京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
山行名 | 平ヶ岳先ノ沢 |
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メンバー | L: F上 T村 H岡 K藤 H内 山D |
期日 | 2008年8月 |
山域・ルート | 上越 平ヶ岳先ノ沢 |
山行形態 | 沢登り |
2008年、今年の夏合宿沢初級組は癒し渓で有名な恋ノ岐川に行こうということで計画がスタートした。車の近くに下山するため、また日程に余裕があったので隣の二岐川を遡行し、下降に恋ノ岐川を使うということで準備をすすめた。 直前の天気予報で雨が予想されたので、遡行は本流でなく支流のジョウ沢をつめて恋ノ岐川に繋げるつもりで出発したのだが。。
他パーティーが転進などを検討するなか、我々もぎりぎりまで対応を練った。京都駅に集合すると、山Dさんがガス缶を忘れたとのことであわててホームセンターで見つけたキャプテンスタッグを購入。途中菩提寺PAでH内さんをピックアップし、北陸道周りで小出へ。H岡号の広さを最大限生かして3名の運転手で回した。
すっかり夜が明けた7時半、シルバーラインの長いトンネルを抜けて雨池橋に到着。釣り人の車が数台ある。ここのスペースは5台以上止められそうだ。団装分けをして出発。
舗装された林道を歩いていくと・・来た来た、アブ出現。黒尽くめの山Dさんが一番の餌食となっている。防虫ネットが活躍する。二岐川はなんとも綺麗なナメで出合っていた。確かに入渓したくなるが、もう少し進んだところから分かれる林道沿いにすすむ。地形図どおりタモギヤチ沢の手前でパタリと終わり、その先は藪のなかに踏み跡が続いていた。足元を沢靴に変えて、時々不明瞭になる道を探しながら進む。一応跡は残っているが最近はほとんど人が入っていないようだ。右岸に渡った後、左岸に再び渡って10分で小屋沢出合に着いた。車が捨ててあった。
あまりに藪で時間をロスしていたので、ふみ跡が川に降りたところで入渓する。水が綺麗ではないが、歩きやすい。ジョウ沢出合に着いた時間は12時をだいぶ回っていたが、ガイドブックのタイムからは幕営適地に16時半頃につけそうだった。しかも天気は予想より良く、日も差している。。皆この陽気に誘われて、いそいそと本流の平ヶ岳先の沢へ進むことにした。後に難航を極めるとは誰も想像しなかった。
沢はすぐにゴルジュ状になり、ハーネスをつけた直後にゴルジュに屈曲して流れ込む4m程の滝が現れる。F上、T村はロープをつけて右際を泳ぎ滝を登ったが、残り4名は右岸から巻いた。5m逆くの字滝は左岸から巻いたところで右から巻クラ沢が出合う。
その後もガイドには雪渓で隠れてしまっているところにも手ごわい滝がところどころ出てくる。6月の記録だけに大分様相が違う。Co1210mで左から沢が出合った頃には16時になっていた。
核心といわれる100m大滝手前のゴルジュはそこまで狭い地形ではなかったが、やはり大きな雪渓が残っていた。どう進むか皆で協議するが、まずF上が雪渓の下を偵察に行くが、30m程進んだところで沢は左に屈曲し、そこは7m程の滝が轟音をたてて落ちていた。その先には少し光が差していたが、滝の脇は暗くてホールドも見えないし、なにしろ恐い。戻って入り口すぐの右岸に開いた穴から雪渓の上に出てみる。こちらは上を歩いていけそうだ。ただここへの抜け口が泥つきで悪いため、戻って荷物とザイルをもち、バイルを使って後続を確保した。
雪渓の左端を数十m歩いてさぁ降りようかというところだが、雪渓が終わったすぐ先に高さは確認できないものの滝があるようだった。山Dさんトップでそのまま右岸の草つきから小尾根を乗り越え、20m程の懸垂で大滝下に出る。この懸垂が支点選び、距離が読めなかったこと等でなんとも時間がかかってしまった。
もうだんだんと暗くなってきている。日没ビバークの経験があるSLから「まだ進むか」と相談を受けたが、ここによいビバーク地はなかった。しかも雨の予報のなかなので、増水の恐れが高い。地形図には出ていなかったが、とっさに見えた大滝右の尾根らしき地形に向けて登ろうと思いつき、ザイルをつけてガイドどおりに中段から左壁へ渡る。ロープは2本あったので私はとにかくフィックスを置いて先へ急いだ。皆ヘッ電をつけ、ライトでホールドを探しながらのクライミングだった。トイ状の手前は砂地になっていて、思わずここでいいのではと思ってしまったが、皆のアドバイスで当初の小尾根まで数m登ることに。登った先はなんとも奇蹟的に6人ビバークできそうな斜面だった。思わず「いけます!」と叫び、後のメンバーは水採りつつそこまで登った。一瞬雨が勢いを増して降り出し、濁った水にならないよう注意を要した。メンバーが焦って滑落でもしないよう心配していたが、その場所を見つけるまでは私が一番焦っていたのかもしれない。皆一丸となって協力しあった瞬間だった。
全員揃ったときにはもう真っ暗だったが、幸運にも雨はやみ、星もちらちら見えるようになってきた。夕飯を食べてほっとしてから着替えて就寝。女性3人は降り口に近い斜面でハーネス装着のまま自己ビレイを取って横になる。男性3人は奥のやや急な斜面に皆のザックを繋いで橋渡しし、そこを足場に寝る。このときは時間の感覚がなかったが、23時就寝だったそうだ。
5時過ぎに起床。といっても男性陣は立っていたようなものなので若干疲れは残っているが、女性陣は思いのほか良く眠れたそうだ。朝食を食べて出発。片付けには時間がかかってしまったが、場所が場所だけに仕方ない。昨日張ったままのロープで懸垂し、滝にもどる。
涸れたトイ状も念のためフィックスし、釜と水流の間の岩に乗り移る。その先の4m程はF上は釜を泳ぎ流木を伝って左壁のテラスに上がったが、釜を回り込むと簡単に上がれたようだ。まだ3mと奥に見えない8mの滝が残っている。突破はやめて、K藤さん初めてのリードで左岸のブッシュ帯を30m登る。浮石が時々あって注意を要した。終了点から5m程さらに登ったところから笹を分けて右にトラバースする。このあたりは巻き道が見てとれた。
一ヶ所露岩の混じったリッジを回り込み、その先で落ち口へと降りた。しばらくはゴルジュとナメが混じった沢になるが、小滝でもメンバーの得手不得手が分かれるようで、ステミングで通過する2m滝では女性には届く限界の幅だった。また釜を持つ3mの滝ではこれまたF上のみロープをつけて右岸を突破したが、結局残りは右岸を10m程登り、懸垂で降りてきた。昨日幕営を予定していた場所はH内さんが見つけていたそうだが、昨日中にそこまで到達することは不可能だった。本当にあのビバーク地があってよかった。
この時点で時間は11時。ガイドブックとの比から今日中に稜線へ抜けることは無理と判断し、次のビバーク地から先の二俣まで(ゴルジュでなさそう)で適当なところを探すということで、のんびり行くことにした。休憩後の左にカーブしたゴルジュは右岸の悪い草つきを巻いた。
ガイドが指しているであろう二俣に着いたのはまだ13時。幕営適地も見てみたが、藪が茂っているのであえてここで泊る必要性はなさそう。結局F6−7m堰堤状滝の手前の右岸に藪を切り開いて幕営地とした。この夜は焚き火ができた。山D流のキャンプファイヤーを前に美味しいご飯と美味しいお酒が飲めたのは嬉しかった。夜にはまた雨が降り出した。
6時頃起床。タープの下、葉っぱの絨毯の上で朝食をとる。
出発してしばらくは気持ちのよいナメが続く。明け方には雷が鳴るほど雨が降っていたそうだが、増水はほとんど感じない。すぐに二俣を過ぎ、右岸を巻くという5m滝はH内、山Dが巻き、残りは滝身左を直登したがやや難しかった。次の5m滝はH内さんが早々に右から巻く中、山Dさんトップでチャレンジするが敗退、結局ロープをH内さんに投げてフィックスしてもらったが、ここはさらに難しかった。早々に巻く判断をしていればよかった。
そこからは登れる滝が続き、ツメは皆で読図をしながら地形図の万年雪マークの方向へ登った。稜線に上がる最後の急斜面はブッシュをつかんでヒヤヒヤ上がる。
ここからは藪コギだ。H内さん、H岡さん先頭で奮闘する。途中から道跡らしくなり、姫ノ池の湿原に出た。爽快!記念撮影をして、登山道にでる。K藤さんの情報に基づき、水場の近くで幕営する。
空身で平ヶ岳ピストンを終え、夕食&宴会タイムへ。緊張の糸がほぐれてみなリラックスしていた。夕食も完成間近になった頃雨が降り出してきたので、タープの下に避難した。
3時起床。平らで快適な床だった。この日は登山道を降りるだけなので、皆スタスタ歩く。途中日帰りの登山者が何人も登ってきていた。さすがにこの天気でも百名山だけある。
4時間で国道に降り立った。ここから雨池橋まで18kmほどある。山荘まで歩きながらヒッチハイクを試みたが、すぐに釣り人の方が乗せてくれた。H岡さんが回収に向かい、1時間ほど待った頃に戻ってきた。この帰り道は全く平坦でなく、登りと下りが繰り返されるので自転車デポでも厳しいと思う。
温泉はY本さんがお薦めだという白銀の湯に入った。うーん、ちょっとぬるい。皆アブやその他虫さされが痛々しい。その後IC付近の店に入ったが、あまりに品切れが過ぎたので結局高速のSAで食事をした。渋滞もなく無事京都へ。
皆さんお疲れ様でした。今年が雪稜に貢献できる最後になるかもしれないと思い、勝手ながらリーダーを志願させていただきましたが、色々と至らない点があったと思います。とにかく無事に帰ってこられてよかったです。
反省点は、時間読みの甘さにつきると思います。一度でも練習山行を組んでいれば自分達がどれほどのスピードで進めるか見当がついたはずでした。ロープを出せば出すほど遅れは広がり、ビバークという状況に陥ってしまいました。しかし雨は都合よいタイミングで絶妙にあがったり、とても運がよかったです。また焚き火ができなくてもきちんと着替えのサイクルを行えば不快ではないことが実感できました。
突破にしても巻くにしてもゴルジュ地形というのは本当に手ごわいものだと実感しました。一方で上信越ならではの美しいナメと淵も随所にちりばめられており、湯檜曽川のよさと似ているような気がします。
また、後日確認したところ、登山体系には我々の入渓点から所要時間が15〜18時間だった!しかも大滝は雪渓手前からもう大高巻きで超えていました“いやはや、どうりで我々が苦労したわけです。総合的に3級上くらいあったかもしれません。初級者6人で向かう沢ではなかったと思います。次は普通に恋ノ岐川遡行がいいでしょう(いや、当然ですよね)。
来年以降の提言としては、やはりリーダー候補+その監督者というペアでパーティーを組む方がよいと思います。中級の沢にすすむためには、メンバーはボルダリングなどでザイルなしで登れるレベルを上げておく、またトップをできる人は最低二人欲しいと思いました。テン場での生活は皆さん慣れていたおかげで楽しくすごせました。どうもありがとうございました。
今回は、悪天候が予想される上での入渓だったが、幸いにも天候のめぐり合わせがよかったおかげで、無事に遡行することができた。私にとっては、技術的にかなり厳しい沢だったので、これで悪天候も重なっていたらエスケープもままならず、窮地に陥っていたかもしれない。ガイドの記述は、雪渓がかなり残っている時のもので、あまり参考にならなかった。
6人という人数、そして技術レベルを考えると、なかなか内容的に厳しかったのではないだろうか。
装備に関して一言。こういう大人数での遡行ではプルージック登攀が多くなるが、片手でプルージックを上げていく作業はむずかしいのぼりになるほど大変である。私は、タイブロックを使用していたが、これは軽い上に非常に有用なので、是非持参することをお勧めする。
リーダーのF上さんには、終始リードをお願いしているような状況で、かなり負担をかけたのではないかと思う。グチも言わずにがんばってくれたリーダーに感謝したい。
貴重なビバークの体験も共にし、緊張する中、楽しい笑いを振りまき合い、助け合って遡行できた仲間にも大いに感謝したい。
今回の遡行をこれからの一助としたい。
今回のメンバーは、今年から沢登りを始めた初心者はいませんでしたが、みんな経験年
数が短く、そして普段、あまり一緒に沢登りに行っていないメンバーが集まりました。
初日、滝の途中で、急に激しい雨が降り出し水量も増え、暗くなってきたときは、もっ
と増水したらどうなるのかとか、どれぐらいで鉄砲水はくるのだろうかと不安になりま
した。滝の途中で、少し高巻き、初めてのビバークとなりました。「ごはんを焚こう。
」って言われたときには大変びっくりしましたが、ずいぶんと気分が楽になりました。
先ノ沢の記録は少なく、持っていた資料は一泊二日の行程でしたが、今回、三泊四日掛
かりました。山登りと違って、沢登りは時間も予測が難しいと思いました。無事に下山
でき、心に残る経験となりました。平ガ岳は沢登りだけでなく、登山でも来たことのな
い初めてのエリアでした。木々に囲まれた平らな山頂、山頂付近の低い針葉樹と湿原、
また下山は標高が下がっても高い木がほとんどなく、視界の良い稜線歩きで、アルプス
とは違う珍しい景色でした。またいつか恋ノ岐を遡行して平ガ岳に登りたいです。