日高

山行名 日高の沢旅
メンバー F澤   
期日 2008/8/9〜8/14
山域・ルート 日高山脈中南部 中ノ川〜ペテガリ川B沢
山行形態 沢登り

記録

8月9日

中ノ川林道車止め13:30〜中ノ川林道終点15:30〜S字峡上部C1 18:00

11:30帯広空港着。キムクシュベツ沢下降の安全確保に必要なライジャケを忘れてきたため,大樹の釣具屋で現地調達した。そのためタクシー代が跳ね上がった。途中,中札内のホームセンターでガスを調達,スーパーでジンギスカンを買出し,派出所に計画書を提出と大忙しで,中ノ川林道車止めに到着したのは13時半だった。幸徳から中ノ川右岸の林道を行き左岸に渡って1.5km進んだところでがけ崩れのため通行止めとなっていた。

日高山脈に帰ってきた。山を始めたときからライフワークとして日高山脈に照準を合わせて10年。中ノ川は4年前,早大尾根取付に使ったとき以来のご対面である。
今回はこの界隈では比較的易しい沢を遡下降する計画で入山した。中ノ川より神威岳に上がり,ニシュオマナイ川とベッピリガイ沢の登山道を利用してペテガリ川に乗越し,B沢を詰めてペテガリ岳を越えてBカールよりキムクシュベツ沢を下降する。一日でも雨が降ったらキムクシュは放棄となる。

林道を2時間歩いて入渓。林道は荒れ果てており復旧する見込みはないだろう。下界は晴れていたが山はどんより。ニセS字峡にあるゴルジュは左岸をきわどくへつり抜けた。18時,S字峡函滝を右から巻き終わったところで右岸にキャンプ適地を見出してC1とした。ニセS字峡とS字峡で竿を出したが魚信はなし。S字峡函滝が魚止めと思われる。夕方2時間弱雨が降ったが焚火はできた。


8月10日

C1 5:35〜十字峡5:50〜中ノ岳ノ沢出合6:20〜支七ノ沢出合7:15〜Co627左屈曲点8:20〜740m2股10:10〜970m2股12:20〜最終水場14:20〜Co1550登山道15:00〜ニシュオマナイ川下2股C2 18:00

 C1より15分で十字峡へ。C1より上にも右岸によりよいテント場があった。多少増水してもこのあたりで減水待ちすることは可能。十字峡は左股出合20mほど上流で中股と右股が合流して豪快な滝となってゴルジュに落ちている。左股を見送って10mほどで中股右岸の巻き道に入る。この巻き道は上部が崩れており悪かった。
 中ノ岳ノ沢出合までは河原。出合からは中ノ岳ノ沢の険悪さぶりを垣間見ることはできない。ここから七ノ沢出合までの区間はゴルジュもあり高巻きさせられるところもある。
 七ノ沢に入ってからしばらくはゴルジュの中をへつったり巻いたり快適。627m左屈曲点手前に7mほどの険悪な様相の函滝があるが左の岩盤から難なく巻ける。
 屈曲点から上流2,300mが核心でゴルジュは1.2mほどまで狭まるが,突っ張りとブリッジングで通過。見た目ほど悪くない。ゴルジュ出口の4m滝を右からへつった後下りるところが悪く,ここはザックを下ろしてから空身で落ち口に飛び降りた。
740m2股を右に入ると滝が連続する。出合から簡単な滝をいくつか越えてから現われる15m滝は右のクラックから直登を試みたが,足ジャムが外れて5mほど滑り落ちた。気を取り直して左のリッジを15mほど登ってブッシュに入り大きく巻いた。この滝は上部で右に屈曲して緩いナメ滝となって連瀑をなしている。沢には簡単に降りられた。
上部は順層のナメ滝が続いており快適であるが,一箇所高巻いて5mラッペルしたところもある。今回はルートファインディングがうまくいかなかった。この沢は直登,巻きのルート選定が物を言う。
 最後の詰めは右にトラバースして神威岳登山道へ。花畑はほとんどないが藪も薄い。一面のガスで視界はなし。
頂上(1601m)泊予定だったが14日以降の予報が芳しくないことから行程を前倒しして神威山荘まで下ることにした。登山道は廃道の運命にあり荒れていて笹が茂っている。行動時間が12時間を超え疲労のため時間がかかる。ニシュオマナイ川に出てから18時になり薄暮の中テープサインが分からなくなった。中ノ岳への沢との中間尾根乗越し地点を見落とし出合まで下りてしまった。雨が降り始めた。中ノ岳への沢を少し登り乗越しを見つけたが,対岸の林道入り口が分からない。20分ほどで神威山荘に着くはずなのだが,登山道から外れて暗いゴルジュを下るのも危険なのでここでビバークとした。
雨は2時間ほど降り続いた。設営している間に暗闇となり,薪を探すことともできない。何もする気にならず,食事もとらずに寝た。


8月11日

時間の記録なし(C2〜神威山荘 20分,神威山荘〜ペテガリ山荘C3 3時間)

 撤収すると下から登山者の声がした。対岸にはこれでもか,というほどテープが付いていた。少しでも暗くなると見えなくなるものなのか。神威山荘で大休止。昨晩よりろくに食べてないので今日はペテガリ山荘までの半日行程とする。
こんな日に限って好天に恵まれる。ベッピリガイ乗越中多くの登山者と会う。ペテガリ西尾根を登ってきた人たちだ。静内川林道に続いてニシュオマナイ川林道ゲートも閉まった今,ペテガリ山頂を極めるには最も容易な西尾根でも往復3日かかる。それなりの健脚者ばかりだ。この林道ゲートが閉まった意味は大きい。コイカクシュサツナイ岳から楽古岳までの日高山脈南半分を占める区間に渡り,半日で下山できる登山道がなくなってしまった。
ペテガリ橋にたどり着き釣り準備。ばこばこ釣れるが,イワナよりニジマスの方が優勢。ゴルジュ前まで10匹ほど釣って2匹確保。27cmどまりであった。数年前40cm級を釣り落としたことがあるのだが。
ペテガリ山荘に入り薪ストーブをたいて干し物をする。昨晩,今朝とろくに食事を取っていないので米を2合も炊いた。宿泊客は6名。


8月12日

ペテガリ山荘6:10〜ペテガリ川本流15m大滝7:10〜西尾根Co1050からの沢出合9:15〜ベッピリガイ山北西面沢出合10:35〜中ノ岳直登沢出合12:20〜B沢出合C4 13:00

 宿泊客の中では群を抜いて遅い出発。
 ペテガリ川入渓15分後現われるゴルジュは,水量が多いときは大高巻きとなるが今回は中を行けた。右を巻き気味にへつって左に渡ると見た目ほど深さもなく抜けられる。上に4m函滝があるが左より難なく抜ける。
15m大滝はどうにもならず右から大高巻き。これが猛烈に悪い。ルンゼからリッジに上がるまではよい。リッジはボロボロ。ここから空身で上がる。リッジは何とかなったが,その上のボロ壁が厳しい。ホールドがはがれる。スタンスがはがれないことを神様にお願いしつつ4mほど這い上がり左上のブッシュをつかんで核心を終えたが,このブッシュが抜けるようなら大変なことになる。細い潅木を伝ってテラスへ。荷上げも大変だった。もう2度とここは登りたくない。テラスより低く巻こうとしたが追い上げられた。テラスよりさっさと20mほど上がって台地を歩くと早いだろう。長いトラバース後,ブッシュを伝って沢に戻った。
 ゴルジュは続く。落差2mもない釜滝は左から低く巻こうとしたが悪い。水流の左を泳いで這い上がろうとしたが押し戻された。少し下流に戻ると安全な巻き道が見つかった。難なく左より巻く。この川は地形図ではゴルジュマークが数kmに渡って続いているが,大滝以外はへつりと低い巻きで通過できる。泳ぎはわずかですむが,水温がきわめて低いので要注意。
ペテガリ西尾根Co1050からの沢出合右岸によいビバークサイトがある。この後もゴルジュが続くが技術的には易しい。ベッピリガイ山北西面沢出合手前数百mのところにもビバークサイトがある。この枝沢出合上流もゴルジュとなるが問題なし。
地形図のゴルジュマークを抜けるとナメが現われる。河原すら現われる。一枚岩の岩盤を越えると右から中ノ岳からの沢が出合うがこの沢は小さい。ここを過ぎると水量が急に少なくなり,地形図上の枝沢も確認できないままB沢出合へ。A沢に少し入った左岸に天然のキャンプ場のような快適なサイトがありC4とする。13時行動終了。今日は楽だった。


8月13日

B沢出合5:35〜ペテガリ川B沢1000m2股8:05〜Co1200付近10:05〜Co1400岩峰11:25〜ペテガリ岳13:00〜ペテガリ山荘C5 16:55

 右にA沢を分けて進むとすぐに左よりC沢が入る。C沢出合より50mも登ると岩盤が露出してくる。すぐに直登が困難となり,空身で荷上げとなった。水流の左寄りから登る。
15m滝は右から取付き中段を左に渡ろうとしたが渡れず,右側壁を攀じてからブッシュ帯に入って巻く。なんとか左のブッシュをつかんで這い上がりテラスで荷上げ。滝落ち口に15mのラッペルで戻る。B沢ではここが最も難しかった。標高にして150m上がるのに2時間かかった。
 Co1200までは難しい滝も出てくるが,両岸が岩壁と壁状の草付に囲まれているので高巻きもならず直登あるのみ。ガスが濃いため高巻きのルートを見定めることもできない。空身で攀じて荷上げの連続。上部に一癖ある滝ばかりで楽な滝は少ない。岩はツルツルに磨かれており,ホールドに乏しいので快適とは言いがたい。スタンスが遠いのでムーヴもいる。Co850〜Co1200まで連続する滝の直登がB沢の核心である。A沢と比較すると登攀的要素が濃くかなり難しい。滝の傾斜は緩いのでセカンドなら楽々だろうが,オールリードはきつい。
Co1200を過ぎると両岸にブッシュが見られるようになる。15mほどの滝が2,3現われるが高巻きできる。左手斜面が弱点となる。この辺りまで来ると水量が少なくなりはっきり言ってしょぼい。地形図を見ても集水域は狭い。渓相はA沢の方がよいと思う。
Co1300を超えると再び両岸が立って高巻きできなくなるが,滝はホールドが豊富になり登りやすくなる。とにかく滝が多すぎて記録していられない。滝の数は30を優に上回るだろう。滝はガレに分断されているし,沢の屈曲が多くてまっすぐ見通せないので,連瀑帯という感じはしない。Co1400あたりには左手に顕著な岩峰がある。
源頭は小規模な花畑もあるがハイマツが優勢。最終水場で電波が入ったので天気予報を確認したところ,明日晩より天候は下り坂で明後日は雨とのこと。これでキムクシュベツ沢下降は却下。中ノ川下降は不可能ではないが,面倒くさくなって西尾根を下ることにした。最終水場の30m上にはくまさんの落し物があった。ハイマツの藪に悪態をつきながら飛び出したところはペテガリ岳頂上(1736m)の東10mの地点だった。
頂上からタクシーを電話予約し,長い西尾根を下りペテガリ山荘に泊まった。


8月14日

ペテガリ山荘5:40〜ベッピリガイ乗越〜ニシュオマナイ林道8:30〜上野深12:00

 今日も他の宿泊客が暗いうちから出発する中ドンケツスタート。途中誤った林道に入ったりでロスもあったが,3時間でニシュオマナイ林道に出た。ここで先行していた単独行者に追いつき,苫小牧駅まで行動をともにした。コイカクから5日かけて縦走してきたとのこと。
車止めまで13kmあるが,10kmほど歩いたところで地元の方が軽トラックに載せてくれて上野深バス停までヒッチハイクさせてもらった。感謝。タクシーはキャンセル。フェリーで安く帰京できないかと画策したが満席で,翌日まで暇をつぶして飛行機で帰京した。

今回は日高中南部としては比較的楽なルートを選定した。中ノ川は問題なかったが,ペテガリ川B沢は単独ではきつかった。
2つの沢のグレードは似たり寄ったりだと思うが,ペテガリB沢は登攀的要素が突出していたのに対して,中ノ川支七ノ沢は楽しめるゴルジュを擁する沢らしい沢で,自分の最も得意とするタイプの沢だった。トレーニング山行で使った黒部の弥太蔵谷の方が難しく感じた。中ノ川は期待していたほどきれいではなかったが好きな沢だ。ペテガリ川本流はなかなかきれいだが,B沢は水量が少なく見た目がしょぼい。B沢は単独でなく交代でリードすればもっと楽しめたと思う。単独の沢は今回で最後にしよう。ペテガリ川は本流の大滝の巻きが大問題となる。ろくな支点がとれないので,いつかスタンスの破壊により大事故が起こるのではないだろうか。
キムクシュベツ沢の下降がならなかったのは残念であるが,いつか他の沢から継続してみたい。この周辺にはサッシビチャリ川1839峰南面沢,ペテガリ西沢をはじめやりたい沢は両手に余るほどある。


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中ノ川ルート図

中ノ川ルート図
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中ノ川S字峡函滝

 

中ノ川十字峡

 

七ノ沢最狭部

 

七ノ沢ゴルジュ出口付近

 

中ノ川連瀑帯上部

 

中ノ川源頭

ニシュオマナイ川〜ベッピリガイ乗越ルート図

ニシュオマナイ川〜ベッピリガイ乗越ルート図
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ペテガリ川ルート図

ペテガリ川ルート図
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ペテガリ川本流大滝

 

ペテガリ川右岸の簾滝

 

釜滝

 

 

ペテガリ本流は穏やかに

 

B沢核心部

 

1400m岩峰

 

頂上よりキムクシュベツ沢を見下ろす


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