白山 市ノ瀬〜別当出合〜室堂(自転車+山スキー)

メンバー L ハタヤサトウ
期日 2006年4月22日(土)〜23日(日)
地域・山域 石川県 白山
ルート 白峰ゲート=市ノ瀬〜別当出合〜砂防新道〜弥陀ヶ原〜室堂 を往復
(白峰ゲート=市ノ瀬間はMTBを使用)
山行形態 自転車+山スキー

コースタイム

2006年4月22日(土)天気:曇り

11:00 京都市内(敦賀〜福井 有料道路使用)
16:00 白峰ゲート 到着
16:30 白峰ゲート 出発
17:53 市ノ瀬ビジターセンター
18:30 夕食(五目ご飯+たらの芽のみそ汁)
20:30 就寝

2006年4月23日(日)天気:曇り。
標高1700m以上はホワイトアウトで視界なし

3:00 起床
3:30 朝食(焼そば)
4:30 市ノ瀬ビジターセンター 出発(830m)
6:50-7:20 別当出合(1260m)
7:50-8:05 別当出合吊橋を渡る
10:10-10:25 甚之助ヒュッテ(1970m)
11:00 甚之助ヒュッテから北東に尾根を進み、夏道と直交する地点
11:30 弥陀ヶ原2345ピークから南南東に伸びる夏道尾根に合流(2200m)
12:05 2345mケルンを確認
12:34-13:10 室堂(2480m)
15:26-15:40 別当出合吊橋を渡る(1260m)
16:40-16:50 市ノ瀬ビジターセンター(830m)
17:20 白峰ゲート
17:45 白峰ゲート 出発
23:00 京都市内(福井北〜敦賀 有料道路使用)

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ハタヤの所感

出発まで

「どこか山スキーへ行きませんか」
ぽっかり空いた4月下旬の土日をどうやって過ごそうか。
山岳会の総会の席でぼんやり考えていたところ、雪稜に顔を出していただいているサトウさんから声をかけていただいた。
「白山なんかいいと思いませんか。」
「はい、自転車を使った山スキーをやってみたいと思っているんです。」
直前にウェブで流れた情報などを参考にしながら、ターゲットを別当出合から砂防新道経由で室堂に登り上げるルートに定める。
水曜日は雨だった日曜日の予報も、土曜の出発直前には曇りにまでよくなっている。
今度こそ、晴れてくれるだろうか。

4月22日(土)

11時にサトウさんと落ち合い琵琶湖の西岸を通って石川県の白峰へ。海津大崎への花見客だろうか、琵琶湖岸はノロノロ運転に終始する。
白峰温泉からしばらく行ったところでゲートにぶつかる。関西方面のナンバーの車が2台。天気のよい土曜を狙って入山したのだろうか。
市ノ瀬までの標高差300m、12kmの登りはMTBで。山スキーと自転車を使った速攻登山、秘かに憧れていたスタイルである。自分の車は普通のワゴン車でルーフボックスもないが前輪を外せば2台何とか積み込めた。
漕ぎだしてギアを軽めに回転数を維持する。登り坂ではせいぜい10km/hも出ればよいほうだがそれでも徒歩よりは3倍近いスピードで距離を稼いでいける。
市ノ瀬発電所を過ぎたあたりのスノーシェッドで3名の山スキーヤーとすれ違う。白峰ゲートに停まっていた車のドライバーだろうか。木・金に積もった新雪のラッセルに苦しめられ5時半に白峰ゲートを出たが甚之助ヒュッテの手前までしか届かなかったとのこと。なるほど状況はめまぐるしく変わっているようだ。
できるだけ距離を稼ぐつもりで除雪終点の市ノ瀬を過ぎた橋まで行くが、倒木が散乱しておりいい感じもせず引き返してビジターセンターで幕とする。サトウさんに摘んでいただいた「たらの芽」をみそ汁の具にして五目ご飯の夕食。春の若くて鮮やかな香りが口中に広がった。
雪の壁と建物の庇に囲まれ、暗くなれば照明も自動点灯。風の影響も受けず快適な一夜を過ごせた。

4月23日(日)

早めに3時起床。乾燥ニンニク+ソーセージ+シーチキンを盛り合わせた焼そばを流し込んで気合を入れて4:30出発。昨日姿が見えていた山頂は重い雲に覆われているようだ。橋を渡ったところからスキーを履く。林道でカットできそうな斜面はショートカット。それでも別当出合までは5.7km、2時間強を費やす。別当出合の吊橋は真ん中を慎重に渡る。下を見ないでおこうと意識すると脚が強ばってしまう。無心あるのみ。
橋を渡って中飯場への取り付きへ。別当谷沿いに歩くか尾根に直登するか逡巡する。雪崩れやすそうな谷沿いを避けて若干斜度は急だが尾根を直登。尾根に登りあげれれば快適なシール歩行だ。
中飯場はいつの間にか通過。甚之助ヒュッテまでは別当覗に近づきすぎないように尾根を北東に進めばよい。ところが標高1700mを過ぎたあたりから急にガスが張り出して視界が白くなってきた。垂れ込める雲の中に潜りこんでしまったようだ。標高1800m付近で続いていたトレースが絶える。昨日の3人パーティはこのあたりで引き返したのだろう。ここからはコンパスと地形図を丹念に確認する作業の繰り返しとなる。
尾根が緩やかに広がってきたと感じられる標高1970m付近、甚之助ヒュッテはまだ雪の下に埋もれていた。ここから弥陀ヶ原までは黒ボコ方面に北北西にトラバースするのが夏道ルートだが、いかんせんトラバースする区間が長い。視界のない真っ白な状態で上で何が起ころうとしているのかわかないまま横断するのも心臓によくない。ならば、北東〜東北東に進み尾根通しに弥陀ヶ原を目指せば、尾根に登り上げるまで一部等高線が密な区間はあるが危険なトラバースの距離は短くできる。ヒュッテから明瞭な尾根を標高2100mまで北東方向に登り夏道を目指して東北東に進む。ここを越えれば尾根に合流すると思われる箇所、傾斜40度はあろうか。雪の層が剥がれて黄砂が剥き出しになっていた。こういうときは下が見えない方がかえって精神的には大胆になれるのだろうか。ハタヤはツボ足で最短距離で直登、サトウさんは速攻でシールで突破。この部分が一番嫌らしかった。
尾根に出てしまえばあとは弥陀ヶ原の2345ピークまでは南南東〜真北に進めばよい。このあたりからシュカブラが現れ始める。雪面も空も真っ白の状態だと思わぬくぼみに足を取られてヒヤリとする場面が出てくる。右脚が着地せず膝をついたところ、切れ落ちた斜面が大きく口を空けていたことがわかった場面では冷や汗が全身から流れた。コンパスと地図を付き合わせて確認する作業をしつこいと思えるほどに繰り返していないと、人間の感覚なんてすぐに狂ってしまう。
弥陀ヶ原の南端の2345ピークの周辺の等高線付近を通過しているのだろうか、登ったあとわずかな下りがある。ケルンを発見して現在地が正しいことを確認。ここからは緩やかで雪崩の心配はない。ホワイトアウトの中でも正常に方向感覚を保つべく地図とコンパスを付き合わせる感覚はさらに頻繁になる。ここからはサトウさんのGPSで室堂までの距離と方位を確認のうえ先頭で進んでいただく。室堂はあと800m先にあるようだ。目印が確認できないときGPSがいかに心強い道具になってくれるかが実感される。緩い登りを超えてあと100m。少しずつ詰めてようやく小屋が姿を現した。
風はないが完全なホワイトアウト状態がずっと続いている。現在13時前、室堂の小屋で出発から約8時間。この状態ならば御前峰まではあと1時間強はかかる。山頂から15時に下山を始めるとなると、日没の18時までに下るならミスは許されない。沢筋を間違えた場合など、ビバークを余儀なくされる可能性が高い。吹雪き出すともっと時間がかかるだろう。焦りを抱えて下山することはできれば避けたかった。
サトウさんと相談、山頂は見送り室堂で引き返すことに。
行動食をたらふく食べ、下山に備える。
13:10、下山開始。残ったトレースを手がかりに2345ピーク付近まではシールを着けたまま下山する。10mと視界がないので頻繁に声を掛け合い互いが無事であることを何度も確認する。尾根からようやくシールを外し滑り始める。登りで嫌らしいと感じたトラバースは視界が幾ばくか晴れるのを待って一人ずつ一気に通過。甚之助ヒュッテ〜砂防新道方面へはサトウさんのGPSを頼りに滑り込む。
ガスが晴れ始めたのは標高1700mを切ったあたりから。重めの雪に苦労しつつ緩やかな斜面を一息つくように下っていく。遠くの山稜が望めたときなど思わず鼻唄が口をついて出てしまった。標高を下げた地点から見ると山稜の上は一律に重苦しい雲が垂れ込めていた。あの中を歩いていたということか。
別当出合の取り付きは別当谷方面を沢沿いに一気に通過。吊橋を渡り終えたあと、ワイヤーの一本が外れていることがわかり驚く。
ここでサトウさんにワックスを貸していただいたところ、林道までの滑りが信じられないほど楽だった。
市ノ瀬からはMTBにまたがるだけでよい。時折道端に生えるふきのとうを摘みながらあっという間に白峰ゲート着。
帰りは白峰総湯で一風呂浴びて、福井のカレーバイキングで空腹を満たす。

山行を終えて

前回に引き続き今回も天候に阻まれ途中での敗退となった。
10mもない視界の中での行動。特に弥陀ヶ原〜室堂の平原状地形や下る沢筋の選択などは自分の判断が正しいか自信が持てなかった。サトウさんに持参いただいたGPSがなければ、前日すれ違ったパーティと同様甚之助ヒュッテの手前で行動を打ち切っていたに違いない。安心料と考えればGPSも決して高い買い物ではないのだろうか。
終日厳しい条件の中お付き合いいただいたサトウさんに感謝したい。

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サトウの所感

出発まで

今年の白山は凄い事になっているとの情報。期待に胸をふくらませていた。
今週末悪いはずの天気予報は曇り・ときどき雨に変わっていた。
やはり、行くしかないだろう。

4月21日(土)

16:30 白峰ゲート
MTBで市ノ瀬、そこから行ける所まで行って天泊の予定。
道中渋滞で到着が2時間ばかり遅れてしまう。

17:53 市ノ瀬着。
市ノ瀬手前のスノーシェッド付近で3人のスキーヤに出会い、情報をいただく。
昨日・一昨日で新たな積雪でラッセルに苦しめられて甚之助手前までしか到達できなかったとのこと。
市ノ瀬の先の橋の向こうはがけ崩と未除雪なのであっさり市ノ瀬で泊まることにする。

4月22日(日)

3時起床、幕撤収。
4:30 出発。
にんにく入り焼そばをたっぷり食べて、今日も気合入りまくりである。
ショートカットをこなしつつ、ながいながい林道を別当まで目指す。

6:50 別当出合。 
冬季トイレで重爆撃するも、熾烈な対空砲火を浴びる。
一本橋。帰り道恐ろしいコトに気が付く。このときは知らぬが仏。
対岸にわたる。一度は夏道に沿っていこうとするが雪が重く、一部雪崩れており、危険を感じ尾根に取り付く。悪道に変わりない。
観光新道の方がこの日正解だったかもしれない。
登高中振り返ると大長山 赤兎など見えるが、稜線から上は重く垂れ込める雲。
次第に雲の中に入ってゆく感じ。

10:10 甚之助ヒュッテ。
雪の下で影も形もない。PSでそれと知るのみ。視界はさらに悪化・10mくらいに。弥陀ヶ原までの急登は視界が効けば斜面を選べるのだけれど。
南竜へトラバースする夏道経由の尾根にルートをとるが途中クラックの入った40度の斜面を視界の効かないままトラバースを強いられる。今日の核心。
石も斜面に転がってる。尾根筋に出たのは正解。ここから南竜側に落ちないよう気を付ける。大きくうねるシュカブラにコケる。
のぼりなのに!

12:05 2345mケルンを確認。
ホワイトアウトの中室堂を目指す。GPSで計器飛行。
ここでハタヤ氏と相談。ハタヤ氏は新婚だ。僕はバテている。
晴れる可能性のないホワイトアウトの中、帰路1つ何かルートミスでもあると急速にピンチに陥る。天気も雨がいつ降りだすかわからない。
ビバーク装備はかなりしっかり用意しているが室堂で引き返すことに。

12:34 室堂発見!
10mにちかづくとぼんやり浮かんできた。ほんとわからなかった。 
レーションをほおばりしばし談笑。

13:10 シールをつけたまま発進。
足元だけの視界。慎重にトレースを追う。
2345でシールをはずし滑降開始。核心部は一人づつ一気に滑降。 
ここでガスの中トレースを失い、また慎重にGPSをみながら滑降、トレースに戻る。
ここで視界が利いてくれてたら!
甚之助をこえるとようやく視界が戻るが、すでにスタミナが切れているサトウは重雪でスキーのコントロールが苦しくなってきた。持参のワックスを塗るのも忘れ、よくコケる。
開豁な尾根筋。どこ滑ってもいい。おもわず奇声も出る。
取り付きの夏道の悪斜面も慎重にアプローチ、一人づつ一気に抜ける。

15:26 別当出合一本橋。
慎重に二人渡ってあっと気が付いた!なんと山側の手すりのトップワイヤが別当側で固定部がねじ切られてる!荷造り紐で補強してあるがそれもキレかけ。
ゾートする。みなさん気をつけてください。
延々林道をこなし最後に悔しさを叩きつけるようにショートカットの急斜面にとびこみ終了。

17:45 白峰ゲート。

行動中の写真

4月22日

 

白峰ゲートから市ノ瀬まで。
距離12km、標高差300mをMTBで

 

市ノ瀬ビジターセンター。
風を受けずにいい具合にテントを張れた

 

「たらの芽」を塩茹ででいただく

4月23日

 

室堂。標高2480m。ここで退却

 

視界は10mもあっただろうか

 

声を掛け合いながら慎重に下山していく

 

甚之助ヒュッテの下部でようやくガスが晴れた

 

別当谷の沢沿いをトラバース。
雪崩が怖かった

 

別当出合吊橋

 

別当出合。まだ雪に埋もれている

 

市ノ瀬への下り。GW明けの開通は今年は厳しそうだ

 

白峰に向けて一気に下る

 

行動時間13時間弱。
お疲れ様でした。


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