錫杖岳 北沢大滝〜本峰(冬季アルパインクライミング)

メンバー 鈴木・野村
期日 2005年4月5日夜〜4月6日
地域・山域 岐阜県 錫杖岳
山行形態 冬季アルパインクライミング
文責 鈴木

コースタイム

 槍見駐車場 0400
 錫杖沢出合 0530
 北沢大滝登り出し 0640
 中央バンド 0820(途中1P)
 正面ルンゼ登り出し 0840
 (0850 ルート変更後、右のルンゼへ)
 稜線・ ダブルモアイ前 1020
 本峰 1120
 錫杖沢出合 1240
 槍見駐車場 1350

装備

アイススクリュー5本、アイスフック1本、エイリアン4本、ハーケン類4本、スリング類適当

所感

錫杖沢出合

錫杖沢出合

 岐阜の石際さんのHPを見て以来、夏でも冬でもいいから、北沢大滝を経由して錫杖岳の本峰に登ってみたいと思っていた。するとほらも吹いてみるもんで、ひょんなことら野村さんと話が合って登りに行くことになった。
 しかし、
1回目・・・予定日に低気圧直撃とのことで中止。
2回目・・・予期せぬ前線発生により、山行前夜の高速上で吹雪に遭う。高山手前で諦めることに。
 てなわけで、3度目の正直となりました。天気予報は”快晴”。

 朝3時に起床。僕は緊張してあまり寝付けなかった。
 新月間近の星空の下、槍見の駐車場で準備して4時にヘッドランプつけて出発。土日に誰か入っていたのかトレースも残っており、まだ雪も締まっていたので、夏と同じペースで進めた。錫杖沢出合の手前ぐらいで夜が明けたが、穂高連峰に隠れるため前衛フェースにはまだ陽が当たらない。1ルンゼはまだかろうじてつながっていた。期待通り錫杖沢出合まで堅いデブリが達しており、ラッセルに苦しむことなく北沢大滝取り付きまでアプローチ。

北沢大滝

北沢大滝



 北沢大滝は氷というより、磨かれた氷雪といった斜面で、バイルがとてもよく刺さる。さすがに時期が遅かったのか、一箇所水が流れている部分があった。氷の区間はすぐに終わり、あとはひたすら雪の斜面を登る。陽が当たり始め、すでに暑い。
 中央バンド目指してひた登っていると、烏帽子岩がすでに右手すぐそこに来ていた。すでに前衛フェースの頭を見下ろす所まで登っていることに気付き、いつもはいかに端っこを登っているかを思い知った。

 一番傾斜の無さそうな溝を詰め、最後の草付を登り切ると、ちょうど中央稜と頂上岩壁帯の接触点に出た。そこから正面壁方向に岩壁沿いにトラバース。シュルンドもあり気持ち悪く、ロープを出した。
 上部岩壁とその周りの雪稜の風景は日本離れしていた。正面壁の右上にはでかい上部雪田と、その下に数十メートルサイズのごっつい”つらら”が垂れ下がっている。まさかあの真下にあるルンゼが正面ルンゼじゃないよなー、と話し合ってみると、まさにそこだった。

左下から右上するのが正面ルンゼ

左下から右上するのが正面ルンゼ

 とりあえずこれ以上気温が上がる前に登るべく、さっさと取り付いた。核心のはずの2、4ピッチを野村さんにお願いして、鈴木リードで取り付く。が。足下にぽっかり大きな口をあけた大洞穴のシュルンドに、かろうじてつながった氷壁の出だしからして、溶け始めてグスグスの氷。きまりの悪いスクリュー。ちょっとずつ落ち始めたシャーベット状の雪。ちょっとだけ上がって先に見えたのは、岩に張り付いたベルグラ。”悪い”としか言いようのない、僕には対処不可能な状況だった。
 途中で登れなくなりそうならやめとけとの野村さんの声に、降りますと即答して、わずか2mで敗退した。

 野村さんも正面ルンゼを登るのはやめて、途中に通り過ぎた、頂上に最短距離で突き上げているルンゼから登ることにした。(石際さんのHPにある写真で、グラスリンネのすぐ左隣にある細い白いライン。)
 コンテのまま雪壁をだいぶ上がってから、細い溝状の氷に取り付いた。ビレイ点にナイフブレードを打ったが、結局僕はこれを回収できなかった。(すみません)
 野村さんリードで、かなりぐずつき始めた氷を登り始めるが、頭上の尾根から、溶けてびちょびちょの雪がガンガン降ってくる。ひどいときは、一瞬空が真っ暗になるぐらい降ってくる。とにかく、上の方で落ちてきた雪がぜんぶ、二人がいる氷の溝を通って流れてゆくので、ビレイしているだけの僕は体下半分ぐらい埋まるは、首から雪が入り込むはで、全身濡れネズミ。よりにもよって、暑すぎてジャケットの下はTシャツ一枚になったばかりだったので、寒すぎ。そんななか、野村さんは気休めのスクリュー3本で、段状の氷を登って見えなくなり、50m一杯伸ばして東尾根の稜線まで出た。

本峰手前の稜線

本峰手前の稜線

 それから急いで僕がフォロー。かなり錯乱気味の罵倒をしながらびしょびしょの氷を登り、草付にバイルをぶっさし、雪壁を登ると、槍も笠ヶ岳も一面見える稜線の上にひょこっと出た。しかし僕は、手と体が温まるまでしばらく稜線上で悶絶。
 やっと落ち着いて見ると、目の前のモアイ様の岩峰のピークが錫杖本峰だった。
 直上する雪壁を登ると、頂上に出た。11時20分。

 西側の樹林帯をトラバースして主稜線を巻ながら、北尾根経由で2100mのコルから下降すると、懸垂せずにブナ林のなかを歩いて降りることができ、とても気持ちいい。

 行きとはうって変わってゆるんだ雪面を踏んでへろへろと下り、駐車場に戻った。
 栃尾の露天温泉に向かう道で、温度表示は24℃と出ていた。
 京都に戻ると、桜がほぼ満開になっていた。

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