06 四季折々の白山を楽しむ(石川・岐阜県)

いつの間にか、白山に行くことが多くなった。昨年は実に3回も白山に足を運んでしまった。
白山大好き人間なのである。白山のどこがいいのか、どんな魅力があるのかを今日はご紹介しましょう。

大阪に就職して、会社のメンバーと一緒に南アルプスに出掛ける青春時代があった。何故かいつも南アルプスだった。その内、仕事も忙しくなり、山が遠のいていたが、5〜6年前に腰痛に悩まされるようになった。お決まりの運動不足、肥満が原因だった。それで一念発起、登山を再開し、京都北山を歩く日々から次第に湖北の山々に関心が移り、白山の麓の山々も出掛けるようになった。湖北の山は北山では見られない花があり、またブナの原生林も気に入っていた。水芭蕉の群生地もあることが判り、自然と白山とその周辺に向かうことが多くなった。

ただ、私の場合は白山登山に一番利用される砂防新道は出来れば利用したくない。理由は人が多く、花以外の植生や動物に出会う機会が少ないから、人も少ない上小池野営場から三ノ峰、別山、御前峰そして、白山の核心「お花松原」を経て中宮温泉への縦走路がたまらなく好きだ。室堂あたりのお花畑も見事だが、お花松原はその名の通り、花の宝庫である。秋は草紅葉もいい。きれいな避難小屋を利用すれば実に快適な縦走が楽しめる。時々出会う人と語り合うのだが、このルートは「日本の秘境」とも思えるほどである。三ノ峰の登りと御前峰からヒル バオ雪渓への下りがかなり険しいので、誰にもお勧めできる縦走コースではないが、充実した山行が出来ること請け合いである。テントなしでの縦走は避難小屋の性格上、利用者が多かった場合に問題があるのでお勧めできないし、上小池野営場は確かテント持ち込みが原則なので、テント装備とそれを持って移動できる体力は最低限欲しい。

夏は上小池野営場と南竜ヶ馬場でテントを使えばいい。春と秋は南竜ヶ馬場の小屋は避難小屋扱いとなる。大阪からであれば、3泊4 日のコース設定が可能である。
今まで、この縦走路を何度も出掛けたが、春、夏、秋と四季折々の白山を楽しむことが出来た。
未だ、残雪時の縦走は室堂までで中宮温泉までは果たしていないが、いつかは達成したいと願っている。秘策はスノーシュー携行で考えている。
ここで、これまでに白山で出会った動植物の内、印象に残ったものをご紹介したい。

【 熊 】

これは忘れもしない2000年8月9日の事である。私が京都雪稜クラブに入る前の事であり、この縦走路を単独行していた時の事である。場所はヒルバオ雪渓を下ったお花松原で、沢山の花に目を奪われながらピークを少し登りかけ、ふと後を振り返ると登山道の上、稜線部分に何やら黒い岩のようなものが見えた。まさかと思ったが動いている。よく見るとそれが熊だった。直線距離で140〜150m位の位置である。熊に気付かず、20〜30m位離れた稜線沿い下側の登山道を登ってきた事になる。そこでよくぞ襲われなかったものである。背筋に汗が流れた。この位置でも気付かれたら危ないので急いで坂を上り逃げようとした。途中の岩場に来た時、はるか後を団体の登山者が何やら楽しげに話しながら、こちらに向かってくる。これはヤバイ事になると予感した。仕方がない、熊に気付かれてもいい、彼らを制止するしかない。岩の上に登り非常用の笛を吹き、大声を張り上げた。「熊がいるから、来るなー。」「何を言っているか、わかんないー。」と女性の声がする。何度もやりとりしたが、こちらの声は完全には届かない。でも、危険を察知して停滞はしてくれた。熊のいる稜線に霧がかかり、時々見えなくなる。そのままの状態で30分以上たっただろうか、霧が晴れるといつのまにか熊は去っていた。ところが今度は彼らが動かない。こちらの声も届かない。怖かったが仕方ないポール一本(これしか武器になる物がない)で彼らの所まで行き、今までの状況を説明した。外人さんもいる8名ほどのパーティーだった。「もし、来るなら、今だったら熊はいないようだから一緒に来てください。」と言うと、「私達はこの辺りまでと考えて来ましたから、もう帰ります。」と言う。えらい時間ロスをしたものである。おそるおそる、一人元来た道を戻った次第である。その後の山行で、同じ地点に来るとやはり緊張してしまう。ケモノ道が近いのか、動物の臭いはいつもしている所である。

【 日本カモシカ 】

熊との遭遇はイヤだが、こちらのカモシカは安心だ。しかし、一度、カモシカに脅されたことはある。三ノ峰への登りで偶然、谷筋に親子のカモシカがいるのを見つけた。15m位先だった。先に子供の方が私に気付いて、母親の陰に隠れた。母親が私に気付いて、「フッー」と威嚇した。そして、足早に去っていった。この縦走路では頻繁に目にする動物である。中宮温泉側では更に遭遇する機会が多い。

【 イワツバメ 】

稜線歩きの際によく出会う。あの長い羽根を円弧に描いて飛翔する姿は実にすがすがしい。
実はある資料によると白山で一番生息数の多い鳥が、このイワツバメだそうだ。麓の稜線付近ではウグイスの鳴き声をよく聞くので、ウグイスも多いのではないかと思ったら5番目である。ちなみに順位はイワツバメ、キセキレイ、ホオジロ、シジュウカラ、ウグイスの順と紹介されている。

【 水芭蕉 】

白山の周りには実に水芭蕉の群生地が多い。HPにも紹介させて戴いたが、根倉谷園地、大嵐山、そして取立山である。地球温暖化のためだろうか、最近はコールデンウィークでも楽しめる。花の群生地に立つとほのかに水芭蕉の甘い香りがする。白山登山と水芭蕉鑑賞はゴールデンウィークの定例山行になりつつある。

【 ハクサンシャクナゲ 】

白山特有の固有種が多いことで知られているが、ハクサンコザクラ、ハクサンフウロ以外にハクサンシャクナゲがある。その名の通り、白い花で大きな固まりの花は気品と尊厳さを併せ持つようで私の大好きな花である。この花を見る為だけに白山に出掛けたいと思っていたが、昨年、目の不自由なCさんたちと7月末に出掛け、念願の出会いを果たした。イメージしていた通りで嬉しく、小躍りしたくなった程である。白い花が一番素朴で、しかも気高さもあるような気がするのは私だけでしょうか。

【 まゆみ 】

昨年、秋に白山の紅葉を求めて出掛けました。その時、まゆみの実が沢山、そして実に美しい紅色になっていました。あんなに綺麗な紅色は初めて見ました。我が家にもまゆみはありますが、あれほどまでに紅く色付く事はありません。そのまゆみの木が遭難碑の側にあり、まるでお供えの花のようだったのが、今も一枚の絵を見るように心に残っています。

(たけちゃん)

コース紹介

晩秋の白山縦走(2001年10月25日(木)−10月28日(日) 3泊4日)
目的の山域 白山(三ノ峰から白山を経て中宮温泉へ縦走)
(テント 1泊 避難小屋 2泊 全て自炊)

10/25(木)

自宅(小倉)− 京都−福井−越前大野−鳩ヶ湯−上小池キャンプ場(刈込池自然研究路散策)<行程 1h15>

10/26(金)

上小池キャンプ場−山腰跡−六本檜−剣ヶ岩−三ノ峰避難小屋−三ノ峰−御舎利山・別山−南竜ヶ馬場避難小屋(避難小屋泊)<行程9h30>

10/27(土)

南竜ヶ馬場−白山室堂−御前峰−大汝峰−お花松原−地獄覗き−うぐいす平−間名古の頭−三俣峠−ゴマ平避難小屋(避難小屋泊)<行程7h50>

10/28(日)

ゴマ平峰避難小屋−滝ヶ岳・シナノキ平避難小屋−中宮温泉−中宮温泉野営場−鶴来−金沢−京都−自宅(小倉)<行程5h40>

費用概算

JR 京都−越前大野2940円、タクシー 越前大野−上小池9030円、加賀白山バス 1090円、JR 西金沢−京都6890円   交通費合計19,950円

名物とおみやげ

JR敦賀駅の「ます寿司」1100円(塩の荘)隠れた名物。初日の昼食とした。帰りの雷鳥の中で富山のます寿司を1100円で購入。これは誰もが知っている名物です。中宮温泉で「白山なんばみそ」450円?を購入。材料はあかざ、なんば、みそで素朴な味がいいです。酒のお供、ご飯にも合います。そして竹下夢二の絵はがきセットと白山記念切手のセット 1000円 近くに竹下夢二の絵がある美術館か何かがあるそうです。彼と石川県の関係は全く知りません。絵の好きな家内へのおみやげにしました。これ以外に中宮温泉が胃腸薬になるらしいのでペットボトルに入れて持ち帰りました。露天風呂でも飲めるようにコップが置いてあります。去年は飲み過ぎて気持ちが悪くなりました。その他、綺麗に紅葉、黄葉した落ち葉をポケットに入れて持ち帰りましたが、ほとんど色が変色してしまいおみやげとはなりませんでした。

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