北アルプス 南岳西尾根〜大喰岳西尾根

山行名 プレ冬 南岳西尾根
メンバー L:N村 T嶋 N澤 I野 F上 F澤
期日 2007/11/23〜11/25
山域・ルート 北アルプス 南岳西尾根〜大喰岳西尾根
山行形態 積雪期縦走

コースタイム

11月23日

起床5:30→出発7:45→穂高平小屋9:00→滝谷出合→南沢出合13:30→南岳西尾根→2100m付近テント場14:00(第一コル?)

11月24日

起床4:00→出発6:00→デルタ状岩壁7:50→2700m地点10:40→マッチ箱11:00→南岳冬季避難小屋13:00

11月25日

起床2:45→出発4:45→南岳→6:05中岳6:25→大喰岳7:05→大喰岳西尾根→飛騨沢9:00→槍平小屋10:30→穂高平小屋13:00→駐車場14:00

【記録】

N村

 

今回の山行ではリーダーをまかされてしまった。とはいうもののメンバーの殆どが慣れているということが分かっていたので、適当に係を振って安心して任せられたので楽だった。ところが、11月も後半を迎え、ようやくやる気を出した冬型の天気による大雪で、転進濃厚となり、どうするべといった状態になった。さらに直前の週は出発まで3日しかなくて忙しく、自分の山の準備をいつすればと途方に暮れ、職場では風邪が大流行でうつされそうなり、直前の転進の打ち合わせにも出れず、直前まで計画書の変更や調整等に追われる始末だった。
そんなこんなで京都を出発。T嶋号は荷物ではちきれんばかりだった。しっかり現地の様子を調べてなかったので郡上あたりから雪が積もっていて驚く。全員がワカン要ったかなと心配になる。新穂高に3時ごろにつく。とにかく寒いのでジャンケンで車の中に寝床を確保できほっとする。8時ごろ出発する。まわりの山々はすっかり雪化粧していた。入山パーティはいくつかあるようで(車の轍も含めて)しっかりしたトレースが付いていた。ワカンの心配は杞憂だったかとその時は思った。
進むにつれ、しだいに、真っ白な笠ヶ岳、穂高連峰の美しい山々が見えてきて、雪山のシーズンがやってきたと実感する。トレースは次第に薄くなり、滝谷を渡る途中でなくなっていた。ここからラッセルの始まりだった。ワカンいるじゃないか。ワカンの有る人、無い人交代しながらラッセルをする。はまるところは、先頭が空荷でラッセルし、後で荷物を回収して進む。ようやく南沢末端で大休止する。時間もあるので尾根に取りつくこととする。短いし雪崩の心配はあまり無いと判断してルンゼ状の急坂をまず登る。あとは尾根を登り続け、いい時間になったころ、樹林帯の2100m付近によい場所を見つけたのでテント場とする。
T嶋さん、N澤君には偵察&トレース付けに行ってもらい。残りのメンバーでテントを張る。行動中、その重さでN澤君を苦しめていたフライ一体型のテントは立てるのも難しく苦労する。テントの中で水を作ったりする作業なんかも久し振り、細々としたことで雪山に来た感じがして嬉しい。思わずご飯前からビールを開けてしまった。ビールの名前は「冬物語」だった。おいしくお御飯を頂き、お酒も頂いて寝る。となりのテント(F澤、N澤)は速攻で寝たらしく寝息が聞こえるのになかなか寝付けなかった。月があかるい夜だった。
4時起、6時発、ラッセルを代わる代わるしながら順調に高度を稼ぎ、樹林帯を抜けると展望が開けてくる。デルタ状岸壁の下部にでる。ここでロープを出しF澤さんにリードで行ってもらう。見た目よりは難しい箇所があったが乗り越える。ここからは展望のきく細い尾根が続く。今日もやっぱりいい天気、青い空、白い山、一体どうしたN澤君??
こういうまっさらの雪稜にトレースをつけていくのが雪山の醍醐味だと改めて思った。主稜線がまじかに見えてくる、どこかで夏道と合流したらしく看板とかも現れる。尾根はますます細くなって、厳しくなってくる、先のほうでは急坂になっていて厳しそうだ。ここがマッチ箱のコルだ。ここはロープを出してN澤君がリードする。雪を払って支点や足場を確認しながら慎重に進む。マッチ箱を越えるところが結構緊張するところだ。あとは見かけほどでもなく、普通に登れてしまう。
主稜線へ向けて急登が続く。登るにつれて風が強くなってくる。風が結構強くなってきたところで南岳小屋に着く。さてどうするか、時間は午後1時。本来の計画では午後2時までにここにつけば槍ヶ岳山荘まで行く予定であった。しかし、結構疲労ぎみのメンバーがいること、夏道のコースタイムが3:30となっていること、風が強くなってきているので体力を消耗しそうなことを考慮して、微妙だが、今日はあまり無理をしないことにしておき、その分明日は早朝に出発するということで、南岳の避難小屋泊とする。この時点で槍ヶ岳山頂は省略することとした。
快適な小屋の中でだらだらと話をして時間を過ごす。かなり早めのご飯を食べて今日もお酒を頂き寝る。今日もなんかしら寝つきが悪かった。先日のごとく2人は速攻で寝ていた。今晩も月がきれいだった。
 2時半起床、F上君特製の納豆うどんをいただく。以外にも旨かった。4時半出発。月が明るくて雪面に反射し、へドランがいらないくらい。月の光に浮かび上がる山々と遠くの町の明かりが幻想的だった。風もなく快晴で快適な稜線歩きだった。中岳の登りが少ししんどかった。中岳の山頂でいろいろ写真を撮った。空が赤く染まり日が出るまでの光景をずっと見ながら歩いた。本当にきれいだった。
大喰岳につく。9時頃。本来、雪崩の心配のなく明瞭な中崎尾根からの下山を予定していたが、大喰岳より観察した結果、大喰岳西尾根のルートも明瞭であり、途中飛騨沢に下りたとしてもそれほど雪崩の危険がある状態には見えないこと、大喰岳ルートならば大幅に時間短縮ができること、槍ヶ岳山頂に行かないならば中崎尾根に行く意味がないこと、などから大喰岳西尾根より下山とする。
尾根から沢までは順調に降りたが、ここから槍平までのラッセルが非常にきつかった。まさにワカン大活躍というか、ワカンでもかなり沈む大変な状態で汗をかきかき、ゆっくりと進んだ。槍平についたときはやった!という感じだった。槍平からは順調にとばし、予想外に早い3時ごろに新穂高についた。
  直前の転進にも関わらず絶好の天候に恵まれ、順調に行ってよかったが、特にリーダー的な仕事をした覚えがない。メンバーに頼りすぎという面は否めないと思う。ちょっとラッセルで調子に乗りすぎたかもしれない。個人的にはプレ合宿にしては充実していて良かったと思う。

△上に戻る

T嶋

雪の量はある程度覚悟してはいたが、この時期にしてこれほど多いというのは予想外だった。それ以上に予想外だったのは、トレースが滝谷出合までしか付いていなかったことである。そのため本来であれば、いったん槍平小屋までいき、西尾根の北側からとりつくのだが、槍平までラッセルするくらいならすぐに尾根にとりつくほうがいいとの判断で尾根の最末端からとりついた。このトレースにつられて、槍平をめざす登山者が登ってきていたのには驚いた。
二日目、天気は最高。N村くんがかなりの部分をラッセルしてくれた。やや離れすぎるのが気にかかるが、天気もいいのでラッセルのほうでがんばってもらった。雪はときに深みにはまることはあったが、前進のために何度も踏み固めねばならないというほどでもなく、荷物を持ったままラッセルするか、荷物を置いてラッセルをするか迷う程度であった。南岳小屋についたころにはかなり疲れていて、時間は早かったがそこで行動終了となった。翌日の天気が悪いと予想される場合には、多少無理する場合もあろうが、今回はここでやめておいてよかったと思う。冬季小屋は一人千円であったが、その価値は十分あり、あたたかい夜を過ごすことができた。
三日目、また好天。大喰岳で休憩中、N村くんが西尾根を偵察し、西尾根を下降することに。昨年の正月にこの尾根を登ったとのことで、その経験が生かされたと思う。飛騨沢は雪崩が心配されたが、雪の状態はわるくなく、あれだけ気温があがっても雪崩が起きる様子もなく、ごく小規模なもの以外は過去におきた形跡もみられなかった。結局槍平の直前までラッセルをさせられた。新穂高までの道すがら、連日の好天で雪がかなり減っていたのが印象的だった。
今回はこの時期にしては雪が多かったとはいえ、これ以上望むべくもない好天に恵まれ、南岳西尾根を存分に楽しめた。登攀的要素は少なかったが、オールラッセルだったため充実度は高かった。みなそれぞれ手応えを感じたことと思う。個人的には、出発直前まで仕事が忙しく、準備にあまり参加できなかったのが反省点。体力もずいぶん落ちていて、しばらくこれくらいの山行でリハビリするのがいいと感じた。この時期の立山は不確定要素が大きいので、来年以降はすこし考える必要があろう。

△上に戻る

I野

11月23日 晴れ
高速を下りてから凍結した道路を慎重に運転して新穂高温泉の駐車場に3時半頃やっと着いた。テントをたてて即仮眠。2時間。朝寒くて車の中へ飛び込み朝食を済ませて重いお尻をあげてパッキング開始。会から借りたテント(4/5人用)が内張りとセットになっていたのでめちゃくちゃ重くてボリュームが大きい。それをN澤君が持ってくれることに。ありがとう!!
長いだるい林道歩き。この林道歩きが一番辛い。前の三人とはかなり離れてしまった。後ろからボチボチと歩いていく。林道は凍ってる箇所があって滑りやすい。ここ最近の冬型で綺麗な雪景色。穂高平小屋、白出沢出合、滝谷避難小屋手前、南沢出合で休憩をとった。滝谷出合から踏み跡が無くなりラッセル開始。
ルートには槍平小屋から沢を渡り南岳西尾根に取り付くように書いてあったが、槍平小屋までいかなくても南沢を詰めていけば尾根の取り付きに行くことが出来るだろうということで沢を詰めることにした。T嶋さんが空身でラッセル開始。続いて荷物背負っていこうとするとズボズボとはまって進まない。ぐ〜ワカンを持ってきていた三人は強い。
尾根に取り付くと急登となる。N村君が先頭でグングン進む。後ろからそろそろ交代しては・・・と言わないと永遠に進んでいってしまうほどの勢い。すごいなぁ〜。ヘロヘロになりながら後ろから進む。メンバー全員でラッセルを交代して高度2100付近の少し平な場所でテントを張ることにした。ここが登山体系に書いてあった第一コルなような。
T嶋さんとN澤君でトレースを付けに行ってくれた。感謝感謝。残ったメンバーでテント設営。フライ付のテントはお初だったので建て難い。なんじゃこりゃあとブツブツ言いながらなんとか建った。1時間ほどで二人が戻ってきて、温かい紅茶を飲み一息ついた。ここは携帯の電波が入ったのでN澤君の携帯で明日の天気を確認した。晩ご飯はドライカレーとスープ。F澤さん、N村君、N澤君はお酒を持ってきていた。さすがや!いかに軽量化するか考えてるのに、体力がある人は羨ましい〜。お酒をチビチビ飲みながら団欒して明日のルートを確認して就寝。

11月24日 晴れ曇り
朝方寒くて目が覚めた。今日の予定は最低でも南岳避難小屋、最高で槍岳山荘。南岳に14時までに着くことが出来たら槍まで進むということで出発。昨日つけたトレースはあっという間に終わってラッセル開始。昨日と同様、空身になりながら全員交代で進む。第一の核心、デルタ状岩壁に到着。F澤さんがトップでフィックスを張った。ワンポイント難しい箇所があった。緊張するけどなかなか楽しい。そこからまたラッセルが続き、第二の核心マッチ箱に到着。リッジ状になっていて、雪をかきわけながらN澤君がトップで行く。
途中ランナーを三箇所(一箇所リングボルトがあった)とってフィックスを張った。これもワンポイントのみ。続いてF澤さんがトップで進み、ピナクルで終了点を作ってフィックスを張った。ここはそれほど問題になる箇所はなかった。核心が終わるとあとは高度を上げていくのみ。次第にラッセルも無くなり、雪原となり南岳避難小屋が見え始めた。もし天気が悪く吹雪いていたら判り難い箇所だろう。二日目も天気に恵まれて問題なかった。小屋に入ってとりあえず大休止。当初予定の14時までに到着したがここから槍の肩まで夏で三時間半、体力的に厳しいという判断から二日目の行動を終了することにした。
窓の隙間から雪が少し入り込んでいるものの暖かく、小屋の中にトイレもあってとても快適だった。明日の行動距離がかなり多くなったので翌日は起床2時半から3時、出発4時半から5時にすることになった。早出出来るように水を大量に作って16時晩ご飯(マーボーナス丼)を食べた。16時からN澤君が天気図をとってくれた。明日も天気は安定してそうだ。少しお酒を楽しんで18時就寝。

11月25日 快晴
22時頃寝苦しくて目が覚める。変な夢を見た。水分をとってもう一度寝るが熟睡は出来なかった。2時半頃ごそごそとみんな起き出した。朝御飯はF上君が考えた「納豆餅うどん」だ。ひえ〜どんな物なのか楽しみだ・・・。食べてみると以外にも美味しい!!しっかり食べて4時45分出発。
お月さんがとても明るくてヘッドランがいらないぐらい。南岳までは緩い傾斜を登ればすぐ。ほとんど夏道沿いに歩いていく。途中岩を巻いたりしながら進み、急斜面を登ったら中岳へ着いた。そこから槍が見えた!!あそこまで行くのか、遠いなぁ。富士山、八ケ岳、常念など雪がついた真っ白な山々が見えた。30分ほど休憩して大喰岳へ向かう。ちょうど朝日が登り始めた頃で、真っ白な雪に真っ赤な光が当りとても綺麗だった。アップダウンを繰り返して大喰岳に着いた。風があり寒かったのでケルンの影で休んだ。さっきより槍が大きく見える。かなり近づいたがまだまだ遠い。
当初の予定は槍から中崎尾根を下山する予定だったが、もし中崎尾根にトレースが無かったら時間的に厳しいので大喰岳西尾根から飛騨沢を下降することにした。冬の槍ピークはまたのお楽しみとなった。
大喰岳西尾根上部は快適で下りは早い。だんだん下降するにつれて雪は多くなり(1メートルぐらいはあったような)ラッセルが始まった。飛騨沢に合流してから槍平小屋までトレースは無くずっとラッセルだった。ワカンの威力がまた発揮された。私以外のメンバーでラッセルを交代しながら進み、ヘロヘロの私は後ろから歩かせてもらった。(すいません。)飛騨沢に入ってから槍平まで思っていた以上に長く、雲ひとつ無い晴天でとても暑くて消耗した。槍平小屋には予定以上に早く到着した。もし中崎尾根を下っていたら槍平小屋からヘッドランだっただろう。ここからはトレースがあるので楽ちん。だらだらと長い林道を歩いて、白出沢出合手前付近、穂高平山荘で休憩をとり駐車場に戻ってきた。
   プレにしてはとても濃い山行だった。もっと体力をつけないといけないなぁと感じた。
N村君のラッセル力はすごかった。課題を見つけることが出来た。また、久しぶりの冬山で装備・生活・行動食など、再確認することができ、正月合宿に向けてプラスになる山行だった。
次回は、中岳西尾根を登ってみたい。奥穂高から西穂高縦走・キレットと楽しいルートがたくさんだ。ただ、あの林道をまた歩くのかと思うとちょっぴり辛いなぁ。それにしてもトレースをつけるのって楽しい〜。

△上に戻る

N澤

 当初憧れの剣岳へ行く予定だったプレ冬。今年も雪少ないなぁ、なんて思っていると直前にドカ雪。おぉ、いい感じじゃないか、なんて思うのもつかの間、立山は除雪が追いつかないほど降り積もり、結局目的地は変更することになった。夏に引き続き、悪天候を呼び寄せる力は衰えていないようだ。
 転進先は、南岳西尾根から槍ヶ岳を縦走するというこれまた憧れの山域。なんせ高校から登山を続けているのに、槍ヶ岳のピークはまだ踏んだことがないのだ。昨年はケガのせいもあり雪山に触れていない、久しぶりの雪山に不安と期待が交錯する。
 新穂高温泉へ向かう高速では雪が積もり、周囲の山も白く染まっていたが、肝心の新穂高温泉では路上に雪は見当たらず、少し肩透かしを食らう。とにかくそのままテントを張って眠る。多少雲の残る空も、明日からは快晴になる見込みだ。車中泊でダウンシェラフは多少暑いが、気持ちよく眠る。
 翌朝、共装を分けて荷物を詰めて準備をする。二年ぶりの100?ザック、こんなもの滅多に使わないが、せっかくなので持って来た。何にも考えずに詰められるので楽だ。適当に荷物を放り込んで出発する。林道を歩き始めると、やはり雪が多い。白出沢の辺りからは雪だらけ、もうしばらく進み、先行パーティのトレースが消えてからはラッセルが始まる。ひざ程度までの深さだが、荷物が重いせいか沈んでかなり消耗してしまう。槍平小屋手前でそのまま南沢をつめて西尾根取り付きを目指すことにした。このあたりで仕方なくわかんをつけるが、取り付きからの急登では笹ですべってしまい逆に難しく、すぐ取り外してしまった。雪の状態はあまりよくなく、取り付き初めのルンゼは少し怖かった。
 樹林帯に入ると、後はひたすらラッセル、T嶋さんとN村さんほとんどお任せすることになる不甲斐なさ、ちょっぴり凹んでしまう。初めの登りを終えると小さなコルへ出る、時間はまだ14:00だが、このラッセルでは次の幕営適地まで到達できるか微妙なので、ここにテントを張ることに決める。幕営の間、T嶋さん、僕で明日のためトレースを付けに進む。尾根が右へ曲がる箇所で引き返すことにした。その先にデルタ状岩壁が見えるが、あまり困難そうではなく、少しほっとする。携帯の電波が入るので天気図を見ると、核心である明日の天候はかなり好転している、これなら突破できそうだ。夕食はドライカレーとスープ、冬山の食事ってなんか心が安らぐ瞬間で好きだなぁ。ひとしきりノンビリした後、僕とF澤さんは隣のテントへ移動して眠る。今回のシェラフは厳冬期用、もう寒さのかけらも感じることなくぐっすり眠ることができた。月がとても明るく、周囲の山は銀色に照らされている。
 翌朝、起きてみるとテントの中の霜もなく、かなり暖かい。撤収して進むとすぐにトレース終了点まで進み、そこから荷物をおいてラッセル交代しながら進む。昨日より荷物が減っているにもかかわらず先頭に出る機会がない、N村さんとT嶋さんが速い。岩壁手前でアイゼンをつけ、F澤さんリードでロープをフィックスして進む。見た目より難しいが適度な緊張感で楽しい。ここを通過して2631の小ピークを越えるとナイフリッジが出てくる。その先にマッチ箱と呼ばれる岩稜が出てくる。どこかトップをやりたかったのでここで主張してみる。散々ラッセルをお任せしておいておいしいところだけいただく、最悪の展開だ、、、次回は頑張りますから許してください。
 小さな岩頭に馬乗りになり進まなければならないが、ピンが見あたらない。岩にスリングをかけてランナーを取ろうとするがうまくいかない、不安定なまま仕方なく進もうとして雪を払いのけると、古いリングボルトが出てきて一安心。そこを越えてしまえばあとは簡単、先の潅木でフィックスする。その先もF澤さんトップでロープを出すが、ここは雪も安定していてロープ不要であった。
 あとは徐々にクラストした雪原へと姿を変え、気づくと稜線へ出ていた。稜線の風は激しく、とりあえず南岳小屋の冬季避難小屋の中で大休止をとりながら今後の予定を決めようということになる。時間的にはギリギリ槍の肩まで進めるかどうかという時間だったが、強風と体力の消耗を考えて、ここで一泊して翌日頑張って下山しようということで落ち着く。そうと決まれば小屋の中にテントを設営し、少し休んだ後に夕食をいただく。天気図取りながらだったので、ゆっくり食べれなかったが、マーボーナス丼おいしかった。明日も天気はよさそうだ。翌日に酒を余してもなんだということでゴクゴク飲む。うん、酔ってしまいそうだ。お酒のせいか、この日はひたすら夢を見る、夢から覚める夢を見た、これって何か暗示してるのかな?寝言とか言っていないかと少し不安、、、誰も何も聞いてないよね?外の風で時々鉄の扉が揺らされ、ガンガン鳴り響く音で何度か起きるが、小屋の安心感はすごい。
 2:30頃起床で朝食、F上くん考案の納豆餅うどん、冒険的なメニューだ。彼のメニューは奇抜なことが多いらしく、楽しみにしていたが、意外においしい。なんだこの味は〜!!と言いながら食べる展開を予想していただけに少し残念なような微妙な感じ。
 外に出ると風は凪いでいる。昨夜に引き続き月がきれいだ、ヘッドライトが不要なくらい明るく、槍と穂高の峰が圧倒的な存在感を示している。それにしても中岳の峰が大きく、ここを越えなきゃいけないのかぁ、と沈んだ気持ちになるが、歩き始めるといいペースで進み、順調に中岳を越え大喰岳に到着する。当初考えていた下降路である中崎尾根はトレースついてなさそうで少し時間かかりそうということで、大喰岳西尾根を少し下見に行く。飛騨沢の中も思ったほど雪がなさそうでどこでも逃げられそうだ、ということでこのまま大喰岳西尾根下降にルート変更。槍、また踏めなかった、、、
 下降路では特に問題なかったが、尾根の末端まで行くとやはり積雪量がすごい、例年の正月並みではないか?沢への降りる箇所は少し雪崩が怖かったが、無事に降り、そのままラッセル地獄へと突入する。しばらく進み、沈むようになったところでわかんを装着。ここではかなり威力を発揮した。しかし、温度が高く雪がくっつくせいか、3回ほどベルトが外れてかなりイライラした。ともあれ槍平小屋へは予定よりだいぶ早く到着し、頭の中は温泉と夕飯でいっぱいになる。ここからはこの連休でしっかりついたトレースの上をかなり速いペースで帰る。林道へ入ってからもペースは落ちることなく、とにかく駐車場へ、そして夕飯へと向かう。
 駐車場で皆とハイタッチ。うん、楽しかった、今回の山行は。プレ冬っていうか、冬だった。皆様ありがとう。それにしても、結局天候は荒れることなく、雨男形無し。次回は気合を入れて、猛吹雪の中再チャレンジだ!

△上に戻る

F上

直前のコース変更で不安がありましたが、無事に帰ってくることができ、今はひとまず安心しているところです。本当によかった。
今回の山行でよかったところ:個人的には、自分の実力以上の山を経験できた。メンバーの方々には生活技術、行動技術、ルートその他判断の仕方など数えきれないものを教わりました。バリエーション的な山を体験でき、その面白さを知れたことは、今後のモチベーションにつながると思います。メンバーの皆様には本当にお世話になりました。ありがとうございました。
食料を任されましたが、メニューにこだわってみたのが受け入れられ、よかったです。新しいものに挑戦するのはある意味ギャンブルでもありますが、今後も美味しい料理ができるよう努力していきたいと思います。
反省点:個人的には、南岳西尾根〜槍ヶ岳2泊3日というコースを余裕を行くには何より体力増強、そして装備の軽量化(山行のレベルに応じた用具が必要)、下調べ(不安を解消するためにも)、経験(難所はもとより、休憩中やテント内でも次に何をしなければいけないか考えてすばやく行動するため、冬山自体にも慣れる)が必要でした。
一方で、今回は合宿に準ずる山行だっただけにメンバーシップ、リーダーシップ、合宿としての役割も学びたかったのだが、それらについては今一つ納得する答えを見つけるに至らなかったのが残念です。メンバーとしてパーティーにあまり貢献できなかったのは経験、体力不足が原因の一端ですが、やはりリーダーからの指示を待つ受身な姿勢があったかもしれません。社会人山岳会にあっては、一人一人が高い意識を要求される。その前提の上に互いに意見を交換してパーティーの力とする。今の私にはその土台となるものが不十分だったと思います。経験の差も当たり前、ある程度の上下関係も当たり前の大学とは別物と考えなければならず、リーダーに頼るのでなくより自分の意識が大切になることを感じました。ただ逆にいうとしっかりコミュニケーションをとっていないと事故が起こる危険も大いに含んでいるとも思います。皆様がどういう意見をお持ちなのか気になりますので、また教えてくださればありたがいです。
合宿係だったからというわけではないのですが、生意気な意見ばかり申してすいません。私自身今回背伸びしすぎたところもありますので、もう少し身の程をわきまえて今後も山に行きたいと思います。

△上に戻る

 

穂高平

 

飛騨沢下部

 

南沢下部のラッセル

 

西尾根Co2100付近より

 

1泊目テント場

 

2日目ラッセル

 

デルタ状岩壁

 

Co2600付近

 

第2核心部

 

通称マッチ箱

 

快適な雪稜

 

左上の凹角はやや悪い

 

核心を抜けて

 

南岳小屋直下

 

朝日

 

記念写真

 

大喰岳西尾根上部より

 

飛騨沢上部を下る


Copyright (C) 京都雪稜クラブ. All rights reserved.