裏岩手連峰 葛根田川?大深沢継続遡行

2009年 9月 18日 | 東北, 沢登り

3,4年前から行きたいと思っていた葛根田川、昨年8月末に計画したが増水のため断念。今年こそもう一度と思いこの5連休に企画をあげた。メンバーは昨年一緒に行こうとしたH内さんに声をかけた。そしてS木君とK下さんが加わり4名でいくことになった。ぎりぎり参加になったK下さんもなんとか仙台ー京都間の夜行バスをおさえる事が出来た。

企画を早めからたてることが出来たが、8月末にクライミングジムで痛めた右膝の靭帯損傷の治り具合が不安だった。出発前日までリハビリに通った。5日間の長期山行にいきなり行くのは不安だったので9/13に日帰沢登りへ行ったが、終始緊張が続き余裕がなかった。こんな状況で少し不安はあったが本ちゃんをむかえた。

9/18 京都駅21:30→仙台へ

京都駅は人でごったがえしていた。夜行バスは臨時もでて合計3台で仙台へ向かった。

9/19 仙台駅10:00→滝の上温泉15:00→出発15:30→入渓16:00→明通沢出合16:30→大石沢出合17:30 泊

8時に着く予定だったが蔵王付近で25キロの事故渋滞に巻き込まれ10時頃に到着した。すぐに駅前のレンタカー屋にいって盛岡市へ向かった。初日は移動のみで終わるかと思ったが、なんとか14時45分頃に滝の上温泉に着いて慌てて準備をして15時半に出発した。予定通り大石沢出合まで進みたいが、もし無理であれば明通沢出合で泊まることにした。地熱発電所の側を通り葛根田川の左岸川を進む。立ち入り禁止の看板がぶら下がったゲートを堂々と抜けて進む。川はとても穏やかで昨年の増水時とは比べものにならないぐらい水量は少なかった。堰堤をひとつ越えて入渓しやすいところから川へ降りた。しばらくゴーロの中を進む。だんだん川幅は狭まり沢らしくなる。しばらく行くと左岸から明通沢が出合う。すぐに左岸から滝となって支流が出合う。16時頃からの遡行開始、こんな時間から歩くなんて初めてだ。陽は少し沈みかけで、陽射しが少し弱いが原生林やナメが広がるとても気持ちの良い雰囲気の中を歩く。しばらく進むと赤茶けた色の壁が両岸に広がる。葛根田川の有名なお函、ゴルジュが始まった。ゴルジュといっても厳しいものではない。いくつもの釜が続く。水は薄緑色ですきとおっていて陽があたるとキラキラと光って美しい。雪国らしい沢の様相だ。美しさと谷の雰囲気に感動し、葛根田川にやっと来れたと満足感に浸る。そしてゴルジュを抜け河原を進むと大石沢出合に到着した。出合いの一番良い場所に先行パーティが既に焚き火をおこし宴会をしていた。先へ進んで適地を探そうかとおもったが、まだ先にもパーティがいる様なので手前で泊まることにした。夜はS木君が用意してくれた焼肉。フライパンと網をもってきてくれた。沢でバーベキューなんて初めて。前祝いということでお酒に肉とたくさん食べて飲んで初日を終えた。

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9/20 出発6:30→中ノ又沢出合→滝ノ又沢出合8:00→北ノ又沢出合→930地点右・左俣9:10→八瀬森湿原10:30→大深沢・関東沢右俣下降開始11:00→関東沢左俣出合11:45→関東沢本流出合13:45→三俣出合14:40→1010地点右俣→1090湿原下見15:00→三俣荷物回収→1090湿原16:00 泊

6時半出発に向けて5時起床。大石沢出合に泊まっていたパーティより先へいきたかった。けっきょく同じ頃に出発となり、出発してすぐに先へ行かしていただいた。特に難しい箇所も無く河原をあるく。ただただのんびりと癒しの沢だ。中ノ又沢と出合ってしばらくすると葛根田大滝が現れた。踏み跡がしっかりついている右側から巻く。滝を越えて飽きるぐらいの河原をすすむと滝の又沢と出合う。陽射しが差し込みとても綺麗だ。すぐに右から流れ込んでくる大白森湿原へ行く北ノ又沢右俣を見送り左俣を進む。蛇行を繰り返すと930地点の二俣に着いた。大白森湿原はとても大きく機会があれば是非とも訪れたい。

二俣で急遽思いつき、せっかくなので2:2に別れて八瀬森湿原で合流しようと提案した。私とH内さん、S木君とK下さん。我々は右へ、S木君は左へ、湿原に10時半集合と約束して別れた。右俣に入ると沢幅は狭くなり源頭の雰囲気となる。綺麗なナメやスラブ滝がでてくる。滝は20mで左から巻く。途中、H内さんが「ナラタケ」をみつけて思わず足がとまる。大丈夫?!と私は信用できなかった笑。1060地点に流れ込む左俣に進んで湿原へ飛び出す予定だったが、地図を読み間違えて右へ進んでいってしまった。間違えてることに気づかず、スラブ滝(左側から登る)を越えて最後の二俣で左俣の入口に赤テープを見つけた。(この赤テープにも騙された。おそらく大した藪をこがなくても楽に登山道にでれるからついてるのだろう)水は切れて藪をこぐと1168地点より少し東の登山道に飛び出た。湿原に飛び出すかと思ったら・・・どこで間違えたかすぐにわかった。急いで集合場所の湿原へ向かった。彼らはまだ着いてないらしく、既に紅葉が始まり金色に染まった湿原で待った。10時半過ぎS木君の声が聞こえ藪を越えてやってきた。1時間半ぶりだけどとても嬉しい再会。なかなか面白いプチ集中。真新しい八瀬森山荘を見に行き、小屋の中で休憩をとって下降開始した。

右俣(S木記録):ときどきナメが出てくるだけで、滝と呼べるものは出てこない。しかし、湿原へ出るために入った左岸の支沢で15mほどの滝と出会う。直登もできそうだが、少し岩がもろそうなので左岸から巻くことに。ちなみに滝には残置ハーケンもあった(かなり錆びており手で引っ張ると抜けた)。しかし、この判断が結果的に裏目に出ることに。踏み跡はあったものの上へ行くほど傾斜は強くなり、ブッシュを掴みながらヒーヒー言って登る。何度かK下さんにスリングを出した。 斜面を登った後、踏み跡は藪に続いており、沢には戻らず藪をこいでいく。やはり藪こぎはタイヘン。地図を見ながら待ち合わせ場所のほうになんとなく方向を合わせ、しばらく進むとよく通るかわいい女性の声が。I野さんだ!声の方向に進むと湿原がパっと広がり、I野さんH内さんが写真を撮っていた。無事合流できて良かった。

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湿原を突き抜けると簡単に関東沢右俣にのる。綺麗なナメが続く谷で順調よく下る。関東沢は魚影がこく何度もみかけた。釣りを早くしたくて関東沢左俣出合で釣りタイムとした。私が5匹、Hさんが一番大きなのを1匹、S木君2匹釣り上げた。いったん13時に釣りを切り上げて先を急いだ。ゴーロが続き大深沢本流と出合う。出合いで数パーティとすれ違い、三俣にも多くの沢屋がいると教えていただいた。本流出合いで泊まる予定だったが意外に早く着いたので、沢屋がたくさんいると聞いたがとりあえず三俣まで進むことにした。所々で沢屋に出合い、釣りを楽しんでいる様だった。地形図を見ると三俣の上に湿原マークが目にとまる。湿原マニアとしては是非とも訪れたい。もし素晴らしい場所なら湿原の中で泊まりたいと思いメンバーに提案した。返事は湿原を見てからとなった。本流出合いから35分から40分ほどで通称ナイアガラの滝(大深沢30m)が現れる。スダレ状で綺麗な滝だった。滝もさることながら滝の上の沢幅いっぱいに広がる美しいナメに驚かされた。そして仮戸沢、北ノ又沢、東ノ又沢が合流する三俣に着いた。情報通り数パーティが適地を確保していた。我々は北ノ又沢に入ってすぐにとても快適な泊地を見つけた。焚き火も出来るし、釣りも楽しめそうなのでここで泊まろうかと思ったが、空荷で気になる湿原をとりあえず見にいくことにした。ナメの広がる東ノ又沢に入ってすぐの左岸からの支流をつめる。谷は少し荒れ気味で熊がいた形跡がたくさんあった。そして藪を少し漕ぐと湿原に飛び出た。そこには素晴らしい大きな金色の草原が広がっていた。思わず歓声があがった。昨年訪れた奥利根のススケ峰湿原を思い出した。あの時は泊まることができずとても残念な思いをした。是非とも今回は泊まりたい!このチャンスを逃すのはもったいないと思い、メンバーに聞いてみるとOKを貰うことができた。焚き火は出来ないが、こんな経験はめったと出来ない。三俣に荷物を回収にいってもう一度登り返した。

平な乾いた場所を選び寝床を決めた。ツェルトはたてずにかぶって寝ることにした。湿原を散策し晩御飯の準備。今宵は豪勢な夕飯となった。釣り上げた岩魚にキノコにH内さんの鳥そぼろ丼に茄子の素あげ。キノコはちょっぴり怖くて私は遠慮したが、K下さんとH内さんはバクバク食べていた。岩魚の唐揚げは丸ごと食べることが出来て美味しい。陽もくれて寒くなってきたので早々とシュラフに入った。空には満天の星がひろがり流れ星を何度も見ることが出来た。冷え切った足が冷たくてなかなか寝付けず、気温はどんどん下がり辛い夜となった。ただ、夏みたいに虫がいないのでその点ではとても快適だった。

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9/21 出発6:50→1252地点二俣→1300地点二俣9:30→1310地点右俣→湿原9:40→1384湿原登山道出合10:00→1283湿原10:40→下降開始→明通沢出合12:45→遡行終了13:50→滝の上温泉15:30→滝の上温泉→仙台→二口温泉にて仮眠22:30 泊

下山した日のニュースによると、ここ一番冷え切った夜だった様だ。K下さんの沢靴下が凍っていたのにはビックリした。5時頃おきて朝ご飯の支度。H内さんとK下さんが無事だったので、残ったキノコで味噌汁を作った。湿原を堪能し7時頃下山開始。今シーズンの沢遡行で一番素敵な場所、色んな意味で思い出深い場所となった。(もし大深沢を遡行される方がいらっしゃれば、是非ともこの湿原へ訪れて泊まっていただきたい。)東ノ又沢に戻りナメを楽しむ。次第に両岸がたち小滝が現れ超えていく。沢幅はどんどん狭まり右岸からの支流を何度か見送り右俣へ進む。そのまま本流をつめても良かったが、早く湿原にのりたかったので1300地点の右岸からの支流を過ぎて次に右から入ってくる支流を進んだ。しばらく藪をこぎながら谷沿いに進み、開けてきた右手に進むと小さな湿原に飛び出た。そして更に藪を濃いで北へ進むとすぐに大きな湿原に飛び出た。ここもなんて素晴らしい湿原なんだろう。下山してしまうのがもったいないぐらいだった。あとはゆっくりと湿原の中を歩き登山道へ向かった。1384湿原出合いでしばらく休憩をとった。

明通沢への入渓方法として、登山道を三つ石方面に進み1335あたりから下っても良いが、我々は関東森方面へ進み1283湿原手前から支流を下降し入渓することにした。笹原が続く気持ちのいい登山道を進む。秋田駒がくっきりと綺麗に見える。また大きな大白森湿原も上から眺めることができた。下降地点を慎重に見定めて藪こぎを開始。あっという間に旨く支流にのり2時間弱で明通沢と出合った。支流にはいくつか滝があり、ほとんど巻いて下りることができる。15mの滝は左岸側をトラバースして立木に着いていたスリングを使って懸垂下降をした。30mザイル1本で問題ない。明通沢本流はザイルをだす箇所もなく1時間ほどで林道との出合いに着いた。明通沢は明るくナメが広がりとても綺麗な谷だった。遡行しても楽しめる谷だろう。遡行を林道出合で終了し、踏み跡の付いた藪の濃い中を下山した。1時間半で滝の上温泉に戻ってきた。

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難しい滝やゴルジュなんて何にもない。ただただ美しいブナ林の中をのんびり歩くだけ。とても心地よくて癒された。素晴らしい葛根田川のゴルジュ、ナメ、歓声をあげるほど美しい湿原が忘れられない。葛根田川は知名度が高いが、大深沢も日本百名谷に選ばれてるだけあって葛根田川に引けを劣らず素晴らしい谷である。是非とも大深沢と併せて継続遡行してほしい。

S木感想

今回、葛根田川、大行沢という東北を代表する二つの沢に行けて、とても充実した5日間だった。

葛根田は、明るく開けた沢が続き、特に悪場もなく非常に快適な沢だった。随所に出てくる湿原はどこも美しく、東北に来たなぁと思わせてくれるものだった。また、魚影も濃く、大物こそ釣れなかったが、全員合わせて釣果は8匹。釣りも楽しめて良かった。湿原で泊まることができたのも印象深い。夜の星は美しかったし、何より虫がいないとこんなに快適なのかと思ってしまった。

また、大行沢も含め食事が豪華だったのも今回の思い出。初日はバーべQ(自分が用意したのだが)、他の日もイワナや野菜の素揚げ、きのこ炒めやきのこ汁、焚火での焼き芋など、沢ならではの魅力を凝縮した遡行だったと思う。ちなみに一番美味しかったのは肉でもなくイワナでもなくナスの素揚げ(笑)。茄子最高です。

よく考えたら、秋の沢登りは今回が初めてだった。紅葉の中の沢登りもいいものだなぁと。秋はきのこが取れ頃なので、来年までに勉強したいと思った(自分で判断できるようになるには時間がかかるだろうが)。東北の山は関西やアルプスとも違う独特の山容で、女性的な山が好きな自分としては大ヒット。

まだまだ東北には良い山、良い沢がたくさんあるようだ。また、今回のように良い仲間と(良い酒と)とともに行きたいと思う。リーダーのI野さん、みなさん、ありがとうございました!