京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
山行名 | 光岳から中ノ尾根山へ |
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メンバー | L H内、K山、Y田、F本 |
期日 | 2008/11/1〜11/3 |
山域・ルート | 南アルプス 光岳から中ノ尾根山へ |
山行形態 | 無雪期縦走 |
前回は中ノ尾根山から鹿ノ平へ縦走(2泊3日)したが、その山行では笹薮の深い場所が多くあり、また水場にも若干苦労した。天気も山行後半は悪く、難渋した。
今回は前回と、その以前の山行である鹿ノ平から黒法師岳縦走(1泊2日)、黒法師三山縦走(2泊3日)などの山行からの続きでもあり、今回歩くと光岳以南の主稜は歩いたことになる。どこも似た雰囲気であり、これといった特徴はあまりないが、針葉樹林主体の原生林が美しく、出会う登山者も少なく、自分達だけの山行ができ、自然をより身近に感じられるところが良い。
また、今回も同様、計画段階でアプローチにいろいろ迷ったが、結局、行きは平岡駅に車を駐車し、予約したタクシーで易老渡へ入ることとする。帰りは、タクシーの予約はしないことにする。もし、違うルートに変更や、天気、メンバーの体調などを考慮すると予約するにはリスクが高い。白倉林道のゲートである権現橋から水窪駅までが問題だが何とかして水窪駅に出て、JR飯田線の列車で平岡駅へと戻る計画とした。
朝7:20に予定通り易老渡に着くと快晴の空となった。マイカー登山者で駐車場は半分位埋まっている。簡単に朝食を済ませ、長い易老岳への登山道を登る。K山さん、F本さんは2回目以降の道だ、私とY田さんは初めて。
ひたすら単調に進むが、振り返ると聖岳方面は雪が付いていて白く輝いている。光岳も薄ら白い。
樹林で展望の無い易老岳からは県境稜線の主脈を南下する。易老岳から光岳までは22年振りに辿る。倒木が多く、踏み跡も交錯していたと覚えているが、今は全く問題ない。センジヶ原の登りでは陽が陰り、雪が出てきた。イザルヶ岳山頂にみんなで寄る。雲が多くなった空の下に頂を出している遠くの山々の展望を楽しんだ。夕刻からは次第に風が強まる。冬型の気圧配置になりつつあるようだ。
前夜から風が強い。朝は曇りで、御来光は拝めなかった。しかし富士山ははっきり見えている。
光岳で記念写真を撮り、いよいよ縦走開始。まずは寄り道して光石へ。今日から明日にかけて通る山々が綺麗に見えている。いつか行きたい光岳から大無間山方面も良く見える。まさしく深南部の展望台だ。
さて、光石への分岐まで戻り、光岳の影が三角形に大きく写っている平たい山頂を持つ加加森山を眺めながら県境稜線を急下降する。右手には快晴のもと、聖、兎、赤石、荒川、遠くは仙丈までが凝縮して見えている。風は冷たいので朝から厚着のまま歩く。・2,286m鞍部手前の二重山稜は南寄りに凹地状の中を通過し、鞍部からは単調な登りで広い・2,381mへ。ここから少し左に進路を変える。伸びやかな樹林中の尾根を進むが、・2,430m峰と加加森山の中間辺りは特に広く、やや稜線の右側(北寄り)にルートが開かれている。加加森山分岐は小広く、道標が賑やかだ。空身で苔むした綺麗な樹林の中を3分程で加加森山山頂へ。密生したシラビソの樹林で展望は全く無い。ただ静かのみ。
加加森山から広い尾根を下り、・2,312m峰を越えた標高2,300m辺りは風倒木や白骨林が痛々しいが池口岳や南部方面の山々が良く見える。尾根を忠実に進むほうが、倒木が無く良い。その後広い草原に飛び出し、一気に北側の展望が開ける。深い遠山川を挟んで中央アルプスはじめ、雪の付いた北アルプス穂高連峰や遠くは白馬岳まで今日ははっきり見えている。白山連峰も雪を纏っている。北西下方には日本のチロルと呼ばれている下栗集落が見え、南斜面にあるため陽が当たり暖かそうに見えている。この草原(標高2,250mから2,300m一帯)で寝転んで少し休憩とする。
最低鞍部からの登りは次第に痩せ尾根となり、標高2,200mからは尾根というより広い斜面を登る。
この上りで辿ってきた光岳、加加森山が背後に見渡せる場所がある。やがて右に池口岳西尾根が近づくと池口集落からの登山道分岐へ。ここから整備された道を登ると池口岳北峰に到着。山頂の直ぐ東側はテントによい平坦地となっている。樹林越しに光石が見える。山頂の陽だまりでしばし休憩。
南峰への登山道は以前来た時よりも格段に明瞭になっている。何の問題も無く南峰へ。途中笹ノ平への分岐に荷を置いておく。南峰も樹林中だが樹林越しに深南部の山々が見えている。今日は午後になっても前夜からの風が止まず、晴れているが寒い。
県境分岐は道標や赤テープがあり分かり易い。ここからは急な尾根を下る。目標に鶏冠山が見えているが、尾根はやや目標より右寄りだ。一面緑色した笹ノ平が時々俯瞰出来る。地形図よりも広い斜面に感じる尾根だが、すぐ左手には柴沢源頭の沢が並行しているので進行方向を定めるのは容易だ。
途中、「水場2分」の道標がある。その標識からほんの数分下にはテントに最適な台地がある。ここにテントを張っても良いが、予定通り笹ノ平まで行くこととする。美しい樹林の中を快調に降り、傾斜が緩むと広く陽の当たる場所に出た。・2,106m手前だ。ここで少し休憩。ここからひとつコブを越えるといよいよ笹ノ平の領域だ。
明るい笹原となり、ところどころ白骨化した枯木の白と笹の明るい緑、シラビソの深い緑、それに青い空が背後の池口岳と相まって美しい光景だ。テントに良さそうな泊地はどこかと目を凝らして進む。鞍部近くまで来るが意外にも笹が占領していてなかなか良い空間が見出せない。今日は風が強いので稜線は無理。皆で近辺を探すが鹿のヌタ場の横で、湿っていない地面で張れる場所が2ヶ所しか見当たらない。
下のほうのヌタ場横の乾いた地面にテントを張った。早速F本さんと二人で水汲みに行く。水は芝沢へ10分下ると豊富に流れている。生米を研いで、不安定な鹿道をテントまで戻る。昨日より早く行動を終了できたが、テントの外は風で寒く、雲も多くなっているので、外での昼寝はあきらめて、テントの中で山の話などをして時間を過ごすこととした。
夕刻、雲が多く、相変わらず風が強いがここは当たらずに快適。
明日の行動に控えて、早めに夕食を済ませ、まだ明るいうちに眠りに就いたのだが、なぜか夜8時頃誰かが起きている。K山さんだ。話しかけるとなんと他のY田さん、F本さんも眠れないでいる様子。それから夜11時頃まで3時間も行きたい山の話などの雑談をして過ごすこととなった。でも秋の夜長で睡眠時間は大丈夫。
今夜は鹿の声がしない。深南部ではいつもよく聞くものだが不思議だ。
今日は下山後の水窪駅までの長いアプローチの行動がどのように展開するのか分からないため、早めに出発する。まだ暗いうちにテントを撤収し、K山さんのはじめた準備体操にみんなが珍しく釣られて全員で体操。ランプを灯して鶏冠山北峰の斜面に取り付く。急斜面を一歩ずつ確実に歩き、次第に高度を稼ぐ。振り返ると池口岳が大きい。笹は丈が低く、どこでも歩くには困らない。やがて北峰から東北東に伸びる尾根に乗り、30分余りで山頂へ。
明るくなった山頂には立派な標識がある。今日は朝から雲が多く、陽が当たらない。
南に進路を変え、まずは下りから。稜線は鶏冠岩で左に曲がりその先で北に伸びているのが分かる。鞍部まで尾根を忠実に下り、上りに転じて痩せ尾根を標高差で20m程度進むと左にトラバースする明瞭な巻き道がある。赤テープやトラロープもある。鶏冠岩は北面直下を寸又川側に並行に進む。巻きが終わると右に進路を振り、今度は斜面を電光形に急登して鶏冠岩を越えた鞍部状直下まで上がり、さらに県境稜線をすぐ右に見ながら斜面をジグザグに登ると、ふいに南峰山頂へ着く。ここは山頂からの下りだしが分かり難そうである。
南峰の山頂は小広く憩うのに最適。ここにも北峰と同じく立派な標識がある。少し休憩。
下りは標高2,200mから先の急傾斜でルートが分かりにくいが信州側に小さく巻いて通過。その後は尾根が次第に広くなり快適に進む。小さなコブを2〜3越えて、広い・2,149m峰で長めの休憩。
その後も広い尾根を小さく上り下りを繰り返して行く。三又山北東の標高2,200辺りはテントに良さそうな台地となっている。またこの辺りは稜線東側の樹林帯が深く美しい。
三又山に9:00到着。池口方面や光石がよく目立つ。風が強く寒いので余り長居は出来ない。
ここからは真西に方位を変えて続く県境稜線を離れ、まずは真南の目の前に見える2,251m峰を越える。道は明瞭だ。越えると進行右側の西俣川源頭は稜線までガレが迫り、正面に中ノ尾根山が円く大きく迫る。鞍部は笹原になっている。中ノ尾根山への登りは尾根らしくなく、ただの斜面に取り付く。ただただ高みを目指せば山頂に行き着くが、逆コースでガスがあるとルート取りが難しそうである。我々は少し左寄りに進んだのかルートを見失った。しかし池口岳からここまで、笹は低く、密度も低いため、藪漕ぎと言う程ではなく南の黒沢山や六呂場山周辺よりはかなり楽で問題ではない。かまわずそのまま進み、山頂直下で右側から赤テープのある踏み跡に合流した。
この山頂で黒法師三山より光岳まで歩いた稜線が繋がった。光岳から北に甲斐駒ケ岳までは既に歩いている。自分にとっては感慨深い。山頂には先客があり、日帰り組と合地山へ行ってこられた2パーティだ。熊除け用の手製の槍を持っておられる方があり珍しいものを見せていただいた。
2パーティとも車で白倉林道を登山口の権現橋まで来ていられるので帰りに便乗させていただけるように頼んでみた。中ノ尾根山は綺麗な樹林帯の真っ只中にあり展望皆無。しかししっとりと落ち着いた感じが良い。深南部らしい山だ。
さてここからは前回に来ているのでよく分かっている。広く2重山稜となった尾根を南下し、・2,214m北西の肩へ進み、ここで主稜線を離れる。明瞭な登山道をどんどん下降するが、前回と違いやたらにピンク色や赤色のビニールテープが短い間隔で頻繁に結んであり非常に目障りだ。明瞭な登山道になぜこれほど目印が必要なのか理解できない。
調子良く降り、途中1回休憩しただけで、林道に飛び出した。林道まで降りると辺りの山々の紅葉は今が盛りで赤や黄色で染まり美しい。F本さんが来週登る予定の熊伏山が正面に見えている。
ここからは長い林道歩きが始まる。前回来た時よりも整備されている。西俣川を橋で渡ると後はしばらく右岸の高みを降りていく。途中の工事現場では無線でタクシーを呼んでもらえればと思いながら進むが残念ながら現場に人が居ない。代わりに林道の崖にカモシカが居た。そのカモシカを眺めていると、下から紅葉を撮影に来た方とそれ違った。2時間半林道を歩き、権現橋に着くと4台車が駐車されている。我々はここで待っていても寒いだけなのでさらに林道を町に向けて進む。
権現橋から30分程歩いていると、後ろから車が来た。K山さんが止めると、さっきの紅葉を撮影に来ていた方だ。駅まで便乗をお願いすると快く引き受けていただき、車は定員5人と荷物でいっぱいとなった。車中でこの辺りの山の紅葉などを話し、楽しく水窪駅まで送っていただいた。深南部の山旅ではいつも誰かの世話なりっぱなしだが、本当にありがたいと感じる。
水窪駅では次の列車まで1時間余りあるので駅前の食堂に行こうと駅長に場所を教えていただいたが何と3軒ともやっていない。しかたなくF本さんとラーメンを買って駅で食べる。
駅待合室で雑談してから列車に乗り込んだが、車内はガラガラで、やがて先頭車両は我々の貸切となった。
夜の帳がおりた山深い山間の小駅を、子供に帰ったように全開した窓から顔を出して眺めつつ、ローカル線の旅を楽しむことが今回の山行の最後のおまけでもあり、締めくくりともなった。