京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
山行名 | 秘境をもとめて!! |
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メンバー | L:I野、H内、M田 |
期日 | 2008/10/10〜10/13 |
山域・ルート | 奥利根 楢俣川本流〜ススケ沢〜ススケ峰湿原〜奥ススケ沢下降〜本流下降 |
山行形態 | 沢登り |
奥利根は2007年夏合宿で好きになった山域だ。山深く、原生林が美しく、渋い谷が多い。東北の谷へ行くか悩んだが日数が短いので、以前から気になっていた奥利根楢俣川の計画をたてた。ROCK&SNOW BOOKS沢登り(山と渓谷社)には楢俣川本流〜赤倉岳〜同ルート下降が紹介されていたが、同ルート下降だけでは面白くないなぁと思い「奥利根の山と谷」を読んで気になっていた支流@ススケ沢〜ススケ峰湿原〜奥ススケ沢下降かA前深沢〜至仏山〜狩小屋沢下降を候補とした。Aは1泊2日で遡行してる記録が多く3日間の連休にはもったいないので、@ススケ沢〜ススケ峰湿原〜奥ススケ沢下降へ行くことにした。
天気予報を確認すると土曜雨で日曜月曜晴れとなっていた。前日まで晴れが続き土曜のみ雨だったので、初日我慢してなんとかススケ沢出合まで行きたいと思った。ただ、この谷は増水しやすいので初日谷に入れない場合はススケ峰湿原を断念し、2日間でA前深沢〜至仏山〜狩小屋沢下降へ行くことにした。
去年夏合宿では大白沢池を中心とする湿原や南沢ノ田代の湿原など、奥利根水系、只見川水系の狭間の深遠なる湿原を沢登りの楽しみとあわせて、その自然の懐深くに分け入る快感を味わった。また山仲間との共感もひとしおだった。まさしくそこは滅多に人の訪れることのないと思われる本当に美しい場所だった。
今回はその南沢ノ田代の湿原とススケ峰を隔てて1km程しか離れていないススケ峰湿原に、楢俣川支流はススケ沢を遡行により辿り、降りは奥ススケ沢を下降して元の本流に戻るという計画がI野さんから知らされた。地形図から推測すると山頂の南東面に結構な規模で開けており、尾瀬ヶ原や只見流域の山々はじめ展望も大変良さそうである。
今年はまた残雪期に奥利根水系の巻機山から下津川山、越後沢山など縦走し、それだけ自分にとっても何度もこの山域に足を運ばせるだけの魅力に溢れた場所だ。土曜日の天候が雨予報で心配だが後半は良さそうで、奥地での好天を期待して野洲駅を一路奥利根に向け出発する。
3人で運転交代しながら快調に進み湯檜曽駅で2時間程仮眠した。湯檜曽駅で仮眠した理由は、先日一緒に行ったYさんも沢登りで奥利根に入る様で、湯檜曽駅で仮眠してると連絡をもらっていたからだ。
目が覚めて車から出るとちょうどYさんと出会い、2週間ぶりに元気な顔を見ることが出来た。お互いの完遡行を祈り、彼女は矢木沢ダムへ我々は奈良俣ダムへ向かい別れた。ゲート前に車をとめて林道歩きが始まった。私は軽量化のため沢靴で、他2人はフェルトがもったいないということで運動靴だった。雨が降りそうだったので折りたたみ傘をもって降るたびにさしながら歩いた。2時間半の長い林道歩きを終え、鉱山道を入る前に沢靴に履き替えて余分な荷物は残置した。
狩小屋沢を横切り本流に出合ってから渡渉して矢種沢出合いまで鉱山道を使用して入渓してる記録もあったが、増水もしてなかったので我々は沢を詰めることにした。矢種沢までは平凡な河原歩きで30分ほどで出合いに着いた。右岸からの矢種沢を過ぎると沢幅いっぱいのナメや小滝が続き、難しい箇所はなくて快適に遡行できる。トポに「矢種沢〜前深沢出合間は本流随一の美しく迫力のある区間」と紹介されていたとおり素晴らしかった。そして12時過ぎに前深沢に出合って休憩をとった。すると雨が降り出してきてやみそうになく、だんだんきつくなり増水しないかと少し心配だった。なんとかススケ沢出合いまでと思いながら進んだ。トップを歩いていてふと後ろを振り返るとM田さんが座り込んでいた。どうしたんだろう。足を滑らせてひねってしまったみたいだ。大丈夫だろうか・・・。少し休憩をとりゆっくり目的地まで進むことにした。
日崎沢出合いは左岸から滝として合流する。出合から谷は平凡となり、まだかまだかと思いながら歩いた。15時前にやっと左岸から流れ込むススケ沢出合いに着いた。ススケ沢出合いは、対岸より沖矢種沢が出合ってちょうど十字状にクロスになっているので判りやすい。ススケ沢出合いより少し上部に快適な泊地があった。すぐにツェルト・タープをはり、焚木を集めて火をおこそうとしたが、弱まっていた雨がまたきつくふりだしてきたので初日は焚き火を諦めた。タープ下で食事をしてすぐに寝ることにした。雨で身体が濡れてしまいとても寒く、シュラフに入ったときはとても幸せだった。
湯檜曽駅で仮眠する。I野さんは知り合いと情報交換に熱心だ。楢俣ダムのトンネルを右折し、しばらくしてゲートにつく。広くなっており駐車には困らない。2時間半の長い林道を歩いた末に本流への下降点で沢の支度をする。少し雨が降っていて怪しい天気だ。下降路の山道は仮小屋沢を渡った先で本流に降り立つ。ここから先も鉱山道があるとのことだが、我々は沢通しに行くこととした。沢の両岸は紅葉が真っ盛りで、晴れれば綺麗そうだが今日は冴えない。ナメや滝が間隔をおいて続き、川幅いっぱいの滝や両岸から張り出した紅葉した葉が美しい。
やがて雨が本降りとなってきて明日の天気も心配になってきた。平凡な川原を2人の後から歩いていると前でM田さんが屈んでいて動かない。ここで滑って足をひねったとのことで痛そうである。なんでもない場所でM田さんでもこんなこともあるのかと思ったが、山では何が原因でトラブルになるか計り知れないと、用心に越したことはないと強く思った。幸い歩けない程ではないので今日の目的地まで進むこととなった。
その先はたいした滝も無く、雨の中単調に進む。途中では左岸の高みに絶好の泊地がブナ林下にあったが見送り、予定通りススケ沢出合へと着いた。
雨で焚き火は思うようにならない。初日は雨の音を聞きながらの就寝となった。
M田さんは初日の捻挫により、ベース地に残ることになった。今回はよかったことに初日と2日目の泊地が同じだった。M田さんに見送っていただき、H内さんとふたりで7時半前に出発した。
出合いから釜をもった小滝が続く。全て問題なく登ることができて楽しいが、ひとつだけ左側からへつって超える箇所がやらしかったのでお助け紐をだした。まぁ落ちても釜にドボンなのでそれほど問題ないが寒い。それを超えるとナメがひろがり美しい。また、本流の木々よりも赤・黄と色づいてとても綺麗で、何度も何度も素晴らしいと呟いてしまった。
沢が右折すると大滝2段19メートルの滝に出合う。トポどおり左手から直登できそうだったが、H内さんが怖いということで一段登ってから滝の側を登らず、ブッシュの中枝を掴みながらトラバースして超えた。
それからも小滝をいくつか超えていくと谷は次第にゴルジュとなり、へつったり寒いのを我慢して腰あたりまでつかりながら進むと、ゴルジュ抜け口に15メートル滝に出合う。この滝も直登可能とトポに書いてあったがさすがに無理と判断して、右側の草付より巻くことにした。この草付が滑りやすくススケ沢で一番緊張した箇所だった。
大滝を越えると谷は次第に狭まり源頭の雰囲気となる。色づいた草付や木々や葉で埋め尽くされた谷を進んでいく。上流部も釜をもった小滝が続き、まだ滝が続くのかと何度も思いながら超え、藪手前源頭の草付に飛び出た。振り返ると詰めてきた谷が一望でき、真っ赤に染まった山々が広がっていた。歓声をあげたくなるほどの素晴らしい景色だったので、「やっほー」と大声で叫んでしまった笑。源頭の草付は急と書いてあったので恐ろしいだろうなぁと思っていたがたいしたことなかった。大滝を巻いた草付のほうがよっぽど怖かった。そして藪の中へ突き進み、あとは方角を確かめながら藪をこいで秘境「湿原」へ進むのみとなった。
少し傾斜のある藪斜面を登り至仏山からのびる尾根(だいたい1880地点)にのった。あとは北東ぎみに藪をこぎながら進むだけだ。途中獣道があったりと歩きやすかったりした。1930地点あたりに下山路の目印としてスリングを枝にくくりつけておいた。そしてまだかまだかと思いながら藪をこいでいくと小さな湿原に飛び出た(12時。源頭の草原から1時間弱)。あれ〜池塘がない、しかも小さすぎ。まさかこれがススケ峰湿原ではあるまい。とりあえず休憩をとってエネルギー補給する。
H内さんからないやん!!諦めて帰るかぁと半分冗談ぎみに言われたが、ここで敗退なんてありえない。絶対ススケ峰湿原に出会うまでは帰れないと思った。また、ススケ峰ピークへ行こうと言われたが、今回はピークにまったく興味がなかったのでとりあえず先に湿原を探すことにした。参考にしていた記録も最初に出合った湿原は少し西寄りぎみだった様で、おそらく我々も同ルートをとってると思い、東寄りに進んでみるとまたまた湿原に飛び出た(12時半)。さっきよりは広く、尾瀬ケ原が見渡せて至仏山が大きく見えた。藪から湿原へ飛び出すたびに興奮するが、いったいススケ峰湿原はどこにあるんだ・・・。最初に出合った湿原は地形図には載ってない。地形図に記載されてるススケ峰湿原から伸びる尾根がもう少し北に見えた。あの尾根上にあるはずだと思い、そのまま北へ背丈ぐらいの藪をこぎながら斜面を登る。そして斜面を登りきった辺りでH内さんがあれだ!!と叫んだ。
H内さんの声を聞いた瞬間鳥肌がたった。ついに秘境へたどり着いた(12時35分)。黄色いや金色にそまった草がひろがり、大きな池塘が3,4つあった。正面には燧ケ岳が見えて尾瀬が一望できる。非常に綺麗な湿原だった。ふたりとも興奮して大はしゃぎ。13時までの30分間ととても短かかったが下降開始した。残置したスリングの場所まであっという間に着いた(13時20分)。そこからは何度も方角を確かめながら進む。何度かH内さんに修正してもらった。さすがH内さん、私は間違って進んでることがギリギリまで判らなかった。教えてもらいながら奥ススケ沢源頭に着いた。あとはひたすら下るのみ。奥ススケ沢も小滝が多く笹や潅木をつかみながらクライムダウンの繰り返し。記録に書いてあったとおり一ケ所10m滝を懸垂した。本流に出合いオミキスズ沢出合いまでのゴルジュ帯は面白かった。クライムダウンやへつったり巻いたりしながら下ることが出来る。そして谷は穏やかになりブナ林が広がり中沢と出合う。もう少しでテン場とわかっていたが休憩をとり16時45分に戻ってきた。
M田さんが焚き火を準備してくださっていて、温かい紅茶をいただき、M田さん作成栗ご飯をたべた。美味しい〜。2日目は盛大に焚き火をして盛り上がった。
いや〜なかなかいけない湿原へ一度目で行く事ができた。お天気・メンバーに感謝したい。ガスってると地図読みは難しいだろう。2年ぶりのM田さんとの山行、一緒に湿原へいきたかった。残念。
天気は少し雲があるがまずまず良さそうである。早朝の寒い気温では積極的には水に入りたくない。本流よりもかなり狭く、滝は小さなものが多いが両岸の傾斜と滝の小粒な釜がよく発達しているが巻きは容易だ。しかし意外と時間は掛かる。笹を掴んで巻き越え、また笹を掴んで・・・同じような動作を繰り返す。やがて大き目の滝が出てくる。20m位はありそうだ。どう見ても右岸は越えられそうにないし、左岸は高巻きの草付斜面だ。恐る恐る低く巻き越えた。これを越えて向きが北に変わるころ陽が射してきた。暖かいし、一気に紅葉の色が冴えてきて体まで赤や黄色に染まりそうである。深い山に居ることが心地よい思う瞬間だ。
水量が減ってきていよいよ「草付の200mの登りだ」(I野さんが持ってた奥利根の山と谷に載っている)・・・と思ったらなんということは無く、水流は溝状となっていて草付斜面の右側に笹薮とともに続いている。溝を辿れば簡単に稜線直下に達した。振り返ると今登ってきたススケ沢とその背後の山脈が望め、マイナーな山々が見渡せる。紅葉の斜面を背景にI野さんの歓声と笑顔が素敵だった。さてここからは夏合宿を思い出さずにはいられない強烈なネマガリタケとの格闘が始まると覚悟した。・・・・・が最初5分も登ると丈はそれほど高くなく、生えている密度も低くまばらで、思わぬ誤算だ。簡単に県境稜線に達した。はじめて尾瀬ヶ原が見え、すぐ下は猫又川が蛇行しているのが光っている。山深さを実感。
たまに先頭を交代しながら少しずつ高度を稼ぎ小1時間で最初の小さな秋色の湿原に飛び出した。ここで行動食を食べ少し休憩。「時間もないしここで来たことにしようか」と冗談を言うとI野さんは血相を変えて「どうしても行く!!」と。
悪い冗談の後、いよいよ湿原へと進む。「あの小高いうねりを越えると・・・」と直感した。短くなった小笹を漕いで足早に登ってみると・・・思っていた通り一段低い地点から黄金色の湿原が3つほどの池塘を包含して広く横たわっている・・・・その先には空と接して燧ケ岳が存在感たっぷりに背後に納まっている。背後でI野さんの異常なまでの喜びの声が響く。がまさしく天上の楽園だ。はやる気持ちを抑えて二人で湿原に歩み寄る。秋の高い空に池塘が輝き、静寂の中の美しい光景に息を飲んだ。I野さんは心から嬉しそうで、体で現している。I野さんの嬉しがりようが伝わったのか僕も嬉しさが込み上げてきた。いつまでも居たい雰囲気にさせられた。滅多に来られない場所だけに「これだから山は止められない」と強く思った。今度来ることがあれば是非ここで1泊したい。もちろん笹薮の隅で泊まり池塘は守ってあげないと。
さて名残惜しいが時間が迫っている。出発しよう。来た稜線を戻る。途中にシュリンゲを2つ目標に下げておいた地点から方向を変え、奥ススケ沢の源流を目指す。赤倉岳が良い目標となっている。少し左寄りに進んだので、登ってきたススケ沢を隔てて南の雄大な山並みを望むことができた。やはり至仏山が大きい。奥ススケ沢はススケ沢より源流部は傾斜が緩やかだが中流部にはひとつ大きな滝があり、I野さん先頭でここだけ懸垂下降した。上から見るよりたいしたことも無く、下に降りついた。途中の滝もI野さんは平気で素早く降りているが、沢登り、岩登りに精通しているのでルートを読む目が鋭い。こちらはついて行くのが結構しんどい。
赤倉沢からの沢の出合を通過し、ここからちょっとしたゴルジュの中を進み、やがて見覚えのある岩の配置を認めるとすぐに泊地についた。5時前で少し薄暗くなりかけている。
途中でI野さんと話していた通り、足の負傷ため居残りをされていたM田さんは盛大な焚き火の用意と、あったかい紅茶で我々を迎えてくださった。「戻ってくるのは早くて3時遅くて5時過ぎになるやろうな」そのとおりでした。M田さん、山の中で留守本部ありがとうございました。私たちだけ綺麗な湿原を見てしまいすみません。
焚き火を囲み四方山話で今日1日充実した最後の時間を過ごした。今夜は月夜が美しい。
M田さんが4時半頃起きて焚き火の準備をされていた。すすすすいません。気が付いていたがあまりの眠たさに寝てしまい予定通り5時半におきた。朝方は冷え込んだので焚き火が嬉しい。焚き火の前で朝食を食べて予定より30分早く7時に出発した。
初日とはうってかわって天気が良かったので、太陽の光が射し込みとても綺麗だった。何度か飛び込んだり、滑り台したら楽しそうな小滝やナメがあったが寒すぎて出来なかった。M田さんの足が気になるが順調よく下り、11時に狩小屋沢出合に戻ってきた。谷からあがって長い林道歩き。2度ほど休憩をとって駐車場に戻ってきた。
楢俣川本流の小滝・ナメは綺麗で、原生林ブナに覆われていて落ち着いた谷でとてもよかった。奥ススケ沢を遡行してススケ峰湿原への記録もあったが、奥ススケ沢は下降むきで、ススケ沢から遡行したほうが面白いだろう。ススケ峰湿原手前の藪はかなりひどいと聞いていたが、根曲がり竹ではなく笹だったので比較的歩きやすかった。2007年夏合宿で行った大白沢池手前の藪のほうが寝曲がり竹で辛かった。やっぱり藪をこいで湿原に飛び出る瞬間がたまらない。今回も鳥肌がたつほど興奮した。秘境、天空の湿原、素晴らしかったなぁ。もしまた訪れる機会があれば湿原で泊まってゆっくりしたい。次回楢俣川へ行く際は、取付きまでチャリがあったら便利だろう。
来シーズンも奥利根や会越あたりの沢へ訪れたい。山深い谷、しぶ〜い谷、藪こぎに絶えた者にだけ与えられる秘境(湿原や草原)へ飛び出す谷へ一緒にいきませんか?!
朝から久しぶりの快晴となった。戻るのが惜しい位天気が良い。秋のよく冷えた空気が心地良い。行きは曇天だった沢だが、陽が射してくると山々の紅葉は今が盛りと素晴らしい彩で目がくらみそうな賑やかさだ。綺麗な空気をいっぱい吸い、青空を背景に紅葉の彩りを目に焼き付けた。M田さんに合わせゆったりした歩みで沢歩きを楽しんだ。
長い林道歩きはやはり少々参ったが、皮肉なことにその過程があることにより山行をより一層引き立てているのかも知れない。簡単に登山口に行ければ少し感慨も違うものになるような気がする。
M田さんとはなかなか山行を共にする機会が少ないですが、また人の少ない山域に出かけたいですね。
I野さん、来年は只見川水系白戸川遡行、丸山岳は是非行きましょうね。その他も地形図に穴が開くほど研究しておきますね。I野さんも研究しておいてよ。3日間お世話になりました。