北海道大雪山?(美瑛岳から富良野岳まで)
2009年 7月 30日 | 北海道, 無雪期縦走- 7/30(木)十勝岳温泉12:40-上富良野岳-上ホロ避難小屋15:05<行動時間:2時間25分>
- 7/31(金)上ホロ避難小屋5:40-十勝岳6:40-美瑛岳8:35-十勝岳10:35-上ホロ避難小屋11:10?11:40-富良野岳14:00-十勝岳温泉16:05<行動時間:10時間25分>
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ゆっくり寝ていてもいいのに、山の癖(年のせい?)で4時に目が覚めた。仕方ないので、誰もいないお風呂に1時間以上浸かってのんびりする。朝食後、8時半に車に乗せてもらって出発する。空はもったいないほど晴れている。ヌプントムラウシ温泉への分岐である曙橋には大きな看板が出ていた。いつか入りたい温泉である。狩勝峠、富良野を通って上ホロ荘に着いたのが11時。時速80キロで走っていても、飛ばしている気がしないのが北海道の怖さである。道路横の野菜直売所にはメロンがたくさん並んでいた。十勝平野を眺めながら昼食をとり、登山口に着いたのが12時半。14時までに着ければ、行程3時間弱の上ホロ荘まで登ろうと話していたので、早くに着けて有り難かった。男性は今日は吹上温泉でゆっくりするとのことで、心ばかりのお礼をして別れた。
登山口で準備をしていると、元気な男性が下山してきた。話を聞くと、ニセコのスキー場で働いている人で、十勝岳まで2時間半で往復してきたとのこと。コースタイムでは7時間半なのに、信じられないスピードである。山の上はガスっていたが、富良野岳が一瞬見えたとのこと。上富良野岳から上ホロ避難小屋へのトラバース道は地図上では破線であるが、全く問題はないとのことであった。
15時半着を目指して登山口を出発。しばらくは林道のような広い道を行く。上ホロカメットク山の壮絶な斜面がよく見えた。沢を渡り、安政火口への分岐を左手に見送って斜面をトラバースしていく。皆、日帰り装備であるが、10人程度の人と出会った。富良野岳への分岐を右手に見送り、上富良野岳に続く尾根を快適に登っていく。登山口で出会った男性の言葉どおり、木の階段が整備されており、ちょうどよい歩幅で歩けるため、スピードが上がる。やはり標高を上げると視界が悪くなったが、それでも上富良野岳からは上ホロ避難小屋がある辺りの広い地形が見え、今日中に稜線に上がれた幸運に感謝する。水は小屋の南西の雪渓で問題なく補給することができた。
15時過ぎに小屋に到着し、2つの鍵を外して中に入ろうとするが、なぜか開かない。避難小屋が開かないはずはないとガチャガチャ触っていると、中から扉が開いた。先着1名様が2階で本を読んでいらっしゃったようである。札幌在住の写真を撮る人で、とても気さくな人であった。黒岳石室でドライバッグを貸してくださった管理人さんともお知り合いとのことであった。避難小屋に2人きりだと怖いなあと話していたので、男性がいて安心した。1階よりも2階の方が暖かいとのことなので、2階に上がる。古いがなかなか快適な小屋であった。その後、関東在住の男性2人パーティーと京都在住の男性1人がいらっしゃって、外のテーブルで賑やかに食事をした。小屋の前の景色はとてもゆったりとしており、心休まる風景であった。遠くにキタキツネが歩いていた。
小屋には夜中にエゾリスの訪問があるとのことだったので、食料や食器をザックの中にしっかり入れてから横になった。夜中に目を覚ますと、何を食べているのか、確かにカリカリと音がしていた。外に出ると、満点の星空であった。札幌の男性は、稜線に上がって写真を撮っていらっしゃった。朝になってデジカメの画面を見せてもらったところ、星空を背にした稜線のシルエットや暗闇に沈む旭川市街の明かりがとても綺麗であった。
31日は小屋の窓に差し込む光で目が覚めた。雲ひとつない快晴である。天気によって、これほど気分が変わるとは。本日の行動予定としては、十勝岳までのんびり往復してから富良野岳に回って十勝岳温泉に下山しようと話していたのだが、この青空を見ると欲が出てきて、美瑛岳まで足を伸ばすことに決定。必要な装備だけをそれぞれのザックに積め、食料は借用したドライバッグに入れて小屋の隅に置き(ここで役立ちました!)、5時半過ぎに大喜びで出発。引き返すリミットの時間を決めて歩き出した。京都の男性は、旭岳まで縦走予定で、今日はオプタテシケ山の向こうの双子池まで行くとのことで、早くに出発。他の3人は、外で優雅な朝食タイム。
稜線に上がると、ただただ、大パノラマに感動。富良野岳は振り返ってひと目で惚れた。私は、裾野が長くどっしりとしていて、かつ、頂上がキュッと立ち上がっているような山に惹かれる傾向があるのである。ルートはないが、上ホロカメットク山から境山を経て下ホロカメットク山に繋がる稜線も歩きたくなるような稜線であった。下ホロカメットク山は三角錐の美しすぎるお姿であった。富良野岳の後ろには芦別岳や夕張岳の稜線が見え(始めは日高山脈と思い込んでいた・・・。)、東に目を向けると、気が遠くなるほど山また山が続いていた。
ブロッケン現象を楽しみ、十勝岳の噴火口からの有毒ガスに息苦しくなりながら、十勝岳に到着。時間が早いので人は1人もいなかった。頂上からは、十勝平野の広い畑が見え、ふと三浦綾子氏の『泥流地帯』を思い出した。それにしても、頂上の南西と北東では山の様相が全く異なることに驚いた。頂上に着いてこれから歩く赤茶けた地面を見下ろしたときに、なんだか地球ではない星に迷いこんでしまったような気がした。火山灰と火山礫が一面に広がるだだっ広い地形なので、視界の悪い時にはよくよく注意しないといけない地形だなあと思った。富士山の砂走りのようなところを一気に下り、運動場のようなだだっ広さの中の1本道をケルンに沿って進み、ポンピ沢源頭付近の若草山のような丘で休憩。鋸岳北面の雪渓がウルトラマンの顔に見えて仕方なかった。
美瑛岳まであと少し。美瑛岳に近づくにつれて、お花がたくさん出てくる。イワギキョウがそろって太陽の方に顔を向けていた。イワブクロもたくさん見かけた。稜線の西側はスパッと切れ落ちた恐ろしい崖であったが、東側は薄いレースのカーテンのようなゆったりとした大地の襞が見られ、歩いていてとても楽しかった。
美瑛岳と縦走路との分岐に、先に避難小屋を出発された京都の男性の大きなザックが置いてあった。美瑛岳を空荷で往復中で、私達が登り出してすぐに、頂上から下りてこられた。ここからは、目の前の美瑛富士だけでなく、歩くはずだったオプタテシケ山から三川台を経てトムラウシ山に到るまでの尾根が見え、「いつかまた来よう。」という気持ちになった。それにしても、トムラウシ山は遥か遠く高く、その王冠型の特徴ある山体には人を惹きつける何かがある。そのまた向こうには雪渓の残る旭岳が見えた。男性がこれから歩く山々が全て見えていたわけで、最高のお天気の下、縦走できることがとてもうらやましかったが、「1人も人と会わないので寂しくなってきた。」とおっしゃっていた。確かに、美瑛富士避難小屋からこちらに縦走してくる人と出会うかなあと思っていたのに、人の影すら見えなかった。1人で双子池に泊まれる強い心が素敵である。ここで、男性にエールを送って別れた。後から、ルートの状況を教えてもらうために、連絡先を聞いておけばよかったなあという話をしていた。旭岳までの楽しい山旅を無事に終えられたことを祈っている。
岩場を伝って美瑛岳頂上に着いたのが8時半過ぎ。ザックを崖の下に落とさないように気をつけながら栄養補給。360度の景色が見えることの爽快さを存分に味わって、元来た道を上ホロ避難小屋まで戻った。帰る途中、石狩岳やニペソツ山がどれになるかと探してみたが、さっぱりわからなかった。
避難小屋には11時過ぎに到着。小屋には、札幌の男性の荷物が置かれていたので、富良野岳に写真撮影に行かれたのかなあと話していた。荷物のパッキングをし直し、富良野岳に向けいざ出発。9時を過ぎた頃から雲が出てきていたが、まだまだよいお天気である。昨日は上富良野岳からトラバースして小屋に入ったので、今日は上ホロカメットク山を越えていく。短いが急な斜面であった。上富良野岳から三峰山までは、お花を眺めながら開放的な稜線歩きができる。左手には原始ヶ原がよく見えた。三峰山の手前で、札幌の男性と遭遇。富良野岳まで行かれたとのこと。ナキウサギの写真を見せてもらった。今日も上ホロ避難小屋泊とのこと。
三峰山から富良野岳分岐までは、富良野岳が近づくのを楽しみにしながらテクテク歩いていた。分岐からの富良野岳往復は1時間程度なので、雨具と水と行動食だけを持って超軽量で登る。下の方は木の階段が整備されておりとても歩きやすかった。上の方は急で、稜線の左側がストンと落ちていた。その斜面は一面のお花畑であった。この辺りでは、ミヤマアズマギクやエゾヒメクワガタなど、これまでに見なかったお花が咲いていた。頂上からは、前富良野岳に続く美しい尾根が見えた。原始ヶ原からもこの富良野岳に登ってくるルートはあるので、機会があれば歩きたいと思う。
富良野岳から十勝岳温泉へは、ウサギギクや大きな花びらのキンバイを見て、5日間の山歩きを思い返しながら歩いていた。
明けて8月1日の朝、麓の十勝岳温泉の宿に、黒岳石室の管理人さんが迎えに来て下さった。前日も、私達がクタクタになって登山口に下りてきてから10分もしないうちに、待ち合わせをしていたかのように様子を見にきて下さり宿まで送って下さったのである。いくら近くで用事があるとは言え、あまりの親切さに申し訳ないぐらいであった。吹上露天風呂を通って望岳台に出るまでの間、右手には、十勝連峰と大雪山がくっきりと見えていた。これほど綺麗に見えるのも珍しいとのことで、京都に帰る私達への最高の贈り物となった。
たくさんの方々のおかげで、楽しい山旅ができたことに感謝。暇を見つけて、これからも、北海道の山に行きたいと思う。