京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | CL ハタヤ、ニシムラ |
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期日 | 2005年6月4日(土)夜〜6月5日(日) |
地域・山域 | 奈良県 大峰山系 十津川水系 小黒谷 |
ルート | 川津大橋北東部(風屋貯水池)〜吊り橋〜小黒谷出合〜稜線1057P西方鞍部〜(杣道)〜吊り橋〜川津大橋北東部 | 山行形態 | 沢登り | 文責 | ハタヤ |
22:00 JR木津駅出発(国道24〜168号経由)
25:00 奈良県十津川村川津(川津大橋北東部)
25:30 就寝
5:30 起床
6:50 川津大橋北東部 出発
7:20-7:50 小黒谷出合(看板)(標高330m)
7:50 小黒谷入渓
8:25 5m×12m滝で全身を浸ける
8:50-9:05 作業小屋跡
10:17-11:05 稜線(標高1030m)
11:05 川津大橋北東部
先週の奥ノ深谷・白滝谷は「行ったことのある、比較的やさしい沢」だった。
次は「初めて行く、比較的やさしい沢」に取り組んでみたいと思った。
二週続けて比良に通う手もあるが、大峰の沢ならば帰りに温泉とドライブがついてくる。
岳連の行事のある日に、しかもスキルの覚束ない初級者だけで大峰の沢に入ってもよいものだろうか。松田さんに恐る恐る計画を打ち明けたところ、快く送り出していただけた。
木津駅で西村君と落ち合い、国道のバイパスを適当に使いながら京都から150km離れた風屋貯水池のそばには1時前に到着する。周囲は真っ暗、物音一つしない。
ものの本によると小黒谷は「沢登りのためにできたような、是非推奨したい沢」と解説されている。とはいえ自分が主導で沢に入るのはまだ2回目にすぎない。出発を前に神経が尖っているのが自分でもよくわかる。
5時半に起きることを申し合わせた後、宴会もそこそこにシュラフに潜りこむ。
天候は快晴。川津大橋の北東に車を置いて出発。10分程度林道を歩き、山道を少し下ったあと、吊り橋を使ってダム湖の対岸に渡る。
吊り橋には頼りないベニヤ板が張られてはいるものの数カ所腐って抜け落ちている箇所もあり、正直心臓にはよろしくない。しばらく湖岸沿いの登山道を進むと出合に下る道の分岐へ。小黒谷の標識を確認したところから沢装備に身を固めて遡行を開始する。水量は少ないが魚影はことのほか濃い。沢に差し込む光の量は少なく、シャッターを切ってもぶれた写真の連続となる。
遡行図に記された「泳ぎで突破。5m×12m」のゴルジュには40分後に到達。一旦息を整えて首から下を水に浸ける。右岸のホールドがつるつるでやや嫌らしいが、距離が短く流れも緩いため、泳ぐという動作をするほどでもない。
ナメや小さな滝は問題なく直登できる。途中水流が狭い一点に集中している5m程度の滝で、練習とばかりに一旦水線に取り付く。ホールドはしっかりしているのだが、間断なく叩きつけるシャワーを浴びていると次の一手をじっくり探そうとする余裕が次第になくなってくる。そのような滝が2箇所ほどあり、一旦降りて作業道を巻いた。登れる確信が持てないときは安全第一に徹したい。
今回の小黒谷は初めて歩くルートということもあり、滝やゴルジュがあるたびに立ち止まって、遡行図と実際の地形を互いに照合する作業を意識して行ってみた。作業小屋を越えて後半の二股まではほぼ順調で安心していたが、二股より先以降遡行図の地形と実際の地形が合わなくなってきた。一ヶ所巻いた滝は50mの滝と称するには小さすぎる。植林帯はもっと上流にならないと出てこないはずだが…。遡行図が記録されたときと比べて、植林されているエリアが下まで伸びているのだろうか。
伐採の跡なのか台風の爪痕なのかわからないが、植林帯に入ると倒木や太い枝が流れをさえぎり始める。まだ標高は750mを超えたばかり、稜線まではまだ300m登らねばならないのに、これでは別の意味で渋い。やがて支流の分岐に。遡行図は左俣に進んで1206ピークに突き上げているが、植林帯の倒木をその都度乗り越して体力を消耗するのもなんだか不毛な気がしてきた。やや等高線の密度が急であることを承知で右俣を真北に進めば標高差100m強も登るうちに稜線に出られるだろう。水を汲んで稜線歩きに備え、急な斜面をジグを切りながら登り出す。水の流れは砂礫帯に消え、植林帯が途切れ広葉樹の新緑がまぶしく感じられたころ稜線に飛び出す。すぐそばにはモノレールの終点が。図らずも読図がうまくいったことに思わずニヤリとする。
開放感あふれる稜線で大休止。あとはモノレール沿いに下れば迷う心配はない。ところがダム湖と吊り橋を一望してすっかり安心して緊張が緩んだのだろうか。普段使われることのない浮石だらけの歩道に手を焼くためだろうか、下りは比良のようにスムーズには行かず一歩ずつ足場を確かめながらの下山となる。
最後は吊り橋をもう一度渡る。転けてもワイヤーに引っかかるし、湖面に叩きつけられることはないだろうと割り切れば思いの外大胆に歩けるものだが、朽ちつつあるベニヤに体重を預けていくのは、十津川のすぐそばの観光名所「谷瀬の吊り橋」よりはるかにしびれる体験だ。もっとも、沢登りと林業以外には使われることのないであろう「風屋の吊橋」に行ってきましたと話の種に自慢したところで、怪訝な顔をされるだけだろうが…
車に戻ってきたところでまだ12時を過ぎたばかり。ここは紀伊半島の温泉とドライブを味わうほかないだろう。十津川を南下し、本宮の湯の峰温泉で一服。山中を一周するように、大瀞〜伯母峰〜吉野〜明日香村〜奈良を経由して帰る。まだ大峰・台高の沢の地図を頭の中に描けているわけではないが、国道を淡々と流しているだけでも芦廼瀬川、八木尾谷、前鬼川、白川又川、下多古川といった名高いルートを立て続けに横切っていることがわかった。紀伊半島が沢登りのメッカであることがいまさらのように感じられて嬉しい。
やさしい日帰りの沢といっても、沢登りの本場・大峰のこと。通いなれた比良とは勝手が違うことを念頭に、気持ちが空回りしないようつとめて穏やかであろうと意識しつづけた。
このところ晴天続きで水流がか細かったことと、基本動作の確認を先週お互い念入りに行って臨んだためであろうか。水勢におののいて巻いてしまった滝が2箇所ほどあったが、終わってみれば遡行開始から2時間半足らずで稜線に立つことができた。
小黒谷は、大峰エリアでは一番易しくて手軽な渓である。
それでも、大峰の沢に自分たちだけの力で足跡を残せたことを、ささやかであっても紛れもない前進だと思いたい。