ハイキング@奥美濃・天狗山から黒津山、五蛇池山へ縦走

2011年 3月 26日 | ハイキング, 奥越・奥美濃・白山, 積雪期縦走

 奥美濃の大谷川流域には天狗山、黒津山、五蛇池山、蕎麦粒山、湧谷山が分水嶺をなして円形にうまく並んでいる。このうちまだ黒津山は登っていない山であるが、他の山から幾度となく眺めていた。なかなかボリュームのある良さそうな山に見える。山頂は際立って見栄えのする山ではないが、この山もブナ林主体であるように思われる。無雪期は五蛇池山に登ったことがあるが、山頂から南は密度の高い藪尾根が続き、やはりこの山も容易に登るには残雪を利用するのが良さそうだ。 
 今年の豊富な残雪を利用して1泊2日で天狗山から大谷川流域を反時計回りで湧谷山まで縦走しようと出掛けたが、前日からの冬型気圧配置による風雪が激しく、結果的には五蛇池山までとなった。

【行程1日目】行動時間 7時間40分 天気 雪 風強し

道の駅さかうち6:50?9:00 798.8m三角点峰9:10?11:25天狗山11:35?12:55?
1,042m峰13:00?14:15黒津山14:20?14:30黒津山西方の凹地状地点(標高1,150m)

天狗山北方より黒津山

 前夜野洲市の自宅を22:50に出発。国道8号を北上すると彦根市から風雪となった。八草トンネル前後は路面に結構雪が積もっており、スリップに神経を遣う。通る車もほとんど無い。
 翌1:00ちょうどに「道の駅さかうち」に到着し、すぐ仮眠するが、風雪が激しく、外を眺めては今回の山行がどうなるか思案する。
 6時前に起きると、風雪が激しく、気分が重いが出発の準備に取り掛かる。
 6:50出発、道の駅の左横の道を100m歩いて右手の斜面に取り付く、最初は尾根らしくなく、ただの山腹を登るが、中途半端な雪に今朝の新雪が乗って厄介だ。かなり急な斜面を枝に掴まりながら登ると左手から尾根らしい線に合流し、そのまま上を目指す。
 雪はあまり締まっておらず、歩き難い。798.8mの三角点まで標高差540mを2時間以上も費やした。

左 蕎麦粒山  右 黒津山

 風雪が止まず、時々ガスが出て視界も無い。途中、黄色と真紅のマンサクの花が寒々しい真冬のような風景の中でその鮮やかさを際立たせていた。
 この三角点からは緩やかな尾根を進む。以前天狗山からの下りに通った時は残雪が適度に締まり、速く歩けたが、昨日からの積雪が多いことと、雪質も良くなくいので捗らない。三角点から天狗山までも2時間以上を要し、膝下までのラッセルだが相当疲れた。
 天狗山には踏み跡無く、広大な雪の台地になっている。少し雲が切れ、かすかに花房山方面が望まれた。今日は冬型でここまで春山の気配に乏しい。鳥のさえずりもなく、風の音だけが耳につく。
 気を取り直して、黒津山に向け出発。次第に尾根が狭くなってくると、面白いことに尾根の東側に出来るものと思っている雪庇が西側に出ているところもあり、数十mの間に東、西、東と交互に張り出している個所もある。

ブナの木の影

尾根は北北西に向っている。コブの高まりなどで風が渦巻くのだろうか?
 天狗山を出発して最初の上りのピークでは展望が開けた。ちょうどたまたまガスが晴れると、曇っているが意外と結構遠くまで視界があるではないか。これから向う黒津山から蕎麦粒山まで、さらには背後の烏帽子山や県境稜線も見えた。
 15分ほど展望を楽しみ、さらに進む。しかし、湿雪の重たいラッセルに体力を消耗し、今日は計画している蕎麦粒山を越えるのは無理そうだ。五蛇池の二重山稜なら風が防げて良さそうだが、そこまで進むことも無理だろう。
 綺麗なブナ林が続く尾根をひたすら歩くと、やがてガスってきて再び風雪の中となった。黒津山の手前の右下(東側)には凹地状の地形が見え、凹地の東側には雪の壁が出来ているのが俯瞰できる。風を防ぐにはいい場所だ。その個所は黒津山と、ひとつ手前のピーク下の2ヶ所ある。

快適な雪洞泊まり

 やっとの思いで黒津山に到着する。この時、また偶然にも少しガスが切れ、五蛇池山方面が望まれたが、ラッセルの辛さを思うと意欲消失だ。また風雪がいつ強まるか分らないことと、ここから先に進むと、翌日天気が悪いと退路に困難を伴う。
 安全を期して今日は凹地で泊まることにした。尾根を5分戻り、東側へ標高差で30m程下降する。よく観察すると、凹地の縁は北西から南東に伸びるが雪庇が凹地の内側に向けて出来ている。庇状ではなく垂直のところもある。その高さ4mほどの垂直部の場所の傍らに大木がありいい雰囲気である。凹地自体、風当たりはましだが、壁を利用して雪洞を作ることにした。横に掘ったら良いだけなので面白いほどよく掘れる。1人用テントよりも広く居心地の良い空間が1時間余りで出来上がった。これは我ながらいい判断で、その後ずっと吹雪き、翌日は雪がさらに積もっていた。
 雪洞の中でローソクを灯し、幻想的な空間で夕食。水はいつでも壁からすぐ確保できるし、室温0度で水が凍らない。吹雪の音も聞こえなく静かに過せるなど、いろいろ利点も多い。20時半頃就寝。

【行程2日目】行動時間 8時間45分 天気 晴時々雪、午後風雪

黒津山西方の凹地状地点7:15?7:30黒津山7:35?9:25五蛇池山10:00?11:45黒津山北肩11:55?12:20アラクラ12:25?13:10 882.4m三角点13:25?15:05林道(標高340m)16:00道の駅さかうち

朝の雪洞と木と青空と

 朝目覚めると既に6時前になっていた。絞った雪洞の入り口の穴から外を覗くと、真っ白で何も見えない。穴を広げると、前に新雪が積もって高くなっており、雪の壁になっていたためだ。大雪だともしかして穴が塞がっていたかも知れない。
 外に出ると紺碧の青空が広がっており、昨日と違って清々しい。
 朝の光線が雪面を次第に染めていき、心地良い。風もかなり弱くなっている。
 雪洞の横にある一本の大木と雪洞の穴がいい雰囲気を醸し出している。
 黒津山に登りしばし360度の展望を楽しむ。
 伊吹山、金糞岳、2年前に登った湧谷山、丁字山、北に大きく蕎麦粒山、能郷白山方面の県境の山々、花房三山など展望雄大だ。遠く中央アルプスや恵那山も見えている。
 さて、山頂から少し北に下り、尾根が別れる。

黒津山から伊吹山、金糞岳を遠望

 前日からの新雪が積もり、ワカンを着けていても30cm程度は沈むため結構労力を使う。
 また湿雪で重く、歩みは捗らない。昨日から、想定していたコースタイムよりも1.4倍位時間が掛っている。 この調子では蕎麦粒山を越えて今日中に下山するにはややリスクが高い。
 また良く見ると、コソムギの山頂部に巨大な雪庇の出っ張りがこれから辿ろうとする尾根に向って壁を作っている。遠望する限りではどうも越えられそうにない。
 しかし今日は天気が良く、このまま下山ではもったいないので、五蛇池山まで行ってみることにする。
 広く緩い尾根を下降して行く。途中、ブナの立ち並びが美しい。
 日差しが次第に強くなり、暑いくらいとなった頃、最低鞍部に着く。やはり30cm程沈むので時間が掛かる。

黒津山、五蛇池山の鞍部からの蕎麦粒山

 五蛇池山から先には時間を考えると進めそうもないので、ここで荷を置き、空身で登りに転じる。
 すぐ先で藪と雪のミックスとなり、始末が悪い。中途半端な藪と雪で歩調は捗らない。
 しかし五蛇池山に近づくに連れて歩きやすくなり、山頂部では雪が締まって沈まなくなり久し振りに快適な歩きとなる。
 山頂は広やかで、展望は抜群だ。
 以前、無雪期に登った時はほとんど展望無く、緑にむせ返るようだったと記憶しているが、季節が違えば同じ山とはとても思えない。
 山頂台地の東からは能郷白山が徳山ダムの湖を隔てて雄大だ。
 台地の北西へと支尾根を少し下れば眼前に圧倒的な大きさで蕎麦粒山が迫り、とても1,300m弱の低山とは思えない風格がある。

五蛇池山から能郷白山

 また、山頂の北側一帯は浅く窪んだ緩い斜面を形成しており、ブナの木が適度な間隔で並び、県境稜線の白い山並みを借景になかなかいい雰囲気だ。
 山頂で30分以上展望を楽しみ、引き返す。
 一度自分のトレースを付けているが、登りではやはり早くは歩けない。
 同じ位時間を掛けて黒津山北の尾根分岐に戻る。
 次第に風が出てきて寒くなってきており、あまり長くは休めない。
 これから進むアラクラまで、尾根の南側に大きな雪庇がずっと連続して続いている。
 5?10m程の広い幅の緩やかな雪面を見ると楽勝に見えるが実際はかなり潜るため、尾根の北側の樹林の中をわざわざ進むことにする。

 なぜなら風の強い風上側の傾斜のある面のほうが雪面が氷化して幾分沈まないためである。

五蛇池山から蕎麦粒山

 アラクラは風が抜けていて寒いので少し風景を見るだけにする。
 さてこれから先はほぼ下り一方だ。
 下り出してすぐ、西から黒い雲が来て本格的な降雪となる。気温が高いせいか湿気のある雪だ。
 午前中の晴天が一転、昨日のような真冬の光景になり、足も次第に急ぎ気味になる。
 広い尾根を快調に下り、882.4m三角点のあるほんの少し先で左の支尾根を下りることにする。
 いきなり急な尾根になるので、ここで始めてワカンからアイゼンに付け替える。
 雪が緩んでおり、アイゼンを着けても踏ん張りが効かない。

ブナの回廊をゆく

 標高を下げるに連れて、藪が出て進路を考えながら進む。
 雪も中途半端に途切れ出し、残雪の無いだろう場所は昨日から積もったベタ雪で覆われ、今山行中で一番歩き難い尾根となった。
 1時間半で、やっと下方に大谷川の流れが望まれるようになり、最後は植林となって林道に飛び出した。
 鉛色の空から激しく雪が降っているが林道上には気温が高く積もらない。
 1時間かけて広瀬の村をゆっくり眺めながら道の駅さかうちに戻り周回山行が終了した。

 今年は残雪が多く、雪が締まっていたら快適な山行になったことと思うが、ラッセルに降雪にと、本格的な冬山を味わえた。

アラクラへと続く白い尾根へ

 雪洞は結構快適で、天気が悪くなくとも時間があれば泊まる手段としては面白い。
 今回登れなかった大谷川の西側の山々に今度は取り組んでみようか・・・・・。