京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
山行名 | 八ヶ岳 権現岳東稜 |
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メンバー | L:N村 T嶋(文) F澤 |
期日 | 2008/3/8〜3/9 |
山域・ルート | 八ヶ岳 権現岳東稜 |
山行形態 | 積雪期岩登り |
京都駅22:00→小淵沢IC→道の駅こぶちざわ3:00(泊)
泊地→美し森山駐車場8:00→出合小屋9:30→バットレス基部直下13:00→権現岳手前
泊地7:30→ツルネ8:30→出合小屋10:00→美し森山駐車場12:00
久々の八ヶ岳東面、そして初めての尾根である。権現岳東稜は日帰りでも登られているようだが、今回はゆっくり1泊でアタックする。本来は天狗尾根、旭岳東稜と3パーティで入る予定だったが、天狗、旭パーティが阿弥陀岳南稜に変更になったのは残念だった。天狗はともかく旭はすぐ隣で、お互いどこにいるか確かめながら登れそうだったからである。
出合小屋までは立派なトレースをたどり、2時間足らずで到着。さらに谷をつめ、地獄谷本谷をわけると、トレースも不明瞭となる。ときおり足をとられはしたが、いいペースで進む。このあたりは12月下旬の状況しかしらないが、それと比べて雪がずいぶん多い。とくにゴルジュのところは12月には苦労したが、いまは何の問題もない。ゴルジュをぬけてすぐ、尾根にとりつく。トレースはあちこちについており、あっけなく稜上に達した。稜上は意外とやぶっぽい。ときおり尾根は細くなるが、困難な箇所もなく、やがて樹林帯の広々とした尾根に変わる。上方にバットレスがみえる。日帰りで登られているだけあって、スケールが小さい。所詮、八ヶ岳か・・・。テントサイトは至る所にあったが、まだ昼前、行動を打ち切るにはあまりに早すぎる。このペースだとツルネまでいけるのではと淡い期待を抱きつつ、最悪はバットレス基部で寝られるはずと、そのままつっこむ。
樹林がきれると、もうバットレスは目の前だ。F沢さんはすこししんどそうで、N村くんと荷物をひきうける。コルでトレースがばったり消え、目の前にはいやらしそうなナイフリッジがたちはだかる。右からまいて岩の基部に達するのだろうか、それともナイフリッジをたどって直上するのか。ここからアンザイレンすることとし、まずN村くんがリードする。雪の処理が相当やっかいで、時間がかかる。50mいっぱいのばし、残りの2名がフォローする。岩の基部まであと10m。これはF沢さんがリードする。
本来、僕はリードする気はなく、したがってルベルソではなくATCを持って行ってきたのだが、ここまで結構時間をくってしまい、先を急ぐ必要があるので、N村くんのルベルソを借り、あつかましくもリードさせてもらうことになった。一段岩をあがって、最終的には左にいくのだが、どうも悪い。右にハーケンがみえ、右からまわって稜上に出られそうな感じがしたので、右へ行ってみた。少々草つきがやらしく、N沢くんのバイルを引っ張り上げて通過、右奥にビレイ点がみえた。しかし上部の岩は思った以上にたっていて、とても左上できそうにない。ビレイ点と思ったところは、なんと浮き石にスリングが何重にもかかっているだけで、懸垂すらできない。あきらめていったん下りる。その際、バイルを落とすが、かろうじて止まった。今日はいったんおりようという意見もあったが、ともかくこの1ピッチさえ抜ければなんとかなるはずなので、こんどは左に様子を見に行く。傾斜のない容易なフェースが続いていたので、そのままつっこむ。ギアが不足し、スリングをかけては回収するのを繰り返しつつ登る。ただ条件は最高で、雪もついておらず、風もなく、素手でもまったく問題ない。ハーケ
ンはわかりにく、雪がついたら大変だと思う。岩自体はさほど難しくはない。
調子よく登っていると、もうロープがないというコール。幸い狭い間隔でハーケンが2本あったので、不安定な場所ではあったがビレイする。2人とも難なくフォローしてきた。あと1ピッチだ。だんだん陽が傾いてきており、続けてリードさせてもらう。ビレイ点のすぐ上に、立った部分があり、そこはさすがに重い荷物では越えられず、空身でクリアする。次にピンがあれば、荷物を取りに戻るつもりだったが、そこから延々とランナウトすること20m。ようやく木でビレイとなる。懸垂で下までもどり、荷物をかついで再びそのピッチを登る。2人が登ってくると、そのまま上に行ってもらった。これで核心部は終了したが、周囲には泊まれそうな場所がない。あたりは暗さを増す。体はそうとう疲れている。権現まで行こうとしたが、無理をせず雪の斜面でビバークすることになった。横になることはできず、ロープにぶらさがったままではあるが、ツェルトをかぶれば天国だ。街の光がうらめしかったが、さいわい無風で気温も低くなく、おもったより快適な夜をすごせた。
そこから権現まではほんの一息だった。稜線は風がややきつかったが、天気は最高だ。ツルネ東稜に入ると、風もなく暑いくらいだった。ワカンのトレースがあったが、ワカンははかなかった。たしかに時々はまったが、まあ許容範囲。駐車場までは単調だったがあっという間だった。
今回は余裕をもって1泊のつもりが、重い荷物のまま核心を越えることになってしまい、中途半端な山行になってしまった。核心部のリードを2人に経験してもらうことができなかったのは残念だった。久々に八ヶ岳にきたが、やはりスケールの点では見劣りがする。権現もバットレスをのぞけば何の変哲もない尾根だ。遠目には旭岳東稜のほうがより魅力的に見えた。
積雪期バリエーションデビューにしてはあまりにも何もやらな過ぎだった。フリーはほどほどにやっていたが,山とアイゼンはさぼり過ぎた感がある。
山は正月以来ご無沙汰であったし,木曜から金曜にかけて体調も崩して会社を休む始末。正月の時は体力トレをやったおかげか好調だったのだが,今回は体力が決定的に欠けていた。
一日目はバットレス下で幕営する予定だったのだが,予定より行程が早かったのでその日のうちに上に抜けることに計画変更となった。自分としては疲れていたし,行動中も眠くて仕方が無かった。この日はまったりする気分で荷物も重くやる気ゼロだったので,本気で抜ける気か?と確認したがリーダーの決定には逆らえない。今日突入するなら,自分の荷物を一部振り分けてもらうこと,リードはしないことを条件として付いていくことにした。今思うと不調をもっと強く訴えるべきだったかもしれない。
結果としては,成り行きでバットレス基部までの簡単な草付きだけリードしたが,バットレス取付がよく分からない。簡単そうに見えたので持っていた少ないギアだけで登り始めたが,基部は見た目よりも悪く,当てにしていた左上の松の木にトラバースする前にギアがなくなり,ラッペルで5mほど降りる始末。
バットレスの岩の部分は2ピッチで,これはいずれもT嶋さんがリードしてくれた。時間をかけている余裕が無かったので適当に登ってしまった。セカンドとはいえもっと時間をかけてルートを見極めながら登りたかった。
ガバが多く金毘羅の北尾根と同程度だと思うが,雑に行ったので1手だけW級の難しいところがあった。自分でリードするのであればオーバー手袋を外していたかもしれない。
この2ピッチのピッチグレードは難しくないが,ルートファインディングには要注意だと思う。T嶋さんはいったん右に入ったもののいったん戻り左に軌道修正していた。このあたりの判断は勉強になった。確保支点はよくないので落ちたくないところだ。
バットレスを抜けた頃には暗くなり始めたのでビバーク体勢に入ったが,天気がよかったので危機感はなかった。セルフビレイを取ってのビバークはよい経験になったが,前晩と合わせて2晩で2時間ほどしか眠れなかった。
翌日は歩くだけだったが,下山に意外に手こずった。今回はストックを使わなかったが,今まではストックに頼りすぎていたのだろう。