京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
山行 | 中央アルプス 伊奈川(沢登り) |
---|---|
メンバー | L:H内(文) Y田 F本(見学) |
期日 | 2007/8/4〜8/5 |
山域・ルート | 中央アルプス 伊奈川本谷 |
山行形態 | 沢登り |
倉本大沢林道登・馬の背P8:25→9:45中八丁峠10:00→伊奈川出合10:25→林道経由 →10:55林道(標高1,550m)11:35→12:05川原(標高1,480m)12:30→一ノ沢出合15:40→16:25標高1,840m泊地
泊地6:30→三ノ沢最低鞍部への支流出合9:40→10:00 2,520m滝下10:25→10:40 西千畳敷カールのお花畑10:55→11:25 2,715m登山道11:40→主稜線12:10→12:30 ロープウェイ千畳敷駅
今回は長い平凡な沢を詰めて西千畳敷に上がり、三ノ沢岳から南西に尾根を辿り、萩原沢岳を往復後、二ノ沢を滑川に下山する計画で出発した。
結果は初日の悪天候による出発の遅れと、増水した本谷の下流部で時間がとられたことにより、2日目の行程が長くなったこと、それに山頂部がガスで天候が悪いため、あっさりロープウェイでの下山となってしまった。
登山口に予定通りに着いたが、雨が強い。テントを張るのを諦め、車中泊まりとする。他に車は無い。夜が明け、この雨に行くか止めるか思案してなかなか意思が決められない。
いろいろ意見が出たが、8時も廻ってやっと決意する。
登山道に入ると刈り払いされた立派な道だ。これなら坦々と進むと思ったが、山腹を巻くようになってから急に整備が悪い道となった。草や笹が被り谷側に崩れた部分もあり1時間20分掛けてようやく峠に着く。ガスが掛かり、周りも薄暗く先が思いやられる。
下りは少しましな道となった。伊奈川に出ると思ったほど水量がない。地図に堰堤記号があるので林道を辿る。堰堤へ下る道を分けると急に潅木などが茂った荒れた道となる。
雨水をたっぷり受けた藪でたちまち衣服は濡れ不快だ。林道から離れようとした地点で雨が激しくなり、ここで進むか止めるか再び思案する。しかし思い切って行こう!! 川を見てダメなら引き返すことで進むことに決心し、藪に突入する。
川原に着くと水量が多い。やはり堰堤で取水していたのかな。沢支度を終え、いよいよ入渓する。渡渉を繰り返すがY田さん、F本さんは小柄なので多少苦労している。
川の水の濁りは少なく、澄んでいるがガスと小雨で色が冴えない。水量が多いので渡渉地点をうまく見極めなければ先で行き詰まり戻ることになる。お助け紐をところどころ出しながら進む。増水していなければ何でもない簡単な場所なのだろうが。途中ゴルジュ状のところがあるが右岸に巻き道があり容易に通過。
巻き終えると、単調に進むようになるが両岸は森林がせまり、一段上の安全な場所は倒木や苔むした礫で、ツェルトを張れる適地は意外にも見当たらない。
雨は止み間が多くなってきて遡行は先ほどより快適になってきた。標高1,650mあたりからは開けてきて明るくなるが、右岸からの一ノ沢まで到達するのに入渓から3時間も要している。夜行の移動と出発の遅れで皆少し疲れが出て来たが、明日の行程を考えもう少し先まで進むことにする。
先程から魚影が走るのを良く見かける。石の下に隠れるのを見つけたので手を入れたら簡単に捕まえることが出来た。綺麗な斑点がある。写真だけ撮らせてもらい逃がしてあげた。
しばらく進み、左岸の金沢出合よりひとつ上流の支流出合にやっと適地を見つけた。しかしもう少し行く。
さらに30分程歩くと、標高1,840mで、本流とその北側に並走する分流の間の少しの高みに泊まった形跡があり、明るく開けていて快適そうだ。16時半、今日の歩きを終了する。
濡れた木から何とか火を起し、焚き火が出来た。今回Y田さんとは沢は初めてで、F本さんとは山行自体初めてだが、なぜか初めてではないような気がする。
焚き火を囲んでいつもの沢泊のような夜を過ごす。いつの間にか空には星が出ている。
虫がうるさいが風上に蚊取り線香を3つ焚いたら居なくなって快適に過ごせた。
F本さんは沢泊が初めてのことだが、妙にてきぱきとしていてさすが山には慣れている様子。山の話で焚き火を囲む。計画より2時間下流だが、明日晴れればそのまま本谷を詰めることにした。9時前頃に就寝。
朝は綺麗な青空が広がった。思ったよりも良く皆嬉しそう。
6時20分出発。見通しの効く沢を単調に歩く。標高1,900〜20mあたりは右岸の沢がガレており、大きな岩屑が本流に被っている。右岸のガレを攀じって再び本流へ戻る。
また単調な遡行を続け、1時間余りで七曲沢出合着。この先は礫が大きくなり乗り越す場所の選択に気を使いながら遡行する。日差しが強くなってきた。今日は日に焼けそうだ。
標高2,130で30m程度先の左岸から大きな黒っぽいものが沢の真ん中にゆっくり下りてくるのが見えた。熊だ!一瞬3〜4m思わず後ずさりして岩陰に屈んでしまった。ちょうど直ぐ後にF本さんが来ていたので「熊や」と小さな声で知らせた。F本さんはびっくりした様子だが、熊との距離はそこそこ開いているし、熊はまだこちらに気付いていない。よし、ここはF本さんに熊を見せてやろうと思い立ち、そっと屈みながら沢の真ん中へ2人で移動し、そこでそっと背伸びすると、熊は来たほうへ戻るところだった。
熊のほうが人の気配を先に気付き、逃げ去る後姿を見ることは良くあるが、今回は珍しく逆であった。そうだ、写真が撮れたかも。でもその時は思い付かなかった。残念。
さて、Y田さんは見られなかったが、遡行再開。クルマユリが見られ出し、ダケカンバも混じってきて標高が上がったことが分かる。時々日差しがあり、沢の中は明るく気持ちいい。白っぽい花崗岩の間を分流しながら流れている。ちょっとした小滝が出だして来たが容易に通過できる。2,370mまで来ると先に三ノ沢岳へと続く稜線が青空に映えて見えてきた。2,460mで9:40である。ここは三ノ沢岳への最低鞍部に出る右岸からの小沢の出合だ。
10:00までに稜線に出られなければ三ノ沢から南西尾根を降りるのは中止することを計画書に明記してきている。F本さんは今日の天候と、未知のルートに少し不安そうである。そして、計画よりも手前に泊まったため今日の行程がまだ長いのと、天候がだんだん悪くなってきていること、午後の雷も予想されるため、ロープウェイ利用の最短コースに決定する。
小沢を見送り、標高2,520mまで進むと3段滝の下に出た。長めの休憩をする。休んでいると体が冷え、山頂部分にはガスが掛かってきている。もう日差しは無くなった。
3段の滝はホールドがあり、登るには問題ない。唯一滝登りらしい場所であった。滝上からは勾配が下がり、前方の眺めが広がって気持ちよいカールの末端となってきた。ほんのひとまたぎの流れになり、両岸の高山植物の高茎草原には、ふと気付くとクロユリの花が盛りで、あちらこちらに無数に咲いている。アルプスの沢登りではこの高山帯の草原の詰めが実に美しい。
ガスの合間に、稜線へどう抜けるか目でハイマツの切れ目を追いルートを決めた。
写真を撮ったりした後、少し沢身を辿ってから左斜面に取り付き、草原を横切って、1,715mの狙った鞍部にぴたりと出た。
沢装備を解いていると、三ノ沢岳への登山者が結構行き交っている。
休憩後、怪しくなってきた雲の様子を見ながら早い足取りで登山道を急ぐ。遠くで雷鳴が一度聞こえた。稜線を離れ一気にロープウェイの駅へ降り立つ。
すごい人の数に圧倒される。
いつも静かな山を登っているのでこの人混みは久し振りの体験だ。なんと乗車に3時間待ちとなっている。1〜2本待ちと思っていたら大間違いだった。F本さんと一緒に整理員に交渉に行き「片道利用者の便宜がなっていない」と申し出た。係員は慣れた様子だったが、再度事情を説明し、そっと通してしてくれた。融通を利かせてくれてありがとう。
バスに乗り換え、駒ヶ根駅へ。列車の切符を買おうと「倉本まで」と言うと、「どこのあるのですか?」という返事。滅多に売れない行き先なのかな。ちょうど山向こうの駅なのだが。
昼下がりのけだるく、のんびりした雰囲気の列車に揺られ、1ボックス向かい合わせで弁当をひろげながら過ぎ行く小駅の風情を楽しむ。最近の山行には無いちょっとした旅が加わり、三ノ沢岳から先のルートを止めたのは全く惜しくない。むしろまた出掛ける機会が増えて嬉しいやら困ったやら?楽しみが増えちゃった。
ともあれ、どこかの大雨の影響により予定より10分遅れで倉本駅着。降りたったのは我々だけ。予約しておいたタクシーは列車が来ないので諦めて帰る間際だった。
ようやく車まで戻り時刻は18時半、さてこれから2人の終電に間に合うように走らなければならない。林道の樹林越しに西の山に沈み行く夕日が美しい。
運よく途中渋滞もなく順調に進み野洲駅21時半と余裕で到着出来たが、珍しく温泉に寄らずに直行。皆さん自宅でゆっくり入浴してください。お疲れ様でした。