18 西穂高岳〜槍ヶ岳縦走(北アルプス)

2002年、8月に奥利根方面の沢登りに参加させていただくことにした。
しかし足慣らしもせずにいきなり本番というのも気が引ける。どこかで自分がバリエーションに向いているかを判断する材料がほしい。
なんの脈絡もないが、そういえば西穂高岳から奥穂高岳へのルートが、エアリアマップでは点線で表現されていたことを思い出した。
一般ルートではあるが少し辛口のルート。今の自分の実力を試すならここである。
ここを問題なくこなせれば8月の沢でも順応できるはずだ。あるいは、その先の山でも。

7/26(金)

「ちくま」は指定席を確保、座るや松本まで眠りにつく。

7/27(土)

松本から上高地は2500円(往復4600円、6日間有効)。下山地を決めかねていたので片道を買っておく。
西穂高岳登山口は大正池方面へ梓川を西へ下ったところにある。
今日は軽いウォーミングアップだ。2時間半弱で西穂山荘に到着。すごい人出だ。エネルギーをもてあましていたのでテントを設営後独標を偵察。新穂高経由のハイカーの目的地がこの独標らしい。ピークの直前から渋滞が始まる。尾根道の上り下りもままならない。どこからともなく怒号が飛び交う。明日は早出しようと誓う。

西穂独標から焼岳・乗鞍岳

奥穂から槍ヶ岳

北穂テントサイトから奥穂・穂高岳山荘

7/28(日)

西穂〜奥穂は今回の山行の目玉である。気合を入れてヘルメットまで持ってきてしまった。モチベーションも高く0330起床、0420出発。かなり早いほうだと思ったが上には上がいる。西穂山頂からご来光を眺める登山者が多いのか、西穂山頂まで何組か追い抜く。さて西穂からが本番だ。ヘルメットを被り、モードを切り替える。先を急ぐとザックが岩に当たり足場を崩してしまう。焦ってはいけない。間ノ岳の登りのフラットな一枚岩の登高に唖然。雨で濡れていたら滑ること確実だ。クサリに頼らず登下降するのをポリシーとしていたが、天狗のコルの直上で1カ所ハングがかった足場の不明瞭な場所があり、ついクサリに全体重を預けてしまった。1:40で行程半分の天狗岩を通過、楽勝か?と思われたが、ジャンダルムを通過し奥穂高岳のピークが間近に迫ってからが長い。馬の背への登り返しで息切れ、ばててしまう。馬の背を越えればたくさんの登山者の休んでいる奥穂山頂だ。
「西穂からですか?」驚きと奇異のまなざしが、達成感に包まれている時期にあってはなぜか心地よい。まずは第一目標はクリアだ。明日以降の行程を考えて穂高岳山荘は通過、北穂小屋まで足を伸ばす。涸沢岳〜北穂高岳はかなり組み入った岩稜。奥穂についた時点で緊張の糸が緩んでしまった今とあっては、岩場の処理に思いのほか時間をかけてしまう。
北穂のテントサイトは、小屋へはから10分程度離れたところにある。「トイレは小屋でしてくださいね」よく考えれば、10分もかけてはばかりに行くのか。猫の額ほどの平地にテントがひしめく。すごいところに寝るんだな、と冷静に考えて思う。

大喰岳から槍ヶ岳山荘・槍の穂先
 

槍ヶ岳山頂から北鎌尾根独標
 

7/29(月)

28日に距離を稼いだので0400の起床。北穂から大キレットへの下りは浮き石の連続。振り返れば北穂小屋はまさに山頂にへばりついている。荒涼とした岩壁。これが滝谷だ。最大の難所といわれる「飛弾泣き」を通過。一般ルートでは指折りの高度感が味わえるかも知れない。南岳までアップダウンは激しいが、変化があり飽きさせない。槍ヶ岳までは適度に岩稜を混ぜた稜線漫歩。縦走路の脇の花に心を動かせる。昨日まではせいぜい足下にしか注意を払う余裕がなかった。これも槍穂だ。
槍ヶ岳山荘には10時前に到着。山頂で北鎌尾根の写真を撮りまくる。眺めるほどに荒々しい。高瀬ダムのエメラルドグリーンと独標の荒涼としたモノトーンはなんとも妙な組み合わせだ。自分にもたどれるようになる日が来るのだろうか。
さて当初は槍沢か飛弾沢経由でそそくさと下山しようと考えていたが、もう少し欲張れそうだ。明日の天気も良いことだし双六小屋まで足を伸ばすことにする。千丈沢乗越までコースタイムの3分の1で下る。3倍速だ。あとは単純に下るだけだと思っていたが、西釜尾根は実はそこそこアップダウンを含んでいる。駆け足で下り降りるような芸当はできない。
双六小屋テントサイトは高校生のワンゲル部員たちでにぎやか。水は自由に手に入り、鷲羽岳・三俣山荘を間近にとらえてご機嫌だ。おとなしく下山しなくてよかった。

 

鏡平から槍穂稜線
 

鏡平から奥穂方面

7/30(火)

いよいよ下山日が来てしまった。稜線歩きも鏡平までの分岐で終わってしまう。もう終わってしまうのか。鏡平では、池に映える槍ヶ岳を正面に仰ぐ。西穂から槍・西鎌尾根と、この4日間たどってきた稜線を一望することができた。あとは北鎌を目指せればより槍穂を知ったことになるのだろうか。わさび平でスイカ(半玉500円)を食す。これまで我慢してきて良かった。新穂高には9時前に到着。高山までバス〜JRを乗り継いで帰途についた。

日に灼けて全身をタイツで覆ったハタヤ 新穂高温泉

(秦谷)

【コースタイム】

7/26(金)

京都2210- 「ちくま」で出発。

7/27(土)

[0415松本0442-0510新島々0520-0625]上高地0645-西穂高岳登山口0700-0925西穂山荘0940-1025西穂独標1030-1110西穂山荘 

7/28(日)

西穂山荘0420-0600西穂高岳0615-0740天狗岩-1020奥穂高岳1040-1055穂高岳山荘1125-1200D沢コル-1335北穂分岐-1345北穂小屋-1410北穂高テントサイト

7/29(月)

北穂テントサイト0455-0510北穂小屋0515-0620A沢コル0630-0720南岳小屋0735-0947槍ヶ岳山荘1047-1120千丈沢乗越1135-1345樅沢岳1350-1410双六小屋

7/30(火)

双六小屋0423-0510分岐-0535鏡平0550-0730わさび平0750-0850新穂高温泉

参考資料

昭文社『山と高原地図』上高地・槍・穂高

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