少し濁り気味だ。昨日まで雨でも降っていたのだろうか。
 途中、釣り師と思われる3人組と岩登りの装備を担いだ2人組に会う。増水を想定して沢装備も持ってきたが、それほど厳しくもなさそうだ。最後で素足で徒渉したのを除いて、できるだけ石伝いに岸を渡っていく。
 取水口からは安全地帯。ここからがくんと川の水量が減る。黒部川ではないが、海川は取水口に生命を奪われてしまったかのようだ。
 6:50の出発から10時間弱で三境パークに帰ってきた。思ったより西海谷は人くさかった。しかし、情報も大してない場所にあえて立ち入るからには、それなりの準備と心構えをもって臨んで、ちょうどよい加減なのだろう。下山して殊勝にも「もっとしんどいと思っていたんだけど…」と言葉を交わしながら、みんな笑っていた。
 帰る前に、もう一度三境パークの脇から流れる水で喉を潤す。頸城の岩で磨かれた水がしみ出ている。味に鈍感な僕でも、明らかに「おいしい」と感じることができる水だった。
 糸魚川に下りた後は焼山温泉で汗を流し、糸魚川市の郊外の無人駅−頚城大野駅を今夜の宿にする。もちろん、眠るのは最終列車から始発までの間だけだ。21時半過ぎから翌朝6時過ぎまでぐっすり眠る。
 上田さんと西村君に駅寝になじんでもらえるか気をもんでいたが、その心配も杞憂だったようだ。

9月19日(日)

 予定を一日切り上げてしまったため、この日はドライブと温泉めぐりに充てる。
 ここはやはり頸城エリアにこだわり、糸魚川〜上越〜妙高高原〜小谷温泉〜糸魚川の周回ルートをとる。新潟県はおしなべて雨だったが長野に入るとと一転して暑いくらいの快晴に。きっと南アルプスは快適なんだろうな。ここは僕らもリフレッシュせねばなるまい。飯山から少し南下した木島平村にある「馬曲(まぐせ)温泉」は山の中腹にある温泉。地元の山を一望できる露天風呂で日焼けするんじゃないか?と思うほどのんびりする。
 妙高高原からは笹ヶ峰(火打山の登山口)を通って峠越え。笹ヶ峰から金山登山口の直上までは10km強ダートが続く。木洩れ日のもと森林浴できる、歩けば間違いなく快適な小径なのだが、車では気が滅入りそうになる隘路ではある。峠を越えて、来年の残雪期?紅葉の時期?に秘かに行きたいと狙っている金山の登山口をチェックしておく。小谷温泉からなら完全舗装だし、車も難なく駐車できそうで安心した。
 小谷温泉では雨飾荘より少し上がった場所にある町営の露天風呂を冷やかす。信州版湯の滝があるといわれる「熱湯」の源泉は立ち入り禁止で願いは叶わなかった。
 糸魚川市内で地元の出版社の書籍に目を通し、今回の山旅3度目になるマックスバリュで食材を買い込んだあと宿さがしに移る。大糸線の根知駅はホームにも待合室があり終電・始発を気にせず眠ることができる寝心地の良さそうな駅だったが、明日の登山口は糸魚川市から5km西の青海黒姫山。根知駅は登山口まで20km近くあるし少し遠いか。続いて寄った親不知の道の駅はテントは張れるがひっきりなしに通るトラックの轟音でお世辞にも快適とは言い難かった。ところで国道を走っていて親不知に近づくにつれ「親不知森林公園」の案内が増えてきたのが気になっていた。国道に明瞭に案内されているからには、きっと何かあるはずだ。国道からか細い林道を5km弱進む。何もなければ、まだ戻れる時間はある。果たして親不知グリーンパークは最近整備されたと覚しき真新しいオートキャンプ場だった(04年のエアリアには記載がなかった)。連休なのに先客は一組のみ。どうやらまだ穴場のようだ。今日こそ会から借りたテントで寝ようと思っていたが、小雨が降り始めたため、屋根のある炊事場にテーブルで即席の寝床を作って寝る。いつしか雨は止んで空が澄んでいた。満天の星を仰いで寝るなんて、そういえばこれまでなかった。

9月20日(月)

 昨年10月鉾ヶ岳を目指す前に立ち寄った国道8号のコンビニから望んだ姿に心惹かれて以来、青海黒姫山は秘かに気になるピークだった。
 登山口は電気化学工業社の敷地から入る。青海黒姫山周辺は石灰岩質の地質、青海は石灰石の採掘で有名な土地らしい。そういえば貨物列車で「青海駅常備」の表示がされた貨車をよく見かけるが、ここが出所だったのか。祝日も関係なく工場は創業している様子、この谷と流域一帯すべて電気化学工業の配下にあるようだ。使い込まれたプラントから気体が勢いよく吹き出る様など、まるで、アニメの世界に迷い込んだようだ。電気化学工業社の作業道をありがたく利用させていただき、標高差300mを稼ぎいよいよ登山路へ。先日の頸城駒ヶ岳ほど傾斜は急ではないが道が粘土状のため歩く際非常に気を遣う。木が茂っていればモンキー登りもできるのだが、ここは注意が必要だ。
 しばらく樹林帯を歩き、直前標高1140mを過ぎてようやく展望が開ける。惜しくも雨飾方面はガスで覆われているが、栂海新道が親不知に落ちる様子を間近に認めることができた。
 次回ここを訪ねるときは、北陸新幹線が青海の谷を縫って走る姿を見られるかもしれない。
 帰りは、立山インター近くの湯神子(ゆのみこ)温泉で汗を流す。

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