【正月合宿】仙丈ヶ岳(積雪期登山)

メンバー 片山、高橋ひ、吉田、松田、角谷、西村
期日 2004年12月29日夜〜2005年1月1日
山域 南アルプス 仙丈ヶ岳
山行形態 積雪期登山
文責 角谷

報告と所感

出発まで

過去の天気図を調べた。
12月21日は、新潟市は平年より27日遅い初雪。12月28日は、九州では平年より36日遅い初雪だった。クリスマスの頃から本格的な冬の天気になったようだ。近年暖冬で騒がれているが、今年は特に暖かく感じる。
今年から冬山を本格的にやってみようと思った。
テント生活の充実をベースとした合宿だったので、まずは、基本から積み上げて行こうと思い、参加した。担当は、装備係であった。装備表の作成を行ったが、共同装備の受け取りは、高橋さん、吉田さんにまかせた。住居が京都より離れていることで、メンバーには迷惑をかけている。

2004年12月30日

戸台まで車で行き、戸台川沿いに歩く。天気もさほど悪くなく、気温も高いのですぐに汗ばんだ。
鋸岳に行く高嶋パーティーを見送って、丹渓山荘まで行く。ここで、滝の氷結具合の偵察をしてから、八丁坂の急坂にさしかかった。衣服を着込みすぎたため、すぐにオーバーヒートし、なかなかペースが上がらない。みんなに遅れまいと衣類を脱ぐのをためらったことも災いして余計にしんどくなった。やっぱしダメだ。慌てて服を脱ごうとしたときには、既に顔や背中は汗でぐしょぐしょになり、髪の毛は、冷たくなっていた。プラスッチックブーツでの歩き方にもなかなかなじめず、余計な神経を使っていた。やっとの思いで北沢峠につき、一安心した。キャンプ指定地は、大小さまざまなテントが張られていて、とても華やかだった。テント設営後、夕食を準備し、楽しい酒を飲んだ。そう言えば、今回のパーティーは全員男ばっかりだ。

2004年12月31日

2日目は、仙丈ヶ岳へピークハントだ。チェルト、シュラフカバー、シーバー等の最低限の荷物をパッキングして、いざ出発。小雪が舞い、天気は悪い。森林限界を超え、小仙丈ヶ丈が見えるころには稜線に出ていた。ここでアイゼンを装着し、更に進む。積雪は少ないようだが、天候が悪いので、強風が吹き荒れていた。小仙丈ヶ丈から先の岩稜帯では、時折、体が持っていかれそうな位の強風が吹いていた。本で習った耐風姿勢を初めてやった。暫く耐えていると一瞬風が緩むときがあり、そのときすかさず通過する。こんな場所がいくつもあったので、かなり怖かった。風速は30m/sは超えていたと思う。そして、何より最悪だったのは、粉雪が顔や目に刺さって痛いことだった。あまりに痛いので、途中、岩陰で持ってきていたサングラスをするもすぐに自分の吐く息でレンズの内側が曇ってしまい、それが凍て付いてしまった。凍ると手で擦っても取れず、ぜんぜん前が見えない状態だった。それでもサングラスをとれば目に雪が突き刺さるし、しかたなく顔を斜めにしてサングラスの隙間から前をみて歩いた。なかなか思うように歩けず、苦心していると松田さんがサングラスをはずして、片手で目を保護しながら歩けという。なるほど、まだこれのほうがましだ。ただ、急な箇所では、片手ではやはり怖い。片山さんや高橋さんはゴーグルをしており、それでも下半分は曇っていたが、両手がフリーな分、ぜんぜん楽そうだった。強風時のゴーグルの重要性を認識した。強風では、サングラスは役に立たない。仙丈ヶ丈のピークもかなり風がきつく5分とたたない間に記念撮影を撮ってすぐさま下山した。元きた道を引き返し、ようやく樹林帯近くまで来るとやっと一息つくことができた。
今日は、高嶋パーティーとテン場で合流する予定だった。テン場にはまだ来ていなかったので、この天候だと合流が無理かもしれないと思っていた。夕食の準備をしているころに高嶋パーティーがやってきた。聞くと鋸岳縦走をあきらめて往路逆行し、わざわざ片山パーティーと合流するために八丁坂の急坂を登ってきたくれたようだ。松田さんが嬉しそうな顔をして言った。「わざわざ、ここまで何しに来たん?」
今日は、大晦日。みんなで酒を酌み交わす。高嶋パーティーと合流しても男だけだった。
あれ?稲野さんは?実は、鋸岳下山中に滑ってお尻を打撲したので丹渓山荘前にテントを張って大事をとっているとのこと。うーん、大丈夫だろうか?

2005年1月1日

3日目。今日は下山日だ。早々にテントを撤収して出発。あのしんどかった八丁坂は下りでは楽チンだった。あっという間に丹渓山荘についた。テントに声をかけると稲野さんと岡川さんの声。どうやら稲野さんも元気そうだ。
ここで、下山組と残留してアイスクライミング組にわかれた。下山中、太陽も姿をみせ、ガスが徐々になくなっていく。1日違いでこの有様。今日ピークハントする人がうらやましかった。でも、しかたがない。逆に貴重な経験をさせてもらった。良しとしよう。

合宿を振り返る

合宿では、テント生活のみならず、歩行技術や登攀技術、観天望気、シーバー通信など基本的な多くのことが学べた。
特に印象に残ったのは、テント生活での酸欠対策と防寒を両立させた喚起への心遣い、食事準備の共同作業です。また、食事については、今回の食糧係りの西村さんは、手間暇をかけてペミカンを作ってくれたので、それを使ったカレーは非常においしかった。また、今回の山行で思ったことですが、冬山では、特に朝食に気を使わなければと思いました。行動中は、食事をする暇も少ないので、朝食が少ないと馬力が出ないように思います。今回の朝食では、正月らしく雑炊に餅を入れてくれました。ただの雑炊だけでは(雑炊は増水なので)腹持ちが悪いと思います。わたしは、雑炊だけでは、食後にパンをかじっているくらいですからすぐに腹が減る。これは、アルファー米0.5〜1合ですから茶碗1杯の250kcal以下です。水分は補給されていますが、カロリーが少ない。これに餅を入れてくれたのはありがたかった。また、今後の山行では、餅の変わりに、おかき、ベビースター、イカフライ等高カロリーで軽量化がはかれて、且つ、美味しいものが増えればと思いました。
就寝中は、シュラフはダウン800gで、結局厚手のフリースは持って行っただけで、行動中も含めて使うことはなかった。就寝時は、Tシャツ、アンダーウェア、薄手のジャージ、薄手のフリースでした。寒くは無かったですが、濡れた首巻等を乾かすためにシュラフに突っ込んでいたのを腹の上に乗せていた。おかげで、下痢になってしまった。衣服を乾かすときは、腹の上でなく臓器を冷やさないよう、脇において乾かすほうが、良いと思いました。
行動中は、衣服の調節に失敗して、思うようにペースが伸びなかった。ATペース(心拍数140回/分)を意識して歩いているにもかかわらず、すぐに汗をかいてしまう。これは、単に汗かきであることも原因しているが、衣服の調節が悪いのが第一の原因であると思った。行動中の衣服の着こなしは、積極的に改善しなければと思いました。
今、考えている着こなし方法は、稜線までのうっそうとした樹林帯で雪崩の危険性がない場合は、長袖のアンダーウェアーにアウターの2枚で、天気がよければ、アウターを脱ぐ。稜線で風が強いと想定される場合や天候が悪い場合、雪崩の危険箇所などは、事前に服を多めに着る。
今回の山行では、稜線に突っ込んでから、自分が薄着であることに気づき、寒かったが、あまりの強風で服を着るどころか、ザックをおろすこともためらわれた。ザックの中を開けたら、間違いなく中身は吹き飛ばされるだろうし、ある程度先の天候や状況を予測した対応をとることが重要だと思った。
最近、読んだ気象遭難事故記録では、剣岳の二つ玉低気圧で、四方八方から強風にあおられて、服を着ることも出来ず、被っていたチェルトが吹き飛ばされ、4名中3名が死亡、1名のみ自力で雪洞を掘って天候回復時に下山した。この時、服をたくさん着ていたことが幸いして、自己脱出したと記されていた。とにかく、着たいときに着れないということだけは、避けなければならないと思いました。今回の稜線上での強風は、一歩間違えたら低体温症になるという、恐怖の一端を感じたようで、非常に身が引き締まりました。
パッキングも出来るだけ、よく考え、出しやすいところにゴーグルや重ね着を用意すべきだ。
小型のポシェットも便利だと思った。松田さんは、小型のポシェットに地図を入れており、見たいときにすぐにだしていた。あれは、なかなか便利だと思った。かさばらないし、コンパスなどの小物や飴玉などの行動食も若干入れられる。10秒ほど立ち止まったりするときなどに、パッと飴玉を口に放り込むのにも便利そうだった。ホワイトアウトすると、恐らく頻繁に地図読みしなければ、道に迷うだろう。いちいち、ザックの雨蓋にしまうのは効率的ではない。
今後の装備の軽量対策として、たわしは必要ないのでは?と思った。持って行ったが、稼働率が低かった。メンバーは、靴と靴をぶつけて雪を払っていたし、多少の雪が入っても、つまんで捨てればよいからだ。
水分補給については、体重65kgの私では8hの行動では最低1.3Lは消耗するそうだ。無論、これには汗をかきにくい体質のひとや、トレーニングを積んでそうなった人、その日の体調などいろんな因果関係があるので一概にはいえない。ただ、今回の山行では下山後も同じ体重であることを意識して望んだ。その結果、温泉の体重計で測定したら64.7kgで殆ど体重に変化がなかった。これは、水分補給と食糧補給が十分足りていることだと考えた。因みに1日の消費量は4,000kcal前後だと推測している。これらは、今後の長期山行に備えて参考になった。
合宿中、天候が悪かったが、私には、よい勉強になった。これからも、冬山経験をどんどん増やしていって、適切な判断ができるようになりたいと思いました。

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