【読図山行第3回】奥美濃 若丸山(無雪期ハイキング)

メンバー ホリウチ、カタヤマ
期日 2005年10月1日(土)夜〜10月2日(日)
地域・山域 岐阜県 奥美濃
山行形態 無雪期ハイキング(読図山行)
地図 冠山、美濃徳山(1:25000図)
文責 ホリウチ

報告と所感

 若丸山は奧美濃では有名な冠山と能郷白山との間にあり、美濃と越前の国境稜線上に位置する。奧美濃でも山深い場所で、美濃側、越前側どちらから入るにせよ、まず地形図からアプローチに使えそうな尾根や沢を探すことになる。ただし、山深いとはいえ、あちこちに地形図から実線の一条線を見いだせる。林道の線である。登山者にとって林道開発は嫌なものだが、今や林道が無い山はなかなか存在せず、この山も山麓には林道がある。最近では開発も鈍り、また役目を終えて自然に戻りつつある壊れた林道もあり、県境を越えるものも少ないのは救いである。これら林道のうち、扇谷林道をアプローチに使うことにする。今回は読図山行ということだが、半分の目的は若丸山自体の登頂でもある。

山行行程 (天気:雨)

 JR野洲駅に集合し一路奧美濃を目指す。旧徳山村は昔全集落を歩いて旅した地で、通る度に懐かしく思うが、ダム建設で跡形もない。徳山村は無住になり藤橋村となり、最近の合併で揖斐川町となったが、頭の中ではまだ徳山村だ。
 ダム建設で付け替わった立派な道路を通り橋を渡り旧役場前を通過する。ガスが道路にかかり慎重に運転する。櫨原集落跡手前で扇谷林道に入る。入ってすぐに、夜間なのに照明で明るく照らされた工事中の道路橋がはるか頭上に見える。異様な光景だ。技術のすごさに驚くが、自然が損なわれる残念な思いも混ざり複雑な気分だ。
 ここから真っ暗な扇谷林道を延々進みカラカン谷出合へ。小広く開けた林道脇に駐車。
今日は2名なので車内で仮眠する。
 朝目が覚めると曇天で今にも降りだしそうである。近くの尾根にはガスがかかる。
支度して出発前に今日の行程を確認する。若丸山の東方のある地形図標高点1160m峰の西側200m地点(標高1170mあたり)に上り詰めることとする。そこから県境稜線を西に進み登頂の予定。下山は南南東に伸びる尾根を利用する。山頂まで想定5時間。
 林道を滝又谷出合まで歩き、橋を渡らず右岸から河原へ降りる。カタヤマさん先頭で遡行開始。淡々と進み、20分程で雨が強くなる。雨具着用。川の水は思ったより冷たくない。標高550mを過ぎたあたりで川幅が狭まり越えられない大きな釜を持った滝に出る。ここは手前から左岸を高巻く。本流の滝を2本程越えてから小さな涸沢状の溝を下って本流に戻る。標高590m地点。この上部から広くなった河原がしばらく続く。あちこちにマタタビの実が実っている。時々地形図で位置確認をするが雨で地図を出す機会が少ない。
やがて標高700m地点の二俣につく。ルートは左股に取るが、左股が真っ直ぐに見えるのことと、右股の出合が灌木で隠れ気味なので出合に気づかず通過する可能性があるので要注意である。
 左股に入り水量が減ってきて、傾斜も急になってきた。依然カタヤマさんが先頭にたつ。後ろを降りかえると沢越しに地味な奧美濃の山波が見えている。雨が止んで、もしかしてと少し天候の回復を期待する。
 標高790m地点でまた二俣になるがここはカタヤマさんが自然と左に進んでしまう。
ここまで登ると沢中にも枝が張り出し、足下も草本類でかき分けないと見えない場合も出てきた。右に入るように進路を修正し、地図を見る回数を増やす。
 標高870地点では右岸から小沢が流入するが、本流側が灌木に隠れていて、またも騙されないように要注意である。中間の斜面を登り右に巻いて本流に戻る。
 こうして地図から確実に行きたい方の沢を詰める。ここからはさらに微少な等高線の具合をよく読み取り、細かな沢線を予想する。草本類で足下が見え難く、進行速度が落ちる。またここからはガスがかかりだし、先が見通せなくなった。
 標高1050m地点で最後の分岐に来た。地形図では判定が困難だが等高線から推測できる。さてどちらの方が良さそうか協議し、少しでも傾斜の緩い右に決まる。水が無くなり正面の斜面が草付きの斜面となったので斜面に移りひたすら登る。やがて猛烈なネガマリタケの密生した斜面となり経験と勘でここからホリウチ先頭で進む。視界の全くない中、県境稜線上に達したと思われた瞬間、遠くで人の声がした。おかしいと思いカタヤマさんにも尋ねると、声がしたという。またしばらくして聞こえた。長く奧美濃に登っているが、道のない無雪期の山で人間に遭うのは本当に稀なことだ。熊には遭うが…。
 お互い存在が分かり、声を掛け合いながら薮を進むが一級の薮となった。ネガマリタケの上から蔓性植物が覆い、背の低いシャクナゲも混じり、さながらジャングルジム状態。
やっとの思いで福井県側の沢から登って来られた方々に合流した。何と11名の大パーティ。場所は目的の1170m峰北寄りの場所にピタリと出た。
 この県境稜線で長めに休憩する。歓談の後11名パーティは若丸目指して出発。
しかし県境稜線は道がない。パーティはこまめにピンクの目印を付けながら前進している。
我々も出発するが雨の薮漕ぎはやはり嫌なものだ。ガスが時々薄くなり来た方向が見えるので地形や樹形などの特徴を頭に入れる。少し登り降りし、最後の急登に耐えるとついに山頂へ。風とガスで非常に寒い。山頂直下で11人パーティは丹念にピンク目印を付けていた。うっかりすると来た方向すら濃霧で分からなくなる可能性がある。読図以外にも方向感覚など本来持ち合わせている体内の感覚も研ぎ澄ます。
 山頂は狭く、ガスが濃いが晴れれば奧美濃まっただ中の展望が欲しいままの筈だった。残念。しかし読図練習には良い経験になった。11人パーティは何と3度も計画してやっと本日を迎えたとのこと。また登りに6時間を費やし、沢では2カ所ザイルで通過したのですぐ下山しないと危ないとの判断から10分間いただけですぐに下山された。
 我々もこの天候と薮では尾根を進むのは中止して、来たルートを戻ることにする。
下山開始。例の1170m峰から稜線をはずれたが、登りでは一番薮が激しかったので早めに沢状の窪地を降りる。登りは最後の分岐を右に取ったがその左の沢に下降をしている。
やがて急傾斜となり水が出てきたところで4m程の滝に出くわした。これはとても降りることが出来そうになく、少しバックし、左岸の斜面に取り付く。地形図上での場所は特定出来ているので、迷うことはない。危なかしい岩混じりの急傾斜面を慎重にトラバースして、行きに使った右の沢に降り着いた。
 ここからは雨の中来たルートを淡々と進み、高巻き地点では早めに斜面に取り付き滝下に出た。さらに広くなった沢を進み、マタタビの実を少しだけザックに入れて橋の袂へ。
 林道を歩き駐車地へ戻る。
 さんざん雨の中を歩いたので疲れたが想い出深い山行となりました。
私事ですが、いつか残雪期に冠〜能郷白山縦走をやってみたい。
帰路は池田温泉で汗を流し、野洲駅で解散。カタヤマさんは最初から道のない山へ登るのは初めてらしく、懲りずにまた機会があれば他の山にも登っていただきたいと思いました。

 

今回の山行のルート図
(クリックで拡大)(別ウインドウ

 

ガスの若丸山山頂にて

 

滝又谷の滝 標高560m地点


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