京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
山行名 | 不帰東面T峰 |
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メンバー | L:T嶋 O村 I野 A木の H岡 |
期日 | 2008/5/2〜5/5 |
山域・ルート | 北アルプス 不帰東面T峰 |
山行形態 | 積雪期岩登り |
京都21:00→八方仮眠2:30
GW前半で前穂高北尾根に行った疲れが残ったまま当日を迎えた。
起床6:30→出発8:00→八方池山荘8:40→八方池9:20→休憩11:00→再度休憩11:30丸山ケルン手前テント場12:00→就寝17:30
駐車場代(3000円/4日間)回収のおっちゃんに起こされて予定より30分早く起きた。もう少し寝たかったが仕方なしに起きて準備をした。どこのルートに行くか決まってなかったので、とりあえず共同の登攀具として鐙2セット、ザイル5人で3本、ナッツ1セット、ハンマー、ハーケン数枚を持った。ゴンドラ・リフト(9000円/5人/片道)と乗り継いで八方池山荘まで着いた。11月プレ冬では最後のグラートクワッドが使えなかったがGWからは動いていたのでラッキー。雪は溶けて歩きにくい登山道を進む。登山者は多く人だらけ。年齢層は比較的高かった。
今日はとりあえずBCまでひたすら歩くのみで気合が入らない。こまめに休憩をとりながら進んだ。不帰のT・U・V峰が見えてくる。どのルートを登るか全然決めてなかったが、4日間で天気が良ければ2本登る予定。おそらくV峰のbかcかT峰だろうと思っていた。正直一番行きたいのはT峰だが、T峰は難しいから今回はV峰のどこか登れたらいいかなぁと思っていた。だからベーキャンの唐松山荘付近まで登らないといけないと思っていた。しかし、もしもしT峰に行けるなら唐松山荘まで上がる必要は無いと思うと、とりあえずルートを決めよう!!とリーダーにふった。(2361メートル付近)
T峰に行きたいと思っていたのは私だけではなくA木君、H岡さんもそうだった。ただ、我々3人がT峰に行ける力があるのかどうかという事と、リーダーとO村さんは過去に行ったことがあるから同ルートでいいのかなぁと思っていた。検討した結果、ふたりとも再度行っても良いということとI峰へ行けるだろうということで、翌日登攀するルートが決まった。
そうと決まったらこれ以上登る必要がなくなったのでテント場を探すことにした。(丸山ケルン手前)登山道端のスペースでもいいが人通りが多く落ち着かないので、登山道より少し外れた斜面の中にあるわずかなハイマツ帯の中に張ることにした。石がゴロゴロしていたので整地して4、5テンぎりぎり張れた。
天気が良いのでシュラフや靴を干してだらだらと日向ぼっこ。H岡さんからウイスキーやつまみが出てきて宴会。いろんな山話で盛り上がる。そんな中、登山客は絶えることなく唐松山荘に向かってどんどん登っていく。恐ろしい人の数だ。
夕方になってきて風も少し出てきたのでテントの中に入って早い晩御飯にした。テントの中からは五竜や鹿島槍が綺麗に見えた。そして、外はまだまだ明るいが明日のために寝ることにした。
起床1:30→出発3:00→八方尾根支尾根取付4:00→休憩5:00→唐松沢・不帰沢出合5:25→T峰取付→T峰稜線7:00→断壁9:05(核心始まり)→核心抜ける12:15→T峰直下草付→14:00→I峰頭14:50→U峰→V峰→唐松岳18:25→テント場19:00→就寝21:30
1時半になっても誰も起きる気配がなかった。たしか1時半といっていたような・・・と思いながらみんなを起こした。さっさと用意をして予定どおり3時に出発。真っ暗の中、八方支尾根の取付きに向かった。ちょうど我々の下のコルにテントを張っていたパーティも準備をしていた。おそらくT峰へ行くのだろうと思っていたが、実際出会わなかった。
取付点を初日時間ある時に確認しておけばよかったのにダラダラと過ごしてしまったので、コルからハイマツ帯の中に進んでいって尾根を探そうとするが暗くて判らず、明るくなるまで停滞(4,50分)することにした。朝寝をしようとするがじっとしていると寒くて寝れず、星空を見ながら少し明るくなるのを待った。何回かながれ星をみて幸せだった。ほんのり明るくなった4時頃から再度動き出し無事支尾根にのった。少し下った地点から尾根が延びていた。
T峰付近にビバークしている明かりが見えていたので、支尾根には昨日入ったパーティがつけた踏み跡が残っていた。雪は柔らかく歩きやすかった。1時間半ほどで不帰沢と唐松沢の出合に着いた。いよいよT峰の取付きだ。今シーズンは雪が少ないようでブッシュがいっぱい出ていた。
雪がついてるところから攻めるが泥の草付きで滑りやすそうだったのでアイゼンをすぐに着けた。草付き、ブッシュ、雪の上をぐいぐいと登っていくと1時間半ほどでT峰の稜線へ出た。そこからもリッジ、ブッシュ、雪稜と進むと核心の断壁に着いた。綺麗なクラックがはしっているのが見えた。いよいよ核心だ。ちょっぴり楽しみ。クラック沿いには残置スリングがあって鐙のかけかえでで登れるらしいが、5人もいたら時間がかかってしょうがないので、今回は断壁の左側の凹角を登ることにした。
1ピッチ目は、O村さんリードでザイル30メートルほど延びた。雪はまったくついてなくて、浮石が多く落石に気をつけながら登った。今回一番素直なピッチだったような気がした。
2ピッチ目もO村さんがザイルを伸ばす。雪、岩、ブッシュ。
3ピッチ目はA木君がリードで50メートルいっぱい延びた。終了点作成に時間がかかってる様なのでT嶋さんがリードで続いて登った。少し岩が出てきて面白いピッチだった。
4ピッチ目は、下部やらしい岩と上部ブッシュ。T嶋さんがリードで25メートルほど。下部は岩がもろくてO村さんがフォローで登った時に掴んだ石がとれてしまったり、その後にA木君が登ったときも落石があったりと緩い岩場だった。大きな事故にならなくて本当によかった。ザイル1本がおじゃんにはなった。
T峰の核心を抜けるとリッジ・雪稜歩きになった。雪は柔らかく崩れやすい。ちょうどその頃V峰のdルンゼを滑る山スキーヤーが見えた。この日にdルンゼに入ると計画を出していたK浴さんではないだろうか。大声で呼んでみると向こうから声が返ってきた。K浴さんが滑っていく姿を見送り我々も最後の登りにとりかかった。雪稜を進みT峰直下の傾斜のきつい草付きで2ピッチほどザイルを出した。そしてようやくT峰の頭へ突き上げた。テン場を出てから12時間弱だった。振り返ると我々がつけたトレースがくっきり見えた。昨日入っていたパーティは、途中からT峰にとりついていたようで、下部から取り付いたのは我々だけだった。達成感たっぷりでメンバー全員、素敵な笑顔で真っ黒に焼けた顔で記念撮影をした。
さぁってここからまだ核心が続く。U峰・V峰と越えて唐松岳ピークを通ってテン場にもどらないといけない。U峰の手前でザイルを2ピッチほど出した。最後の最後に・・・と思いながら越えた。そしてT峰の頭から約3時間ほどで唐松岳に着いた。遠かった・・・。あとは明るい内にテン場に戻るのみ。A木君は先に行って紅茶を作ってくれるらしく早く下りた。O村さんとH岡さんは、小屋でビールを調達してくれた。そしてテン場に19時頃戻ってきた。緊張の連続で疲れたが何故か心地よかった。登攀成功を祝って21時半頃眠りに着いた。
岩、ブッシュ、雪稜と緊張することはあったものの難しくて苦しんだ箇所はなかった。すっきりした岩稜が続くのではなく、泥臭い沢登りのような感じを受けた。これはこれでけっこう好きだった。今回はリードする機会はなかったがとても満足している。リーダーをはじめ、メンバーに感謝したい。
起床6:30→下山→温泉→昼ご飯→京都
リーダーがつけたラジオの音で目が覚めた。もし天気が良くて身体の調子が良ければV峰登って帰ろうかと思っていたが、天気が悪そうなので下山することにした。まぁ半分下山モードだったし、身体も疲れていたし、T峰で大満足したのでこれでよかった。ゆっくり朝ご飯を食べて、少し団欒してからテントを撤収した。
昨シーズン、今シーズンと2,3月に八ケ岳西面でステップを踏み、前々から行きたかった残雪期の前穂高北尾根と不帰東面T峰を登ることが出来た。達成感・満足感いっぱいで、充実した雪山シーズンを終えることが出来た。
今シーズンはいろんな岩稜へ行くことが出来、来シーズンに向けての課題が出来た。それは、岩を登る技術・力をあげることも必要かもしれないが、それ以上に雪山を歩くこと。取付きまでのアプローチ、登攀終えてからの下山路が私の中でいつも核心だった。山を見る、歩く力をつけたい。
午後9時過ぎという早い時間に京都駅に集合、渋滞もなく順調に走ったものの、ゴンドラ乗り場についたのは2時半だった。翌日は急ぐ必要もないので、とくに起床時間を決めずに寝る。
駐車場代を徴収するおじさんの声で目が覚める。まだ6時半だ。6日までの分、3000円をA木くんが支払ってくれた。もう少し寝ていたかったが、仕方なく起きる。ゴンドラは7時半から動くらしいが、すでに行列ができている。ゆっくりご飯をたべて、8時すぎにゴンドラに乗り込む。下界はすっかり春模様だったが、高度が上がるにつれてみるみる雪景色にかわっていった。さらにリフトを2本乗り継いで、八方池山荘に到着。ここから歩き始める。登山道にはほとんど雪がなく、プラブーツでは歩きづらい。今回は4日と5日に登攀し、6日に下山予定だが、A木くんは5日に下山するので登攀できるのは1日しかない。休憩中、不帰をみながら、どこに登りたいかを聞くと、I峰がいいとのこと。I峰は僕もO村さんも登っているが、III峰はあまりにも短そうだし、今回のメンバー構成ではII峰もいけないしで、I峰も悪くないかなと考え、O村さんの意見を聞いたところ彼も同意してくれた。他のメンバーが賛成したのは言うまでもない。
もともと今日は唐松山荘まで行くつもりだったが、明日I峰にのぼるということで、急きょテント場を探した。このとき丸山ケルンの下にいたのだが、道からやや外れたハイマツの台地にテントを張った。登山道の広いところでもよかったのだが、この日は登山者があまりにも多く、やめておいた。登山者の数はA木くん曰く500人、ぼくは250人くらいとみた。夕方まで登山者の姿が絶えることはなかった。この間、I峰へのとりつきの偵察にでもいけばよかったのだが、寝たり食べたり飲んだりしてうだうだと過ごした。この日の夕食はH岡さん特製ぶた丼。明日は長丁場になるので明るいうちに寝床につく。
1時半すぎに起床、予定通り3時に出発。月明かりもなく、案の定まだ真っ暗。少し下ったところにテントが2張あり、1張はまだ寝ているらしく明かりは見えないが、もう1張のパーティはこんな朝早くにもう出発の準備をしている。ちょうど唐松沢への下山地点に張ってあり、またこんなに早く準備をしていることから、I峰を登攀するに違いない。(結局彼らには出会わなかった。下山日にIII峰を敗退したというパーティにあったが、それか?)
ハイマツと雪のまじる尾根を少し下るが、真っ暗で先がみえない。下山予定の支尾根にしてはちょっと傾斜がきつく、尾根を間違えたらしい。暗い中で右往左往しても仕方ないので、せっかく早起きしたが、明るくなるまで待つことにした。4時前、やや明るくなったので偵察にいったところ東側に大きな雪の尾根がみえた。どうやら一本西の支尾根にはいっていたようだ。昨日偵察していれば、と悔やむがまだ時間は十分ある。この尾根にはトレースがついており、ブッシュにわずらわされることもほとんどなく、快適に唐松沢まで下降した。広い唐松沢を横切り、不帰沢をすこし登って尾根にとりつく。
下からみあげるI峰尾根は黒々しており、ブッシュが大変そうだ。雪がのこる尾根左のルンゼをできるだけ上まで詰める。雪の切れたところでアイゼンをはき、ブッシュ帯につっこむ。ブッシュもそうだが、ところどころ出てくる不安定な雪の処理に意外と時間がかかる。15年前の記録ではとりつきから稜上まで50分しかかからなかったが、今回は1時間半もかかった。7、8年前に登ったO村さんによれば、稜上までずっと雪通しに来れたという。ここから2062mピークまで、これまた不安定な雪とブッシュの連続だった。やっとのおもいでピークにつくと、核心の断壁が全容をあらわした。ルートは正面の凹角クラックか、左に回り込むか。クラックは5人で通過するには時間がかかりそうだったので、左から回り込む。岩はかなりボロボロで大きな浮き石が随所にある。回り込んで最初の一手が細かい。ここもそうだが、雪がついていれば楽だろうというところがずいぶんあった。最後の僕が登り終えたときには、すでにO村さんが2ピッチ目のリードをはじめていた。ここからはかなり傾斜がおちる。水が雪の末端からしたたりおちていたので水筒でうけた。登攀待ちの間にほぼ2リットルを補給できた。
3ピッチ目はA木くんがリードするが、ロープ一杯になったところで動きが止まった。時間を節約するため、僕もリードする。A木くんはどうやらいい支点がなくて苦労していたようだ。僕がついたときに残置ハーケンがみつかったので、それを使わせてもらう。4ピッチ目は僕がリード。出だしがちょっと嫌らしかったが、あとは雪壁。早めにピッチをきり、あとはフリーで行くことにする。H岡さんが登ってくるのがみえてしばらくして、地響きのような音と、I野さんの「ラクセキ」という声が聞こえた。あとからわかったことだが、O村さんが登攀をはじめてすぐ、足元の岩が崩れ、O村さんが岩ともどもI野さんの上に落ちたということだった。幸い2人とも大きな怪我はなかった。そこから上は雪の急斜面をひとのぼりして稜上に出た。核心部の通過に3時間を要したが、これは2人パーティでいった前回と同じくらいであり、まずまずのスピードだろう。ここからトレースがついていた。断壁の上で合流する支尾根を登ってきたようだ。そういえば今朝I峰の下部にテントの明かりがみえていたから、そのパーティだろう。
あとはI峰まで楽しい雪歩きかと思っていたが、途中で1カ所、悪いクレバスがありロープをだした。このとき唐松沢を1人のスキーヤーが滑り降りているのが見えた。K浴さんに違いない。大声で呼ぶと、むこうも返事をした。I峰直下でもう一度ロープをだす。A木くんリードで傾斜の強いブッシュを登る。さらにA木くんリードで1ピッチのばし、頂上に到着、時間は3時前であった。360度の展望、剱方面もいい天気だ。
II峰へは顕著な登山道が続いている。とはいえ、不安定な雪がついたやっかいなトラバースがあり、3回ほどロープを出した。II峰からあとは悪場もなく、ひたすら重い足を引きずって歩く。そしてなんとか暗くなるまでにテントに帰ることができた。ながい一日だった。夕食はA木くん特製の麻婆ナス。1人あたりナス2本という豪華さだった。この日はすっかり完全燃焼した観があり、なんとはなしに翌日下山ということになった。爆睡。
下山。
連休前半、O村さんとI野さんは前穂高北尾根に、A木くんは奥利根に、H岡さんはボッカトレとクライミングに、と元気なメンバーに囲まれ、体力勝負のI峰尾根でついていけるかと少し心配したが、昔とった何とやらでかろうじてついていけた。普段トレーニングなし、山行は月1回では体力は衰えるばかり、なんとかしないととは思うものの、なかなか時間がとれない。なんとかせねば・・・。