ハイキング@南ア深南部 大根沢山から大無間山、尾盛駅へ縦走
2010年 12月 9日 | ハイキング, 南アルプス12月半ばということもあり、雪がどの位あるのか判断に迷ったが、たいして無いだろうということで、雪山の本格装備は持たないで行くこととする。簡易アイゼン、補助ロープは一応念のため持参した。
入下山のアプローチが問題だが、帰路に利用する大井川鉄道井川線のダイヤにより、接阻峡温泉を起点に予約したタクシーで第二ダム先まで行くこととする。
今回は初めて他の山岳会に所属のT口さんと、その友人のT澤さんも同行いただけることととなり、この地味ではあるが自然の深い深南部の魅力が少しでも共感できればと、また4人で楽しい山行になることを期待して前夜9日に京都を出発する。4時に接阻峡やまびこ資料館に着き、6時半まで仮眠。
【行程1日目】行動時間 6時間15分 天気 快晴
畑薙第二ダム先(明神谷林道入口)8:15?10:10 1,397m三角点10:25?12:05 1,737m西鞍部12:20?14:00 2,112m?14:05展望地14:20?14:30 2,135m東方150m地点(テント泊)
7時に接阻峡を出発。予約していたタクシーの運転手によるとどうも下山に利用予定の尾盛駅は熊が出て現在乗り降り禁止だとのこと。今さら計画の変更は難しく、3日先の下山後に何とかなるだろうという楽観のもと、一路第二ダム先へ。運転手はここで登山者を降ろすのは初めてらしく、登山ルートがあるのか不思議がられた。
支度して明神谷林道を登る。2日前に降った雪だろうか、少しだけ薄っすらと残っている。林道の折り返し屈曲点の標高1,050m地点で林道を離れ、尾根の芯を登る。鉄塔の下を越えて直ぐ上の林道に出て、また直ぐ先で尾根に取り付く。笹や下草も無く、快適な登りだ。単調な登りの中、北に目を向けると、茶臼岳方面の雪で白くなった山々が青空に映えて美しい。 T口さんと、初めてご一緒するT澤さんは少し後ろを二人一緒に歌を歌いながら歩いており、なかなか楽しそうだ。
当会の山行では歌わないので、いつもと違った雰囲気が面白いく楽しい。
1,397mの三角点で本格的に休憩。雪は10cm位積もっている。雪山用の靴はみんな履いてこなかったが今日は気温が低いため、濡れてくることはなく快適だ。ここからしばらくは傾斜の緩い尾根をゆく。
放置された重機の横を通り、廃林道を横断して、緩やかな尾根を進むが、1,737m標高点のあるピーク手前で勾配が強くなって来る。1,737mの直近は急傾斜で、中途半端な積雪量の斜面にスリップして苦労する。1,737mを越えた先の鞍部で大休止。夜行の疲れもあり、なかなかペースがあがらない。この時点で、大根沢山まで行くのは諦め、2,112m三角点の先でいいところがあれば泊まることとする。 2,112m三角点で第一ダムからの尾根を合し左折する。直ぐ先で北側が崩壊した薙の縁に出る。
ここからの展望は雄大で、信濃俣河内を隔てて向かいに仁田岳や茶臼岳、上河内岳、易老岳方面が望める。 光岳やイザルガ岳も西に見えている。
その先10分ほどで、2,135m峰の登りに転じるころには、稜線の南側がちょっとした二重山稜となっていて風が完全に防げるいい場所が見つかり、今日はここまでとする。今日一日快晴の中行動が出来た。
夜はだんだん風が出てきたが、テントには風は当たらず快適。今夜はY本さんの鍋料理だ。Y本さん以外はみんなお酒がいけるときて、楽しく飲んで食べて9時までに就寝。
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【行程2日目】行動時間 8時間50分 天気 曇り時々ガス
2,135m東方150m地点6:20?7:40大根沢山8:00?9:30アザミ谷鞍部9:55?2127m先のガレ場10:50?三方峰11:45?三隅池12:15?13:30大無間山13:40?15:10 2,098m
昨日の天気とは違い、朝から曇天、時おりガスが掛かって冬の季節風も吹き、体感気温は低い。今日は今山行のハイライトだが、天気だけはどうしようもない。
最初は2,135mの南側を巻き進む。やがて倒木が行く手を塞ぎ気味になり尾根に復帰する。尾根上を進むようになってからは見通しも効き、薮も無く単調に歩ける。周りの山々はガスで白んで見えないのが残念。
広い尾根を進んで行くが、昨日からルート上にはこまめにビニールテープが木に下っており、迷わず歩けるがおかげで読図の楽しみはない。最後は尾根らしくない少し急な斜面を、枝に積もった雪を浴びながら大根沢山のだだっ広い一角に躍り出た。広く平坦に近いシラビソの林の中の真ん中を進み、少し西寄りへ行くと三角点に辿り着いた。
雪の積もった静かな山頂で、三角点は雪に埋まっているので少し掘ると出てきた。
アザミ沢の鞍部で今日の分の水を補充するが、雪面をサーっと滑って直に水場に着いたのは良かったが、雨具のズボンを大きく裂いてしまった。T口さん、応急処置して!
鞍部からは登りだ。緩急を繰り返しての登りは薮も無く快適に高度を稼ぐ。今日はずっと同じような天気が続く。2,127m峰からは下りになり、小笹の中を、高度を上げて右手にガレ場が出てくると山々が望める。
池口岳から黒法師岳への稜線は斜面に所々斜光があたっているが、やはり惜しいことに山頂部だけガスが掛かっている。三方峰はあっさり通過し、進路を東に変える。南の展望が初めて望め、朝日岳の三角形が一際目立っている。小笹の原の気持ちよい広い稜線を緩やかに進むと、やがてシラビソのびっしり生えたさらに広い尾根を進むが、このあたりは木が大きく、風も防げて歩きやすい。登るにつれただの斜面のような登りになってきて、傾斜が無くなると右手に方向を変えて3分ほどで大無間山山頂に到着した。山頂手前からは田代からの登山道が合しているが、雪面に踏み跡は無かった。
私は7年振り、3人は初めての山頂だ。記念の写真を撮る。木に囲まれ展望は無い。
山頂からは南尾根に入る。
まずは水場とされる鞍部まで行く。前回来た時、水を求めて東側へ降りたが、相当下まで降りたにもかかわらず涸れていた。今回はパスする。少し登り返し、痩せ気味となった急な尾根を下る。 Y本さんに疲れが出たようでペースがあがらない。2,098m峰手前の鞍部で泊まることにして、長めの休憩を取る。風が強くなってきており、テントを張るには風を防げることが必須だ。その鞍部は地形図で見るよりずっと痩せていてとてもテントを張る余地はない。そこで、その先の2,098m山頂を候補に登る。その山頂部の東側に風の全く当たらない絶好の平坦地を見つけた。今日は寒い中9時間近い行程にかなり疲れがでたようだ。特にY本さんは。素早くテントを張って、紅茶を飲むとゆったりとした気分になれた。木の間を駆け抜ける風の音がうるさいがテントの中は快適な空間だ。ただY本さんは本当にお疲れの様子で、すぐに横になって寝込んだ。
夜は3人で夕餉。今夜はT澤さんの野菜たっぷりの鍋だ。 前夜に続き美味しい晩御飯にワイン、日本酒のお酒も進む。山の話、街の話、私の苦手な芸能人の話など四方山話に時間を忘れて楽しく過ごす。もう9時頃かと思っていたらなんと7時前。この時期は夜が長く、テントで食後もゆっくり過ごせて、しかも睡眠時間も充分確保できてありがたい。
就寝前に外を見ると真っ暗で星は無かった。
【行程3日目】行動時間 6時間50分 天気 快晴
2,098m地点6:25?7:55風不入8:15?10:00 1,621m峰10:20?抜ヶ谷山10:35?尾栗峠分岐11:45?廃小屋(標高920m地点)12:25?トンネル西口13:05?13:13尾盛駅
1時間半で風不入山頂へ。右手には黒法師から中ノ尾根山方面の山脈がくっきり望める。やっと大無間山がその大きな山体を背後に現す。山頂の東にはテントに適した空間があるが、少し風が抜けている。今朝泊まった場所の方が良かったとつくづく思う。
風不入からは南南東に進路を変え、やや急となった尾根を下降する。途中のちょっとした岩場があり、雪を落としながら慎重に進む。ここからは富士山と安倍山系、果ては天城連峰と駿河湾まで見渡せ爽快だ。
その先では進行右手の薙が稜線にまで達しており、そこからも雄大な展望が開けていた。稜線から落ちないように潅木を掴みながらそろりと降りた。さらに先には、今回心配していた標高1,850mから等高線の詰まった標高差約100mの下りは以外にも大きな木とその根が豊富に這っており木の根を足場に何の苦労も無く降りられた。Y本さんが心配していたが何ていうことはなく調子抜けだ。
降り着いた先からは穏やかな尾根を少し登り、やや急に下って、緩やかな登りになるとピーク手前で笹が出てきた。それもつかの間、1,621m峰に辿り着くとそこは草原となっており、右手は180度遮るもののない雄大な展望が待っていた。長い休憩だ。太陽がきらめき暑いくらいだ。当会で昨年遡行した倉谷を挟んで朝日岳が大きく迫る。南の1,612m峰には抜ヶ谷山という名前が付いている。
線路と同じくらいの標高になったが線路は現れない。トンネルの上を越えたようだ。やがて水平に電柱の通っている道に出た。これを西に辿るが登りになった。線路に出ようと道を外し下に下ったが、すぐ後でこの道がトンネル横へと続いていることが分り、10分ほどロス。さて時間を見るとあと7分で列車がやって来る。 駅に向かい小走りしてなんと1分前に辿り着いた。駅に着いて息を整えていると直ぐに背後から定刻で列車がやって来た。 さて問題は停まってくれるかだ!女性陣を手前にしてみんなで手を振って合図すると、列車は停まってくれた。尾盛駅に列車が接近し停車。車掌さんは客車から降りてきて乗る車両に丁寧に案内してくれた。車掌さん曰くこの駅はアプローチとなる道は無く、人家の無く、さらに電話も無く、携帯電話も圏外。無い無いづくしの駅だとのこと。
この駅に熊が4回も出没しており危険とのことで乗り降りは取りやめているとのこと。駅の存在そのものが不思議な超秘境の駅のようだ。我々が乗り降り禁止になってから2回目の乗客とのことでだが、人道的に乗せていただけた。貴重な体験をした。車掌さんと楽しい会話をしつつ短い8分の乗車で接阻峡温泉駅へ。別れ際、動き出した客車の開いた扉から我々の方に向い頭を下げておられた車掌さんの笑顔に感謝。
行きのタクシー運転手に教えてもらった温泉で汗を流し、清々しい気分で今回の山旅を締めくくることが出来た。
風呂あがり、民家の庭先を通して背後の山々を見ると、青空のもとついさっき辿ってきた稜線が明るく輝いていた。
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今回我々は尾盛駅で列車に乗ることが出来たが、大無間山の南尾根をこれから利用しようとされる方は大井川鉄道に駅の情報を事前に必ず聞いてから計画してください。