権現岳東稜

山行名 権現岳東稜
メンバー I野(L)、T橋、S木、H岡
期日 2009年4月3日〜5日
山域・ルート 八ケ岳東面
山行形態 積雪期岩登り

GWに剣「八ツ峰主稜」へ行く為に、練習山行として計画をたてた。目的は、体力トレとアイゼントレ。八ケ岳東面の登攀は初めてで、東面であれば旭岳東稜か権現東稜へ行きたいと思っていた。旭岳は3月上旬頃、雪の多い時期に登攀したいと思っていたので、雪が少なくてもトレーニングになる権現東稜を今回選んだ。

4月3日

京都駅22:00→京都東IC→小淵沢IC→こぶちさわ道の駅3:30 仮眠

4月4日

起床6:00→美し森駐車場→出発7:50→出合小屋9:35→地獄谷と権現沢出合10:00→権現沢右・左俣出合10:15→ゴルジュ10:25→稜上11:10→リッジ12:40→バットレス基部14:40→1ピッチ目開始15:00→2ピッチ目終了点17:00→バットレス頭17:30→稜線18:00→泊

駐車場には数台車が泊まっていた。我々が出発する頃にまた1台やってきた。林道には雪はほとんどなく、1時間ほど歩いた辺り(林道は右へヘアピンカーブとなる)から地獄谷へと谷沿いに進む。踏み跡があるので迷うことはない。堰堤をいくつか越えていくと、登山道は雪となった。トレースがしっかりついてるので楽だ。トレースを見る限り、先行Pがいる感じだった。2時間ほどで出合小屋に到着した。夕方から天気が悪くなるので、初日に核心バットレスをぬけてしまいたいと思っていた。出合小屋に9時半過ぎ、順調なコースタイムだった。出合小屋からもトレースはあり、ラッセルに苦しめられることはなく権現沢の二俣に10時過ぎに到着した。ちょうど二俣で二人組P(川崎の方)が休憩していた。彼らのトレースだったのか、予想通り先行Pがいた。
左俣に入るとトレースはなくなり、深くて膝ぐらいまで潜るラッセルが始まった。川崎の方と交代しながら進んだ。判りやすいゴルジュをぬけてトポどおり左岸のルンゼをつめて稜上にでようと思うが、雪の状態が悪そうに感じたので先に進んで灌木の多い斜面から取付くことにした。11時頃。斜面はアイゼンがあった方が歩きやすかった。稜上でアイゼンやハーネスをつけて、樹林帯の中をしばらく進む。時々視界が開けて前方に大きなバットレスが見えはじめた。だんだん傾斜はきつくなりリッジに飛び出た。
わずかなスペースのリッジでザイルの準備をしてトポどおり雪壁を登る。川崎Pより先に取付くことになった。彼らはバットレスを抜けずに敵地でビバークするとのこと。08年3月の当会の記録によると、この雪壁がやらしく厳しいラッセルだった様だ。今回雪は少なく、難無く登り50メートルいっぱいで途中の灌木でピッチをきった(S木君リード)。続いてまっすぐ上へバットレス基部までザイル10メートルほどのばした(I野リード)。この頃から天気がだんだん悪くなり始めて雪が降り出した。14時。
トポによると「岩場の右側から一段登り、左へとバンド状を登り稜上へ出る」とあるが、基部を左へトラバースして左上ぎみに登ってバットレス取付きの小テラスでピッチを切った。ハーケン2枚、残置スリングがあった(I野リード)。

バットレス
1ピッチ目 S木 40メートル
S木君がリードしたいということでいってもらうことに。15時登攀開始。天気は悪く、雪・風と強かった。さっきまで真っ黒だった岩に雪がつき、4人目H岡さんが登ってくる頃は真っ白になっていた。最初の5メートルはハーケンが3,4個あり岩稜。そして左に少しトラバースして、傾斜のきつい雪壁を登った。少しランナウトする。16時。H岡、T橋フォロー、I野プルージック。
2ピッチ目 S木 30メートル
時間も遅く、天気もかなり悪かったので先を急ぐ。ザイルを結び変えてる時間がもったいなかったので、S木君に続いてリードしてもらうことにした。ホールドもスタンスも豊富で1ピッチ目よりも傾斜は緩く快適だった。H岡、T橋フォロー、I野プルージック。
3ピッチ目 T橋 10メートル
バットレスの頭へ抜ける。私が先にプルージックで登り、続いてH岡さんが登ってきた。

T橋さんとH岡さんに先にいってもらいテント場を探してもらうことにした。最後にS木君が登ってくると、「I野さん、ザックを落としてしまいました!!」と受けた。ビックリしてどうしたらいいかと少し悩んだが、時間と天気を考えるとザックを探すことは不可能だったのでテント場へ行く事を優先した。なかなか敵地がみつからず、旭岳と権現岳への二俣の登山道に着いてしまった。出合いは4/5人テントをぎりぎり張れるスペースだった。強風・吹雪の中、整地してテントをたてた。風と雪でバタバタと揺れ、春とは思えない荒れた夜だった。
S木君のザックの中に共同装備のテントがなかったのが不幸中の幸いだった。ツェルトのみとなればかなり厳しい夜になるところだった。S木君の個人装備以外に共同装備でガス1個、アルファ米1袋、棒ラーメン1袋、シーバー、ラジオが谷へと落ちてしまったが、一晩ならガス1個でなんとか水をつくり晩・朝ごはんを食べることができた。また、晩の米と朝のラーメンが半分になったが、これもまたなんとかなった。また、携帯の電波がはいり、翌日の天気も確認することができた。翌朝、ザックを落としたバットレス2ピッチ目の終了点まで戻り、落ちた方向等を確認することにした。21時半就寝。後続の川崎Pはバットレス取付き点の直下を整地して泊った様だ。

4月5日

起床4:30→出発→バットレス基部→テント撤収7:50→出発8:20→はしご→ツルネ東稜出合9:15→小屋11:15→駐車場13:10→京都20:30

予定どおり4時に目が覚めた。風は昨晩から変わらず強く、あまり早く出発しても・・・と思い4時半まで寝ることにした。ザックを見に行くのは私とS木君のふたりでいくことにして、T橋さんとH岡さんにはテントに残ってもらうことにした。8時頃戻るということで6時前に出発した。6時頃になると天気予報どおり風は弱まり空は穏やかだった。朝日がまぶしく、雲海がとても綺麗だった。一晩でトレースはなくなり、膝ぐらいまで潜るぐらいの雪が積もっていた。慎重にクライムダウンやキックステップを繰り返しながらバットレスの頭に着き、懸垂ワンピッチでバットレス2ピッチ目終了点に着いた。
そこからS木君をロワーダウンすることにした。10メートルほどおろして下を見てもらうがもちろんザックは見えない。ちょうど後続の川崎Pがテントを撤収していたので声をかけたところ、「大きな音を聞いたがザックだったかどうかは見てない、テントの右側から音がした」と確認することが出来た。おそらく権現沢左俣の大滝を超えた奥の右俣のルンゼに落ちていったのだろう。今回このままザックを探すことは難しい為、諦めて予定どおり縦走路から下山することにした。テン場に戻りテントを撤収してツルネ東稜へ向かった。ツルネ東稜に入るとアイゼンに雪がついて歩きにくかった。一歩進んではアイゼンの雪をとりながら下る。何度も何度もこけて疲れた。樹林帯の中で休憩をとり、後半はアイゼンをとって下ることにした。これまたバランスが難しく、何度こけたことだか。2時間程で出合小屋へ戻ってきた。やれやれ。出合小屋から林道を2時間弱歩いて駐車場へ戻った。
目的どおり「体力トレ・アイゼントレ」となる山行で、GW山行にむけて良い練習となった。また、悪天の中の登攀経験は、メンバー全員プラスとなった。ただ、反省点はたくさん残った。リーダーとしての判断、フォローが甘かった点が多々あった。反省し次回の山行につなげていきたい。

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出合小屋

ゴルジュを通過して先へすすむ

バットレスが大きくみえる

リッジ

雪壁を登る

バットレスの基部へ

バットレス1ピッチ目

1ピッチ目フォローのH岡さん

2ピッチ目

バットレスの頭へ

集合写真

ツルネ東稜へむかう

ツルネ東稜を下る


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