奥鬼怒 燧ケ岳(無雪期縦走)

山行 奥鬼怒湿原から黒岩山、燧ケ岳へ
メンバー H内
期日 2006/9/5-9/8
山域・ルート 奥鬼怒 燧ケ岳
山行形態 無雪期縦走

コースタイム

1日目

大清水10:10→鉱山跡10:45→10:55湯沢出合11:10→13:40物見山14:00→ 14:20奥鬼怒湿原15:05→奥鬼怒山の肩15:30→16:45小松湿原入口16:50→ 17:05黒岩清水(テント泊)

2日目

黒岩清水7:20→7:40黒岩分岐(←→黒岩山8:00〜8:25)8:40→10:10赤安清水10:45 →11:45大清水分岐11:55→12:05小淵沢田代12:20→12:45大江湿原12:50→ 13:00尾瀬沼ビジターセンター13:25→尾瀬沼山荘13:45→大清水平分岐14:05→ 14:30沼尻休憩所14:45→14:55白砂田代15:05→16:05下田代十字路(テント泊)  (竜宮十字路まで1時間半の夕刻散歩)

3日目

 (只見川の東電尾瀬橋まで1時間半の早朝散歩) 下田代十字路7:10→10:10燧ケ岳(柴安ー)11:20→11:35燧ケ岳(俎ー)12:05 →12:50熊沢田代13:10→13:30広沢田代(豪雨と雷で待機)14:15→14:40御池

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記録

尾瀬は以前に一度だけ行ったことがある。9月に鳩待峠から至仏山を巡り人が多くてその後何となく近づけないでいた。 今回は8年振り2回目となった。平日を燧ケ岳に登る日程とし、尾瀬沼への静かなルートを見てみると奥鬼怒経由が静かそうで良いと思われる。一般道ではあるが、自分好みの渋いルートで原生林での泊まりが期待できそう。

9月6日(土)晴れ後時々曇り

夜行バスは大宮駅を予定より10分早く着いた。新幹線で高崎まで行き、快速「くじらなみ」号に乗る。国鉄時代の赤とクリーム色の車両で山旅の始まりに似合う。 沼田からは路線バスだが思ったより客が少ない。車中では水上に住む方から至仏への興味深いルートなどをいろいろ教わり退屈しない。 大清水に10時前に着く。大勢の登山客が三平峠を目指して出発していく。 さて、登山開始。天候晴れ。橋を渡り樹林に包まれた静かな林道を進む。30分余りで鉱山跡に着く。ここからは山道となり羽根沢左岸を行く。左岸の段丘上を進みやがて湯沢の向け下降する。飛び石で渡り休憩。水をたっぷり飲み、水筒に詰めてこれからの800mの急登に備える。標高1500mを越すと急な道となり、気温も高く大汗が出る。日差しもきつく、風もなくひたすら耐える。南に燕巣山や四郎岳などの地味な山々が見え出し、興味が湧く。結構高くびっしり樹林に覆われている。 やっとの思いで物見山に着く。長めの休憩とする。ギンリョウソウの白があちこち咲いていて目立つ。北の方角に黒木の原生林の山並みが続いていて、はるか先に霞んで燧ケ岳も見える。 20分下りやがて平坦となって奥鬼怒の湿原の北端に着く。日光沢温泉から来た登山者に出会う。避難小屋は小さく、10人も入ればいっぱいになる。この日は8人程度のパーティーに出会い、この小屋に泊まるとのこと。それならこちらは先に進むことにする。テントを持っているのでどこでも泊まれ気楽なものだ。 湿原は山頂部にあり、日光白根山が正面に見え、ワタスゲが風に揺れ、池と草原と空のコントラストが美しい。木道でゆっくり休憩する。2〜3人遠くに見える以外は人影も少ない。地図で想像していた通りの場所であった。 午後3時を回り、再び登山道を進む。東に進み、やがて北に進路を変え、奥鬼怒山の南肩まで来ると、北の方角が開ける。明日辿る山々がよく見える。奥鬼怒山は時間的にパスして先に進む。針葉樹林が主体の鬱蒼とした森の中を歩むが変化に乏しい。地図上のトンネル上あたりからは穏やかな平坦路が続くが倒木をさけるため結構曲がりくねって進む。午後5時前に小松湿原の入り口に着く。水は登山道の北側で直ぐ近くにあり、その横にテント場に適した平坦地がある。樹林帯の中で風が当たらず快適そうである。 休憩後、もう少し先まで行ってみることにする。薄暗い樹林帯の中を薄い踏み跡を辿り15分で黒岩清水に着く。テント地ではないが、水場脇の平坦地に2張り程のスペースがある。ただし、雨天時や水場の水量が多ければ地面が濡れてテント泊は困難。テントの入り口から水場まで3mの至近で快適。欝蒼とした針葉樹に囲まれ風も当たらない。 今日は夜行の疲れと、思っていたより行程を伸ばしたのと、気温が高くてちょっと疲れ気味。夕刻は雲が多くなるがガスはかからない。明るいうちに晩ごはんを済ませ、水の音を聞きながら早めに就寝。夜中は獣(たぶん鹿)の走る音が時々聞こえる。

9月7日(日)晴れ後時々曇り

翌7日は遅めに出発する。7時前に、小屋で泊まっていてパーティーがやって来る。4時40分に出てきたとのこと。前日にここまで来ていたのに抜かされる。がそれもよし。その分ゆっくり朝の森の雰囲気を堪能する。 7時20分ようやく出発。今日は尾瀬の下田代十字路までだ。 深い樹林の中、倒木を避けながらルートが続く。緩い勾配なのに右に左に曲がりながら。 朝日もあまり射さない。20分で黒岩分岐。荷を置いて黒岩岳まで往復するが始めは東に水平に回りこみ、西に向けて急登で山頂を目指す。やや藪がうるさいが問題なし。 山頂からは広大な展望が開け、帝釈山や台倉高山などの栃木、福島県境の山脈が見渡せる。もちろん燧ケ岳や会津駒も見える。ただ少し霞が出ているのがちょっと残念。これから進む尾根も観察し30分ほど過ごす。わずか先が福島、栃木、群馬の3県県境だ。 朝出会ったパーティーも登っており、奥鬼怒温泉郷に戻るとのこと。 分岐に戻り小淵沢田代へ向かう。とたんに蜘蛛の巣を顔から浴びて気持ち悪い。しばらく人が通っていないらしい。静かな樹林だが広葉樹も多くなってきて少し明るい雰囲気になる。快調に飛ばす。2019m峰はあっさり通過したが、ここから北東に向かえば花沼湿原があり、以前から興味を抱いている場所のひとつではあるが今回は時間が無くまたの機会には是非寄りたい。道は全く無さそうだ。藪はそれほどでもないので簡単に行けそうな感じがする。 赤安山は北側に長く巻き、少し急に降れば赤安清水。鞍部の直ぐ北の斜面から冷たい水が得られる。テント1~2張り可。35分休憩し、出発。袴腰山の北側は地形が複雑でルートは平坦から北斜面に移り、小沢状に沿って斜上し右に曲がって平坦な支尾根状のところを急登で越えると一転して平坦な直線路となる。電源開発の古い記念碑を越え溝状になった道を進んで大清水の分岐。さらに5分ほどで急に小淵沢田代の湿原に飛び出した。 草の中の細い木道を辿って原の真ん中まで来ると広々して気持ちがいい。尾瀬の一角だが静かで風が心地よい。しばらく木道の上で天を仰いで寝転ぶ。 ここからはビジターセンター目指して直接降るルートを考えていたが通行止めで仕方なく大江湿原に向かう。さすがに時々人に会うようになる。緩い下り30分弱で沼山峠からの幹線道に着く。一気にハイカーが多くなりさっさとビジターセンターへ歩く。日陰がなく暑い。団体も来ており、さすがは有名な尾瀬のメインルートであることを実感する。燧ケ岳が美しく見える。13時ちょうどに到着。初めての尾瀬沼を目の前にしばらく景色を楽しむ。沼の北岸は大勢ハイカーが見えるので、ここから南岸を辿ることにする。三平峠の分岐を過ぎると木道も狭くなり、人も少なくなる。ずっと沼の北に見える燧ケ岳の容姿を楽しみながら沼の入り江を回りこみ、小沼の湿原を横切り、沼尻に着く。 非常に広々としており、日曜日の午後2時半を回って観光客が思った程居なく、一時貸切状態になる。ゆっくり景色を堪能する。有名なところはいつも避けたくなるが、やはり大勢の人が集まる場所は景色も最高で今回は妙に納得する。 このあとは最終地の下田代十字路を目指して降るだけだ。途中白砂田代の小湿原でも休憩し、沼尻川右岸をのんびり歩き、イヨドマリ沢で水浴びし、燧ケ岳からの登山道を合わせる頃、あたりはブナの樹林となり、大きな木々の姿を観察しながら下田代十字路に着く。 なんだか閑散としていてあまり人の気配がなく、小屋の数はいっぱいあるのでちょっと調子抜け。団体なんかがわんさか来ているものと思っていたのだがそうでもない。 テントを申し込み、テント場に行くが20張り程度でどこでも張れる状態。夕刻に竜宮十字路まで散歩に出かけたが帰りは誰も居なく、直線の木道からの広い景色を独り占め出来た。途中で何度か野うさぎが木道を跳ねているところに出会い、喧騒がうそみたい。尾瀬は絶対平日に限るなと強く感じた。明日登る燧ケ岳が真正面だ。 ブナの梢越しに夜空を眺めていると直ぐに眠くなり、熟睡する。

9月8日(月)晴れ後曇り午後雷雨

朝はガスの中で迎えた。冷んやりした空気がすがすがしい。登山前に散歩する。只見川に架かる東電尾瀬橋まで行くことにする。この橋は増水で被害を受け通行止めになっているので思ったとおり誰も歩いていない。ガスは歩くうちに少しずつ薄くなりやがて山々が霞んで見え出し幻想的な風景を醸し出す。帰りは同じ場所でもぜんぜん違った景色になっていて本当に飽きない。花や川をぼんやり見ながら、朝の散歩を堪能する。テント場まで戻る頃、ガスは帯状に纏まっていて刻一刻と変化する。 さて今日は本格的な登りから始まる。見晴新道という見晴の効かない道を進む。ブナの木々が綺麗。だんだんと勾配が急になってくる。やがて沢状の狭い空間の中をひたすら登るようになる。平日なので人と殆ど出会わない。やけに長く感じる。標高2000mあたりまで来てやっと背後に尾瀬ヶ原と至仏山が格好良く見え出す。風が余り当たらないので暑い。 左手の小尾根に取り付くと一気に日向になり直射日光でさらに暑く苦しい登りとなる。 温泉小屋道分岐まで来たところ、テント場で一番近くに居た家族連れの人たちに出会う。 日帰り装備で相当早く出たとのこと。尾瀬沼へ下山して元のテント場に戻る予定だそうだ。こちらが先に出発する。  3時間掛けてやっと山頂に到着。久し振りに百名山登頂となった。これで70山余り登ったことになるが正確には数えたことがない。  霞が出ていて遠くははっきり見えないのが残念ではあるが直下に尾瀬沼や会津駒、利根川流域の山々、奥日光や周辺の山々が見渡せる。さすがに登山者はいつの間にか大勢になっており、尾瀬沼や御池方面からが多数を占めるようだ。3日間かけてやっと来たので、山頂で2時間近く休憩する。西峰の柴安ー、東峰の俎ーとも一番いい場所の岩の上でごろごろ過ごす。  行動食も食べすぎてしまう。日差しもきついので下山を開始する。 途中で涸沢の中をかなり下り、山腹をトラバースしながら高度を下げていく。2つの池がある熊沢田代は綺麗な場所で、モウセンゴケに虫がいっぱい捕まっている。20分休憩してさらに降る。少しガスが出始めた。背後に俄かに黒い雲が湧き出し、また前方の会津駒ケ岳方向にも黒い雲が急速に発達してきた。 標高1900mあたりでとうとう大粒の雨が落ちてきた。空気も急に冷え込んで、恐らく雷を伴ったにわか雨になるとみて、雨具をしっかり着込んだ。と同時にバケツをひっくり返したような雨になり、前触れも無く雷の閃光と轟音が響いた。ものの5分ほどで経験した中で最強の強雨となった。まるで沢登りで滝のシャワーを浴び続けている状態だ。道は一気に沢の中を下るような状態になる。急なところは滝となって凄まじい。近くに落雷し、まさか落ちるのでは!という恐怖も湧いてくる。 悪いことに広沢田代という湿原をまだ最後に越えなくてはならない。先にいる登山者に追いついて思案する。後ろからも数人が追いついてきたが、この雷ではさえぎるものの無いこの原を越えるには危険度が高い。みんなで少しずつ間隔をおいて木のある安全な場所で待機する。 20分位で雷の音が少し遠くになったので思い切って出発する。 道はその後も滝のようになっていて登山道の変貌振りに感心する。つい40分くらい前はカラカラの道だったのに!こんなすごい豪雨と雷にはめったに出会わないし、よい体験が出来たと思う。 バスの時間があるのでここからは相当に飛ばして降りる。が道が完全に川になっていてなかなかスピードが出せない。 御池に着いたらバスの乗車時間を5分過ぎていたがまだ止まっており、ジャストのタイミングで乗ることが出来た。 途中の桧枝岐温泉で下車し、濡れたものを外で店開きさせたまま、ゆっくりと入浴をして2時間後のバスで会津高原尾瀬口駅へと向かう。 野岩鉄道、東武鉄道を乗り継ぎ、平日のガラガラの特急で東京経由帰京の途に着いた。

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