京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | タカハシ(ヒ)、ウエダ |
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期日 | 2005年8月16日(火)夜〜20日(土) |
地域・山域 | 富山県 北アルプス 剱岳 |
山行形態 | 無雪期縦走 |
地形図 | 欅平、十字峡、剱岳(1:25000図) |
文責 | タカハシ(ヒ) |
朝食:全日お茶漬け 夕食:8/17牛丼(レトルト),8/18山岳カレー,8/19山岳シチュー 嗜好品・副食少々 α米6袋
ロープ(8.3mm×30m)1本、ハーネス・確保器各自、アイゼン・ピッケル各自、その他テント泊用装備、ツェルト(S1張)、シーバー(1台)、携帯電話(各自)
高速バス(京都深草⇒富山駅前:往復):7,900円、富山⇒室堂:3,540円、宇奈月⇒富山:1,790円、欅平⇒宇奈月:1,960円(R車特別料金込み) テント設営料金3泊:1,500円 (合計:16,690円)
剱岳北方稜線は、前から行きたかったルートであった。夏休みの予定が狂ったので、日程的に長期の休みが取れないといけないこのルートに挑戦することにした。
早朝5時に富山駅前に到着。上手く眠れなかったけれども、自分たちで運転しているときよりも体の疲労感は少ない。富山地鉄で立山まで向うが、直前の豪雨で岩峅寺(いわくらじ)から立山まではバスによる代行運転である。バスに揺られながら迂回路を進んでいった。途中どうも運転手が道順を間違えたようだが、富山駅から1時間ちょっとで立山に到着。ここから美女平までのケーブルも安全確保のため本日は運行停止。バスで上がっていくことになった。今回の山行は大丈夫だろうか?と少々不安になりながらも、雨が降ってるわけじゃなし、と楽観してバスに乗り込んだ。居眠りをしながら気がつけば室堂。周りは雲一面。結構寒い。まぁ仕方ないか、と諦めて、二人でターミナルの食堂へ行く。ちょっと腹ごしらえをして、出発する(9時)。上田さんは、今まで雪のあるときしか劔岳に来たことがない(!)ということで、偉く周囲の地形に感動していた。
今日は、どのみち劔沢までなので、ゆっくりと進む。雷鳥平から称名川を渡って別山乗越へ向って登っていく。今日は曇っているのが幸い、いつもと比べてあまり汗もかかず快適なアルバイトであった。1回休憩を取っただけで、知らない間に劔御前小舎に着いていた。まだ11時。急ぐ必要もないので、何をするというわけでもないが、雑談をしながらのんびり休憩、行動食を食べて1時間休んで、劔沢へ下降していく。
結局12時20分過ぎに劔沢へ到着。今日の仕事はこれでおしまい。テントを張って、二人で劔沢小屋でビールを買って、劔岳を肴にひとしきり話込んだ。劔岳は雲に覆われていたが、時折、前劔が、源次郎尾根の下部が、顔を出す。その光景を見ながら、明日の天気に期待を寄せて、時折振ってくる小雨に落胆をしながら、夕食を取ってシュラフに入った。時折雨がテントを叩くが本格的な降雨ではない。翌日に期待を寄せながら眠る。
午前2時30分起床。今日が勝負の日である。てきぱきと食事をして出発準備に取り掛かる。外は霧雨か、細かい雨が降っている。4時にテントの外に出て4時30分に出発。劔岳には3度登っているが、テントまで全て担いでの登頂は始めてである。テントが濡れて重いのか、ザックがずしりと背中にのしかかる。暗い中ゆっくりと劔沢を渡っていく。剣山荘、一服剣と順調に進んでいく。一服剣では全面のガス。時折雨。天候に落胆しながらも、縦走を誓って登っていった。前劔への登りで先行パーティーを追い越す。年齢を訊かれて答えると"若いね!"と言われた。喜んでいいのか若干複雑な気持ちになりながら、先に行かせて貰った。前劔に到着するころから、天候が好転し始め平蔵のコル辺り、あるいは劔尾根辺りがはっきりと見え始めた。陽光も差しはじめ、期待に胸が膨らむ。小休憩を挟みながら、元気な単独行者に先を越されながら、着実に進んでカニのタテバイ前。ここでははっきりと天候がよくなり、立山方面、後立山方面の展望がはっきりと開け始めた。元気に登っていくが、しかし、岩は所々濡れている。油断はできない。慎重にタテバイを登り切り、山頂までのガレ場を進む。やはり、劔岳の登高は一般登山道であっても岩登り的要素があって楽しい、と改めて感じ入りながら山頂に到着。天気は全面良好で、これから先に進む北方稜線の山並み、八峰の並びもはっきりと見える。後立山の山々を指差しあって景色を眺めながら、記念撮影を行った。
30分ほどの休憩の後、ハーネスとヘルメットを着けて、北方稜線へと進む。他の登山者に「頑張って」と見送られながら(ちょっと複雑な気分)、我々は「立入禁止」の看板を越えて進む。程なくして長次郎谷への下り。慎重に足元を確認しながらガレ場を下っていく。やはりバリエーションルート。結構進路の選択に迷いながら下った。長次郎谷から頭への登りでは、直登すべきか、巻くべきか迷う。ガイドブックの記述とは微妙に違う、と直感し、兎も角登攀ポイントの近くまで進む。と、ルンゼの上に残置スリングが見えるではないか。ここだ、ということで、二人で順に登る。残置支点のところで、上に進むべきかどうかちょっと考えたが、上田さんが「行けるで」ということで巻きに入った。後からついて行ったが、この巻き道はやさしかった。あっと言う間に頭の反対側に到着。ガイドブックでは、1メートル程度の空間を越えるということになっていたが、そんなものはどこにもなかった。間違ったか?と思ったが、途中、ケルンも積んであり、赤テープの巻かれた石も置かれており、間違いないものと確信して進む。ここから先暫く長次郎谷側を巻いて進む。特に難しいところもない。途中一箇所だけ簡単だが足場の途絶えている箇所があり、そこだけ慎重に渡った。もしかして、ガイドブックの言う乗り越しはここか?と二人で考えたが、それにしては小さすぎまた位置も違う。疑問のまま、あっという間に、「二枚岩の門」に到着。確かにテント1張り分くらいの整地スペースがある。ここで休憩。雲が若干おおくなったが、まだまだ天気良好。長次郎谷を見下ろすと「熊の岩」付近にテントが3張り見える。八峰の登攀だろう。次は自分も八峰を登りたいなと思いつつ、池の谷乗越への下りに入る。休憩地点から上に岩を越えて赤い岩の谷を下る。ルートがもう一つはっきりしない。途中から楽に降りられそうなルートが見つけられなくなり、手懸り足懸りのはっきりしていそうなコースを選んでクライムダウンする。上田さんはルートを見つけたようでさくっと下降してきた。程なく乗越到着。見上げると八峰の頭。ここからはガリーを下る。文字どおりガレガレの崩れそうな谷を下降する。運良く先行パーティーの足跡がありその後を追うように下っていった。しかし、足場が悪く結構すべるは石は落ちるは、で大変な下降であった。後から思えば、この下降が北方稜線の核心だったかもしれない。チンネ、ジャンダルムの大きな側壁を見ながら下ること約40分余りで三の窓に到着。テントが1張り。幕営禁止となってはいても、どうみてもここはテント場である。2人で妙に感心しながら小窓の王の斜上トラバースに入る。近づいてみればどうということもないルートである。ガレを崩さないことにだけ気をつけて登る。10分ほどで小窓の王西壁下。ここで休憩。振り返ると、今下ってきた池ノ谷ガリーが見える。結構下ったなぁと二人で感慨に浸りながら、しかし、全天に雲が増し始め、遠くの景色が隠され始めた。ただまだ雲は高く、これから先のルートが隠されるほどではない。暢気に行動食を取って、小窓へのトラバース道へ入る。ガイドブックでは、踏み跡と書いてあったが、実際にははっきりしたルートである。何の迷いもなく進む。50mほど下ったところで、水の流れた後と踏み跡がわからなくなり、適当にトラバースして小窓側に寄ってみるが、全くの谷であって到底進めない。で、またもとの道に戻って、下降する。途中、足を置いた岩が崩れ、結構大きな岩と共に滑ったが、体に何の異常もなく一安心。暫く下降すると、岩に赤ペンキの○印を発見。ルートに間違いないことを核心して更に下る。どのくらい降りただろうか。ガイドブックでは100m程度とあったが、感覚では200mくらいのような気がするが、そのあたりから道が水平トラバースに移った。赤ペンキにケルンと目印は結構ある。道が水平になってから10分ほどで雪渓出現。僅か数メートルだが、滑ったらアウトなので、アイゼンとバイルを使った。トラバースして再度の雪渓をアイゼンを使って渡ると、やや登り気味のトラバースになる。ここでも踏み跡はしっかりしていて道に迷う心配はない。そうこうしているうちに小窓雪渓が見え始める。よく見ると池の平への水平トラバース道が見えるではないか。ここで、雪渓下りを終了させるべき地点の大体の目途を付けて、ハイマツ帯のコースへ入っていった。岩が濡れており、滑りやすくなっていたのではあるが、小窓が見え知らず知らずに足は急ぐ。12時すぎに小窓に到着。一面がガスに覆われ小雨が降り始める。もう今日は天候はアウトかなと思いながら、ここまで来れば安心との思いもよぎる。アイゼンをつけて雪渓を下っていくと、遠めにもはっきりと池の平へのトラバースポイントを示す白マルのペンキマークがはっきりと見え始めた。はっきり入って、これだけ顕著な印があれば、迷わない。小窓雪渓の下りは傾斜もゆるく安心である。一気に下ってトラバース道に移った。暫くペンキマークがつけられているので、その後を追っていくと、はっきりとした道に変わる。途中高巻きをするところで、自分たちは道に迷い、変な草着き場をすべり落ちてしまったが、普通は迷わないものと思う。程なくして、平の池が見え、池の平小屋にたどり着いた。今日の行動は終了である。雲がかかり、雨もパラパラとなっていたが、来し方を思い、今日の山行の余韻に浸りながら、まず2人でビールで祝杯をあげた。
今日の行程は阿曽原温泉までなので、ゆっくりと出発の準備をする。午前6時20分に池の平小屋を出発。晴を期待していたのだが、八峰の頭には重く雲が掛かっている。仙人池で待っていれば晴れてくるかも?ということで出発。30分ほどで仙人峠に着く。木道を設置するのだろう、あたりに資材がたくさん野積みされていた。程なく仙人池ヒュッテである。ここも紅葉の時期は込み合うのだろうが、今日は静かである。我々だけで池を独占。暫く池の前で様子見がてら休憩していたが、一向に好転の気配なく、曇どころか小雨もパラつきそうな雲模様となってきたので、30分ほどでお暇することにした。有名なヒュッテのおばさんはいたのだろうか。小屋番さんは、息子さんか。・・・
などと考えながら下っていった。沢沿いの道を右岸左岸右岸と渉りながら下るが、集中豪雨の影響だろうか、所々道が崩れているところがある。歩行に特別な影響があるわけではないが、やや注意を要するところだ。暫く行くと雪渓に出会う。それほど急なものではないが、アイゼンをつけずにいくので、どうしても私は慎重になってしまうが、上田さんはスイスイと行ってしまった。この辺は運動神経?いや平衡感覚?いや慣れ?理由はどうでもいい。とにかく二人とも無事に渉れた。それからまた下っていって、程なくして仙人温泉小屋である。ここまで誰とも会わず。今日も一日静かな山行になりそうだし、温泉でゆっくりとすることにする。とにかく2人でご機嫌風呂となった。後立山もばっちり見えて
快適である。湯上りに、仙人池ヒュッテのお兄さんがお勧めの「岩清水ソーメン」を2人で食べて満足。小屋のおじさんと少々お話をしてから、小屋を後にする。ここも秋が稼ぎ時だそうだ。ということで静かな山行は続く。5分ほどで登りのパーティ4人組と出会うが、それっきり。さらに30分ほどで再び雪渓を渡る。渡った後が大変な高巻きで100mまではいかないがかなりの高さを真直ぐ上がらねばならない。楽勝ムードが一遍に吹き飛んで汗かき乱して登る。暫くして水平方向に移り下リ始めると程なく阿曽原峠である。巻き道からここまで道は難しくはないものの、すべりやすい個所が何箇所かあり、あまり歩き心地は良くなかった。峠から20分ほどで阿曽原温泉小屋に到着。今日の宿泊地である。まずはビールで乾杯。それから暫くして温泉に入って、キャンプ場でお昼寝、それから再び温泉入浴となんだか極楽山行となってしまった。阿曽原温泉はやや熱めだったが水浴びしながら入ると熱さがとても快適な良い温泉である。ただし、昼間はアブに注意。体を洗う際には、しょっちゅう掛け湯をしてアブを追い払うこと。
今日は、天気も良さそうであり、だいぶ高度が低くなっているので、暑くなる前に行動を終了すべく、早めに出発することにする。テントを撤収するのが早すぎ、4時半ではまだ道が見えない。4時45分阿曽原温泉を出発。暫く行くと水平道までの高巻き道である。100m程度上がっただろうか、送電用の鉄塔よりもさらに上がったところで水平行動に移る。あとはひたすら水平歩道を行く。道中、猿に遭遇したり、トンネルをくぐったりと変化はあるものの大半は似たり寄ったりの水平歩道。昔の人はこんなところまで、多分人力で作ったんだな・・・と感動しながらも、歩行自体は退屈。暫くして奥鐘山西壁が見えるポイントへ。正面には欅平のトンネルが見える。奥鐘山に登攀者は見当たらない。そりゃそうだ、まだ、7時前だ。もうあと1時間くらいか、と思いながら進むがどうしてどうして谷に沿って出入りをしながらの水平歩道である。結構時間がかかった。8時半くらいから下りに入る。やっとというべきか。程なくして欅平のビジターセンター前に到着。下山完了は午前9時2分であった。ゆっくり休んだ後、帰路の切符を手配し、猿飛温泉で4日間の疲れを洗い落として、欅平を発った。
4日間を通じて、まずまずの天候に恵まれ充実した山行を行うことができた。2日目は本当に楽しかった。また、紅葉のシーズンに来たいものである。