比良堂満ルンゼ (積雪期アルパインクライミング)

メンバー 山川(関西岩峰会)・前田(関西岩峰会)・野木(大阪山の会)・廣澤・稲野
期日 2005年1月22日〜2005年1月23日
山域 比良 堂満岳
山行形態 クライミング
文責 稲野

今回は初の雪稜以外の会の方との山行だった。
違う会の方との山行は、お互い刺激し合うとてもいい機会であり、少し世界が広がったような感じだった。
楽しい時間をすごすことができ、とても充実した2日間だった。

この山行の目的は登攀とビバーク訓練。
メンバーは岩峰会の山川さん 前田さん 大阪山の会の野木さん 雪稜クラブの廣澤さん 私の5名だった。
山川さんから堂満アルファールンゼと中央稜そしてビバーク訓練の誘いを受けた。
堂満ルンゼと聞き、まずどこにあるのかというところから始まった。またルンゼ??って感じでした。そしてインターネットで検索をして山行報告を読んだ。
おそらくこの時期からラッセルがメインになるかもしれないが、一緒に山行することにした。
アルファールンゼと言っていたが、実際は1ルンゼのことで、このメンバーの中で山川さんだけが数年前に一度行ったことがあるルートだったようだ。中央稜は誰も行ったことが無いルートで、1日目の夜にみんなで山行報告を読み、ルートを確認しあった。報告書には1ピッチ目の取り付きで苦労し、敗退したということが書いてあった。1ピッチ目が難しいのと、日曜の天気はあまりよくない予報だったので、敗退するかもしれないと思っていた。しかし、取り付きまでは行こうと言い、みんな成功したい気持ちでいっぱいだった。

2005年1月22日  堂満1ルンゼ 晴れ
イン谷口〜大山口〜防砂提〜堂満ルンゼ〜堂満岳〜防砂提 テン場

この日の私の身体の調子はあまりよくなかった。先日の連休から身体の調子が悪くなり、風邪が完治されてなかったからだ。イン谷口から防砂提まではゆるやかな登りなのに、けっこう身体は疲れを感じていた。
防砂提に到着すると、先行パーティがいた。3人組でハーネスなど装着をし、同じ堂満ルンゼに行く感じだった。
私達もそこで用意をした。計画の予定では金糞峠で泊まる予定だったので、全装備を担ぎ堂満1ルンゼの取り付きに向かった。1ルンゼ取り付きに行く途中で左手に行くと中央稜の取り付きがある。トレースの後から先行パーティは中央稜へ行ったようである。よって、私たちが1ルンゼにとりついた最初のパーティとなった。数日前に降った雪のため、中央稜との取り付きの分岐点からトレースがなくなりすぐにラッセルが始まった。
このルンゼは雪崩が多いと聞いており、今回も環境的(天気、先日に雪が降った)に雪崩が起きてもおかしくない状態で、起きないかどうか取り付き時点で心配した。雪崩が起きるかどうかという判断は難しく、少し歩いてみて、足の感触から大丈夫だろうということから進むことにした。
雪質は少しやわらかく、足はすぐに沈んでしまい、うまくなかなかすすまなかった。わかんを付けたほうがいいということでわかんをつけてのラッセルとなった。
わかんの威力はすごかった。私は今回わかんを持っていってなくて、みんなに迷惑をかけてしまった。自分のわかんを買うことを決めた。冬山に行くのであれば通常の装備だなと、反省した。わかんを付けてなかった私はひとり沈んでいた。私たちの後ろから一人叔父さんが登ってきた。一緒に6人でラッセル交代をしながら進むことになった。トップのラッセルは荷物が重いため、荷物を置いて空身でのラッセルで進んだ。最後のほうは、ラッセルをしてわかんで固めていただいたあとを歩かさせていただいたが、一人再度ラッセルをしていたときもあったぐらい、沈みに沈んだ。固め方というか歩き方が悪かったのだろう。
その叔父さんもわかんをはめてなかったが、何故か私みたいには沈まないのである。ラッセルもとても上手で、後ろから見ながらとても勉強になった。
この日は結局、岩というものには出会わず、雪に全てがうまっており、最後までラッセル続きで、10時半に取り付き、頂上に14時ごろに堂満岳に到着した。
時間が早いことから今日のテン場を金糞峠から取り付きの防砂提に変更した。
テン場に15時半ごろ戻ってきた。
前田さんは日曜に用事があるため下山し、4人で一泊することになった。

テントをたて、夜ご飯を食べ、お互いの山行の話や、これからの山についての話など、また明日の中央稜の話をたくさんし、盛り上がった。とても貴重な時間だった。
21時になったら今晩メインのビバークとレーニングを開始することにした。朝までし続けるか、途中で切り上げテントで寝るかは決めずに始まった。
テント近くに少4人が座って入れるぐらいの穴を掘り、4人が横に並び、お尻にザックをしき、座った状態でツェルトをかぶった。背中は雪があたっていた。
気温は高度も低いことから、さほど寒くはなくガタガタ震えることはなかった。風も雪もなかった。格段に状況はいいものだった。
しかし、だんだん雪があたっている背中から身体は冷え、お尻は痛くなり、最初は足をのばし、背中ももたれていたが、しだいに体育座りしかできなくなっていた。あくびは頻繁にでて、身体は眠く、目は閉じているにもかかわらず、一睡もすることは出来なかった。0時ごろにあまりにも寒いため、先に帰った前田さんからの差し入れのぜんざいをツェルトの中であたため食べた。とても美味しくて、身体が少し暖まった気がした。
何度かテントに戻ってシュラフに入って寝たいと、自分に負けそうになったけれども、みんなのおかげで、1時45分までもつことが出来た。次の日の中央稜のために4時間は寝ようということで、2時にテントにみんな戻った。足先が痛いほど冷えていた。またお尻が痛くて痛くてたまらなかった。身体はガタガタ震えるという寒さというのはなかった。
テントに戻ってシュラフに入ったときはとても幸せで、すぐに寝付くことがで、起床時間の6時をすぐにむかえた。

1月23日 堂満中央稜 晴れ
テント場〜中央稜〜堂満岳〜テント場

6時半にやっと起き上がり、ゆっくりと朝ご飯を食べ、8時半に出発準備が完了した。
9時にテント場を出発し、9時半に取り付き到着、ザイルの準備をし、取り付いた。
私と山川さん 廣澤さんと野木さんの2組で登った。
初めてのパートナーで緊張したけれども、今思い返せば、違和感もなく楽しく登れたと思う。

1ピッチ目 山川リード 9時半スタート

見た目は階段状に見え、岩もとてもつかみやすそうなガバに見えた。
いざセカンドでとりついたものの、最初の一歩が大変だった。少しかぶってるようにも感じた。左足を大きくあげて、左手にあるちょっとした岩をつかみ一歩を引き上げた。報告書に書いてあるように、ちょっと最初苦労した。後ろに来ていたパーティの方いわく、まだ今日は雪があるからそれほど高さはましで、もっと雪がなくて高さがあるときはかぶった状態になるので大変ということだ。最初の一歩をあげるとそのあとはピッケルでひっかけたり、足は岩にアイゼンをかけ、次の一歩を進めていくことができる。また右手のしっかりとした枝にランナーをとることができる。
このランナーをとったあとは雪面を登っていく。

2ピッチ目 山川リード

ここはとてもやらしいルートで、昨日1ルンゼで出会った叔父さんが中央稜は一箇所やらしいところがあると言っていた。この2ピッチ目のことである。 ビレー点からはどうなっているかは見えなかった。 ここも山川さんがリードしてくれた。一つ目のランナーをとったあとが大変そうだった。
セカンドで行ってみるとわかった。少しクラックになっており、足は安定するところはあるが、次のランナーの支点をとり、登っていくためには左側に大きく身体を振り出さなければいけなかった。しっかりとした手がないためなかなか足をだすことが出来ない。まず、左足をあげるために、クラックに右手 右肩をおしつけ左足をあげ、右足を広げて安定させ、左手でピッケルを岩にひっかけ、左足をだし、体重移動をした。その一歩がでればあとは慎重に登っていけばテラスがある。
この時も後ろの方がアドバイスをしてくれた。一つ目のランナーを取ったとこからまっすぐ登るのではなく、そこからすぐに左に身体を振り出し、アイゼンを岩にひっかけて、登っていけば登りやすいということだった。今回は雪が岩についていたため、わざと避けて私たちは登った。後ろの方はピッケルで雪をおとし、岩にアイゼンをひっかけて登ってきた。

3ピッチ目 稲野リード

ここは急な雪面の登りがあり、枝を掴んだり、雪面にピッケルをひっかけたり、次のしっかりした枝にピッケルをひっかけたりして、手を安定させ、足を引き上げて登る。
足元に体重をかけすぎると壊れてしまい、ずり落ちてしまう。
ここを登りきらないとしっかりとしたランナーはない。

4ピッチ目 山川リード

ルンゼを右側の尾根にトラバースする。
尾根につくと、尾根の左側を登っていく。ここは枝がけっこう雪面からでており、しっかり掴んでいけば登り易いルートである。ランナーも枝でとることができる。

5ピッチ目 稲野リード

しっかりした枝でランナーをとった後は、身体を左側に出ききって、左面を登っていく。左側にでる最初の一歩が少し緊張した。この5ピッチ目も枝があるので、掴んで登ることができ、ランナーも取ることができる。

5ピッチ目終了点で、ザイルを片付け、堂満岳に向かって登った。途中まではトレースがあったが、昨日入っていたパーティか今朝一番に取り付いたパーティかわからないが、途中で懸垂をしておりていた。なので、またラッセルが始まった。堂満岳まではけっこうあり、後ろから来られていた2人組のパーティと一緒に6人で交代しながら登った。堂満岳頂上まで1時間ほど登った。13時半に到着、4時間だった。
今日の堂満岳頂上はとても人が多く、賑わっていた。天気も22日よりもよく、とても綺麗に琵琶湖が見え、対岸も見えていた。
5ピッチ目からラッセルしているときに1ルンゼが見えていたが、今日の1ルンゼもとても人が多かった。
とても気持ちよく緊張感もあったけど、楽しく登れた。5ピッチをとおして、2ピッチ目が一番怖かったし、難しかったような気がする。
初めての雪の登攀。厚い手袋をしていると岩をしっかり掴めないし、掴んでる感覚がないのが怖いので、この日は天気もよかったため、薄手とフリースの手袋を重ねてなるべく感覚がわかるようにして登った。でも風がきつかったり、寒いとこんな手袋ではいけない。
今回は強い風にふかれることもなく、天候はとても快適で環境的に恵まれたと思う。
また、支点もしっかりとるところがあったので、ハーケンをうったり、ピッケルやアイスバーをつかうところはなかった。
これから次へのステップに進んで登っていきたいと思ったのと、支点のとりかたや、確保の仕方など勉強し、トレーニング・勉強していきたいと思った。
今回は本当にいい経験が出来たと思う。
また素敵なメンバーに出会えたと思う。
これを機会にまた一緒に行きたいし、一緒にみんなでステップアップ出来たらいいなと思った。

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