残雪期縦走@奥美濃 横山岳?三国岳
2009年 4月 4日 | 奥越・奥美濃・白山, 積雪期縦走今回の山行の縦走は概ね標高1,000mから1,200mの間の稜線を行くことになるが、残雪の量が少なく、この日程を逃すと薮漕ぎの部分が多くなり、おそらく時期はぎりぎりだろうと予想した。
天気は土曜日下り坂で午後雨、日曜は回復との予報。しかし山のことだから回復は遅れるだろう。
多少の薮漕ぎと初日の雨は覚悟の上、Y本さんと山行を実施することにした。
滋賀県北部のこのエリアの県境稜線の縦走は恐らくガイドブックなども無いようで、地図だけが頼りである。
4月4日(土)雨とガス 行動時間5時間45分
杉野農協前バス停9:05→9:35コエチ谷・鳥越峠分岐9:45→10:20鳥越峠10:30→12:10横山岳(西峰)12:30→13:00横山岳(東峰)13:05→14:50標高930m(950m峰の西方500m地点)
木ノ本駅で1時間10分の乗り換え時間待ち。8:25発の金居原行きの湖国バスに乗る。乗客は我々だけ。杉野農協前で降り、支度する。今にも降り出しそうな雲行きだ。集落を抜け林道をしばらく行くと横山岳が正面に見えてくるが、南面を見る限り全く残雪が見当たらない。山頂まで黒々としているではないか。果たして山頂の向こう側は残雪を踏むことが出来るのだろうか。薮漕ぎか、雪上歩きか?どちらだろうかと不安と期待が交錯する。
30分余りで林道を左折し鳥越峠へ進む。急な山道に変わった頃、とうとう雨となった。最初から想定していたのであまり苦にはならない。
鳥越峠手前の稜線に出て、雨を避け杉の木立の下で休憩。すぐ先の鳥越峠からは西の眼下に菅並の集落が見えている。以前、この峠から菅並へ沢沿いに降りたことが懐かしい。
峠からは自然林の尾根を単調に登る。雨は強くは無いが降り続いている。登るに連れて背後に薄っすらと残雪の白を纏った金糞岳がその容姿を見せている。登山道上には全く残雪が無い。バス停にあった看板どおり3時間を要して横山岳(西峰)に着いた。山頂でやっと待望の残雪が出てきた。
山頂には倉庫のような小さな建物があり、雨を避けるためその中で休憩する。行動食を食べ20分ほど過ごす。天気は悪いが北にはこれから辿る山並みがよく見えている。特に上谷山が大きく見える。これから辿ろうとする稜線には、残雪が少ないながらもまずまずありそうで少し安堵。
山頂からは東に登山道を進むが、尾根北側は残雪に覆われている。展望を楽しみながら東峰手前の尾根分岐地点へ。ここに荷を置き、東峰に立つ。ここから見る金糞岳は北面なので残雪で結構白く見えている。
荷を担ぎ、いよいよ県境稜線を目指し登山道を離れる。北に進路を変え、広い尾根をまずは緩やかに上り下りする。運が悪いことに、登山道を離れたのと同時にガスに包まれ、みるみる視界が無くなっていく。
15分ほどで標高1,110mから北東向きのやや急な下りとなるが同時に潅木の薮が出てきてザックが引っかかるようになり、時間が掛かる。しかし地面には薄く残雪がある。高度差で120m下った鞍部辺りはとうとう残雪が無くなり、薮となっている。次の1,006m峰は笹が立っており少し通過に難渋する。尾根が西に向き、広くなったらまた残雪が出てきて楽になった。ガスで視界が無い中、だだっ広くなった尾根を西進する。Y本さんは少し疲れが出てきているようだ。やがて尾根の北側に植林が現れる。南側のブナ林とは対照的だ。
その先ますます尾根が広くなり、凹地状の場所もあり進路に少し気を使う。このあたりブナの木が大きく立派だ。ガスの中から現れては消えてゆく。
一番尾根が広くなった950mの等高線の先の鞍部では、地形図の実線で表記された道が尾根に達している。着いてみると、道は幅1.5m程度で、実線で表記する程の道では無い。植林が終わり荒れている。雨が激しくなってきた。この道上に唯一、雪が付いていなく、かつ、落ち葉が敷き詰められた空間があったので、これ幸いにと今日はここまでとする。
明るいうちにY本さん手作りの柳川鍋という夕食を美味しくいただく。
6時半ころ早々に就寝とする。県境まで辿り着かなかった分、明日は早出だ!
4月5日(日)曇りのち晴れ 行動時間10時間25分
テント地7:05→7:55県境稜線標高1,010m 8:05→8:55神又峰9:10→11:00 1,048m峰11:10→12:20左千方12:40→13:05三国岳13:25→965m峰14:05→1,020mコブ(・542mに垂下する尾根の分岐点) 14:45→旧道の跡15:35→15:55林道16:00→16:50広野ダム17:00→17:30広野バス停
昨日から風は北寄りの風が吹いているが弱い風だ。朝から雲が多く、日の出は望めない。今日は天気が回復に向うので気は楽だ。計画では昨日中に県境稜線に達するつもりだったので早出・・・・・の筈がやっぱり止めた。結局はいつもどおり急ぐことなくマイペースとなった。
まず広い尾根を緩やかに登り950m峰に難なく着く。進路を北に変え、最低鞍部に着き、上りに転じると残雪無く薮となる。南面なので雪が無いかもと予想はしていたが、ずっと上部まで雪が見当たらない。しかし、濃い薮は最初の標高差30m程度で終わり、その後地形図のガレマークを囲むように上る箇所は意外にも薮が非常に薄く雪は全く無いが歩き易い。快適に高度を稼ぐ。広々とした県境に達する手前からは地面が見えることのない豊富な残雪が現れ様相が一変した。(以後、下山への支尾根まではずっと雪の上を歩くことになる)
県境はブナ林に包まれた穏やかな高みとなっていて、気持ちの良い場所だ。ここでしばし休憩。空は徐々に明るさが増している。
さてここからは滋賀県側の高時川、岐阜県側の坂内川源流を分かつ山深い稜線を辿る。広くブナ林に覆われた心地良い尾根を歩く。親子連れらしい熊の足跡が残雪の上に交錯しているのに時々出会う。カモシカらしい足跡も随所に付いている。順調に進み、神又峰へ。真新しい小さな木製の山名板が高い場所に掛かっている。何の変哲も無い山頂だ。まさしく薮山といった感じ。
少し先の峰から70mほど下り、緩く上り1,028m峰まで来ると東の展望がよくなってくる。眼下には中ツ又谷が長々と横たわっている。東側は案外残雪が多い。時々日差しが出てきて快適な稜線歩きとなってきた。寒くも暑くもなく、誰も居ない稜線に足跡を刻むのはいつもながら良い感じである。
中ツ又谷流域を右に旋回し1,048m峰に登ると、これまで辿ってきた稜線が見える。県境は自然林に覆われた緩やかな山並みで、特徴は無いがたおやかな山稜にのんびりしたい気分になってくる。さらにこの辺りからは残雪の量が各段に多くなってきて、以後稜線では薮は完全に雪の下だ。
標高1,130mの小ピークでは中ツ又谷と大楢尾谷を分かつ長い支尾根と合流する。この尾根は東に緩やかに池ノ又谷に没し、辿ってみるのも面白そうだ。広くブナ林に覆われているのが見渡せる。
さてここからの展望もますます良い。池ノ又谷を隔ててこのあたりの盟主の黒壁山が大きく格好良く見えている。
いつの間にかすっかり青空が広がっており、まさしく稜線漫歩となった。風も無く少し暑く感じ出した頃1,196mの左千方という名の山に着く。展望は素晴らしい。20分ほどゆっくり過ごす。
さらに多くなった残雪上を快適に進む。25分でだだっ広い三国岳へ到着。予想通りテント地から6時間ジャストだ。三周ヶ岳、黒壁山、上谷山など周囲の山々が見渡せる。私にとっては2度目の登頂だ。前回も展望に恵まれた。Y本さんは初めての山頂だ。横山岳から三国岳への縦走は残雪の状態と天気の条件に恵まれれば何の困難もなく楽しめる。
さて、十分展望を楽しんだら下山だが、まずは上谷山方面へ滋賀、福井県境を北西に辿る。三国岳からの下りは尾根が非常に広く、豊富な残雪でどこでも歩ける状態だ。ただし、標高差150m下の目的の尾根にうまく乗るには並行している小尾根が多く、少し読図する必要がある。ガスの日は慎重に見極めないと下りは少し難しいそうだ。今日は天気がよいので問題なく通過。
目的の尾根に乗り、緩やかな尾根歩きで965mの台地へ。ここは二重山稜になっている。小さな高まりに囲まれたかなり広い平らな空間には、まばらに大きなブナの木に囲まれておりテント泊には快適そうだ。ここから少し下った後、標高差70mの登りを終えると、地形図の1,010mの等高線に長く囲まれた細長い高みの西端で北側にガレマークがある地点に着く。ここからは北に顕著な尾根が垂下しており、尾根末端近くには542mの標高点がある。
この支尾根を利用して下る。広い尾根で、残雪を蹴散らし快適に下降する。標高750mで雪が無くなり、地面の上を行くようになるが、思ったよりも薮は無い。背の低い潅木の掻き分けが少しあるだけで、笹は無い。標高620m付近には何の目的だったのかの古い道跡があり、尾根は峠状に深く切り込まれている。この道跡を横切り、542mが見えてくると尾根を右にはずれ、斜面を斜め降りして542mの真東の地点で林道に降りついた。この支尾根は県境へのアプローチとして容易であることが分かった。
この林道は何度も通った道だ。広野ダムを経て広野バス停へ辿り着き、今回の山行を終えた。