京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
メンバー | ヤマグチ、ノダ(北大ワンゲルOB) |
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期日 | 2006年10月8日-9日(前夜泊日帰り) |
山域・ルート | 太田切川(大田切川)・中御所谷遡上、ロープウェイ下山 |
山行形態 | 沢登り |
文責 | ヤマグチ |
菅の台駐車場C0
C0=(バス)=しらびだいらロープウェイ駅-日暮しの滝入渓-千畳敷カール-宝剣岳ピストン=(ロープウェイ)=しらびだいら=菅の台駐車場=京都
4:15起床-5:40バス発=6:05 しらびだいら着-6:20 同発-6:30 日暮の滝-7:30 C.Sの滝巻き終わり-8:30 co2020付近小枝沢-9:50 40m滝下休憩-10:10同発-10:30 40m滝巻き終わり-11:30 千畳敷カール夏道-11:45 ロープウェイ駅-12:10 同発-12:50 宝剣岳-13:15 同発-14:00 ロープウェイ駅
実はこの週末、僕らが企画していたのは白山・大畠谷だった。アサノさんらの熱い報告、そして二俣の迫力ある写真に虜にされてしまったから。この沢を先輩達の力を借りず、独力で越える事ができれば一歩自分達を高める事ができるはず!そう信じていた。
出発当日、天気は雨。しかし、予報では晴れて来るはず。ところが、白山に着いてふたを開けてみると尽きぬ事無い雨、時折さらに強く車を打ち、大畠谷はコーヒー牛乳となって函を洗い流している。あまりのダメっぷりに付け入る隙も無く、転進先を探す。そこで候補に挙がってきたのが中央アルプスの中御所谷だった。
アクシデントでリーダーのニシザワが戦線離脱。期せずして北大ワンゲルOBの二人がタッグを組んでの山行となった。関係ない話だが、この二人、北大ワンゲル歴代悪ガキメンツランキング上位に名を連ねる、生粋のアホ&アホである。当然、登りも、喋りも、行動も、常に頭の悪い内容で満ち満ちていて、とてもこの報告には書けない。お伝えできないのは残念ではあるが、僕はまだもう少し雪稜にいさせてもらいたいので。。。
駒ヶ根ICで高速を下り、菅の台駐車場まで車で行く。今日の晩飯は麻婆春雨。ちなみに、相方の予定していた晩飯も麻婆春雨だった。「軽量化→軽い→春雨」という単純な方程式。でも、酒は1リットル持ってくるのがワンゲル式である。星空の下で腹がはち切れんばかりに食って、酒を飲む。口を開けばもっぱら下品な話題、乾いた空に下品な花が咲く。「ああ、そうか、こういうメンツだとストッパーがいないから、どこまでも止まらないものだなあ」とか思いつつ、前日の反省を生かして飲み過ぎずに就寝。
朝は強烈な冷え込み。いやいやいや、やっぱ本州でも最低気温がマイナスになったら沢登りとか無理でしょう!口から白い息がため息と共に漏れる。この時期は臨時バスが5:45から出ている。ちょっと並んでさくっとしらびだいまで。そこから10分も夏道を歩けば日暮しの滝。ここで入渓だ。あいかわらず強烈に寒いが、装備をつけるとやはり緊張してきて胸が高まる。ノダくんはあかわらずハーネスではなく腰ベルト。懸垂下降すると肋骨が折れそうになる危険な代物だ。現役時代を思い出し、懐かしくなる。
日暮しの滝は記録通り左岸カンテ状から。一部ホールドが遠いところもあるが、登り自体に問題は無い。問題は寒さと岩の冷たさである。ホールドとか持ってたくないし。いや、持つけど。この滝の前で「俺ら、どっちもリードできるよな?」「はあ」「じゃあ、ザイルとか着ける意味無いよな?」「まあ」という適当なやり取りによって、この後僕らは一度も登りでロープを使う事がなかった。ちなみにノダくんは50mの滝をフリーソロで登ってしまうようなアホである。
日暮しの滝上の8mは左岸よりブッシュ沿いに上がる。その上のC.S.の滝は直登不可。左岸の枝沢より巻いて懸垂下降で下りる。ここは45mでギリギリくらいだった。この先、軽いゴルジュ状になっていい感じ。日も射してきて、スカッ晴れの青空にテンションもウナギ上り。中御所谷は滝の数が半端無い。だいたいの滝は遡行図に書いたのでそちらを参考にして欲しい。宝剣の滝(=スラブ三兄弟?)とか言う連瀑、上2段は左岸からまとめて巻いてしまう。直登するならフリクション全開らしい。5-8mくらいの滝はだいたい直登。右から左から、気持ち良く登る。基本的に外傾しているスタンスがやらしいが、ホールドが豊富なので難しくはない。大きい滝も巻き道がうっすらわかる感じで簡単。巻き道にも赤や黄色の葉っぱが色を添える。そういえば、紅葉の沢って初めてかも。日差しが温かく、冷たい風も気持ちがいい。その先の40m二俣の滝前は開けていて素晴らしい開放感。リタイヤしたニシザワの託してくれたパンと一緒に記念撮影。お前の無念は俺たちが晴らしてやるぞ、とムシャムシャ。うーん、ニシザワの無念、うまい。
40mの滝は左岸から入る枝沢を登り、まずは右又の滝を大きく巻き、その後もう一個小尾根を乗っ越して本流に戻る。楽勝♪この滝の後もドカドカ滝が尽きない。2290mの分岐は水量の多い右に。この選択は非常によく、おそらく左俣に行ってたらゲンナリしていたコトだろう。左俣はロープウェイの下を通り、駅のすぐ隣に出るコース。しかも、上から見た感じほとんど滝らしい滝もない。右俣は5m程度の滝が連続し、人工物を見る事無く千畳敷カールに飛び出るコースである。宝剣の頭がひょこひょこ見え始め、振り返ると南アルプス連峰の向こうに富士山の頭がのぞきはじめた頃、カールに飛び出る。やったぜ!一般客が驚き、危険な生物でも見るように遠巻きに僕らをチラ見している。冷たい視線もこんな楽しい沢を登ってきた優越感でむしろ心地よい。ふふん、お前らうらやましいか?ほくそ笑んでいると子供が僕らを指差し逃げて行く。
沢が予定よりだいぶ早く登れたので、ロープウェイの駅で荷物をデポって宝剣アタック。宝剣の登りはあっさり。道行く女の子なんかを眺めつつ、あっという間に稜線まで。宝剣の上部はエビの尻尾なんかが発達してて、まるっきり冬景色。そういえば沢中にも雪のカケラが落ちていた。北アルプスも真っ白だ。遭難があったとか言ってたが、大丈夫だったのかなあ?荷揚げしてきたニシザワ(のくれたパン)を取り出し、ノダと二人で食べる。ニシザワ一緒に登頂できて良かったなあ、モシャモシャ。次はもうちょっと塩気のあるパンが欲しいぞ。
下りロープウェイは1時間半待ち。常時1000人の待ち人。太古の昔、氷河の削ったカールも人の列に埋め尽くされて、まるでそこはディズニーランド。七つ沼カールとかこんな風になったら泣くなあ、とか思いつつ、あっという間に下れるロープウェイ+バスに大感謝!七つ沼からだったら1.5日くらいかかるのに、ここなら1時間かからず駐車場だ。
中御所谷は総じて素晴らしい沢だった。スケールの大きい滝の合間に、直登可能な小中規模な滝、巻きもほとんど薮らしい薮も無く、源頭に至っては薮漕ぎ皆無である。アプローチもデプローチも楽チン、カールに飛び出るロケーション、南アルプスを臨みながら登る明るい沢、美しい紅葉、非常時も人里近く、対応しやすいだろう。難点は人工物がどうしても目につく事、カールでの人だかりにうんざりする事、旅情が無い事。滝自体はそこそこ登れないと時間がかかるだろう。ザイルは2回懸垂下降で出したが、一般的な通常の進め方だったら5カ所くらいは出したと思う。残置ハーケンもそこそこ見られた。全体としては3級+くらいか?連れて行く、連れて行かれるのではなく、自分で登るとしたらこれ以上無い位いい沢だろう。ソロで登るのにも適していそう。水も綺麗だった。素晴らしい沢を紹介してくれたニシザワ、一緒に気持ちよく登り、アホ話につき合ってくれたノダに感謝!!