京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | CL 時雨山房、大枝山荘 |
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期日 | 2005年5月20日(金)夜〜5月23日(月) |
地域・山域 | 富山県 剱岳 |
山行形態 | 残雪期登山 | 文責 | 時雨山房 |
室堂:09:30 → 雷鳥平10:05 → 11:40剱御前小屋14:00 → 剱沢キャンプ場14:25
04:00起床 → 剱沢キャンプ場05:40 → 平蔵谷出合06:20 → 2600m付近07:10→ 平蔵のコル08:10 → 08:50剱山頂09:10 → 平蔵のコル09:30 → 平蔵谷出合10:15→ 剱沢キャンプ場11:15
04:20起床 → 剱沢キャンプ場06:40 → 剱御前小屋07:25 → 雷鳥平08:10 → 室堂09:15
今回も献花を兼ねて平蔵谷から剣岳へ。KSCの2人の山荘管理人で、京都を発った。今年の剣は、どんな表情で私達を迎えてくれるのだろうか。
5月20日晩、避難小屋の開放された窓から、大枝山荘さんのクルマの低く重たいマフラーの音が聞こえてくる。音が近づくと、「今、来ました」と電話のコール。戸締りを確認して、荷物を積み込ませてもらって出発。高速を快適に揺られながら、睡魔に襲われてウトウトしたころに、立山駅の駐車場に到着。車内でシュラフを広げて、おやすみなさい。長距離運転、ありがとうございました。
朝は、「津軽海峡冬景色」が起床の音楽。各自で朝食を摂り、出発準備を済ませてケーブル乗り場へ向った。今日は、剣沢までの予定なので、ゆっくりと8時発のケーブルに乗り、9時過ぎに室堂に到着。ターミナルから階段を登り展望広場に出ると、みんなが「眩しい―」と一番最初に呟いていた。太陽の光は、冬の間に積もった雪の結晶の変化を早めるかのように、降り注いでいた。半年ぶりの立山の稜線は、雪が溶けて黒々としている。しかし、みくりが池は、まだ厚い氷と雪板に覆われているが、池の端の三日月のような形に溶けたところから、蒼緑の池面を覗かせている。
雷鳥平までは、なにも心配いらないが剣御前までの登りが、私にとっての核心部であるのは隠せない、事実であった。「途中でヘロヘロになったら、、、」と考えると、ますます苦痛は大きくなるばかりであった。昨年は、大きく口を開けていた称名川のシュルンドは今回は見当らず、まだ雪で埋め尽くされていた。いよいよ、登りだ。青空と白い雪の境目を、目指して歩き出した。出だしの30分くらいは、ゆっくりと進むで周りの山々を見たり写真を撮ったりして、休息の時間を作りだす。いきなり「休憩しましょうよ」とは、恥かしくて言えないし、自分のトレーニング不足を感じて、凹むのも嫌なのでトボトボと進むのみであった。最初は辛かったが、登るにつれて調子は良好。1時間40分くらいで、剣御前小屋に到着。出発前の不安は、なんだったのだろうか。正直に表現すると、山に入った回数が少なかったと言うことが、少々の重圧になっていたのだろうと思う。
ここで、2時間以上も5月の陽を楽しんだ。私は、大枝山荘さんが写真を撮りに行っている間、小屋の前で靴と靴下を脱いで日光浴と昼寝を楽しんだ。寝転んで見上げる空には、少し光の傘を広げた太陽が、明日からの天候変化を告げている以外は、なにも不安のない時間だけが過ぎていった。また、剣岳は、頂上雪田の帽子と呼ばれる部分に雪を残し、黒い岩肌を見せていた。
剣沢に下降して、テントを管理事務所の裏のハイ松の現れた台地に設営。ここでも、また昼寝で、日頃の睡眠不足を解消した。風が冷たくなり始めたころにテントに入り、水作りと夕食。ラジオから流れてくる天気予報は、何度聞いても「明日は、昼頃から雨。夜半まで降り続き、突風と落雷に注意して下さい」と、天候が下り坂に向うことを告げてくるのであった。
静かな夜であった。剣沢には、私達のテント一張だけであり、対面の剣沢小屋の発電機の音が、リズム良く聞こえてくるだけであった。目覚めてすぐにテントを出ると、何人かの登山者が、ヘッドランプを点けて早くも剣沢を下降して行った。今日は岩場に取り付くわけではないので、焦る必要はない。
昨日の天気予報通りに、雲の流れは早く天候の悪化を示している。朝食の後、天候が悪ければ平蔵のコルまでと決めて、剣沢を下降して平蔵谷出合を目指した。出合からは、ガスがないのでコルまでを見通すことが出来、2人の登山者が確認できた。出発時に着用していた、カッパのズボンを暑いので脱いでスタート。下部は、多量のデブリで覆い尽くされて、少し斜度が緩くなっており、中間部では岩の混じった雪崩の跡が一条の黒い痕跡となり、雪渓に変化を与えている。幸いに大きなシュルンドは、開いていない。私達は、順調に高度を稼いで、2600M付近の雪が溶けて地肌が出ている所に到着した。ここが、今回の献花の場所である。ケルンを積み、御花を供える。線香に点火しょうとするが、風が強くて着火出来なかった。縦笛で、雪山賛歌、夕焼け小焼け、琵琶湖周航の歌をささげた時、パラパラと一瞬だけ雪が降ってきた。小雨も降ってないのに、突然の雪、。「なんか、不思議ですね。」と、大枝山荘さんと顔を見合わせた。コル直下の急登を終えて、コルに到着したが、時間もあり天候ももちそうなので頂上を目指すことにした。行動食を食べながら、平蔵谷を見下ろすが登ってくる登山者は見当らない。ストックをデポして登りかけようとした時、単独の登山者が頂上から降りてきた。御話によると、もう一人の単独の人がいると言うことであった。今日は、私達が第3登になるわけである。
頂上の祠は、雪の中から屋根を覗かせていた。雨は降り出していないが、風が冷たいのでカッパを脱ぐことが出来ない。写真を撮ったり、行動食を食べたりして過ごした後に、コルから出合まで、一気に下降して行った。出合から剣沢のテン場までの、登り返しが辛いのである。ビールが待っているので、辛抱辛抱で冷えたビールの喉越しを考えつつ登り返した。そして、偶然にもテン場に到着したと同時に、小雨がテントと私達のカッパを濡らし始めた。テントに入り、乾杯した後にシュラフに入って惰眠を楽しんだ。フライに当る雨音が、乾いたパサパサと言う霰に変化し始めたのも、このころだったと記憶している。
夕食後、早くシュラフに入って眠ったので、夜中に何度も目覚めてしまった。今回は、行動時間より眠っている時間のほうが、多いくらいだから当たり前かも知れない。雪が静かにテントを覆っていくので、目覚めるたびに内側から叩いて雪を落す作業を繰り返すと、再びほのかな白い世界が戻って来た。
昨夜の積雪は、15センチくらいであった。黒々としていた剣岳も、新たに白化粧している。剣沢の大きな雪面にあった、シュプールの跡、登山靴の踏み跡も、全部消えて真新しい画用紙のように輝いていた。私達は、剣沢から剣御前、そして雷鳥平へと新雪を楽しみながら、室堂を目指した。雷鳥平から見上げると、剣御前から続く2本のトレースが光り輝いていた。
剣岳、また会う日まで、、、、来年も行きますね。