御在所3ルンゼ (アイスクライミング)

メンバー CL玉田、西澤
期日 2005年1月21日夜〜2005年1月22日
山域 鈴鹿 御在所岳
山行形態 アイスクライミング
文責 玉田

所感

1月某日

新宿から5000円で京都行き夜行バスに乗ると、途中1回だけ10分程度、中央道のとあるS.A.に停まる。特にトイレに行きたいわけでもないが、なんとなく義務感に駆られてバスの外に出ると、汚れた雪や、心地よくしっかりと冷えた空気や、ディーゼルの排気ガスの臭いがたまらなく冬山を思い出させる。内地にいる間に、とにかく一度は山に行かなければならない。

1月21日(金)晴れ

丸太町発(23:10)→道の駅着(25:40)→就寝(26:00)

本当は早朝発のほうが、荷物が少なくて済む。しかし今回は、どっちかと言えば前夜発で行きたかったのだ。暗い中車を走らせ、寒いところで不十分な睡眠をとり、テンションの上がらないまま出発するという一連の手順もまた、山行の大事な要素であるような気がする。準備に手間取り、結局出発が遅れてしまった。

1月22日(土)晴れ

起床(5:00)→道の駅発(6:10)→ゲート(6:30~7:15)→登山口(7:40)→藤内小屋(8:25)→渡渉地点(9:00)→前尾根取り付き(9:40)→登り始め(10:00)→敗退決定(11:20)→3ルンゼの氷瀑(13:00)→西沢登り始め(14:00)→玉田登り始め(14:40)→稜線(16:15~16:30)→藤内小屋(17:15)→林道着(17:40)→ゲート(18:00)

気温は零度を下回っておらず、しっかり冬用シュラフを使ったにも関わらず、寒かった。装備分けをしたり、荷造りをしたりしてから、鈴鹿スカイラインのゲートまで車を走らせる。昨夜雪が降ったらしくゲート周辺では新雪が積もっており、御在所では今までに見たことのない積雪量である。俄然うれしくなってしまった。朝飯を食べて出発する。登山道にも当然ふかふかの新雪が積もっており、雪玉を投げずにはいられない。藤内小屋周辺ですでに積雪が60~70cmあり、この先は更に深雪が期待される。藤内沢の入り口で登山道を離れ渡渉すると、普段は岩だらけの沢がただの白い斜面に変貌していた。うれしいことにトレースが全くなく、ふかふかの雪が腰の上まであり、久しぶりにラッセルをすることができた。こんなにうんざりするくらいの雪は本当に久し振りで、今後もしばらくお目にかかることができないであろう。先頭を独り占めして心ゆくまで楽しんだ。前尾根の取り付きに到着し、準備を整え、とりあえず西沢リードで登り始める。が、1P目の最下部の部分が登れない。仕方ないなあと思いつつ、今度は私が取り付くが、情けないことにやはり登れない。左手の甘いホールドで耐えながら、右手で次のホールドを探さないといけないのだが、腕に全くこらえ性がない。その後空身になって挑戦しても、やはり2人とも突破できない。そうこうしているうちにたくさんの後続パーティーが藤内沢に入って行き、そしてついに聞きなれた懐かしい声が響いてくる。最初に落っこちた時点から、完登が難しいのは分かっていたが、それでも行けるところまでは行きたいと思っていた。更に何度も落っこちて、この先も大して進めないことが明らかになってきたことから、簡単に敗退を決める。不思議なことだが、あまり悔しくもない。
岡川・鈴木・狩野Paに合流して、3ルンゼを詰めることにした。敗退を決定した時点で、私の心のスイッチはお気楽エンジョイ山行に切り変わっており、以後はこれまで半年間たたけなかった減らず口を、思う存分吐きながら登る。先頭パーティーが藤内沢に入ってから大分経つが、登り始めるとすぐに追いついてしまった。ひどい深雪で、どうやらラッセルが大変なようだ。せっかちな我々はすぐさま先頭を譲ってもらう。我々5人と強そうなおじさん2人で残りの部分をラッセルし、少しは上がったが依然はかどらないペースで登る。おかげで口を動かす余裕が十二分にあり、ラッセルしているにもかかわらずモノポイントアイゼンを履いている連中を、散々からかうことができた。それでも着実に前進し、1時間強で氷瀑にたどり着く。たくさんの人間が同時に着いたおかげで少々混み合い、我々は食事をしてから最後に登ることにした。ルートは2つあり、右はやや急なルンゼ状で氷結状況はあまりよくなく、左は傾斜の緩い氷瀑で、右ルートよりは氷が張っている。先輩に譲ることを知らない西沢とリードを争った結果、先ず西沢がリードで登り、一度降りた後に私がリードすることになった。どちらのルートを登るか迷うが、氷結状態の良い左を登ることにする。西沢が1P登ってから懸垂で降りたあと、いよいよ今シーズン最初で最後のアイスクライミングを始める。下から見るといかにも簡単そうで、事実あまり傾斜もなかったが、それでも足もアックスも思うように決まらず苦労する。しかも登っている最中にアイゼンが片方落っこち、少し戻って付け直したりしている間にすっかり疲れてしまう。最期の数メートルは傾斜が立ってルートの核心となっているが、ここに至る頃には腕が完全にパンプし、握力もなくなっていた。力の入らない腕で、しっかり握れないアックスを弱々しく振るい、ずりずりと無理やり登る。半分は覚悟をしていたにもかかわらず、落ちずに済んだのは運が良かった。こんなに氷が硬いのなら、アックスをしっかり研いでおけばと反省しても、後の祭りである。2P目はただの雪の急斜面で、あっけなく稜線に出る。無粋な建物とスキー場だけの山頂に未練があるはずもなく、装備をしまったらすぐさま下山に入る。くだりの急斜面は程よく滑り、何回も何回も、しつこいくらいにしりもちをついて、それでも急いで降りる。最後の車道は緊張の糸のすっかり切れた5人でしゃべりながらたらたら歩き、それでも最後までリヒトを出さずに済んだ。やはり雪玉を投げずにはいられないが、若人達はやり返してこない。うちの会では、歳を取るほどに大人気がなくなっていくのだろうか。
山の後には欠かせない温泉を楽しみ、夕食にはとんかつを食べて、すっかりフルコースの山行を楽しむことができた。帰りは渋滞に巻き込まれ、眠気と闘いながら運転し、京都に着いたのは深夜を回っていたが、これもまた山行の一部である。

総評

事前に練習もせず、出発前には準備に手間取り、いざ登ればへこへこで、少し登ってすぐにパンプするという情けない有様であった。更に1年後、私はどうなっているのだろう。しかしそのおかげで、結果的にはそれなりに全力を使うことができ、最初から最後まで山のすべての要素を楽しむことができた。おまけに予想外の大雪に恵まれ、御在所では期待していなかったラッセルも堪能した。あと何か欠けるところがあったとすれば、ルートに対する思い入れであろう。それでも、例え簡単なところとはいえ、初めてのルートを一つ登りきれたことはよかった。

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