ハイキング@南アルプス 小太郎山西尾根から北岳へ
2013年 7月 13日 | ハイキング, 南アルプス主稜線から分岐した支尾根の先にある顕著なピークは時には眺めがいい山々があり、登山道が整備されている山もある。例えば、有名なところでは北アルプス 唐沢岳(餓鬼岳の北西)、北アルプス 霞沢岳、中央アルプス 三ノ沢岳などがそうだ。
稜線から外れているが何故か憧れる。
はたして行き止まりの先はどうなっているのか?興味が湧く。
そうした山々へ登るにはほとんどの登山者は通常主稜から登山道を単純に往復する。
山頂の先を尾根の末端へ地形図で辿ってみると、等高線が際立って詰まっている訳でもなく、案外すっきりと尾根末端へと繋がっている場合もある。
南アルプスの小太郎山も地図でよく読んで見ると、西に張り出した尾根が登りに使えそうだ。雪山ルートとして登られているようだが、無雪期でも良さそうだ。
そこで、今回はこの尾根を野呂川の末端から取り付き、日本第二の高峰、北岳へと繋ぐ山旅を計画した。
マイナー(静寂)からメジャー(喧騒)へ繋ぐ変化も楽しもう。
【行程1日目】 行動時間 4時間25分 天気 曇り時々小雨 夕方強雨、強風
野呂川出合バス停7:50?林道下降地点8:30?8:40野呂川渡渉点(標高1,780m)8:50?岩場右手基部を巻く(標高2,060m)9:50?標高2,190m展望地10:30?2,391m峰11:15?2,535m南側巻き11:55?12:15標高2,570m地点(泊地)
?野呂川出合バス停から野呂川渡渉点へ
前夜19時に広島を出発し、最後の休憩で長く寝てしまった。
おかげで戸台口へは予定よりかなり遅れて6時に着く。
バス停は3連休で既に長蛇の列だ。
幸い、北沢峠から広河原へ乗り継ぐ客を優先してくれたバスに早く乗り込めた。
野呂川出合バス停で降り、野呂川の左岸の林道を歩く。
40分程で標高1,880mにある作業場のような広場に着く。
この少し手前ではホースで引かれた水場がある。
明日の肩の小屋までの分、3.5Lを汲んでおいた。
以前、大仙丈沢を下降中にこの尾根の様子と林道からの下降地点を見ておいた。
小太郎山西尾根の末端がよく見えるカーブから、左へ川側に鋭角に下りる。
駐車場に向かって距離20mほど下ると右に手摺の付いた作業道が分岐する。
この道に入り、最初は小刻みにジグザグに下る。
やがて道は野呂川左岸の上流側に向って水平に進む。
すぐ先でこの道を外れ山崩れの末端の法面工事された斜面を適当に下って川に出る。
林道から標高差でちょうど100mだ。標高は1,780m。
渡渉は膝下までで容易だ。
??
野呂川より小太郎山西尾根を標高2,190mの展望地へ
対岸に渡り正面の斜面をひと登りで尾根の芯へ。
作業道らしい踏み跡に出た。
渡渉地点から高度で70?80m上がると、錆びた滑車やワイヤーが散在している。
そこから対岸へ架線が渡っている。
その先、標高1,970mの平らなところはシラビソの幼木でびっしり。
多少藪漕ぎになるがすぐに抜ける。
この後今日のテント地までは藪はなく、始終すっきりとした見通しのよい林の中、高度を稼ぐことになる。
標高2,050mを超えたあたりで岩場が出現する。
右手の基部に踏み跡が通り、岩に赤ペンキのマーキングがある。
簡単に巻き終えると踏み跡は概ね尾根の芯か、やや右手を進むようになる。
標高2,190mで野呂川の南側の展望が開け、野呂川の林道が俯瞰できる。
西尾根標高2,500mの鞍部へ
ここで尾根は左に曲がる。
その少し上部からは登ってきた背後に大仙丈沢、小仙丈沢が並んで見渡せる場所がある。
仙丈ヶ岳の山頂部は残念ながらガスっていて見えない。
このあたりから風当たりが強くなってくる。
進行左手には時々アサヨ峰が見える。
シラビソ林の下草の無い尾根を単調に登って行き、少しの急登で2,391mのピークへ。
今日の風は概ね南から吹いてきている。
木々を渡る風の音を聞きながら緩やかになった尾根を進む。
少し雨がパラついてきたがたいしては降らない。
右手には樹林越しに山頂部がガスっている北岳の容姿が見え隠れする。
しばらく緩やかな尾根を登ったあと、2,535mのピークへは登らず、標高2,480mあたりから右手斜面を緩い登り気味にトラバースして進む。
踏み跡は明瞭だ。次の標高2,500mの鞍部で尾根に乗る。
時間は早いがこのあたりで泊まろうと考えていた。
いい平坦地がある。
しかし鞍部は風の通り道で、風が強い。
そこでさらに進むこととする。?
西尾根標高2,570mのテント地まで
鞍部からは細かな岩屑の下地に少しシャクナゲなどの潅木が混じり出した。
進行に問題は無い。遅咲きのシャクナゲの花を愛でる。
標高2,550mで一旦緩くなり、その先でだんだんと傾斜が出てくる。
正面に初めてハイマツが現れた。
南から風が吹いているので、北側斜面をよく観察すると、2?3張りテントが張れる小さな平坦地が見つかり、今日はここまでとする。
ちょうど斜め背後には仙丈ヶ岳、横には甲斐駒ヶ岳方面が見えるいい感じの場所だ。
大きなダケカンバも絵になる。標高は2,570mあたりだ。
シラビソの木に囲まれ、うまい具合に風はさほど当たらない。
まだ時刻は12時15分だ。今日の行動時間は4時間25分で終了。
時間があるので少し上部を偵察。
この先からは稜線上をハイマツが覆い、尾根は忠実には進めそうに無い。
翌日分ったがテント地としては一番いい最終地点だった。
今日はゆっくり午後の時間があり、風の音を聞きながら昼寝で夜行疲れを解消。
夕方一時的に強い雨が叩きつけたが夜間は降らなかった。
【行程2日目】 行動時間 4時間10分 天気 曇りのちガスと小雨 夕方から夜間 雨
泊地6:15?7:15小太郎山7:45?8:55小太郎分岐点9:05?9:30肩の小屋9:45?10:25北岳
?西尾根を小太郎山山頂へ
朝目覚めると既に明るくなっていた。
今日は仙丈ヶ岳がよく見えているが、空は曇っている。
6時15分出発。すぐ先からハイマツの藪が尾根の芯を覆っている。
まず左手(尾根の北側)をトラバースする踏み跡を辿る。
踏み跡はすぐに判然としなくなり、やがて斜面の傾斜も強くなってくる。
やや登ってから水平か少し下り気味に進む。
傾斜が緩くかつ潅木や藪の薄い個所を見通して進む。
ちょっとした小尾根状の張出しがありその手前はハイマツの中を強引に登る。
張出しを過ぎて水平にトラバースしてしばらく進むと明るい場所に出た。
元はザレ場の跡のようで、草付に潅木が少し生えた浅いガレ地にでた。
この浅いルンゼ状の草付ガレ地は進行右手上部の稜線上まで達していそうだ。
藪の無いこの個所から稜線に登り詰めた。
すると今度は稜線の右手(尾根の南側)が細いシラビソの林になっている。
下草が無くすっきりしている。
ひょっとしてテント地から尾根の南側を進んだほうが少しは楽だったかも知れない。
ここからはやや斜上気味にトラバースする。
しかしハイマツの藪が下部に下がってきている個所が多い。
それを避けるため、若干高度を下げてハイマツの最下部の縁を巻き進む。
2?3回ほどそれを繰り返したあと、高度を稼ぐと前方左上部が明るくなってきた。
ここでハイマツの中に入り、30mほどハイマツを漕ぐとぽっかりと稜線上のガレに出た。
ここから山頂までは僅かな距離で、3分程度で小太郎山山頂に躍り出た。
テント地を出発してちょうど1時間で山頂に到達した。
北岳や仙丈ヶ岳は頭がガスで隠れている。鋸岳は見えている。
北沢峠方面は眼下にスーパー林道が見える。
登ってきた尾根は2,391mのピークの少し先までが見通せ、爽快だ。
野呂川出合バス停から行動時間で5時間半だった。
しばらく展望を楽しんでいると数人登山者が現れた。
小太郎山から北岳へ・・・・・
さてここからはメジャーな北岳方面の道へと足を進めよう。
以後、あまり天気は良くなかったが北岳界隈でゆっくり過ごし、広河原へと下山した。
7月の3連休に登ったがこのルートは誰にも出会わなかった。
北岳への登山道は大勢の登山者で賑わっていた。
小太郎山の西尾根は昔、東京営林署の作業道があったらしく、尾根末端から今回泊まった標高2,570mあたりまではずっと踏み跡と時々テープ類もあり、すっきりした尾根で容易に登れることが分った。
ポイントは小太郎山への最後の標高差180m、1時間ほどの間のみで、うまくルートファインディングできればマイナールートとしては行程全体を考えても容易で楽に登ることができる。また、尾根は明瞭で行程上には登攀具など必要な個所は全く無い。
以前、中央アルプスの三ノ沢岳にも風越山から登ったが、こちらは行程の中間に笹や潅木や倒木の藪、上部には本格的なハイマツの藪漕ぎがあり、小太郎山よりハードだ。
小太郎山西尾根は、無雪期の日本第二位の高さの名山へのアプローチのひとつとしては、登り始めがマイナーで変化があって面白く、達成感も大きなものになるだろう。