京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | CL秦谷、SL浅野、福澤 |
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期日 | 2005年2月10日夜〜2005年2月12日 |
山域 | 加越国境 赤兎山 |
ルート | 下打波発電所前〜上打波〜しょうつ山〜赤兎山 を往復 |
山行形態 | 山スキー |
文責 | 秦谷 |
昨年加越国境の山スキーを知ってから赤兎山の南に延びる尾根が秘かに気になっていた。
端正で地形も緩やかでスキーに向いているし、読図にさえ気をつければ静かな山とラッセルを満喫できるだろう。
このルートを今シーズンの課題と位置づけて以降、11月には偵察を行い南斜面の地形をインプット。メンバーとして、僕のプランにいち早く興味を示していただいた浅野さんと福澤さんにお付き合いいただけることになった。
さて、どこまで行けるか。
> 22:00 京都駅(京都東〜福井 有料道路使用)
> 25:10 JR越美北線 勝原駅
駅舎内にテントを張って仮眠。ここから数キロ奥に行けば入山口だ。
> 25:30 就寝
> 5:30 起床
始発の列車が来る直前、待合室に電灯が点り目覚めた。ここで着替え・パッキングも済ませてしまう。
> 6:30 勝原駅出発
アスファルトが黒々と出た路面を進む。直前に雨が降ったからか。
> 6:50 下打波発電所前(除雪終点)到着
もう少し手前で足止めを喰らうと思っていたが、予想以上に奥に進めてラッキーだった。
> 7:03 下打波発電所前出発
ここから上打波の尾根の取付きまでは6km強歩く。途中1箇所だけスノーシェッドの下で雪が途切れスキーを担ぐ。2箇所ほどデブリが出ていた。えぐれた斜面から見ると全層雪崩のようだ。まだ角張った塊の様子から、2月9日から10日にかけて気温が緩んだのが原因と思われた。くわばらくわばら。
> 9:03-9:13 上打波林道取付き
集落はすっかり雪に埋もれている。手前に橋があるところを左に曲がって林道にスイッチ。大回りに緩やかに高度を稼ぐ。急がば回れ。
> 10:00 尾根取付き
4度ターンを切ったあと、標高620m付近で尾根に取りつく。密な杉林を少しだけ北北西に詰めると木もまばらな緩斜面に出る。地形図の通りだ。
昨年の経験から今年は激しいラッセルを覚悟して臨んだが、雪はほどよく固まっておりきわめて快適に距離を稼げる。視界も明瞭で、尾根の途中にある956m小ピーク・しょうつ山も確認でき現在地も確実に把握できている。北北東寄りに進路をとりながら、不要なアップダウンにはまらないよう尾根の西側を意識してトレース。標高1000m〜1100m付近はだだっ広い平原状、1100m〜1200mで少し登ったあと、1300m付近で鳩ヶ湯から伸びている夏道と合流する。この付近は緩やかな尾根がルートの南側だけでなく南東と西にも伸びており、帰りに迷い込んでしまわないよう気をつけなければならない。
午後にさしかかると雪が水を含んできた。シールの裏に団子状に雪が付着して急速に足取りが重くなる。シールにワックスを塗って対処したところ、心持ち改善されたようだった。
> 14:00 1420地点を幕営地点とする
ひとまずの目標としていた夏道の合流は通過できた。いったん鞍部に下り、少し登ったあとの平原状地形1420m付近で幕営することにする。今回は浅野さんのツエルトを使わせていただく。雪面を整地したあとスキーとストックで適宜支点をとり、スリングで固定する。
> 16:30 夕食
浅野さんのペミカンカレーに舌鼓を打つ。おそらく二人の倍は食べてしまっただろう。
> 18:50 就寝
昨夜の疲れもあって、早めの就寝とする。
今日は思っていた以上に進むことができた。曇りのち雪の予報に反する好天で終始快適、ラッセルもほとんどなく体力も温存できている。天気さえ崩れなければ明日はほぼ確実に山頂を踏めるはずだ。
僕に関して気にかかることは装備だ。途中、シールの前面の金具が外れ、前回の山行で修理したばかりのビンディングのクライミングサポートが吹き飛ぶトラブルがあった。少なくとも、この山行ではだましだまし使い続けなければならない。
> 5:10 起床
きわめて快適な一夜だった。
> 7:03 出発
石徹白周辺の山々−銚子が峰・薙刀山・野伏ヶ岳付近−から立ち上る日の出を拝む。静寂に身を置いて朝の儀式を迎えられることはこれ以上ない贅沢だ。昨日はしんしんと降っていたようだ。スキーで歩けば絨毯を踏みならすようでむしろ心地よい。
ほぼフラットなブナの疎林を抜けると純白の山頂が目の前に姿を現す。
いよいよ全身が熱くなってきた。
> 7:57-8:15 赤兎山山頂
一歩ずつ確実に登って視界が開けたところが山頂だった。テン場から50分、いつの間にか着いてしまったようだ。北東に雪化粧した白山を認めてようやく冬の赤兎山に来た感覚がじわじわと湧いてきた。大長山・大舟山も雪をまとって険しい風貌に一変している。できることなら暫くこの展望に浸っていたいがさすがに山頂は風も強く記念撮影してシールを外して滑降へ。
カリカリの斜面を慎重に滑り出す。傾斜は緩く斜面も広いためターンは自在に切れる。少し下るとふかふかした新雪に。無木立の平原、顔がほころぶ。ブナの疎林を粉雪を蹴散らして下っていく。来てよかった。メンバー全員自分の世界に浸っている。テン場までは15分で戻ってきた。
> 8:30-9:00 1420幕営地点
さてここからは読図をしつつ無駄のないラインを探っていかねばならない。南南西に下れば取り付きには出るが、途中迷いかねないような二重山稜・おびき寄せるような緩やかな谷があり決して油断はできない。
1300m付近の夏道分岐で南南西に進むか南に進むか少し迷うが、先に見えるしょうつ山を目印に南側に進路をとる。あとは登り返しのないように尾根の西端をへつるように下る。
このような場合、多少アップダウンがあっても尾根上を上り下りするか、読図のポイントを抑えて尾根の端をトラバース状に下っていくか二つの選択肢がある。前者ならライン取りは確実だがアップダウンに時間をかけてしまう。シールの装着も場合によっては必要だ。ラインが確実に見えている場合は後者をとればかける時間を短縮できる。
標高1200m付近から1100m付近まで密な樹林帯。雪の状態は昨日と同じかそれ以上に固まった状態だ。「ガリガリ・ボコボコ」の斜面をジグを切りながら下る。それにしても脚に力が抜けず疲れる。
しょうつ山の西をうまく巻き、956ピークの北の谷からあとは南方向に下りるだけ。時間も午後に近づいており雪も適度にほぐれていて山頂直下に次いで快適な区間だった。
> 11:45 尾根取付き
読図成功。
> 12:03 上打波林道取付き
ここから2時間もあれば車まで戻れるだろう。
> 13:40 下打波発電所前到着
発電所前には数台の車が。着替えているところスノーモービルに乗った猟師に会う。輪かんやスノーモービルのトレースが林道で認められたが、そういうことだったのか。
> 14:50 和泉村「平成の湯」
> 16:00 武生市
加越の帰りのもはや定番となった武生の国道8号沿いの「まつり寿司」。注文しなければお寿司が流れてこない時間帯だった。
> 21:30 京都
誰にも会うことなく自分たちだけの山を満喫できた。静かな山通いはこれからも続きそうだ。
これだけ早く行動ができたのは、ラッセルがほとんどなく視界が明瞭だったからだが、経験者二人に同行していただいた部分も大きい。だだっ広い平原を登り返さずに尾根の縁をへつる浅野さんの迅速かつ絶妙なルートファインディング、林道歩きでは脚を滑らせるように歩いたほうが早くて楽だよという福澤さんのアドバイス、やはり経験豊富な方と行くと自分に足りない部分がよくわかる。単独なら、下りのルート読みにもっと手こずっていただろうし力任せに歩いて体力を消耗していただろう。
ここは得たヒントを手がかりに地道に経験を積んでいくほかあるまい。
最後に、僕の情念の産物でしかないマニアックなルートに快くつきあっていただいた二人に感謝。