一の倉沢烏帽子沢奥壁南稜

山行名 谷川岳 ひか子といな子のチン登攀「一の倉沢烏帽子沢奥壁南稜」
メンバー L:H笠 I野
期日 2007/9/21〜9/23
山域・ルート 谷川岳 一の倉沢烏帽子沢奥壁南稜
山行形態 岩登り

コースタイム

9月21日 出町柳出発22:00→京都東IC→水上IC→一ノ倉沢出合5:00
9月22日 一ノ倉沢出合出発6:30→右岸を巻く6:40→ヒョングリの滝の落口(テールリッジ末端)7:25→テールリッジ下部の岩場→上部スラブ8:05→衝立岩取付8:25→烏帽子沢トラバース→南稜取付8:50→登攀開始9:20→登攀終了12:40→草付ルンゼ12:55→烏帽子尾根→5ルンゼのテラス14:50→一ノ倉尾根→笹薮→国境稜線15:20→オキの耳16:15→トマの耳16:30→肩の避難小屋16:35→西黒尾根17:00→巖鋼新道→マチガ沢出合18:55→一ノ倉沢出合19:30→道の駅→泊 就寝22:00
9月23日 起床7:00→湯の小屋温泉9:45→お昼12:30→道の駅で昼寝14:00→起床出発17:00→月夜野IC→梓川SA休憩→SA仮眠→京都2:30

記録

H笠

 9月の3連休後半、@子槍(2P)A錫杖・注文の多い料理店orじーやの大冒険orバードランドor見張り塔までずっとB谷川のどこかの案が浮上。@は北鎌を登ってきたパーティと合流したいと目論んだが誰も計画に乗ってくれず。Aは調べてみるとほぼNPにて自信なし。Bは遠い・・・うーん・・・
 と思っていたが、9月の最初にいなっちの熱い計画で湯檜曽に行ったとき、一ノ倉沢を目にして谷川のどこかのルートに登りたくなってしまった。それからとにかく行く気にはなったがもたもたしているうちに1週間切る。計画書を作成している最中に、群馬県の条例を見てみると、もしかして登山届けは10日前に提出の必要あり!?やば、いなっちに怒られる・・・あわてて、日中に群馬県の役所に電話し、山岳団体に所属している場合はそこの責任者のOKが出てる計画書を当日出したらOKなことがわかり、ほっ・・・
 ルートはといえば、一ノ倉なら烏帽子沢、衝立岩、幽ノ沢ならV字状岩壁、などあ〜どれにするかなあ、ともたもた検討。とりあえず初級の烏帽子沢南稜とV字右に決定。国境稜線に抜けるという前提で調べるほど、連日で2本は体力的に無理な気がしてきた。初見で行ったパーティは、烏帽子沢南稜で11時間〜12時間、パーティによっては15、6時間かかっている。いなっちに1本になってもいいか聞くと、2本行きたいとのこと。うーん、ま調べるのが遅すぎたからなんだけど、1本で許してくださいとお願いしてなんとか受け入れてもらう。初日はアプローチと敗退路の確認・二日目登攀・三日目温泉と名物を食す計画で落ち着き、アプローチ・終了点〜稜線までのルートを徹底的に頭に入れて準備完了。
 当日、沢に行くN澤君も車に同乗することになり、これ幸いと運転を押し付けた。名神〜中央道〜長野道〜上信越〜関越道と長い道のりの半分近くこなしてくれて助かりました、ありがとう。車の中でガス缶を忘れていることに気がついた。やば、、、ガスってわたしだけだっけ?と思ったらいなっちにも割り振っていて持ってきてくれてた。ま、山の上に泊まらないから大丈夫だ、ほっ・・・
 車の中で天気を確認すると、なんと、2日目の天気が悪い方向に変わっている。相談の上、1日目に登ってしまった方がよいだろうということに。あ〜せっかく余裕のある日程のはずだったのに、やっぱり強行日程だ〜・・・
 5時半、3週間前きた一ノ倉の駐車場着。まったくの仮眠なく準備開始、もうなるようになれという気分。と思ったら、メット忘れた。うわー、いなっちごめん・・・いなっちの顔がこわばっている。とりあえず、さっき計画書を提出した山岳指導センターで借りれるか聞きに戻ると、指導員の方が親切にも貸してくださった。ほっ・・・(しかも自分のよりフィット感良好♪)
 好天の中6時半、スタート。一ノ倉沢の左手にあるふみ跡をすすむとヒョングリの滝の上部に出て、フィックスされているロープで懸垂し、沢床へ。3週間前にあった雪渓は跡形なく消えている。先行Pがいるから、進行方向はよくわかるが、足が動かない〜・・・こら、足動け、と激励しながら必死でいなっちを追う。とにかく眠い〜!!しかも日が照り付けて暑い。水を1リットルしかもってきてないのに、取り付き時点で半分飲んでいた。ポカリの粉を入れてるせいで、余計のどが渇く。あー、もうほんまどうにでもなれ・・・取り付き点でいったん寝ようと試みるが、暑すぎて寝れずいくことにする。
 1P、いなっちから。(登攀記録は相棒よろしく)
とりあえずフリーで終了!!あ〜のど乾いた、ポカリ水は飲みきった。先行Pはとっくの昔に登り終わって、国境稜線を進んでいるのが見える。ここから一ノ倉尾根の合流目指してのぼりだが、傾斜は結構きつい。雨降ってたらロープいるなあ、こりゃ。支点も適当にある。笹藪とかルンゼとか越えていくと、5ルンゼの詰めに来た。V級程度とのことだが、岩がぼろぼろ、支点はほとんどなく、一番怖いピッチとなった。眠いいなっちは無常にもこのピッチをわたしに押し付け終わったと思いきや、どんどん笹薮をこいで見えなくなる。トマの耳まで行ったら水が飲める、あと、2時間くらいか。体が思いに反してスローでしか動けず、時間だけがたっていき、のどの渇きだけで歩いた。途中で食べたら、代謝水がでるからか、のどの渇きがましになることに気がついて、小まめにラムネを食べて、なんとか一ノ倉岳の左の肩の登山道に出た。そこでいなっちにテルモスの紅茶を分けてもらって少し復活。上からみると、終了点から国境稜線までの方が長いくらいだ。幽ノ沢の地形・一ノ倉の地形を見たり、こないだ歩いた旭岳のなだらかな稜線や、去年行った巻幡山がよく見え気を紛らわしながらトマの耳へ。小 屋で、水をわけてもらい、一気飲みし、おにぎりを食べてずいぶん元気が出る。エアリア上、下山に3時間近くかかり、ヘッデン必至の様相だが、気持ちは楽になり、西黒尾根へ。途中から足がつり始め、休んでも戻らないため、無視して降りた。19:30駐車場に着くころに雨が降り出した。やれやれ、なんとか無事に終了、お疲れいなっち、ありがとう。
 山岳指導センターにメットを返しに行くと、朝メットを貸してくださった方に「ああ、帰ってきた・・・!!」と言われ、心配してもらっていたことが伝わってきた。その後、道の駅に移動し、いなっち特製、中華丼で祝杯。翌日、湯の小屋温泉で汗を流し・郷土料理を食す。いなっちは上州武尊山に登りたいと未練たっぷりのようだったけど、天気予報は雨(わたし的には助かった、ほっ・・・)のため、帰途に着く。けど、二人とも、途中で仮眠する予定が起きたら、2時間経っていたという調子なので、京都になかなか着かない。16時ごろ出たのに、家についたら3時くらいだった。N澤君、置いて帰ってごめんよ・・・
 あ〜あ〜、こんなに足が動かないのものどが乾く体験をしたのも初めてだった。一睡もせず、水分もとらず、とにかく半日くらいは動けるみたいだとわかったけど・・ま、日程も水も無理しちゃだめです。お肌にも悪い。
 次は、フリー力をあげてもう一回谷川行きたいね、相棒。

I野

9月21日  御嶽山兵衛谷へ行くN澤君をピックアップして京都を出発した。興奮していて寝れず、 ずっと喋っていた。途中パラパラと雨が降り出し、週末の天気を携帯で確認しみた。する と当初予定していた登攀日の23日が雨予報に変わっていたので、22日に急遽登攀すること にした。仮眠をとらないとやばい!!N澤君が運転してくれている間に寝ようと思ったが、寝つけないままN澤君と辰野SAで別れた。私が先に2時間運転して相棒が後半運転してくれた。相棒が運転している間に寝たものの、十分な睡眠がとれないまま一ノ倉沢出合に到着した。懐かしい景色だ。2週間前に湯檜曽川遡行で来た。その頃よりは車の数がかなり多かった。
 朝ごはんを食べながら登攀の準備をしていると、隣の車のおじぃさんが声をかけてきた。群馬県の方で山暦50年らしい。77歳と聞いた。ひょえ〜!!相棒を待っているらしく今日は幽の沢V字状岩壁へ行くらしい。南稜について色々アドバイスをいただいた。相棒が忘れた!!とまた言い出した。次は何?車中でガスを忘れたと聞き、私が持ってきていたので問題にはならなかった。次はメットを忘れたという。うわ〜それはやばい・・・。登山届出所へ借りに行くと言って行ってしまった。大丈夫かなぁ。メットはありそうだが貸してくれるのだろうか。とりあえずパッキングするのを辞めておじぃさんと喋っていたら相棒が戻ってきた。運転している相棒をよ〜く見るとメットをかぶっている。もぉ〜!!心配したぞ〜良かった。(その姿がちょっぴりかわいかった)
 6時半にやっと出発。登攀組では我々が一番最後だった。一ノ倉沢を進んでいくと右岸に踏み後がしっかり着いた道があった。そしてヒョングリの滝を右岸から巻いて、残置ロープ(かなり新しかった)で懸垂をしてテールリッジの末端に着いた。テールリッジの下部も上部も残置のロープが所々に付いているので思っていたよりも怖くない。それよりも暑くて辛かった。やっと衝立岩の取り付きに着いた。そこから基部を左に回りこんで烏帽子沢をトラバース。烏帽子沢も下から見ていたよりも階段になっていて怖くなかった。岩が乾いているからかもしれない。フリクションは抜群!もし濡れていたらやらしいだろうなぁ。ちょうど1ピッチ目に2,3パーティが取り付いていた。
1ピッチ目 W inako
凹角からカンテ状を登りバンドを右に行きチムニーを登る。寝不足とアプローチで疲れていてちょっぴり緊張。上部チムニーの取付き付近のハーケンが抜けたようで少し登りにくくなったらしい。ボルダーチックだった。中間部にカム2番でランナーをとった。
2ピッチ目 W hikako
フェース。フリーを思いっきり楽しめそう。右上ぎみに登り、バンドを左側から。
3ピッチ目 U inako
草つきを登り大きなテラスにビレー点があった。そこまでコンテ可能。
4ピッチ目 V inako
左上ぎみに登り、稜の左側でビレー。
5ピッチ目 V〜W hikako
6ルンゼ側のテラスに出て、馬の背リッジ。右側の稜に出るときが怖かった。稜に出てしまえば問題ない。
6ピッチ目 W inako
左の凹角から上部の垂直のフェース。上部のフェースはかなり垂直でトポのとおりホールドは若干細かいが、きっちりあるのでそれを拾っていけば問題無し。残置ハーケンも豊富だった。終了点で相棒と声をあげて喜びあった。でもここから先は長い。
南稜からは各自ロープを持ちながら進む。しばらく行くとアンザイレンしたほうがいいようなクラックが出てきたがそのまま登った。そして笹薮の中で靴・ザイル・ギアを片付けてハーネスだけ付けて進んだ。烏帽子尾根の草付の踏み後をたどる。これがけっこう長くて辛かった。水分を1人1リットルほどしか持っていかなかったので十分に飲むことが出来なかった。脱水状態で口に無理矢理食べ物をいれて水分をとろうとする。そしてやっと5ルンゼ頭の下のテラスにたどり着いた。アンザイレンしたほうがいいとトポに書いてあったが、我々はビレーをしてザイルをはった。ここが一番怖かったかも。フォローで登っていくとビレー点に水分不足で半分死にかけ状態の相棒がいた。がんばれ!!ここで相棒と握手を交わしてザイル等全て片付けた。あとは稜線にむかって一ノ倉尾根をつめるのみ。リッジが現れ慎重に通過し、笹薮の中の登りになった。藪と言っても踏み後がばっちりついているので歩きやすい。笹をかき分け掴みながら登る。これまた長い長い。数歩進んでは休憩しながら登り、まだかと思っていたら登山者の姿が見えた。稜線だ!!最後の力を振り突き進んだ。
登攀終了から3時間弱で着いた。
ラストの水を2人で分けて飲んだ。ぜんぜん足りない。ここから避難小屋まで1時間もある。もつだろうか・・・。思うように足は動かない。なんとかオキの耳・トマの耳を通過し避難小屋に着いた。水水水を求めて小屋の中に入っていった。今日は団体客が2組も泊まっているみたいで、水をあんまりわけることができないと言われた。2人で1リットルほどいただいた。うまい〜!もっと飲みたかったが、下山用においておかなければいけなかったので我慢した。
行動食をとり下山開始。小屋から一ノ倉沢出合(駐車場)まで3時間。遠い・・・。最初は順調だったがすぐに喉が乾いて疲れる。下山がこんなにもダルイと感じたのはかなり久しぶりだ。1時間弱で巖鋼新道の分岐に着いた。我慢出来ずに残り少ない水を飲んだ。相棒は足が攣り始めて痛そうだ。まだまだ高い位置にいる。最後の水を飲みほして、ヘッドランを点けながら滑りやすい登山道をひたすら下る。緩やかなになってきた辺りでようやく水を発見!!2人で大喜び。大量に勢いよく飲んだ。冷たくて美味しくて生き返る。(相棒は飲み過ぎて気持ち悪いと言ってた。笑)そして無事マチガ沢出合に着いた。やれやれ。ここまできたらもう安心。ちょうど雨がパラパラと降り出してきた。本当によかったよかった。一ノ倉沢に戻るとほとんど車は無かった。登攀者で我々が一番最後のようだった。
温泉に入るよりもお腹が減っていたので登山届出所でメットを返して、水上の道の駅に直行することにした。届出所の方の一言目が「あ〜よかった」という言葉だった。ご心配おかけしましてすいませんでした。ありがとうございました。道の駅で御飯を食べて22時頃寝た。
9月23日
 今日は昼から雨、24日も雨ということで、温泉に入って帰ることになった。24日がもし曇りor晴れなら武尊山(ほたかやま)に登りたかったんだけどなぁ。(冬にでも行って見た山だ。)夏合宿で入りそびれた湯の小屋温泉に入って、郷土料理を食べて、昼寝をして夕方水上を出た。何度かSAで休憩し、22時頃あまりにも眠たかったのでSA(小牧JCTの手前)で仮眠を取ることにした。気がついたら2時間も寝ていた。ひえ〜、いつになったら京都に帰れるのだろうか・・・。6時までに出ないと深夜料金が使えない、最後の核心を乗り越えて2時半頃家に着いた。
今回の山行はいろんな意味でプラスになる山行だった。寝不足・水分不足状態での自分の体力の限界を知ることが出来た。水の重要さを感じた。今年度で一番ハードな山行だったかもしれない。
良かった点:オールフリーで登れたこと。目標達成!!
      目標どおり国境稜線をぬけて、谷川ピークへいけたこと。
反省点:谷川へいかれた方から2リットル/人 担いだ方がいいとアドバイスを貰っていてヒョングリの滝で水分を確保することができたが、1リットルしか担いで上がらなかった。考えが甘かった。

△上に戻る

 

1ピッチ目

 

2ピッチ目

 

4ピッチ目

 

4ピッチ目終了点

 

5ピッチ目

 

6ピッチ目

 

国境稜線へ

 

オキの耳

 

トマの耳

< 

小屋

 

西黒尾根


△上に戻る

Copyright (C) 京都雪稜クラブ. All rights reserved.