京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | F/T/I(奈良山岳会)、Y(奈良山岳会)、iku(京都雪稜クラブ) |
---|---|
期日 | 2004年10月15日〜10月16日 |
山域 | 北アルプス 錫杖岳 |
ルート | 錫杖岳烏帽子岩前衛壁・左方カンテ |
山行形態 | クライミング |
文責 | iku |
(ピッチの切り方参考のトポはアルパインクライミング(山と渓谷社)) 「錫杖にいかへんか?」といつものホシダクライミングウォールでいつもの通りいきなりFさんに誘われた。「どこ登るのん?」「私らだけやったらそんな難しいとこはいかへん、左方カンテや」とクライミングの合間に話が進む。「1ルンゼも行ってみたいなぁー」と私。「いくさんはYさんとつるべやさかいに、Yさんがよかったらそうしたらええやン」… と言うようなわけで、急にいつもの通りことが運んでしまう。私たちのホシダでの井戸端会議である。後は、待ち合わせの場所と時間ぐらいで話が出来てしまう。Fさんは普段も忙しいお人で、その合間をアクティブにクライミングに向かっていらっしゃる。そんなFさんは私にとっても刺激的な存在で、尊敬もしている。これもいつもの通り、計画は日帰りで忙しい。しんどそうだなぁー、と少し引いてしまっていた。しかし、昨年同時期に見た素晴らしい紅葉にも心引かれる。昨年は家族で行ってお気楽のオールフォローだった。今度はつるべで行くことになるだろう。少しずつ気持が前向きになってきた。
15日の夜天理駅にFさんご夫妻が迎えに来てくださり、いつもの待ち合わせ場所天理教の駐車場に向かう。メンバーは5名、Tさんの車でゆったりと出発。今回は全く運転しなくて良かったので、とても嬉しい。槍見温泉駐車場に16日3時頃に着く。仮眠は2時間。これは辛い。朝食を済ませ、6時に出発。とても寒かったが歩き出すとすぐに暑くなってきた。寝不足のせいか、足が重い。何とか、重い足を必死で上げながら取り付きに8時前に着く。
すでに2パーティー先行していて男女の1パーティーが用意をしていた。私とYさんが4番目に続く。
後発3人を残して私がフォーローで行く。Yさんが前にリードしなかったピッチを今回リードになるようにした。特に問題はない簡単なルート。
上に先行パーティーがいたので少し前でピッチを切る。凹角を行くのだがガバだらけでぐいぐい行ける快適ピッチ。上に先行者が見え、手前でピッチを切り、Yさんにビレー点を通り越してそのままピナクルの下までザイルを延ばしてもらう。そこで少しの待ち時間の後私もピナクルの下まで行く。ちょうど前の女性が3ピッチ目の核心を乗越そうとしているところで、かなり苦戦をしている。
前の女性が乗越せるまで少し待つ。Yさん「なんや難しいと思っていたら、大ガバやん」といってひらりと乗り込む。フォーローの私、「ほんとそのとおりやん」と思う。
Yさんのビレー点から今度は私が右に回り込みバンドを行くと先行パーティ男女がいて先に行くように言われる。二人を通り越して木でビレー点をとり、Yさんに来てもらう。ふと上を見ると上にちゃんとした5ピッチ目のビレー点があった。そこまで行っておけばよかった。またYさんに私を通り越してそこまで行って貰う。ここで、前を通り越した男女パーティーは下山すると言うことだ。5ピッチ目のチムニーにはその前の3人パーティーの3人目の人が登っていた。
一段高くなったところからチムニーである。足を一段上げると右のボルトに手がとどき、これで一安心。ザックがいったん挟まり抜けにくい。そこを無理やり左の壁の外に左足を出し乗り込むとチムニーから出られる。それで右の壁と左の壁に両足を交互に突っ張るとテラスに登れる。しかし、私はこのテラスからもう一段上に登るのに迷ってしまった。右に行っても上にもホールドらしい物はない。しょせん4級なんだからそんな訳はないと左の方に行っても分からないで、ウロウロする。右の岩角に両手をレイバック気味に置いて体を左に振ったら、難なく登れた。結果としたら、どうと言うことはなかった。上はわりと広いテラスになっていて、先行3人パーティーが5ピッチ目にとりついていた。そのパーティーのビレー点の右横の木で終了点を作る。
左側のフェイスを登る。細かいカチホールドがしっかりある。一見壁が立っているので、見た目には難しそう。しかし大丈夫!! またもや、フォローの私はビレー点を通り過ぎて次の7ピッチを行く。
バンドを私が行く。わりと左手が張ってきていたので、テラスで一休みできると思うと、ホッとした。
8ピッチ目の広いテラスに出る。先行パーティが登っていて、そのパーティの一人が腰痛でリタイヤしたと言って座っていた。ザイルをあげて、Yさんを迎える。次は核心ピッチなので小休止をして行動食を取りながら歓談する。そうこうしているうちに、上からザイルが落ちてきて若い男性が下りてきた。京都の岳連系の山岳会の人でお会いしたことがある。続いて下りてきた女性も見たことがある。少し話す。登る用意をして待っていたら、その彼らのザイルが挟まっているようで落ちない。登り返すようなことを行っているので、また待たなければならないようだと困るので、私が登って外してあげることにして登りはじめた。
フリーで行けそうだとも思ったが、A0で抜ける。上はチムニーで乗越したところの岩の隙間にザイルが挟まっていた。ザイルを外して左の壁にクラック2本走っていて左のクラックを足場に登り出す。右のクラックの上の方にもボルトがあるが、左のカンテのほうにもボルトはある。簡単そうなの で左の方向に行き登りだしたとたん、上からザイルがバサリと落ちてきた。ムム、何じゃ!!という感じ。幸いにも当たらなかったが、良い気持ちはしない。すぐに上から人が下りてくる。それもこれから向かっていこうとしているところをだ。何や?何や! 何という無神経。その人は私が目に入っているような様子は微塵もなかった。下で私のザイルに乗っかっている自分のザイルをほぐして下に垂らしている。一言も言葉が発せられなかったのは、よっぽど寡黙な人なんだろう。私は、無事にザイルを抜くまで、そこでしばらくただひたすら壁にしがみついていた。なんとも後味の悪いピッチとなった。壁からザイルが無くなったのを確認し気を取り直してまた体を動かす。フェイスの細かいホールドを拾い左カンテから乗っ越すとテラスとなる。懸垂をする人はここを終了点としている。ここからは、雪の被った焼岳がお椀を伏せたように見える。そういえばここに立つのも3回目だ。
いよいよ最終ピッチだ。トポには10ピッチ目灌木帯2級があるが私たちはここで最終とした。左のもろいフェースから右の樹林帯に入っていく。木で終了点を取る。フォローの私はまたビレー点を通り越し上のテラスまで行きザイルを引き揚げYさんを待つ。時計を見ると11時15分だった。2時間45分の登攀だった。握手で喜びを分かち合い、窮屈なフラットソールから足を解放してくつろぐ。後続のトップもしばらくしてから登ってきた。私たちは灌木帯をもう少し上の広場まで登ることにした(トポ10ピッチ目)。穂高連峰の大パノラマが開けた。頂上にはうっすらと雪が積もっている。槍ヶ岳の小槍や白出沢の上には奥穂小屋まではっきりと見える。二人でとりとめのない話をしながら、素晴らしい眺めに酔いしれる。上部の岩峰左の方には、1ルンゼを登攀して詰めてきた3人が見える。いつもながら、来て良かったと思えるひとときだ。
順番に全員が集合し、くつろぐ。みんなの顔も笑顔で溢れている。そこへもう1パーティー2人が上ってきた。記念写真を撮ってもらう。そして、踏み後を上の岩峰に向かう。
烏帽子岩の下部では、先ほど右の稜線で見かけたグループに出会う。御在所でよくお会いするMさんのガイド登攀だった。烏帽子岩から西肩までの巻き道は落ちたら絶体絶命のトラバース。慎重に行く。そして、西肩から谷筋に降りると初冠雪の雪が残っていた。急勾配なので滑らないように慎重に降りる。すぐに熊笹の中に突入。熊田笹を持ちながら降りる。クリヤ谷のクリヤ舎の少し上あたりに出合う。いつものビューポイントで錫杖にお別れをする。朝に見たときよりもこころなしか紅葉は美しく見える。
4時20分駐車場に着き、新穂高温泉「ひがくの湯」(・0578-9-2855・タオル・バスタオル付800円)温泉に向かう。この温泉は6時に終うので要注意である。前も時間切れで入れなかったことがある。露天風呂なので、寒かった。
Yさんお薦めの飛騨定食を楽しみにしていたが、こちらは時間切れで間に合わなかった。残念だった。Tさんが車をとばしてくださったおかげで無事に電車に間に合い帰れた。感謝!
今回は奈良山岳会のメンバーの中に私を入れていただいたが、とても気持ちの良い山行だった。最初は、日帰りと言うことで迷っていたが、天気にもメンバーにも恵まれ、時間的にも日帰りにしては余裕も持て参加させてもらって良かったと思った。それと、昨年行ったときには、各ピッチの岩の記憶が全くなかったが、今回はしっかり印象に残っている。それは、お気楽フォローとリードの違いだと思う。どちらでも、私は楽しい。