縦走@四国 海部山系・四ツ足峠から赤城尾山、甚吉森へ
2013年 11月 16日 | ハイキング, 四国, 無雪期縦走2009年11月29日に剣山からの縦走で石立山に立った。
その時は良い天気で、さらに南に幾重にも連なる山脈が眺められた。石立山の南にもなかなかボリュームのありそうな山があること、縦走に適した長い尾根が連なっていること、この山域にはまだ一度も登ったことが無いことなどが重なり、どんな感じのエリアか次第に興味が湧いた。
少し調べたところによると剣山系に近いので、ブナ林も残っており、大きな杉やヒメシャラの木などがあるのも特徴らしい。
そこで今回は、まずこの時に見た赤城尾山とその南へと続く山を縦走してみようと地形図を見て計画した。
スタートは四ツ足峠とし、古道を日和田から辿れそうだ。
南川林道の奥には甚吉森の登山口があり、国道には南部バスの便があることが分かった。これらの条件を組み合わせ、行きに自転車を甚吉森登山口まで回送しておき、車は日和田の登山口に停めることとした。
下山後、自転車で栩谷口バス停へ。ここでバスに乗り換え、出発地である日和田へと戻る計画とした。
登山終了後、栩谷口バス停へ自転車を回収する必要があり、入山前、下山後の移動が面倒だ。?
さて山に向かう。広島を前夜に出発。南国廻りで一旦四ツ足峠トンネルを越えその先へ。
南川林道は深い霧に包まれ夜明けが遅い。予定した時間より1時間あまり遅れ日和田に着いた。
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【行程1日目】 行動時間 9時間00分 天気 快晴のち晴れ
日和田8:20?9:30四ツ足峠(四ツ足堂)9:40?10:55行者山11:05?12:15赤城尾山12:30?13:30駒背分岐(⇔駒背山往復)13:50?駒背越14:10?1,310m峰14:35?標高1,110m池跡の広場14:55?15:25太助山分岐15:30?16:00高ノ河山16:05?16:20水場16:25?16:55西又山17:05?17:20三角点手前の広場
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日和田から四ツ足峠(四ツ足堂)へ
車道を登り、右に民家を見て左に旋回した先が車道終点。
登山口の前のカエデの紅葉が美しい。右斜め上に向かって登山道を上がる。
登山道に入ってすぐに分岐があり、ここを左に鋭角に折れる。
まっすぐ進む道は石立山への登山道だ。
杉林の中をしばらく進むと左手下方に沢が見え、前方が急に明るくなる。
植林を見事なまで皆伐した丸裸の光景が広がった。
登山道は最初、道の形が良く分かるが、やがて不明瞭に。
茨や蔓植物に覆われ判然としなくなる。
先のほうを見渡して、小尾根状の緩い鞍部を越えているだろうと見当をつける。
適当に斜面を進み、見当をつけた鞍部に着くとはっきり掘り込まれた道があった。
すぐに水量豊富な沢を渡り、等高線沿いに緩やかに巻き進む。
左下に沢音を聞きながら急に高度を50mほど稼ぐ。
小尾根の張り出しを越え、また緩やかに進む。
太い笹が道に被さり、手で押しのけて進む。
山腹を進むが、ところどころ道が流され斜面と同化し、バランスが要る。
沢を詰めたところで渡ってから、一気に高度を稼ぐ。
薄暗い植林の中、ジグザグを切り返して上り詰める。
広い道跡に出て僅か左に平坦に進み四ツ足峠だ。
四ツ足堂で今回の旅の無事を祈る。
四ツ足峠から赤城尾山へ
植林の中の峠は風情が無く、寂しい場所だ。
しっかりした踏み跡を辿って南に進路を採る。
1,044m峰からよく成長した植林中を下り、鞍部から上りに転じる。
1,201m峰を過ぎて、尾根が痩せてくる。
徳島県、高知県両側の展望が樹林越しに開ける。
標高1,240mのあたりには小さな池があり、そこだけ明るい。
しかし徳島側も高知側も稜線まで植林が達し、あまりいいムードではない。
尾根の幅が大きくなってきて、やがてゆったりと左に回っていく。
明るく見晴らしが一気に良くなったが、何か変だ。
笹が枯れ、下草が無く、疎らに残った木々もどうも元気が無さそうだ。
ブナの枯れ木が目立ち、自然界のリズムがどこか狂っているのだろうか。
展望は良いのだが、何だか殺風景な光景だ。
行者山山頂からは真北に石立山がよく見え、存在感がある。
明るい山頂の地面はコケと落ち葉で覆われている。
行者山は東西に向いた尾根上にある。
東に少し進むとさらに展望が開ける。ここからはまた南に進路を採る。
100mあまり下り、80m緩く上る。
そこから少し左に折れ、小刻みなアップダウンとなる。
やがて比高は小さいが岩場が数箇所現れる。
手を使って岩や木の根をホールドに狭い鞍部を越えていく。
次第に普通の尾根道になってきて、尾根に膨らみが出てくると赤城尾山だ。
山頂は広く、大きなブナの木があり、いい雰囲気。
しかし、山頂南西まで植林が迫り、ちょっとがっかり。
山頂の三角点でしばし休憩。日差しが心地よい。
赤城尾山から駒背山、駒背越へ
15分の休憩後、山頂を辞し、東に向かう。
進むにつれ、進行右手の斜面が美しい。
ブナ、カエデなどの落葉樹とツガなどの針葉樹との混交林になっている。
この斜面はまた大木が多く残され、コアな感じがする。
残念ながら徳島県側は稜線まで、高知県側も稜線6?70m下方まで植林がある。
しかし、赤城尾山のこの南東斜面一帯は一見の価値がある素敵な森だ。
やがて急な下降になってきて、下った半分ほどを上り返す。
すると前方がやけに明るい。
1,300mのピークに立つと、前方はガレになっている。
南に大きな展望が開け、これから辿る山並みが望見できる。
池野河山の向こう側に、甚吉森や湯桶丸の山並みが青く走っている。
地形図に載っていない林道が山肌を走る。
ガレを左に見ながら緩く下り進む。
3?4回アップダウンを繰り返して進むが植林が無くいい樹林帯を歩く。
尾根が伸びやかに広がり、駒背山との分岐に着く。
ここで荷を置き、駒背山に向かう。
3重くらいの山稜をもつ複雑な地形の尾根だ。
右よりの高まりを進み、最後はきゅっと上がって山頂だ。
途中に池があったり、浅い凹地があったり、平坦地があったり。
またどこも大きな木が多く、ここも混交林帯で樹林が素晴らしい。
地形図で想像したよりいい森だ。
さて分岐から先は興醒めだがまた植林帯となる。
鞍部に向かってだんだん傾斜が急になる。
年数の経った鬱蒼とした杉林の中の道は明瞭。
登り返した次の鞍部がどうやら駒背越のようだ。
地形図でちょうどトンネルの真上にあたる。
高知県側に戻るように緩く峠道が続いている。
駒背越から1,310m峰を経て標高1,110mの池跡の広場へ
ここから右に等高線沿いに踏み跡がある。
この道に入り前の1,310m峰を登らずに済まそうとしたがすぐ残念。
踏み跡は30mも進むともう分からない。
再度峠からまっすぐに1,310m峰へ直登する。
巻き道を諦めたので気分的にこたえる。
頑張って1,310mへ登り詰める。
南に展望が開け、高ノ河山や西又山の山頂部のブナ林が見える。
草に覆われた尾根を進む。
ここで今まであった県境見出し票へのピンク目印が無くなる。
向かいに見える1,241m峰を目標に下降する。
踏み跡はすぐに完全に無くなる。
展望皆無の植林の中を太陽の位置を目標に快調に飛ばす。
やがて植林の中の池跡の開けた空間にぴたりと飛び出した。
鮮やかなコケの緑一色に染まった不思議な空間だ。
周りはすべて植林の杉に覆われている。
この空間を右に旋回すると右手からの登山道に合流。
池跡の広場から高ノ河山へ
登山道は水平に尾根を徳島県側に巻く。
ザレて流された箇所もあるが、道はしっかりしている。
石垣を組んだところもあり、歴史がありそう。
1,241m峰は大きく池ノ河谷側に巻く。
鞍部では太助山へ分岐がある。
再び巻き道を採り、次の鞍部へ。
ここからは急な尾根を180mあまり一気に登る。
時間も推してきており、せかされるように登る。
振り返ると赤城尾山の東西に伸びる尾根がたおやかに見える。
登り着いた高ノ河山で小休止。
ここもブナ枯れが進んでおり、下草も貧弱で森に元気が感じられない。
向かいに西又山が迫ってきたが、夕刻で色が冴えない。
高ノ河山から西又山、三角点へ
ゆるやかに下っていくと薄い踏み跡は主稜からやや右手に外れる。
電光形にジグザグをきって一気に下るとすぐ右手は小さな沢と並行となる。
下り着いた平坦地で容易に沢水を汲む。
今夜と明日朝の調理用、それに明日の行動水、計3.5Lを満たす。
ここは高ノ河谷の源頭ともなっていている。
右手の沢は高ノ河谷とは別で、緩い斜面からまた急になって西の高知側に落ちる。
高ノ河谷の右岸山腹を巻き進み、右手の尾根に移ってやがて急登となる。
途中で踏み跡は尾根を右手に巻くように進み、浅い窪地を詰める。
大きくジグザグをきって少しで山頂の西寄りに上がる。
ブナ林の尾根を東へ緩く登ると山頂だ。
ちょうど西に太陽が沈みかけており、ブナ林が赤く染まり美しい。
西又山山頂からは越えてきた赤城尾山とその背後に石立山が綺麗に望める。
アズマヤがあり、この中にテントを張ろうかと考えた。
しかし、地面は凹凸があり、居心地が悪そう。
あたりが薄暗くなってきているがさらに進むことにする。
地形図での下調べでは、三角点あたりの尾根が広く良さそうだ。風も防げそう。
山頂から東に進むとだんだん尾根が広くなりいいムードだ。
想定どおりの広葉樹の樹林が美しい場所で、ブナの大木が林立している。
三角点の少し手前の3本のブナの木の袂に落ち葉を敷き詰め今日の寝床とした。
テントを張り終え、夕餉の支度をしていると既に闇に包まれる。
しかし、今日は月夜で森が明るい。
テントから半身乗り出し夕飯。少し寒い。
月夜の光の下で木々のシルエットが絵になり、落ち着いた時間を楽しむ。
夜中12時過ぎ、鹿や獣が周りを歩くので目が覚めた。
ついでに外に出て、このブナの台地を月明かりで20分ほど散歩した。
静かでやわらかい光線が差し込んだ月夜の森の美しさを堪能した。
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【行程2日目】 行動時間 7時間45分 天気 晴れ時々曇り
三角点7:15?7:40 1,217m峰7:50?1,257m峰8:20?8:25ブナの大木8:35?1,349m峰8:55?9:20甚吉森9:45?1,046m標高点10:25?11:05登山口(南川林道)11:20?11:25自転車パンクする11:30?15:00栩谷口バス停
三角点からブナの大木(標高1,260m)へ
朝は少し雲があるが概ね晴れている。
朝日が差し込み、木々が赤く染まり始めた頃、テントを撤収。
東に向け出発。
広い尾根がしばらく続き、樹林は次第に細くなってきて左右に植林が混じる。
平坦になると細い雑木林の間を適当に歩く。
途中、伐採後のような明るい草地のところを通過。
立ち枯れた太い幹の横からまっすぐ伸びた杉の格好が面白い。
やや左に進路を変えて少し登ると1,217mの平坦なピーク。
何の特徴も無いが、日差しが心地よくしばらく休憩。
ヒメシャラの太い木がある林を抜け、広い尾根を東進。
次第に尾根には植林ではない杉の大きな木が混じるようになる。
高知県馬路村の魚梁瀬方面の谷間にはガスが溜り神秘的な風景だ。
1,257m峰の先も明るく、笹も無く草尾根にブナと杉の群がりの間を行く。
地形図で一番等高線の緩んだピークあたりの森もなかなかいい雰囲気。
その先の狭くなった鞍部からやや右に向かって上がる。
その尾根の真ん中に大きなブナが立ちはだかっている。
まるで通せんぼをしているようだ。
その右斜め下には大きな杉がスッと立っている。
ブナの袂でしばし寝転び、周囲の景観を楽しむ。
四国の南の低山帯だが思ったよりいい感じのところもあるものだと関心。
ブナの大木から甚吉森へ
ブナ大木の背後の小ピークを越えると正面に甚吉森が見えた。
この先は次第に緩い上りの連続になる。
尾根の概ね高知県側に杉の木がある。
ゆったり広い尾根を稜線漫歩。
晴れた尾根をどんどん登って行く。
下草の無い歩きやすい落ち葉の尾根は日差しで明るい。
右手から斜めに支尾根が合流した。
ピンクの目印があり、千本山からの道が合わさる。
そのすぐ目の前が甚吉森山頂。テント地から1時間40分で着いた。
東には湯桶丸や貧田丸方面の尾根が見渡せるが逆光で眩しい。
甚吉森は南北がガレていて展望は雄大。
今日も剣山、次郎笈、石立山方面が見渡せ、奥深い位置にいることを実感。
南には名も知らない低山の重なりが見える。
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甚吉森から登山口(南川林道)へ
山頂で30分ほど過ごし、展望を楽しんだ。
東へ2、3分で主稜を離れる。
すぐに植林となり、以後、ほとんど植林の中を行く。
登山道は明瞭で、小さな赤いテープが途切れずに足元の枝に付けてある。
単調で面白くない道なので飛ばして歩く。
地形図の破線路とは違い右の尾根に入り、またすぐ先で右の小尾根へ。
標高1,150mあたりで急に左に折れ、下り気味に山腹を巻く。
1,046m標高点手前で尾根に復帰し、標高1,000mちょうど位でまた左に折れる。
その後大きく斜面を巻き下り、周期の長いジグザグで南川の河畔に降りる。
鉄製のしっかりした吊り橋を渡って林道の登山口へ。
ここまで降りると紅葉が残っており、少しは色鮮やか。
長い単調な下りに少し疲れ、長めに休憩。
登山口から栩谷口バス停へ
さて、ここからは自転車で移動だ。
概ね下りの砂利道を走る。
湯桶谷上部からの林道を合わせ、200mほど進んだところでプシュッ・・・・。
あぁっ パンクだ。何てこった。
栩谷口13時2分発のバスに乗るつもりで行動してきたのに・・・・。
この南川林道は国道まであと13kmはありそう。
車が通らないかと思いながら歩いたが、集落もほとんど無く通る筈もなし。
意を決め、時間を忘れて自転車を押してゆっくり景色を楽しもう。
宇井ノ内の数軒の集落を過ぎたあたりでテントウムシが。
それも大量の集団が木に集まっている。越冬準備だろうか?
虫たちの動きからして今年の冬は大雪になりそうな気配。
周りは植林がほとんどだが、ところどころ紅葉が残っている。
人気のまったく無いキャンプ場横を過ぎて赤い橋を渡る。
周囲は植林だが川の崖だけは自然林が残され、赤や黄が映える。
次のバスは16時23分発。
ゆっくり歩いても相当余裕がある。
3回ほど休憩し、やがて国道が右下に見えてきた。
国道に出る手前で川辺に降り、1時間ほどボーっと過ごす。
意外と川の水は透き通っている。
落ち葉が無数に流れさる様子が見ていて飽きない。
20分前にバス停に着き自転車を停める。
定刻より早く来たバスに乗り込むと乗客は自分だけ。
バスの車窓を楽しみながら、予定通り日和田に着き、今回の山行を終えた。
海部山系という呼び名があっているか分からないが、この土佐、阿波の県境は奥深い場所で地理的には相当辺鄙な場所だ。
暖かい地方なので比較的隅々まで植林が進んでいるようで、登山としてはあまり興味が湧かない。山深いのに自然があまり無いという印象だ。
今回の山行では部分的に素晴らしいと思える景観があり、僅かに尾根上に残された自然はこの山域では貴重で、後々まで残って保ち続けてほしいものだ。
特に、赤城尾山の山頂の南東面、駒背山の頂稜部、西又山と三角点周辺、三角点と甚吉森の中間あたりの杉の大木とブナ、ヒメシャラは一見の価値がある。
林道歩きが加わったが、天候に恵まれ、静かないい山旅となった。
今度は高知県側の馬路村魚梁瀬を起終点に再びこの山脈を南に巡ってみよう。