京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
山行名 | 赤星山から二ツ岳、権現山縦走 |
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メンバー | H内 |
期日 | 2008/12/22〜12/24 |
山域・ルート | 京丸山から高塚山、竜馬ヶ岳縦走 |
山行形態 | 無雪期縦走 |
ここ4年程四国方面に行っていないため、久し振りに石鎚山系に行くことにした。石鎚山系を西から東に向いて縦走しているが、前回は3月に銅山越から東西の赤石山を経て権現越まで縦走した。
今回は向きが逆だが、赤星山を起点に、二ツ岳、エビラ山等の岩稜を辿り、権現越までの縦走を試みた。2〜3日前に会で参加者を募ったが参加は無く、単独行となったため、公共交通機関利用とする。車で行く山行ではないのも久し振りで、山へのアプローチとしての移動にフェリーや鉄道も楽しめることとなった。列車、バス、船などを乗り継いでだんだんと山に近づくのはいいものだ。
高松までフェリーを利用し、JR予讃線の赤星駅を6:38分定刻に下車。薄っすらと空が白み始めているが、雲が多い。地形図を見ながら集落の小道を結んで国道11号を横断し、さらに東西の歴史のありそうな道を東に歩み、南に向う細い道路に出た。高速道路を潜ると、赤星山への案内板がある。
大地川の左岸に続く急勾配の林道をしばらく進むと登山口に着く。ここからはよく整備されたハイキングコースとなり、大地川沿いに左岸、右岸を何度か橋で渡り返しながら進む。途中機滝や布引滝、仙丈滝などを眺めて沢の詰めまで登ると深いガスに包まれた。標高1,000mあたりから雪道となる。まだ冬型が続いているらしく、天気は思ったよりも良くない。赤星山山頂に出る頃は風が強く、眺望を期待していたが全く皆無。残念だ。だが樹氷のトンネルは美しい。
赤星駅の標高が海抜10m強なので山頂まで一気に標高差で1,440m登ったことになり少しきつかった。北アルプスの横尾から槍ヶ岳の肩までと同じだ。
さて少し休憩して出発。いよいよ縦走開始だが、目的の尾根方向には踏み跡が見つからない。
また、濃霧のため下山方向が定めにくい。このため、地形図に記載の送電線が目的の尾根と中尾へ伸びる尾根を結んでいるので、この間は巡視路があるとみてまずは中尾へ降りるコースを途中まで利用する。案の定巡視路と交差したので戻り気味に斜面をトラバースして目的の尾根へ出ようとしたら、崩壊した沢で途切れた。慎重にガレを伝って沢を横断し反対斜面に入ると、踏み跡が無く探すが見つからない。適当に前進すると目的の尾根に乗った。すると後ろから人の気配がするので待ってみると、山頂にいた3人パーティで、蛾蔵越まで行き別子山側に降りるとのこと。地元の山岳会の方らしいが、このコースは始めてとのことで、以後峨蔵越まで前後して歩くこととなった。こんなコースで他のパーティと一緒になるとは思いもよらなかった。
さてここから先は尾根の縦走だ。薄く踏み跡が続き、時々赤テープもある。冬で木の葉が無いので見通しは効き、藪漕ぎとまではならないので助かる。順調に高度を下げ、鉄塔に出た。ガスから抜け出し、瀬戸内の海が見えている。薄い踏み跡を時々外しながら小さく登り下りし、次の鉄塔に出た。
この鉄塔から先は刈り払いされ、道が明瞭となる。3〜4回アップダウンを繰り返すがさすがに疲れてきたので、休みながら登る。樹氷の間を行くのが美しい。徐々に高度を稼ぎ、ハネズル山の分岐点に着いた。赤星山以来始めて道標がある。ハネズル山方面の道は藪で覆われている。ここから方位が真西に変わり、稜線の北側は樹氷がびっしり付いていて綺麗だ。しかし風があって寒い。赤星山まで4時間半、赤星山から縦走4時間弱でやっと本日の目的地峨蔵越に到着した。行き着かない場合を想定して水を2.5L持ち歩いたが、初日は歩き通すことができた。峨蔵越に立つ道標の東行きには「赤星山」と立派に書いてある。ここで3人パーティと少し話ししたあと分かれたが、どうやらこの春から地元の土居町や山岳会が峨蔵越〜赤星山間の道を整備中とのこと。鉄塔から赤星山の間も近いうち整備されるらしい。
南に5分下ると水場があり、すぐ側にテントを張る。稜線では風の音がするがここは風が当たらず絶好のテント地だ。空は雲っていて、小雪が舞っている。
今日の縦走は距離こそたいしたことはないが、小刻みなアップダウンで時間が掛かりそうだ。事前に調べたところ岩稜を行く部分があり、また今日は積雪が少しあるので、岩場で凍結した氷の上に雪が乗っている場合は慎重に行く必要がある。
6:55出発。峠から快晴の空を望む。赤く西の空が染まっており、赤星山が綺麗に見えている。その手前の稜線をガスが滝雲となって北から南に垂れている。滝雲は久し振りに見る光景でその美しさにしばし見とれる。青い空を背景に樹氷も美しい。峠からは急登の連続で早速岩場が出てくるがロープがあり乗り越えるのは容易だ。細いロープは寒さで棒のように硬くなっている。鯛の頭の左(南側)を抜け、峠から1時間半で二ツ岳に到着した。快晴だ。石鎚山方向は笹ヶ峰が大きいので石鎚山自体は見えない。平家平や三ツ森山、向かいに東光森山、西に奥工石山など四国中央部の山々、それに遥か剣山系も見えている。山頂の南では特に西側の眺めは絶景だ。
さてここからが本番である。縦走路は山頂の5m手前より分岐しているが、雪の上に先行者のトレースは無い。まず急下降から始まる。よく観察して進む方向に開いている空間を見定めながらの進行となる。細い木の藪が続くが、急斜面ではホールドとして助かる。ロープなどは無い。赤テープがところどころコースサインとしてある。岩場でないところでは樹氷がびっしりと付いた木の間をすり抜けるのに手間取る。樹氷は蹴っても落ちないし、先の見通しを結構遮っているので厄介だ。やがて岩稜も出てくる。岩稜はだいたい南側に下り岩壁の基部をトラバースしているが、見逃して進むと絶壁に出て行き止るので余計な往復を余儀なくさせられる。基部のトラバースも積雪によるスリップ要注意で、ルートも雪で判りにくい。ルートが合っているのにも係わらず戻ったりした箇所も2回あった。読図というよりもむしろ山の地勢から先の展開を見通す勘と観察力が必要である。(よく見ると必ずどこかに赤テープがあるし、踏み跡がある)
二ツ岳から2時間余り掛かってようやくエビラ山に辿り着いた。エビラ山への登りでは背後に二ツ岳、エビラ山間の岩稜帯の稜線が格好良く望めた。エビラ山自体は平凡だが、ここも西側の展望がいい。赤石山系が綺麗に見渡せる。黒岳が三角形に尖って見えている。出発から既に4時間近く経っている。思ったより樹氷の藪(特に石楠花の藪の始末が悪い。大きなザックが引っかかる)と雪のトラバースなどに時間を要しているのでこのペースでは床鍋から予定の最終バスに乗るには無理がある。
エビラ山からは急な下降をし、その先の展望のよい岩場は手前から南に岩の基部を低く巻く。
黒岳へは小刻みに何度か上り下りして1時間掛かり着く。展望は良い。背後に辿ってきた山稜が見えるがエビラ山の標高が一番高いため、二ツ岳は見えない。西には権現山、赤石山がより大きく迫ってきた。いつの間にか曇り空に変わり、風も強くなってきている。天気は下り坂だ。
黒岳からは急な下降の後、大きく崩壊したガレ場の上に出た。ガレに雪が乗り、ホールドが少ないので左寄りを下降し、右にトラバースし尾根に乗る。その後は幾分道が明瞭になってきた。次第に穏やかな尾根へと変わり、ブナの林も出てきて、久し振りにゆったりした尾根道となった。笹が出だし、笹の海にまばらな木の生えた場所は四国の山らしく思う。後はペースもあがり何度かアップダウンを繰り返し、権現山に到着。針葉樹の間から見える東赤石山が格好良い。ここまでくるとトレースがあるかと思っていたが雪面に踏み跡は無い。かなり疲れが出てきたが10分ほど休んで出発。鉄塔まで来ると河又への分岐点だ。しかし、河又方面の道も雪面に踏み跡が無い。
権現越はここから標高差80m程下った場所なので寄ってみることにする。広々した権現越に着くと、赤石方面、床鍋方面とも雪の上に踏み跡は無く、どうも昨日も登山者は無かったようだ。もうとっくに床鍋からのバスの時間には間に合わない。
鉄塔まで登り返し、河又へ下降することにする。別子山村との交易によく使い込まれた歴史深い道で、鉄塔の巡視路ともなっている。トレースは無いが積雪も少なく、問題なく淡々を一定のペースで歩調が進む。大森峠の分岐はそのまま直進し、大森山を登り越えて、河又に降り着く。無人となった河又集落からは関川の右岸に付けられた林道を1時間半約6km歩き夕闇迫った関の原バス停に辿り着いた。バスまで40分以上待ち時間がある。国道11号の峠の切り通しになった風の抜ける寒いバス停で登ってきた山を見ているとすぐに闇に包まれた。
危うく通過されそうになったバスは先で気づいて止まってもらえた。伊予三島駅の最寄りのバス停で降り、駅への行き方を教えてもらい歩いて駅へ着くと上りの特急が発車間際だった。車掌から切符を買うこととし、「しおかぜ28号」岡山行きの乗客となって帰路についた。
今回はたった2日間の山行だったが、両日ともたっぷり歩いて久し振りに大いに疲れさせられた充実した山行となった。