沢&ハイキング@南ア・雨乞岳から甲斐駒ヶ岳(黒津沢を経て)
2011年 9月 23日 | ハイキング, 南アルプス, 沢登り鋸岳縦走で通る鹿窓は有名だが、登山地図を眺めていると他にも「窓」とつく地名があり興味深い。
日向八丁尾根がある北側に「鬼ノ窓」という名を持つ2つの地点が示されており、共に深く切れ込んだ鞍部となっている。
その北には登山道のある雨乞岳が目を引く。
地形図をよく読むと、雨乞岳からは大岩山を経て甲斐駒ヶ岳へと尾根が続いている。
ただ、口ノ鬼ノ窓から南に連なる尾根は急な斜面状となりはっきりとしない。
また2,144m峰や駒薙といったピークがあり稜線通しに行くにはアップダウンがある。
さて、この2つの窓に着目すると、口ノ鬼ノ窓(東鬼ノ窓とも言うらしい)から比高80mほどで黒津沢に降りられる。
そこから黒津沢を遡行すれば鬼ノ窓に出られそうに考察される。
面白いことに両窓間はほぼ真っ直ぐ沢を通して直線状に結ばれ距離的にも尾根通しよりもやや近い。
そこで今回、雨乞岳から大岩山を経て甲斐駒ヶ岳へ辿る計画を練る中で、この両窓間は沢通しで行くことに興味が湧いた。
縦走の行程の途中に沢の遡行が加わった変則的な計画とした。
単調になりがちな縦走に変化を持たせたが、これは果たして縦走と言えるのだろうか?
登山口、下山口間は自転車で移動するため、先に黒戸尾根登山口に向うこととする。
?【行程1日目】行動時間 8時間00分 天気 晴れのち曇り 夜中から快晴
雨乞岳登山口(石尊神社参道前)7:25?9:55ホクギノ平10:10?11:00雨乞岳・水晶ナギ分岐?11:45雨乞岳12:05?分岐12:30?12:40水晶ナギ12:55?笹ノ平14:00?14:30口ノ鬼ノ窓14:35?黒津沢本流14:55?15:35黒津沢泊地(標高1,735m)
?雨乞岳登山口から水晶ナギの分岐点まで
諏訪サービスエリアで2時間ほど仮眠し、小淵沢ICで下り、駒ヶ岳神社の駐車場へ。
自転車を置き、ここでも車の中で仮眠する。
6時過ぎ雨乞岳の登山口へ向け近道である雨乞尾白川林道をゆくが、途中で道路が土砂で埋まっており通行止め。
近道をしようとしたが出来ず、結局甲州街道まで一旦下って、雨乞岳登山口へ。
空は晴れているが高い山々はガスっている。八ヶ岳は綺麗に見えている。
立派な石尊神社の参道前の広場に車を置いて出発。車道を南に僅かで山道に入る。
よく掘り込まれた広い幅の道が続く。最初は少し急な登りだがすぐに緩やかな同じ勾配の歩きやすい道になる。
この夏は朝から暑い上りの日が多かったが今日は涼しく快適。
山腹をうまく利用して大きくジグザグを繰り返してよく考えられて道が敷いてある。
最近作りの何やら新道などという登山道とは大きく違う。
昔の道のルート取りには感心させられる。
やがて平坦な尾根上になり道の両側からススキが覆い被さる。
平坦な部分がしばらく続いた後、また最初のようなジグザグを延々と同じように繰り返してゆく。
いい加減飽きてきた頃、植林の中にプレハブ小屋が見えてきた。
サントリーが所有する管理用の小屋のようだ。
その横が三角点のある場所でホクギノ平であるらしい。
木が邪魔をして展望は無いが明るい林だ。
ここからはカラマツの植林された緩やかな尾根を進む。
勾配も緩くなりゆったりと歩いていく。
道の横に大きな白いキノコが幹に下がっている。
白く長い鬚のようで面白い。
ヤマブシタケという食菌だ。
その後も時々こいつを見かけることとなる。
一時、しっとりした自然林の中をいき、いい雰囲気だったがまたすぐにカラマツ林に変る。
尾根の左山腹をトラバースするようになるとしばらくで雨乞岳と南に続く稜線との分岐に着いた。
「右雨乞岳、左水晶ナギ15分」と書かれた札が木に巻いてある。
このころからガスが掛かるようになってきた。
ここにザックを置いてしばらく休憩。
分岐点から雨乞岳へ往復
カラマツ林をしばらく平坦に進み、広く緩やかな鞍部を抜けると急登となる。
標高差300mで上り一方だ。ガスは西側から流れている。
残念ながら風景は無いがガスはあまり濃くはないので見通しは十分だ。
黙々と耐えて45分で山頂へ。
山頂では北側から登ってきたという夫婦に出会う。
なんでも2時間程度で登れる楽なルートだとか。
私の持っている登山地図にはルートが無いがハイキング道があるとのこと。
八ヶ岳の展望とこれから向う甲斐駒ヶ岳の展望を期待していたが残念。
帰りは手ぶらなので楽チン。25分で分岐まで戻った。
?分岐点から口ノ鬼ノ窓へ
分岐からザックを背負い、いよいよ南に向け出発。
よく踏まれた道をまずは水晶ナギという白いおおきなザレへと向う。
10分余りで着く。道は東側へと尾根を少し下り、ザレの東端へ。
ガスが晴れ、甲府盆地が眼前に見えてきた。
日向山は見えているが2,000mある鞍掛山はガスの中だ。
振り返ると、これから進もうとする稜線も晴れてきている。
その稜線の背後に薄暗く不気味に鬼ノ窓の切れ込みが望まれ、南の大岩山の山頂がガスで見え隠れを繰り返している。
そこを通る明日はいい天気であってほしいものだ。
さて、少し戻って稜線を南下する。
水晶ナギへの道を外れると踏み跡は無い。
左にザレを意識しながら進路を定める。
1,680mの鞍部下り、向かいのコブへと登る。
藪は無く、ルートは明瞭だ。1,725mのピークを越えて次の鞍部に下る。
この先は地形図では等高線が詰まっていてどんな登りかと多少心配していた。
急な傾斜だが木の根がしっかり這っており、全く問題なく登れた。
登りきると、尾根が広くなり短い笹で覆われた笹ノ平だ。
名前の通りの場所で白樺が混じって高原を行く気分に一気に変った。
ガスが出たら方向をよく確かめる必要がある場所だ。今日はガスが無いので楽だ。
この広い平らも南に進行するに連れだんだん狭まり本来の尾根様になる。
30mほどの上りでコブを越えた先が口ノ鬼ノ窓だ。甲府盆地はよく晴れている。
鞍部の北側には白い岩が張り出している。
鞍部は痩せていてテントは張れそうにない。
西側から川の水音が響いている。少し休憩。
?口ノ鬼ノ窓から黒津沢を遡行し泊地(標高1,735m地点)へ
窓からは尾根を外れて、西に支流を下る。
ものの1?2分も下れば水の流れが出てきて、沢の底を下降していく。
右岸に鹿道が出来ていて、時々鹿道に付いていく。藪は無く快適だ。
20分ほどで黒津沢の本流へ合流。
その少し手前で大きな角を持った雄鹿と出会う。
鹿はまさしく沢沿いに付けられた鹿道を辿っていた。
本流は思ったよりも水量が多い。
出合あたりは泊地に良さそうな場所が見当たらない。
ここから本流を遡る。出合付近は岸辺まで樹林の枝や礫で歩き難い。
川の中か右岸を主に進む。
やがて右岸からやや水量の多い支流が合流する。
この支流は10m程度の滝となって合わさっている。
本流の前方には鬼ノ窓が望まれる。
両岸が迫って威圧感があり、名前の通り何か出てきそうな雰囲気の場所だ。
左岸はだんだん傾斜がきつくなり、次の右岸からの支流も滝となって合流している。
その少し先は、急に大きく広い川原になっており、左岸に絶好の泊り適地が見つかった。
どうやら何度か利用されているようで、幕場は整地され、石で囲まれた平な場所だ。
その前には焚き火の跡があり、いかにも泊まってくださいというロケーションだ。
ただし、難点は背後が急で登れない斜度の壁で、幕場は水流からの高さが低い。
降雨の可能性のある時は逃げ場が無く危険で利用できないだろう。
明日は晴天になる予報なので今回は快適に眠れそうだ。
周辺には良い焚き火の材料がいくらでも転がっており、焚き火をしてボーっと過ごす。
流れの音が心地良く、暑くも寒くも無い快適な温度だ。
夕方暗くなるまで空は雲っていたが、夜10時頃目覚めると、外は満天の星空となっていた。
?【行程2日目】行動時間 8時間30分 天気 晴れ 午後時々ガス 夜中から快晴
泊地6:30?7:35鬼ノ窓7:45?8:35大岩山9:00?最低鞍部9:25?2,301m峰10:55?11:50烏帽子岳北鞍部12:10?13:10烏帽子岳13:50?三ツ頭14:15?15:00六合目石室
?黒津沢泊地から鬼ノ窓まで
5時20分起床、6時半出発。朝は天気予報通り快晴だ。
これから向う鬼ノ窓が前方に見えている。
右岸からの支流は滝になっている。
1,770mで合わさる右岸からの滝はなかなか立派だ。
この出合からは雰囲気が一変する。
左岸は垂直の高い壁となり、右岸の壁もかなり立っている。
狭いゴルジュになっていて壮観だ。
背後には八ヶ岳連峰が覗く。
そのゴルジュの奥に大岩が構えている。
一見やばそうに見えるが、河床は滝も無く意外にすっきりしている。
大岩は右岸の壁の隙間を突っ張って抜けることが出来る。
その先は崩れやすいガラ場が少し続く。
左岸の壁が相当高く、落石があったら逃げ場がない。
その先右岸からは、か細い支流の水が高い場所から滝となって降り注いでいる。
本流はガレ場が続く。
ガレ場は上の方に行くほど傾斜がある。
最後は痛いアザミの茂った崩れ易い左岸の斜面をだましだまし登り詰めて一旦落ち着く。
ここからは河床を辿っていくが、滝も無く進む。
やがて前方の林の中に明るみが透かして見えてくると、白っぽいザレが最後の詰めとなる。
崩れやすい砂地をだましだましバランスで登る。
潅木を掴めるところまで上れば終わりだ。
背後に水晶ナギの白と八ヶ岳が綺麗に見渡せる。
林の中を2分ほどで鬼ノ窓に到着。
初めて西側の展望が開け、鋸岳の稜線が青空に映えている。
小ギャップや鹿窓などはここから見るといまひとつで、迫力は無い。
鬼ノ窓周辺は樹林下で下草はおろか潅木も全く無く、すっきりしている。
?鬼ノ窓から大岩山へ
ここから大岩山まで上り一方で標高差300m程度だ。
出だしは藪が全く無く、尾根も階段状に適度に木の根が地面を這っており登り易い。
ときどき白いザレ場が出てきて、鋸岳方面の展望が開ける。
どんどん高度を稼ぎ、大岩山へは50分で着いた。
山頂の10mほど東で登山道に合流した。
日向八丁尾根だ。
山頂には真新しい立派な道標が建っており、その道標には「烏帽子岳3時間30分」と案内がある。
ひょっとして道が開設されたのだろうか?
山頂は樹林で展望は無いが甲斐駒ヶ岳が樹林越しに何とか見えている。
しばらく休憩とする。
?大岩山から烏帽子岳へ
一般登山道並みの道を南に下る。
次第に左方向に方位を変えていき、行くほどに急下降となってくる。
この下降で懸垂下降をしている記録が多くあるので、さてどの辺りからかと思っていると、鎖が掛かった場所に出た。
鎖を頼りに下ると、さらに黄色の真新しいロープがしっかり固定してあり簡単に下りられる。
ロープや鎖はしばらく連続して架けてあり、鞍部に降り立つ手前には立派な鉄の梯子まで設えられている。
ザイルの出番もないまま大岩山から僅か20分余りで容易に鞍部に達した。
鞍部からは次のコルへ西側を巻いて進む。
そして次の鞍部に着くと整地された場所にブルーシートで包まれた四角い物が置かれている。
どうやら先ほどの道の整備に使用した物だろうか?
それとも今後この先のルートを整備するための資材か?
・・・何のためのものだろう。
ここを過ぎると明瞭だった踏み跡は急に薄くなり、その次の緩いピークを越えるあたりからは次第に潅木やシャクナゲの藪に覆われてきて歩き難い道となってきた。
踏み跡を外し気味になり、度々踏み跡を探すようになる。
昨日の尾根や沢のほうがずっと歩き易かった。
それでも時おり進行右手には鋸岳の稜線が見え、眺めを楽しむ。
藪はずっと同じ程度ではなく薄くなったり濃くなったりで、苔に覆われた綺麗な感じの場所もある。
2,301m峰までだらだらと登り、少し下って鞍部に出るとすっきりとして歩き易くなる。
その先で少し急な登りとなり、傾斜が緩くなると今度はシャクナゲにハイマツが混じりだしまた歩きにくくなった。
ルートの見極めがつきにくい。
烏帽子岳への急な尾根となる手前には露岩があり、ルート取りに悩む。
踏み跡が薄くて判然としない。
そして、どうやらこの岩を右に巻き過ぎたのか、西側の浅い凹地状の源頭に入ってしまった。
踏み後探しは止め、この中を少し上り、さらに上部では右側の支尾根に乗って稜線に復帰する。
途中一部で若いシラビソの密生した箇所があり難渋した。
稜線に復帰すると踏み跡があった。
そのまま緩く登っていくと岩が出てきてあっさりと烏帽子岳山頂に着いた。
祠や石碑が建っており、信仰の山であるのが良くわかる。
背後の甲府盆地が明るく輝いていて爽快だ。
ただ、この頃から次第に鋸岳にはガスが掛かり始めてきた。
しかし反対側には本谷を隔てて甲斐駒が格好よく聳えている。
そして今まで見えなかった仙丈ケ岳も見えてきた。
行程も順調で時間もあるのでこの山頂で大休止。
大いに展望を楽しむこととする。
?烏帽子岳から六合石室へ
40分余り過ごし出発。
山頂からは明瞭な登山道になっており、よく刈り払いされている。
鋸岳への分岐から結構往復する登山者も多いのだろう。
烏帽子岳は峰が2つあり、次に同じくらいの高さの峰を越える。
地形図には西側のピークに標高が記載されている。
50m下り、40m登り返すと分岐点だ。
三ツ頭手前の鋸岳縦走路からはさらに立派な道になり、本稜線を進むが、西側からは常にガスが上がってきていて、景色は見えない。
しばらくして今日初めて登山者とすれ違う。中ノ川乗越で泊まるのだろうか。
六合石室は狭いので混んでいたらテントにしようかと思案して進む。
水場でザックを下ろし、水汲みに往復。豊富に流れている。
重くなったザックを背負ってひと歩きで石室に着いた。
引き戸を開けると誰もいない。
3連休なので混雑しているのではと心配していたが全く調子抜けだ。
静かな小屋の左隅に荷を置き、後から来た人が多く寝られるようスペースを詰めておいた。
少し昼寝して4時半頃夕餉に支度に掛かる。
そして暗くなったが誰も現れなかった。
ガランとした窓の無い石室は静かで良く眠れる。
夜中2時に目が覚め、静かに外に出てビックリ!!
引き戸を開けた瞬間「ガサッ?」とう大きな音がして岩の堆積した重なりをさっと移動していくものがいた。
一段下がったところで一瞬こちらを伺い、すぐに林の闇にスーと紛れていった。
結構大きな動物だったが、鹿のような蹄の音がしなかった。
熊だったと思うのだが・・・・。暗かったのでよくは分らないまま。
怖かったが、星を見たいので小屋の前の岩場に行く。
見上げると一面の星空だ。しばらく綺麗な星を眺める。
山のシルエットくっきり浮かんでいる。
朝は快晴が期待できそうだ。
?
【行程3日目】行動時間 7時間30分 天気 晴れ 下山時は時々ガス
六合目石室5:50?7:10甲斐駒ヶ岳7:45?8:55七丈小屋9:10?9:45五合目小屋跡9:55?11:30横手・白須分岐11:40?13:05竹宇駒ヶ岳神社13:10?13:20観光駐車場
石室から甲斐駒ヶ岳へ
早朝は快晴だったが甲斐駒ヶ岳に近づくにつれて薄雲が広がってきた。
雷鳥が直ぐ近くで何かを啄ばんでいる。
花崗岩の明るい尾根筋を進み、山頂に7時過ぎに着いたが、どうしたことか誰も居ない。
いつもなら百名山で賑やかなのだが。
よく見ると双児山には大勢の登山者が見える。
10分ぐらいして続々と黒戸尾根から登ってきた。
束の間の山頂独り占めだった。
薄っすら雪の被った富士山が鳳凰三山の背後に見えている。
北岳方面もよく見えている。
ただ、全体的に暗い部分があって今日は重厚感のある光景だ。
山頂で40分ほど展望を楽しんだ。
?甲斐駒ヶ岳から黒戸尾根を竹宇駒ヶ岳神社へ下山
以前黒戸尾根は横手から登ったことがある。
今回は竹宇駒ヶ岳神社へと向う。
七丈小屋を過ぎたあたりからガスが時々掛かり、暑さが凌げて歩きやすい。
五合目では、以前、傾いた小屋に入った記憶があるが、8年ほど前に壊して今は広場になっていると教えていただいた。
単調に下るが、非常に軽装の単独登山者に追い越されたり、すれ違ったり。
スピード登山なのか、軽装で山小屋泊まりなのか、時刻と場所を考えても少し不思議だ。
横手への分岐を過ぎて、ここからは初めてのルートだ。
よく掘り込まれた道をしばらく進み、急に左へ山腹をトラバースし、渓谷遊歩道が合わさると観光客が大勢吊り橋を行き交っている。
駒ヶ岳神社に無事下り立って、観光客に混じって駐車場へ。
竹宇駒ヶ岳神社(観光駐車場)から自転車で雨乞岳登山口へ
事前に置いておいた自転車で下り坂を颯爽と飛ばし、一旦甲州街道に出て、鳥原交差点の先で自転車と荷を置いた。
ここから雨乞岳登山口までは登り坂なので歩くことにする。
鳥原の集落でおばあさんと一緒になり、山や祭りなどいろいろ話しながら歩く。
アミガサタケを探しながら歩いているとのことで、話で少し邪魔してしまったが登山口で別れた。
昨日24日は石尊神社のお祭りの日でここは賑わったとのこと。
今日は多摩ナンバーの車が1台止まっているだけ。雨乞岳に登っているのかな。
3日間天候に恵まれた充実した山登りとなった。