白馬岳主稜(残雪期アルパイン)

メンバー CL マツダ、タカハシ、イナノ、カノウ、ヤマグチ、ニシザワ、ヒロサワ
期日 2005年4月22日(金)夜〜4月24日(土)
地域・山域 長野県 白馬連峰
山行形態 残雪期アルパインクライミング

コースタイム

4月22日 晴れ
22:50京都駅(発)―(名神・中央・長野道)―
4月23日 晴れ
(長野道)―R148―4:00道の駅[白馬](仮眠)/8:00(発)―8:30二股/ 9:20(発)―12:00猿倉/12:30(発)―13:50白馬尻/14:30幕営完了(泊)
4月24日 快晴
3:00起床/5:00白馬尻(発)―7:00八峰/7:20―9:00五峰附近―10:00三峰 ―10:30二峰取付/11:30―12:00本峰取付/12:45―14:35白馬岳山頂/ 15:00(発)―16:10白馬尻/テント撤収/17:00(発)―17:50猿倉/ 18:00(発)―19:15二股/19:40(発)―20:00みみずくの湯/21:00― (夕食)―R148―(長野・中央道・名神)―(4/25)2:00京都(着)

食糧

4/23夕食 カレー、漬物他、4/24朝食ぞうすい
行動食3食、予備食1食携行

装備

冬山基本装備一式、登攀具(ロープは8.5mmx60m(1本)、x50m(2本)、携帯電話、シーバー、幕営用具一式(ジャンボテント1張)

報告と感想

1. 山行概要

白馬岳主稜。真直ぐに山頂に突き抜けるそのスノーリッジは、白馬の名称とも相俟って、ロマンと憧れを掻き立てる。今回は、その白馬岳主稜に7名でチャレンジすることになった。
22日の夜いつものように京都駅を出発。翌23日夜明け前に白馬道の駅到着。仮眠。この日は白馬尻までの予定なので、朝少しゆっくり目に起きて準備。晴天で気分も爽快。ただ、あれれっ、なぜか白馬岳の方面だけ雲が湧き出ているのが気になる。晴天の時でも信州側にだけ雲が発生するのは良くあること、と自らに言い聞かして、8時道の駅を出発して二股へ。まだ、二股ゲートは閉まっている。林道は完全に除雪されていて全く大丈夫なのに・・・。とはいいつつも、皆々意気軒昂に楽しく林道を歩く。歩くこと1時間半で猿倉山荘に到着。ここからは全面雪景色となり、紫外線も強烈である。私は白粉のようにべたべた日焼け止めを塗って(鏡がないので自分では分からなかったが、周囲の目にはそう映ったそうだ)、白馬尻を目指す。夏は結構幅の広い林道がまだ完全に雪に覆われている。歩くこと約1時間余りで白馬尻に到着。今日はここまで。雪崩の危険を避けて、小高い丘にテント場を整雪して今日のお宿を作る。テント設営後八峰の方を見上げると先行パーティが登っている。彼らは八峰かさらにその上で幕営するのであろう。我々は、明日に備えて今日はゆっくりと休むことにする。

24日午前3時に起床し、朝食も早々に出発の支度に取り掛かる。午前5時過ぎにテント場を出発する。もう明るくなり始めているが、幸いなことに雲ひとつ出ていない。天気予報で分かってはいたことだが、心強い、いや、それよりも爽快である。ただ、予報によれば、夕方には天候が崩れるという。先を急がなければ・・・。
先行パーティのつけてくれたトレースのおかげで、順調に高度を稼ぐことができる。2時間弱で八峰付近の先行パーティのテント場跡に到着。ここから雪稜が始まる。トレースがついてはいるものの、スノーリッジ上の登高は愉快である。雪質も腐ってはおらず全然良い。安心快適に進んでいけた。七峰、六峰と順調に登る。先行パーティーは一体いくつあるのか。テント跡は5つほどあった。
先頭のYくん、Nくんはさすがに早い。私は、最後尾を時折立ち止まりながら進んでいった。五六のコルから五峰への登り、振り返って雪稜を見下ろすとまさに写真で見たような美しい光景が目に入る。サングラスを取って生の色をみれば、宇宙まで見えるかのごとき濃いブルーに白銀の雪稜。最高の贅沢である。杓子尾根も美しい。
休憩を挟みながら出発して5時間余りで三峰に到着。ここで先行パーティーに追いつく。我々は先に休憩を終え、先に進ませてもらった。荷を軽くして一日で登りきるという、Mさんのタクティクスは成功したようだ。何より疲れ方が違う。
程なくして、二峰取付き。先行パーティがザイルを出しているので、しばし待機。時間が掛かるので二手に分かれて登ることになった。左側雪壁をNくん、Yくん、Hさんそして私が、右側ルンゼをMさん、Iさん、Kくんが、それぞれ登る。結論から言うと、この作戦はあまり上手くなかった。左側の雪壁が余り良くなかったからである。岩稜が登り口の雪を溶かし始めており足のスタンスが決まらず、結構時間が掛かった。
しかし何だかんだ言っても直ぐに二峰を過ぎて本峰取付き点に到着。白馬主稜のハイライト。70度程度の急な傾斜が山頂目掛けて突き抜けている。ワクワクしながら見上げると、第1先行パーティーは既に雪壁の上部にいる。何とNo rope ! そして下には待機中のパーティがいくつか・・・。取付き点で暫く休憩することにする。
待つこと30分余り。第2先行パーティーも順調にロープを伸ばしていっているが、順番を考えると先は長い。Mさんの判断で、横に別ルートを切り開くことにする。Mさんと私とで足場を作り、Yくんにリードをしてもらう。順調に登攀していくが、最後の上部ほぼ垂直部分が難しそうである。結局Yくんは、左側にトラバースして先行パーティーのルートを使わせてもらって頂上に出た.その次が私。思ったより傾斜がきつく感じる。上部の垂直部分近くは雪がザラメ状で氷化しており、結構怖い。が、ともかく真直ぐ上がる。ルートを開くために雪を削るが、上手く削れない。ままよっ、とアックスを差し込んで強引に上に進み、片足を上げて腹ばいになって頂上に出た。いつものことだが、どうも私の登るスタイルは、格好がよくない。とにかく登ったからいいか。
引き続いて、I、N、K、Hの各氏が登り、殿はMさん。みんな順調に登ってきた。全員が登攀を終了したのは、午後2時35分であった。登攀終了点が白馬岳山頂というのは、最高に格好良い。周りを見渡すと剱岳が精悍な姿を見せている。槍ヶ岳も穂高も見える。愛も変わらず雲ひとつない青空が続いていた。

いつものとおり山頂でみんなで記念撮影とヤッホーをして下山する。大雪渓は尻セードを交えながら一気に下る。これが楽しい。午後4時テント場着。今日一日の山行を語らいながらゆっくり片付けて午後5時出発。二俣の駐車場に着いたのは日も暮れた午後7時だった。しかし、ヘッドランプはつけることはなかった。
みみずくの湯で、みんなで汗を流し、一路京都へ。日も変わって深夜1時30分ごろであった。強行軍であったが、しかし、あの美しい雪稜は何にも勝るご褒美であった。好天に恵まれ7名で充実した山行ができたことは、素晴らしいことだ。

(文責:Hiroki T)

2. 各メンバー感想

N

チャレンジアルパインに載っている写真を見て以来、いつか行こうと思っていたコースにタイミングよく便乗させていただくことができた。しかし、毎週のようにどこかしら登っているせいもあり、本業のほうが忙しく準備する余裕もない。出発の日も結局9時過ぎまで手が空かず、前日までに適当に詰め込んだ荷物に幾分か足して家を出るが、バス停に着くまでに携帯、計画書、地形図と色々忘れてしまったことに気づく。しかし取りに行くのは間に合わないのであきらめることに。出発早々、先が思いやられる。
一日目は白馬尻までの予定なので、白馬の道の駅でのんびり7時過ぎまで眠る。朝日は暖かく、もはや冬の香りは残っていなかった。二股まで車で行き、林道を二時間ほど歩いて猿倉山荘に到着した。途中、何台かの自転車があり、帰り道が楽そうだなぁとうらやましく思う。猿倉の駐車場には佛大山岳部捜索隊、と張り紙のされた自転車も置いてあり、そろそろ発見されてもよい時期だなぁ、と少し感慨にふける。
猿倉からは少し腐れた雪の中を1時間ほど歩く。途中スキーやスノボで下ってくる人達に会って、雪の状態はあまりよくないことを知る。白馬尻につくと、主稜までの上りに取り付いている行列が見える。昨夜の雪が重く、進むペースは非常に遅い。結局八峰の手前で宿泊するようだった。僕らは大雪渓の谷筋から少し登ったまばらな木々の中に泊まることにする、先行パーティのトレースにかける期待はでかい。Hさんの天気図練習を見つつ講師のY君のダメ出しが入る。それでも初めて書くにしてはかなり上手だと思い、しばらく書いていない僕はちゃんと書けるのか不安になった。こっそり隠れて書いてみよう。。。
翌日は長時間行動となることが予想されていたので、3時起床で準備を始めるが、結局出発することができたのは5時過ぎで、すでに明るくなっていた。昨夜は思ったより冷え込んだせいで、日中緩んだ雪は急激な温度差で表面に明らかな弱層ができていた。Y君の北大式弱層テストを見せてもらう、雪柱は僕が普段やっているものより大きく掘り出していて、こちらのほうが力の入れ具合の微妙な差による弱層の判断が小さくなりそうだと思った、やはり他団体の方法、技術などを見る機会があるのはよいことだ。八峰までの上りはきつくはあったもののトレースが付いているおかげで順調に高度をかせぐ、このペースで行けば予定よりかなり早く下山することができそうだ。
いくつか斜面に生まれたクラックを越え、先行パーティの立派な泊地を尻目に八峰までたどり着くと、いくつかのパーティがそれほど遠くない箇所に見える。遅い!湿雪のラッセルはかなり重労働なようだった。このままでは追いついてしまいそうだ。
雪質は思ったより安定しており、何箇所かを除いて、特に不安もなくリッジを越えて行く。結局、二峰までの登りでロープを出している先行パーティに追いついてしまった。僕らは最後のほうから左右二手に分かれてロープを出したが、トレースが付いている後続であればロープは不要であった。
二峰を越えると写真で見た山頂までの上りが見えた。先頭のパーティは既に取り付いており、ノーザイルで突き進んでいた。下から見るとかなりの高度感があってヒヤヒヤしながら見ていたが、雪庇を切り崩して見事に登りきった。僕らの前には更に3パーティほどあったので、マッタリモード全開で雪の上に寝そべる。のんびりシリトリなどをしつつひたすらゴロゴロ、こういうのんびりした雰囲気が僕は好きだ。しかし一本のルートで4パーティほど登るため長時間の待ちとなる。ラッセルしていないし出発が遅かったので宿命かなぁ、とマッタリモードを加速させて眠りに付こうとした頃、痺れを切らしたようで新しくルートを開拓することになった。(もっとのんびりしたいよ〜)
Y君リードで既に開かれたルートの右側を登るが、スノーバーがなく中間支点が作れないため、最後の雪庇は精神的に直登できないようだった。結局開拓済みのルートを譲ってもらい稜線まで登りきり、ロープをフィックスしてから後続のTさんが右側の雪庇を崩して登り口を整備してくれた。7人パーティと大所帯であったがプルージックなどを使い早々に登りきった。整備されていたとはいえ最後は少し怖く、リードはしたくないなぁ、と改めて思った。
山頂でお決まりの大声大会をしてから、大雪渓を下っていったが、楽しみにしていた尻セードは雪質が悪く、まったくのように滑らないのであった。足が埋まり不快な下りを駆け足で終え、残していったテントなどを回収する。重石にと乗せていった雪塊は完全に溶け、テントは水浸しになっていた。
その後は難なく猿倉まで下りきったのだが、アプローチシューズにと残してきたスニーカーがなくなっていた。長年愛用していた靴だけにショックはでかい、何のために持ってきたのだか。。。最近は山スキーなども盗まれることがあるようだが、山仲間のモラルの低下は嘆かわしい。結局プラ靴のまま靴ずれを我慢して股までと降りたのであった。
雪のしまった時期の一日アタックであったが、初めから最後まで雲ひとつなく、春の陽気の中の登山は疲れた日常を忘れさせてくれた。最後は学生という身分を利用して夕飯をおごっていただいたCLを初め、のんびり雪歩きに付き合ってくださったみなさんと、一夜を共にしたY氏に特別に感謝。
なくなったと思われた僕の靴は、小屋の人が除雪でぬれないようにと小屋の中に保管してくださり、そのまま忘れられたようでした。かつ、無料で送ってくださり非常に感謝です。山の人のモラル低下なんて皆無ですね。。。

Y

前日までのハードなスケジュールで一時はドタキャンさせてもらおうかと本気で悩んだが、行ってよかった。
抜けるような青空は宇宙の色がした。青空と雪稜は本当にいい組み合わせだと思う。
雪稜クラブっていい名前だなー、なんて考えながら登っていた。岩稜クラブとか、雪壁クラブだったら入らなかっただろうなあ。リードして稜線に飛びだしたあの達成感と開放感!これだから山はやめられない。
誘って下さったMさん、ありがとうございました!僕が日和った核心を果敢に攻略したTさん、格好良かったっす。Hさん、天気図僕よりうまくならないでね。Iさんカレーごっつあんでした。K君、若いっていいねー。Nさん、えーと、日和るんだか楽しむんだかどっちかにしろって(ホントは楽しんでるのバレバレ)。
楽しいパーティーと、おもしろいルート、ホントに最高でした!

M

今回の白馬主稜は、お天気は良い、雪質も良い、で快適に登れた。ただ、先行パーティーが8パーティーほどありルートが整備されていたので、ルート開拓の面白さはない。
その分、それなりに速く登れた。ここのナイフリッジは緩いのでどんどん歩ける。7名パーティーだったが、みんな安定して歩いていたので安心だった。前回は、TさんとNさんの3人だったが、午前中の雨がほぼあがった昼ごろから取り付いたが、そのうち雪になってきたので2・3のコルでツェルトビバークを余儀なくされた。それに比べて今回はとても快適で、且つこの青空と白い雪のコントラストがなんとも美しい。最後のピッチは、ノーザイルの人たちもいたが、われわれは安全のために、前回とは違いザイルを出した。この3月の五竜ヶ岳から鹿島槍の縦走でも一緒だった学生のYさんに安心してトップを行ってもらった。山頂で恒例のヤッホーのあと久しぶりに尻セードをした。計画を全て作成してくれたTさん、日焼け除けの帽子をエレガントにかぶって終始笑顔を振りまいてくれたHさん、忙しいなかいつも美味しいペミカンをつくってくれるIさん、いつもよく気がつきよく働いてくれるNさん、テント場からかなりの距離をラッセルし、ときに奇声を発して元気振りを披露してくれた最年少のKさん、最後のピッチを、他のパーティーが登っている横に新しいルートを作るのはモラルに反しないのかなぁと躊躇しながらも、まったく躊躇しない私の情け容赦のない「行けー」に応えて見事、登りきってくれたYさん、そしていつも、楽をしようとするMさんを表面上は許してくれる、楽しく、愉快な7人パーティーでした。皆さん、ありがとう!!   今度は、不帰一峰がおもしろいでぇ。

八峰取付きからの登り

八峰取付きからの登り

主稜のリッジを登る

主稜のリッジを登る

ナイフリッジを進む

ナイフリッジを進む

美しい主稜線を背景に登る

美しい主稜線を背景に登る

二峰への登り

二峰への登り

白馬岳主稜のハイライト-本峰への雪壁を登る先行パーティ

白馬岳主稜のハイライト-本峰への雪壁を登る先行パーティ

我々はルートを右に拓いて登ることに

我々はルートを右に拓いて登ることに

本峰垂壁を登り切る

本峰垂壁を登り切る

最後のMさん頂上へ

最後のMさん頂上へ


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