南アルプス 中ノ尾根山から鹿ノ平(縦走)

山行名 南アルプス 中ノ尾根山から鹿ノ平へ縦走
メンバー L:H内(文) Y本 Y田 
期日 2007/9/8 〜9/10
山域・ルート 南アルプス 中ノ尾根山から鹿ノ平へ縦走
山行形態 縦走

コースタイム

9月8日

野洲駅前夜22:00→(途中で仮眠)→6:40権現橋 権現橋7:10→7:45黒沢橋7:50→(標高1,100m地点から2kmトラックに便乗)→ 8:40西俣沢の橋8:50→9:30登山口9:40→12:10 2,214m峰直下(標高2,190m地点) →12:40中ノ尾根山12:55→13:15 2,214m峰直下13:30→2,214m峰13:35→2,066m 峰14:45→15:30 2,095m峰の西北西100m地点(泊地)

9月9日

泊地5:20→6:05 2,062m峰6:10→7:00黒沢山7:15→8:05 1,901m鞍部西のピーク(標高1,935m)8:15→8:40 1,995m峰8:50→9:15 1814m峰西肩9:25→1,762m峰 10:25→11:00六呂場峠11:10→11:30六呂場山11:45→12:45 1,799m峰12:55→13:15 標高1,820m地点(アケ河内へ水汲み往復30分)13:45→14:40鹿の平(泊地)

9月10日

泊地5:45→6:30鎌崩の頭6:40→8:45林道登山口9:00→10:40中小屋ゲート 中小屋11:45=(タクシー1:05乗車)=12:50権現橋 /p>

【所感】

 

南アルプスの所謂深南部と呼ばれる藪尾根と針葉樹の深い森歩きに興味がありここ数年取り組んでいるが、今回は2年前の秋の鎌崩越えの山行以来だ。
平日が日程にあるので単独行だと思っていたがなんと2名も参加されるとのこと。さていいテント場や水が確保できるか楽しみだ。
野洲駅を予定通り22時出発。東名豊川ICからJR飯田線沿いの国道を辿る。県道に入ると狭く曲がりくねった道となり意外と時間が掛かる。山にはガスが掛かっている。水窪ダム方面に進みヒョー越への分岐から白倉林道に少し入った場所でテントを張って仮眠。
朝は快晴となった。白倉林道を奥に進む。権現橋手前の広場に駐車し支度と朝食。
ゲートには「5.5km先工事 歩行者も通行不能」と看板があり早速難題を抱えた登山開始となる。登山届けを記入後淡々と林道を歩く。1時間ほど歩いた頃後からトラックが来た。工事の方だが声を掛けられ荷台に便乗させてもらう。受ける風が気持ちいい。止まった場所から先の林道は荒れ、車は通れない。看板にあった通行止めは簡単に通過してしまった。荒れた林道を歩き西俣沢を右岸から左岸に大きく転回し、途中の沢で各自3L程水を確保し登山口へ。営林署の小屋がある直ぐ先に登山口の表示がある。立派な標識で登山道はしっかりしている。ここからやっと山道だ。カラマツの植林帯を登りやがて自然林を進むようになる。急だが単調なリズムで結構はかどる。登山口から2時間半で2,214m峰手前の分岐点につく。楕円形の表示が木に付けてある。
中ノ尾根山が、広い立ち枯れの木がある鞍部を隔てて円い形に見えている。荷を置いて往復する。明瞭な道が笹の間にある。1時間で往復し、いよいよ縦走だ。どんな程度の道か?読図も楽しめそうか期待する。
まず直ぐ先の2,214m峰に登る。中ノ尾根山が大きい。黒沢山も南に見える。比較的尾根は細いので道はよく分かるし、獣にもよく踏まれているようで明確だ。針葉樹の枝を分けるのが痛いがたいしたことはない。2,164mあたりは少し笹がうるさい。 
2,066mを過ぎ順調に下るが、やがて2,095m峰への鞍部が近づくにつれ尾根が広くなり、笹の勢いが強くなってくる。2,095m峰への登りになる頃は背丈を越える熊笹を力づくで押し分けて進むようになり、夜行の寝不足で疲労がかさむ。また、ひとりは今回のような藪山山行は初めてのようで、足元の隠れた倒木をうまく避けることや、笹薮漕ぎには慣れていないので、時間が掛かっている。
ただ、藪が激しいところにも鹿道が縦横に走っているのでうまく利用し、方向が狂えばまた別の鹿道を拾って進むことを繰り返せば少しは楽に進める。
2,095m峰の西北西100m地点に笹薮のポッカリ空いた絶好の空間があり、本日はここまでとする。水は3人で10Lあり充分だ。4時半に夕食を済ませ、夕日で西の空がうっすら輝く頃には、早くも就寝。明日の早出に備えることとする。夜中起きてみると星がある。サイトは風も当たらないし快適だ。
翌朝は4時に起床し暗いうちから準備する。東の空は明るいが西は雲が多い。恵那山の山頂部はガスのようだし、中アは見えない。
まず、広い2,095m峰の西斜面をかすめて右寄りを意識して下降する。笹薮はさらに深くなり、背丈を没して方位が定めにくい。笹に隠れた倒木を巻いたり潜ったり、乗り越えたりと、なかなか進めない。鞍部に近づくとその先は二重山稜となっており、稜線の東寄りを進むこととする。2,062m(地形図は2,602m)峰は山頂を踏む。獣道が西側の広い山稜に下っているが、東寄りをさらに進み、2,075m峰に近づくと笹が低く歩き易くなって来る。見通しも良くなり、7時ちょうどに黒沢山の山頂に着く。2,095m峰から1時間40分掛かったが、2,095m峰と2,062m峰の間は特に笹が深く倒木処理と藪漕ぎに時間が掛かった。
黒沢山の近くからは合地山、諸沢山等の寸又川流域の山々が良く見える。
さて、ここからは尾根が緩やかに左旋回しており、しかも尾根が拡がっていて方向を定めるのが難しそうである。歩き出すと以外にも赤テープが頻繁にマーキングされているので、これに従って下降するが、標高差で100m余り下降するとやがて無くなってくる。
やはり自分でルートを決めるのが安心だ。さらに広くなった尾根を進み、1,901mの鞍部が見えてきた。だが、標高1,950mあたりから木がまばらにあり、広い景色が見え出すのは良いが、やはり代わりに厄介な背丈を越える蜜笹薮に足元の倒木が行く手を阻む状態となった。少しでも藪の薄いところを求めて右に左に進路を調整する。
鞍部を越え最初の小ピークでやっと深い笹から開放される。しばし休憩。ここからは尾根が痩せ、ルートも明瞭になり、少しのアップダウンを繰り返して右のガレの縁を登るようになるとちょっとした草原の1,995m峰だ。渡っていく風が心地よい。この1,995m峰からは西側の展望が大きく広がる。
ここからは南に進路を変え、標高差200mを快調に下る。広くて笹は低く樹林も美しい。
1,814m峰が見えてきたが右肩に巻き登り、ピークは踏まない。この肩には一眼レフカメラが木にぶら下げてあり、誰が忘れたのかもったいない。あまり人の来るところではないのでまだ当分存在し続けるかな? 越えてきた黒沢山が正面に大きく見える。1,814m峰の肩から降り最初の鞍部に着くと大きく湾曲したダケカンバの大木がどっしり根ざしており、まるでここの主的存在をアピールしている。虹の架け橋のようになっており、実に絵になる光景だ。しばし見惚れる。
広い鞍部から緩く登り返し次の鞍部から先は尾根が広がり、予想通り、再び背丈を没する笹薮と倒木に悩まされる。黒沢山からは緑の草原のように見えていた場所だ。遠くから見るには綺麗だがこのような場所は樹林がない分、猛烈な笹薮帯になっていることが多い。
縦横無尽に走る獣道を拾っては捨てることを繰り返し、1,762m峰を越えて標高1,740mあたりまで難渋する。
しかし六呂場峠への降りに掛かると藪はなくなり快適に下降できるようになる。降り着いた六呂場峠には青いテントが捨てられていて、また大きな瓶やトラロープ、缶やごみも散見されあまり雰囲気は良くない。
少しの休憩で直ぐ登りに掛かる。急な単調な登りで笹が無いので楽である。峠から35分で六呂場山へ到着。山名板が数枚木に打ち付けてあるが黄色の目立つ標識には「耳目は欺かない、判断が欺くのだ」という戒めのような警告のような何とも言えない内容のものがある。ここからは西の尾根に明瞭な踏み跡とテープがある。
六呂場山からは小枝のうるさい樹林中の狭い尾根を下りるが、標高差で40m程下ったところでは、北に向きを変える支尾根の方が本尾根より明瞭で、また道が付いているので注意が必要だ。この尾根に先頭を行くY本さんが乗せられたのでバックしてもらい本来の尾根に戻る。
さらに先に進み、ひとつピークを越えて、1,799m峰への登りも注意が必要だ。ここには鞍部から水平に尾根の北側を巻く明瞭な道があるがこの道はどうも高度を上げないでずっと巻いてしまうようだ。巻き始めて50m位進んだところで斜面を登り尾根に出ると明瞭な道があった。鞍部からは水平に巻く道がはっきり見えて、尾根の芯を行く道は藪に隠れている。
高度差100m余りを稼いで1,799m峰を越え、一旦下りその後登りになって標高1,820m地点に着いた。ここでは、地形図からの判断で、水を汲むためアケ河内源頭に降りる。
たっぷり水が流れており、3人分10L程詰める。水を汲む時間を含めて往復30分程度掛かった。沢に降りた2人は浴びるほど飲んだ。
重くなったザックを背負っていよいよ本日最後の急登200mに挑む。悪いことに1時間前から降り出した雨が強くなってきた。衣服は水滴だらけの笹薮漕ぎで既にずぶ濡れだ。当然雨具は今更着ても手遅れ。おまけにガスが掛かって先が見えない。1時間位で広い鹿ノ平の一角に躍り出た。一面濃くなったガスで真っ白。視界が無いので方向が定めにくいが方向感覚と距離感で2年前来た場所にきっちり辿りついた。午後2時50分行動終了。
同時にさらに雨足が強くなり、すぐさまテントを設営。テントに入って落ち着くや否や激しく雨がたたく。雷も鳴り出している。あたりも薄暗くなり、不動山へ登ることはもう皆諦めている。明日に期待する。
早く寝たので翌朝は暗いうちに起きる。夜中は風雨と雷鳴で騒がしいかったので、鹿の駆ける音や鳴き声はあまり気にならなかった。
さっさと朝食を済ませ、濡れた衣服に勇気を出して着替える。雨の中テントを撤収するが濃霧で薄暗い。
2年前来た道を鎌崩ノ頭目指して笹尾根を下る。昨日から下山後のタクシーを呼ぼうと携帯電話のアンテナを見るがずっと圏外だ。尾根の西側から風が当たりちょうど良い気温だ。鞍部まで降り、登りに変わると笹が薄くなり、また西斜面は草付で歩きやすくなる。
鎌崩ノ頭に着き、携帯を見るがやはり圏外。10分休憩後林道に向けて下降開始。10分程降りた地点で先頭が右斜面を下りだした。進路がおかしいが道が明瞭なので少し降りたがやっぱりおかしい。水平に藪をトラバースすると正規のルートに戻った。そこから標高差で約200m降ると、ガスの中から抜け出した。なんと西の空は晴れている。一直線に晴れとガスの領域が分かれている。黒沢山が北に見え出した。さらに黒法師山、バラ谷ノ頭は見る見るガスの取れて晴れ渡っていく瞬間を刻一刻と見せてくれた。10分間の間に劇的に風景が変わった。雨とガスの中の山行で急に天気が回復する場面に出会えたことは、ずっと晴れている山行よりも思い出深いものがある。こういう時に奥深い山行をして良かったと強く思う一瞬であった。
さて天気は回復し、日差しも当たるようになり、踏み跡の明瞭になった道を前方の山並みを樹林の合間に眺めながら快調に進む。最後の植林の急斜面は崩れかけた道になってスピードが落ちたが無事林道に降り着く。ふと足元を見ると山ヒルが数匹取り付いている。
しまった。既に足は2匹に吸われていた。手首も1匹吸っている。他の2人も取り付かれていた。林道で休憩兼緊急ヒル点検だ。最近は鹿が増えてヒルの生息範囲もどうも拡大傾向のようだ。それにしても尾根にヒルが居るとは?
いよいよ、ここから9kmの林道歩き。今日は平日で天気が悪かったので工事関係者も入っていないかもと思いながら早足で歩く。下界は晴れて暑い。どんどん下り、1時間40分で中小屋ゲートに着く。ちょうどその時に軽トラが上がってきた。おっちゃんに「タクシー呼びたい」と声をかけると、無線を持っておられ、直ぐに建設会社の事務所に繋げ、事務所の方から呼んで頂けた。非常にありがたかった。グッドタイミング! さらに軽トラのおっちゃんは3km先で後ろを歩いていたY田さんを荷台に乗せてわざわざゲートまで戻って来た。仕事中なのに本当に感謝。
1時間余り待ってようやく水窪タクシーが到着。権現橋ゲートまで行ってもらった。なんと1時間5分も掛かった。途中の村々はだいぶ離村が進み、人を見ることも無い。
権現橋には我々の車が1台ポツンと止まっているだけ。この3日間登山者は無かったようだ。
13:20着替えを済ませ、帰路は国道152号を浜松方面に進み途中で温泉に入浴後、帰路についた。
今回は中ノ尾根から鎌崩ノ頭へ縦走したが笹薮の激しい場所は1,995m峰手前鞍部から2,062m峰の間、黒沢山先の1,901m鞍部前後、1,762m峰前後(特に手前の広い尾根)の3区間に別れる。それ以外は獣道を辿れたり、藪が薄いので単調に進める。ほかには1日目の泊地である1,995m峰の巻きと、六呂場山先の標高1,710mあたりのアケ河内に下る尾根が明瞭なので乗らないことと、その先の1,799mへの登り出しで北斜面を巻く道に入らないこと。
以上の3箇所くらいがガスで視界のない日は要注意箇所と思われる。
不動山は悪天候で登れなかったが全体的には充実した3日間が過ごせた。

△上に戻る

 

ガス巻く黒沢山

 

中ノ尾根山で

 

中ノ尾根山

 

黒沢山に向かう

 

1,995m峰西北西で幕営

 

左から不動山、鎌崩ノ頭、丸盆山

 

六呂場山と背後に遠く丸盆山を望む

 

縦走路を行く

 

鞍部のダケカンバの木

 

晴れゆく黒法師山、バラ谷ノ頭


Copyright (C) 京都雪稜クラブ. All rights reserved.