京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
山行名 | 滑川 奥三ノ沢 |
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メンバー | L F澤 T(亀岡山の会) |
期日 | 2008/9/13〜9/14 |
山域・ルート | 中央アルプス 滑川 奥三ノ沢 |
山行形態 | 沢登り |
総会の時点で今シーズンの目標の一つとして掲げていた滑川奥三ノ沢,通称奥三。中アでは他の追随を許さない銘渓である。北アと南アの魅力的な沢は日数がかかるため,なかなか行けないものだが,中アなら1泊2日で行ける。奥三は登攀的要素が濃く,グレーディング以上の難しさがあると見ていたので,パートナーとして登攀時のトラブルにも対処できる人を求めた。
当初9月1週を予定していたが,パートナーが見つからず見送った。単独は日高で切ない思いをして懲りた。登攀慣れした沢屋は得がたく,A野さんは公私共に多忙で,T嶋さんは肩の手術のため無理。ただ今売り出し中の某が応募してくれたので計画を練り始めたが,よく聞いてみると東北ツアーから水曜に帰ってきて金曜晩にこの本気沢に行くという。だめだこりゃ,やっぱりAHOだ。丁重にお断りした。日程を1週遅らせて,亀岡山の会のTさんに休暇を調整して土日を確保してもらい,ようやく計画実行にこぎつけた。
参考資料としては関東周辺の沢と登山大系は執筆者が同一人物と思われ,他の刊行物はなし。WEBではアイスの記録は履いて捨てきれないほどある。沢としては6月初旬の雪渓通しの記録や単独の記録があるが,参考になるのは名古屋の会の簡単な記録がひとつあるていど。クラシックルートなのに記録が極端に少ない。この不人気ぶりは何故だろうか。
前夜に上松登山口まで入り車中泊。
登山道入り口付近は工事用林道と登山道が錯綜しておりやや分かりにくい。敬神ノ滝小屋から先にも工事用林道が伸びており,滑川が中洲となっている中間付近まで続いていた。
一ノ沢と二ノ沢は気づかずに通過。三ノ沢は水量が多く沢底も低い。味気ない河原を歩くこと3時間弱で奥三ノ沢出合へ。同じ河原でも魚野川や札内川は赴きがあるが,この本流はどうしようもないブタ沢である。本流のあまりの退屈さのため,今後他の支沢に行く気にはならない。
奥三ノ沢はF1が2条の滝をなして合流してくるが,水量が少なくしょぼく見える。
大休止してから,F1右下の基部から取り付く。中央の凹角下に残置ピトンがありここからロープを伸ばす。出だしはスタンスが大きく外傾しているわけでもないので難しくないが,ぬめりが酷い。凹角上部は動いている岩があるが使わなくても登れる。風化した岩に足を置くところが怖いが,NPが随所に取れる。左の水流に近づくが水に触れることなく右のリッジから越えて潅木でビレイ。出だしということもあり慎重になりすぎたか。
F2は,出合からは落ち口のみが見えていたが,目前にすると天から降り注ぐかのような綺麗な滝でその上部が難しそう。予定通り右から巻く。落ち口付近が立っているが,軌道修正しながら落ち口上10mほどのところに降り立つ。これほど簡単に巻けるとF2直登の意味が分からなくなってくる。
F3,F4は同定できず通過。
F5雄滝下には右から枝沢が雌滝をなして合流してくる。F5は一見すると左から登れそうに見えるが,よく観察すると難しいことが分かる。ロープを出して二股中間の草付から取り付く。草付上部で右上のブッシュが遠くつかむのに苦労した。左上の遠いホールドを取ってブッシュにランナーを取ったが,腕がパンプ気味になったのでクライムダウンして仕切り直し。10cmくらい出て折れている木をつかんで登り返す。これを使った方がバランスがよいのだが今にも抜けそうだった。セカンド通過時にこの木は抜けてしまったらしい。女性としてはリーチのあるTさんでも遠かったのだから,小柄な人には厳しくなったかもしれない。ゴメンナサイ。上の凹角も難しいが,ステミングでじわじわ上がり通過した。左にNPを取ることもできるが,今回は右の比較的新しい残置ボルトにランナーを取った。F5を巻いて通過するには小さめのカムが有効で,プロテクションなしでは涙目になるだろう。
確保点からロープをつけたまま右に10mトラバース。さらに左に折り返し大きくトラバースすると簡単にF5落ち口10m上に降りることができた。F2とF8の直登にこだわらないのであれば奥三の核心はここだろう。
落ち口から50m上左岸に快適なテント場があったが,明日の雨を考慮して行動続行。F6,F7は同定できず通過。F8はしょぼい釜があるので分かりやすい。他の滝に釜はないからだ。落ち口近くに右から極めて平易に巻く。
F9〜F12は同定できなかったが,F12と推測される滝は難しかった。ツルツルの幅広の滝で右手から登れるかもしれないが,我々は左を取った。ロープなしで超えようとしたがかぶり気味の中間部が難しく,アンザイレンして空身で超えた。ここもNPが有効。バックロープがないので荷上げに苦労した。右ルートが正解かもしれない。左ルートは少なくともF1より難しかった。もし滝が崩れて難しくなったなどの事情があるのなら,ここも核心のひとつとなる。
F8上よりテント場を探し,F13手前の河原右岸を整地してC1とした。よいテント場ではないが,意外にも良質の薪が豊富で立派な焚火を囲み夜が更けていく。
予報に反して天気がよい。 出だしの滝F13はゴルジュの中にかかる多段の滝で左から簡単に通過できると思ったが,一歩に思い切りがいり上からロープを下ろす。上の滝F14の上部に二股が確認できた。左から登れそうだが,F15も巻きになりそうなので左のルンゼより登って左股を横断し,中間尾根を乗越して右股本流F15上に降り立った。F15は2段60mとあるが確認できなった。 F16は同定できなかったが,F17涸滝はすぐに分かり,中央から右上するチムニーから簡単に越えた。問題はF17の下部で水を汲まなかったことだ。水はこの上部で現われることはなく,宝剣山荘で水を得ることにした。普通に詰めると左手の登山道に出るだろう。右寄りを意識してガラガラの沢を詰めて三ノ沢岳頂上ダイレクトで登頂。上松尾根を下山した。
奥三は想像していたほどに登攀的ではなかった。F2,F8の巻きが極めて容易だからだ。マルチをこなせない沢屋でも十分行ける。F13下の滝(F12と推測している)が予想外に難しかった。難しいところではNPが有効。リンクカムがあれば重宝するが,マイクロを含めてキャメロット#2以下をそろえておけば,ランナーは必ず取れる。これだけのギアをそろえれば命がけになるような場所はないはずである。F5の巻き以外にいやらしい草付,泥壁がないので,東北や日高の同ランクの沢と比較すると取り付きやすいと思う。