08 コシウスコ――日帰りできるセブンサミッツ(Australia)

オーストラリア大陸の最高峰コシウスコ山(Mt.Kosciuszko)は、オーストラリアの首都 キャンベラ(Canberra)から約200Km ほど離れた snowy mountains と呼ばれる山地にある。 ここにはオーストラリア大陸の標高トップ10が集中するが、 最も高いコシウスコでもたかだか 2228m なのだ。 今回はコシウスコへの日帰り往復プラン(夏季)を紹介したい。 コシウスコへのアクセスは、飛行機でキャンベラまで行き、キャンベラから登山口までレンタカーで行くのが最も簡単だ。登山口のあるスレドボ(thredbo) へはCooma, Jindabyne を経由して約215Kmの道のりだが渋滞が無いので早く着く。 なお途中のゲートで国立公園への入園料が必要となる。

人工都市キャンベラ

スレドボの中心地

スレドボ (http://www.thredbo.com.au/) は谷間にロッジが集まって出来た、感じのいい小さなリゾートだ。町の中を川(thredbo river)が流れ、店といえば数軒のレストラン、パン屋、山用品店(衣類中心)、MTBレンタル などがあるのみだ。 基本的にはスキーリゾートだが、夏でも家族連れなどで賑わっている。

スレドボからコシウスコへは、スレドボの町に隣接するリフト乗り場(Valley terminal, 1385m)が基点となる。 コシウスコ登山でもリフトを利用する人が多いようだ。 しかし、せっかくなのでリフトの終点までトレール(登山道)を歩きたい。 いくつかのトレールが整備されているが、 リフト駅の右手のテニスコート裏から始まる Merritts nature trail は傾斜もゆるく整備されて歩きやすい。 ただし一部分がMTBのダウンヒルコースと重複するので、下ってくるMTBに注意が必要だ。 トレールを1時間半ほど登るとリフト終点駅のCrackenback terminal(1960m)に着く。 ここでリフトに乗ってきた登山客がどっと増える。 リフト終点駅からは台地状の高地となる。鉄格子でできた平坦な歩道(Kosciuszko walk)を延々とひたすら歩いて山頂直下のローソンパス(rawson pass)に向かう。 途中、歩道が沢の源流を横切る部分があるが、ガイドブックの写真にも出てくるきれいなところ。 お花畑も美しい。 花も日本の高山植物にくらべて大柄だ。 ローソンパスから見たコシウスコはこんもりした丘のよう。 パスから山頂へは、ぐるりと、らせん状に付けられた砂利道を歩く。 広い山頂にはあれこれ説明が書かれたプレートなどが置かれ、30人近くの登頂者が写真を撮ったりシートを広げてランチを食べていたりする。

リフト終点からみたスレドボ

リフト終点からのトレール

記録の山行では、コシウスコからさらに足を伸ばして、標高No.2のタウンゼンド山(Mt.To

wnsend)を往復した。 タウンゼンドには直接のトレールはなく、トレールを外れて岩とお花畑の中をルートファインディングしながら進む。 というのもカール状の谷間は一面のお花畑で足の踏み場も無いくらいなので、 花を踏むか、岩の上を飛び石で進むかの選択を迫られるのだ。 お花を踏みにじるのに抵抗を感じる人にはお勧めできないコースといえる。 大岩が積み重なったタウンゼンド山頂はコシウスコとは対照的で、手を使わなければ登れない。 山頂にはコンクリートの塊以外、何も無い。 タウンゼンド往復については難しいところは無いが、地形が複雑なため視界が利かないときは道迷いに注意したい。 夏でも死者が出ているそうなので、もし行くならコンパスは必要だ。 コシウスコから足を伸ばす人はごくわずかで、タウンゼンドでは人と会うことは無かった。

お花畑

コシウスコ山頂

タウンゼンド山頂直下

トレールに戻ってからの帰路は、往路を引き返す。 来た道をリフト終点駅まで戻り、トレイルを下ると風が無くなり、また暑くなってくる。 なお夏(1月)は日が長く午後8時近くまでは空が明るい。
トレールに戻ってからの帰路は、往路を引き返す。 来た道をリフト終点駅まで戻り、トレイルを下ると風が無くなり、また暑くなってくる。 なお夏(1月)は日が長く午後8時近くまでは空が明るい。

夏のコシウスコは登山対象というよりハイキングの山といえる。 ランチでも持って仲間や家族とワイワイ登りたい。 特にリフト終点駅からのコシウスコ往復は、距離こそ長いが子供でも歩ける道と言ってよい。 ただ、森林限界(標高1800m)を越えているため風を遮るものがなく、夏とはいえ体感気温は結構低いのだ。 風よけのヤッケ(雨具で代用可)、それからテルモスに入れた暖かい飲物が欲しくなる。 また日差しも強いので、帽子があればなお快適と思う。 ちなみに登頂翌日に(リフト乗り場に表示される)山頂の気温を調べたら午前10時でマイナス2度、風速は11mだった。 今回はスレドボからのルートを紹介したが、標高1800mのCharlotte passからの日帰り往復も可能だ。 こちらは標高差は少ないが距離が長い。 日本から出向くなら、他の観光とセットで考えればより充実した旅になるのではないかと思う。 冬季のスキー登山ならさらに楽しめるだろう。

(鶴岡 行雄)

行動記録

2000/1/22 (Sat) 晴れのちくもり

valley terminal (1385m) 9:16 -(Merritts nature trail)- 10:36 Crackenback terminal (1960m) 10:39 - 12:07 Mt.Kosciuszko (2228m) 12:20 - 13:42 Mt.Townsend (2209m) 13:46 - 15:07 Rawson pass - 15:58 Crackenback terminal - 16:56 valley terminal

装備

雨具、シュラフカバー、コンパス、地形図、水、行動食、非常食, ヘッドランプ

地形図

MOUNT KOSCIUSKO 8525 - II & III topographic map 1:50000 FIRST EDITION, Land Information Centre (http://www.lic.gov.au)

道路地図

The Snowy Mountains Tourist Atlas, Land Information Centre, ISBN-0-7313-8100-9

宿情報

スレドボの Candlelight lodge は安価で、オーナー夫妻は感じがよく親切。 ベッドがやや小さいこととシャワーのみでバスタブがないことを除けば満足できた。パンフレットには風呂付きとあるので予約の際には部屋を確認されたい。 なお日本語は通じない。

レンタカー

車道にははねられたカンガルーが多数横たわっていた。 カンガルーをはねたり事故を起こせば$2500(20万円弱) を払う必要があるが、 一日あたり定額を払えば$2500が大きく減額されるレンタカーのオプションがある。

諸情報

山名は人名に由来する。綴りが英語の Kosciusko からスペイン語の Kosciuszko に戻された。

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